妄想日記8<<FLOWERS>>

YAMATO

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Chapter16(刮目編)

Chapter16-②【MORAL】

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<<FLOWERS>>Chapter16-②【MORAL】

「目をこすって、良く見てみろ。
鏡に映っている淫らな男はお前だ。
お前はずっとこれを求め、欲していたんだろ。
気分はどうだ?」
「こっ、これが…、俺っすか?
さっ、最高っす。」
伸ばした手で鼻を摘まむ。
鼻孔を塞がれた男が震える。
これは苦しいからではない。
快楽故に震えているのだ。
30を数えて、指を放す。
「はぁー、ふぅー、はぁー…。」
大きく息を吸い、それを吐き出した。 
それ以降も激しい呼吸が続く。
男はそれでも顔を突き出す。
再び鼻孔を塞ぎ、30を数える。
離すと同時に、男は顔を押し付け、ゴムの唇を吸った。
この程度で、狂乱する男を嘲笑う。
そして高価なオプションを引き出す作戦を打つ。

『ちゅー、ちゅー、ちゅー。』
マスク越しのキスを続ける。
ゴムの味しかしない。
だがこのゴムの味が脳内を刺激するのだ。
太古の昔に封印された脳の奥を抉じ開け、眠っていた性が活性化させる。
ラバーにはそんな魅力があった。
着る事により、どんなにふしだらなプレーも厭わない。
現代人としてのモラルの枷を外してくれた。
「動画撮ってくれ。」
渡されたスマホを男に向ける。
口の開き、真っ赤なゴムの舌を覗かせた。
画面に右手をフレームインさせる。
その意味を察した男は手に顔を寄せた。
鼻孔を塞ぐと、大袈裟に悶絶する。
狂い、よがる姿を記録に残したいのだろう。
彼の欲望は簡単に果てる事はなさそうだ。

「凄く格好いいです。
あなたを見ていると、狂いそうだ。」
唇を押し付け、淫らな音を大きく立てる。
「ああ、俺が俺でなくなった気分だ。
今なら何でも出来そうだ。」
「だったら、その勇姿を皆に見せに行きませんか?」
「えっ、今から?」
「ええ、今からです。
この時間、公園に行けば、性欲の捌け口を求める男達がうようよいます。」
「うようよか…。」
「そこへあなたが現れれば、どうなると思いますか?」
黙ったゴム男がマスクを脱ぐ。
風呂上がりの如く、濡れた髪が額に張り付いている。
「煙草吸わせてくれ。」
「おおっ…。
マスクの下から、そのイケメンが現れたら皆、狂喜乱舞、酒池肉林となるでしょう。
卑猥なラバーマンが実はイケメンだった。
正に映画の様です。
公園でヒーローとして振る舞いませんか?」
耳障りの良い言葉を次々に並べる。

「俺がヒーロー?
男達が狂喜乱舞、酒池肉林?」
カネチカが同じ単語を繰り返す。
外出は単価が高いオプションだ。
是が非でも、頷かせねばならない。
「外出は別料金となりますが、どうしますか?」
指で鼻孔を塞ぐ。
煙草も持つ手が震え、灰が落ちた。
みるみる顔が真っ赤に染まっていく。
そして口を大きく開くと同時に、顔を上下に振った。
ペニスシースの膨らみはカネチカの希望の表れだろう。
この男を手懐け、新たな顧客を得るのだ。
売り専ボーイなら顔が広い。
何度も何度も頷く男が金のガチョウに見えてきた。

(つづく)
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