妄想日記3<<RISING>>

YAMATO

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Chapter5(Pleasure&Pain編)

Chapter5-⑬【SCREAM】

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自動ドアに顔をくっつけ中を覗き込んでいる男がいた。
男はケンゴとタカユキの淫行を盗み見し、一心不乱にペニスを扱いている。
仁藤だった。
 
独りで飲み屋に入ったが、どうしても腹の虫が治まらない。
ペアを誘って来たのはコウタロウからだ。
ロッカー室で髭を剃っていると、鏡にコウタロウが映り込んだ。
仁藤に気付くと、入口で固まった。
顔を横に向け鏡に映すが、赤ら顔は退かない。
「お疲れさん。」
沈黙に耐え切れず、先に声を掛ける。
「あ、あの、こ、これ出るんですか?」
張り出されたばかりのポスターを指差す。
「ああ、オイルプロレスか。
出たいのは山々だが、タッグ戦だから相手がいないんだ。」
苦々しく答える。
「よ、良かったら、い、一緒に…、で、出てくれませんか?」
震える声が誘ってきた。
見開いた目をコウタロウに向ける。
こんなにまじまじと見たのは初めてだ。
俯き加減の顔は今にも発火しそうな程真っ赤だった。
地味な風貌な割に露出が好きな様だ。
今日もストッキング地のスパッツを穿き、ペニスを露出させている。
「いや、願ってもない申し出だ!
こちらこそ頼むよ。」
仁藤は瞳を輝かせ、コウタロウの手を握った。
 
そのコウタロウにまんまと為て遣られた。
自分の欲望を満たす為に、出しにされたのだ。
忌ま忌ましさが込み上げてくる。
そしてその忌まわしさがケンゴへ向かう。
室外からの微かなネオンがローションを照らす。
仰け反る裸体が神秘的に輝いて見えた。
『あの艶やかな筋肉も、プリッとしたケツも、淫らなアナルも全部俺の物だ!
クソッ!!』扱く手が速まる。
思い切り亀頭を握ると、白濁の液が自動ドアに飛んだ。
ボディスーツのジッパーを上げ、帰ろうかと足を踏み出す。
中から咆哮が聞こえた。
『これがあのタカユキさんの声?』
俄に信じ難い。
再び額をくっつけ中を覗き込む。
普段の冷静さは微塵もない。
顔を歪め、大きく開いた口から唾液を垂れ流している。
再び手が股間に行きかけたが、思い止まる。
『あの邪魔くさいケンゴさえ、いなくなればな。」
ドアを蹴飛ばすと、階段へ向かった。
 
翌日は早めに出勤して、プールの片付けから始める。
バケツでローションを掬い上げてはシャワーブースに流す。
いったい何往復しただろうか?
やっと底が露出してきた。
後はプールをシャワーまで引っ張り、ひっくり返す。
その後、モップで床を磨く。
とめどなく流れる汗も爽快に感じられる。
ケンゴとの旅行は眼前に迫っていた。
暇さえあればガイドブックを読んだ。
タイのガイドブックでサムイ島にページを割いている本は少ない。
それでもタカユキには充分だった。
写真を見ては南の島に想いを馳せる。
突然、自動ドアが開く。
「うっす!昨日は格好悪い所を見せちゃって…。」
はにかんだムサシが立っていた。
「あっ!き、昨日はお疲れ様でした。
ハルヒコさんの具合は大丈夫ですか?」
不意の来館者に狼狽える。
「まあ、なんとか。
帰る前に先輩の顔を見たくて、寄ったんすよ。」
ムサシは照れ隠しに、額からサングラスを下ろす。
フェイクレザーのタンクトップと尻のはみ出たジーンズを着ていた。
「DVD見たっす。
あんなに狂乱するなんて知らなかったすよ。」
ムサシが歩み寄り、唇を重ねる。
南の島の映像が崩れて行く。
「汗臭いから…。」
タカユキの抵抗はムサシの体内に飲み込まれた。
「久し振りだ。
このエロいガタイ!」
舌が全身を這いずり回る。
気持ちとは裏腹に身体が反応してしまう。
ムサシの手が背中から尻へ下りていく。
そしてピクッと動きが止まった。
 
 
(つづく)
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