115 / 203
3.喜多村本家に居候
115.本館の夜
しおりを挟む「ここで待ってるから、みんな寝る準備して集合ね」
「準備、ってもね~」
「……うん」
「分かった」
「わしは先に上がるぞ」
「ど~ぞど~ぞ」
「そなた、わしの扱いが軽すぎるぞ?」
「はいはい、お休み~」
「まあ、よい」
本館二階、西のエレベーター前でみんなと分かれる。サキちゃんはエレベーターで先に上がって行く。
「あの~キョウ様、我々はどうすれば?」
「ん? もう寝てていいよ。……あ~急に移転したから準備してくるといいよ?」
「では、しばしお側を離れます」
「ご不便をおかけします」
笹・打木両人は堅いね。まったく不自由してないから。新任警護の二人が階段へ向かう。
「では、我らも」
「す、すぐ戻ります」
「うん、分かった」
気更来・羽衣、警護の二人も階段を駆け下りていく。
「私たちは、もう運んでしまいましたしね~」
「そうだね」
「今夜は、私たちも遊びに行っていいですか?」
「お、おい」
斎木さんが訊いてきて歩鳥さんが止めている。
「遊ぶっても何もないし、すぐ寝るよ?」
「構いません構いません」
「ま~、ならいいけど」
「やった!」
「……私まで巻き込むな」
「いいだろ。期待してるくせに」
「──ぐっ」
な~に、こそこそ話してんの?
「お待たせ」
「……たせ」
「別に準備するもの、なかったわ」
「う、うん。上がろうか?」
幼女たちが集まったので護衛と一緒にエレベーターで五階に上がる。
部屋に入って応接室からリビングへ。荷物もついでに運ぶ。買った衣類が主だけど。
「それじゃ。何する?」
「え~、ここ? 寝室でしようよ」
「もう行くの、寝室?」
タンポポちゃんが寝室で遊ぼうと勧めてくる。
「あの~」
「なに? 斎木さん」
斎木さんが手を挙げる。
「相楽のニュース・バラエティー、観ましょうよ。昼間の騒動の結果? を観たいです」
「あ~。でも、つまらないと思うよ」
「そんなこと、ありませんて。ね~ね~観ましょう」
なんでそんなに推すんだよ?
「……みんな、どうする?」
「まあ観てもいいけど」
「うん、観てもいい」
「どっちでもいいけど」
「それじゃ観てみるか……」
「それじゃ、ポチっとな」
「あっ」
言う間に斎木さんがリビングのテレビリモコンを捜しだしてスイッチを入れる。
『──本日は、特別に蒼湖五條銀行の金庫よりお送りしました。五條店長、ありがとうございました!──』
『いえいえ』
『──また少年Kの続報をお待ちください。それでは皆さん、さよ~なら~……』
「ああっ! 終わってる~!」
番組終了を知り斎木さんが落胆してる。
「そうだね、終わったね~」
良かった。……けど、また不吉なことをサガラが言ってる。『続報』って、これからも粘着されるの? ボク。
「心配するな。ネットにミラーされてる」
「──おお! そうだった」
歩鳥さんが斎木さんに要らない助け船をだしてる。
「じゃ、じゃあボクたち、寝室にいるから……」
「行こ行こ」
「いく……」
「なにしよっか~」
「あ~、飲み物とか洗濯もの、お願いしとこうかな~」
っと、遊ぶ前に片付けとかないと。
リビングに戻って今日着たボクサーパンツとタンクトップ、エプロンドレスとヒモビキニを準備してメイドコールを押す。
「……おぅ!」
「これはこれは……」
歩鳥さんと斎木さんが携帯の配信に夢中になってる。
「お呼びでしょうか?」
「ああ、この前の──」
応接室で待ってると年かさの──前、来てくれたメイドさんが現れる。
「──飲み物を六人分。ボクは温かい麦茶で。それと汚れものをお願いします」
「畏まりました」
また、捧げて受けとるメイドさん。
「昨日の、洗濯とかできてます?」
「昨日……でございますか? 着物類はリネンの収納に預かっております……」
「それでパジャマとか下着は?……」
「おいしくいただきました」
コラ~、お前もか!
「いや、あげてません。美味しくってど~言う意味?」
「まさか……下賜された……と思い……使って……しまい……ました。……で、では、これも……」
汚れ物に頬ずりするメイドさん。
「洗って返してください!」
「──うっ!」
って絶望した顔しないでよ?
「わ、分かったから……早めに返して、ね?」
パッと笑顔の花が咲く。でもその笑顔がトロけてる。やめて~。
「あの……いちおう、お名前聞かせてもらっていい?」
「わたくしですか? 垂水マサゴと申します」
「マサゴさんね、覚えました」
「ま、まあ~……ポッ」
いや、頬を赤らめられても……。〝覚える〟ってのは危険人物と記憶したんだからね?
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
41
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる