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3.喜多村本家に居候

115.本館の夜

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「ここで待ってるから、みんなる準備して集合ね」
「準備、ってもね~」
「……うん」
「分かった」

「わしは先に上がるぞ」
「ど~ぞど~ぞ」
「そなた、わしのあつかいが軽すぎるぞ?」
「はいはい、お休み~」
「まあ、よい」


 本館二階、西のエレベーター前でみんなと分かれる。サキちゃんはエレベーターで先に上がって行く。

「あの~キョウ様、我々はどうすれば?」
「ん? もう寝てていいよ。……あ~急に移転いてんしたから準備してくるといいよ?」
「では、しばしおそばはなれます」
「ご不便ふべんをおかけします」

 ささ打木うちき両人はかたいね。まったく不自由してないから。新任警護の二人が階段へ向かう。

「では、我らも」
「す、すぐ戻ります」
「うん、分かった」

 気更来きさらぎ羽衣はごろも、警護の二人も階段をけ下りていく。

「私たちは、もう運んでしまいましたしね~」
「そうだね」
「今夜は、私たちも遊びに行っていいですか?」
「お、おい」

 斎木さいきさんがいてきて歩鳥ほとりさんが止めている。

「遊ぶっても何もないし、すぐ寝るよ?」
かまいません構いません」
「ま~、ならいいけど」
「やった!」
「……私まで巻き込むな」
「いいだろ。期待してるくせに」
「──ぐっ」

 な~に、こそこそ話してんの?

「お待たせ」
「……たせ」
「別に準備するもの、なかったわ」
「う、うん。上がろうか?」

 幼女たちが集まったので護衛と一緒にエレベーターで五階に上がる。

 部屋に入って応接室からリビングへ。荷物もついでに運ぶ。買った衣類いるいが主だけど。

「それじゃ。何する?」
「え~、ここ? 寝室でしようよ」
「もう行くの、寝室?」

 タンポポちゃんが寝室で遊ぼうとすすめてくる。

「あの~」
「なに? 斎木さん」

 斎木さんが手をげる。

相楽さがらのニュース・バラエティー、ましょうよ。昼間の騒動そうどうの結果? をたいです」
「あ~。でも、つまらないと思うよ」
「そんなこと、ありませんて。ね~ね~観ましょう」

 なんでそんなにすんだよ?

「……みんな、どうする?」
「まあ観てもいいけど」
「うん、観てもいい」
「どっちでもいいけど」

「それじゃ観てみるか……」
「それじゃ、ポチっとな」
「あっ」

 言う間に斎木さんがリビングのテレビリモコンをさがしだしてスイッチを入れる。

『──本日は、特別に蒼湖おうみ五條ごじょう銀行の金庫よりお送りしました。五條店長、ありがとうございました!──』
『いえいえ』
『──また少年Kの続報ぞくほうをお待ちください。それでは皆さん、さよ~なら~……』

「ああっ! 終わってる~!」

 番組終了を知り斎木さんが落胆らくたんしてる。

「そうだね、終わったね~」

 良かった。……けど、また不吉ふきつなことをサガラが言ってる。『続報』って、これからも粘着ねんちゃくされるの? ボク。

「心配するな。ネットにミラーされてる」
「──おお! そうだった」

 歩鳥さんが斎木さんにらない助け船をだしてる。

「じゃ、じゃあボクたち、寝室にいるから……」
「行こ行こ」
「いく……」
「なにしよっか~」
「あ~、飲み物とか洗濯せんたくもの、おねがいしとこうかな~」

 っと、遊ぶ前に片付けとかないと。

 リビングに戻って今日着たボクサーパンツとタンクトップ、エプロンドレスとヒモビキニを準備してメイドコールを押す。

「……おぅ!」
「これはこれは……」

 歩鳥さんと斎木さんが携帯の配信に夢中になってる。

「お呼びでしょうか?」
「ああ、この前の──」

 応接室で待ってると年かさの──前、来てくれたメイドさんが現れる。

「──飲み物を六人分。ボクは温かい麦茶で。それとよごれものをお願いします」
かしこまりました」

 また、ささげて受けとるメイドさん。

「昨日の、洗濯せんたくとかできてます?」
「昨日……でございますか? 着物るいはリネンの収納しゅうのうあずかっております……」
「それでパジャマとか下着は?……」
「おいしくいただきました」

 コラ~、お前もか!

「いや、あげてません。美味おいしくってど~言う意味?」
「まさか……下賜かしされた……と思い……使って……しまい……ました。……で、では、これも……」

 汚れ物にほおずりするメイドさん。

あらって返してください!」
「──うっ!」

 って絶望ぜつぼうした顔しないでよ?

「わ、分かったから……早めに返して、ね?」

 パッと笑顔の花がく。でもその笑顔がトロけてる。やめて~。

「あの……いちおう、お名前聞かせてもらっていい?」
「わたくしですか? 垂水たるみマサゴと申します」
「マサゴさんね、おぼえました」
「ま、まあ~……ポッ」

 いや、頬を赤らめられても……。〝覚える〟ってのは危険人物と記憶きおくしたんだからね?
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