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寿里~kotori ~

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お昼時

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都内屈指の進学校K成学園……

そこの中等部に在籍する加藤凛は現在、ある問題を抱えている。

思えば学業がパッとしないことだけを悩んでいた今までの自分が懐かしい。
あの頃に戻りたい。
普通に進学校に入ったら全てが月並みで人生こんなものだと諦念を抱きつつ、目立たず生活していた平穏な日々が恋しい。

凛だって凛なりの交遊関係を築いて学園生活を送っていた。
成績が普通または残念なモブといったおとなしい同級生とそれなりにつるんでいた。

だが、おとなしい友達は最近、凛と距離をおいている。
寂しいが動物の本能で危険と判断されたのは理解できる。

凛はこれまで親に特別反抗もしない、素直な良い子であった。
成績はともかく学園でも校則を守り、問題行動とも無縁である。
結論的に凛が危険なのでなく取り巻く周囲が事故物件になってしまった。

「凛!お昼を食べよう!お弁当、作ってきたよ!」

近衛十六夜が笑顔で教室に現れたが手首に包帯が巻かれ、血液が滲んでいる。

手作り弁当のついでにリストカットしたのかと凛は震え上がった。

でも、凛は優しい子なので弁当の前に近衛の怪我を心配した。

「あの……近衛先輩、ありがたいですけど……手首……血が凄いです。保健室……行きましょう」

「心配してくれた!!凛優しい!実はミートボールに自分の血液混ぜて凛に食べさせたくて!」

絶対にそんな闇弁当は食べたくない。

なので凛は自分の母親が作った弁当を近衛に差し出した。
今日は凛の好物の唐揚げが入っている。
こんな病んだ電波に譲りたくない。

でも、血液入りのイッツ・ア・キモ弁当を食べるよりましであった。

近衛は凛が「あーん」してくれるなら喜んで食べると笑っている。

こんな状況が続けば友達が離れるのは当然である。

生徒たちも同性同士の恋愛に差別偏見はあまり持っていない。
男子校なのだからそういう関係が生まれるのも必然と理解している。

ただ、平凡な生徒だった凛にある日突然、美しいが確実に狂っている上級生の恋人が付きまとい始めたら悪目立ちは当たり前だ。

貴重な唐揚げを近衛に譲って凛は卵焼きを食べていた。
そうしていると同じクラスの設楽が眉をひそめて凛に言った。

「加藤、恋愛の形はそれぞれだと思う。だけどな大切な人の手首を切らせてミートボールを要求するのはDVだぞ。お前がそんなアブノーマルな奴とは思わなかった」

いや、俺は1ミリも血液入りのミートボールなんて欲してない!
誤解だし、特級にアブノーマルな自分を棚に上げて俺を非難するな!

凛はそう抗議したかった。

これは凛の見解だが近衛十六夜のように明確に病的と判断できる奴が突飛な行動してもわりと冷静に受け入れられる。

問題は設楽のように一見がマトモに見える奴の狂気は想定外の恐さをはらんでいる。
こいつなら内緒で恋人の白珠のリコーダーくらいペロペロしてても納得する。
もっと、ヤバくてキモいこともしてそうで口に出せない。

考えると弁当が不味くなるので凛は考えるのをやめた。

しかし、設楽の隣で様子を見ていた白珠がアーモンドミルクを飲みながら平然と笑った。

「玄は幼稚園の頃に俺のピアニカをペロペロしてた。サービスで唾液を足しといてやった。園長先生のだけど!」

「それ、俺も分かった。唾液がオッサンの味でトイレで吐いたから」

なんて弁当を不味くする話題!

ピアニカ舐めた設楽が悪いが白珠がどうやって幼稚園の園長の唾液を注入したのか気になる。

何にせよ白珠のピアニカは使用不可能になったということだ。

食欲不振になりかけた凛に近衛が心配そうに声をかけてきた。

「凛……元気ないね。もしかして、僕が唐揚げ食べたからお腹空いてる?サンドイッチ食べる?僕がひとくちかじったけど」

「近衛先輩……いま、その告白きても遅い。血液ミートボールと園長の唾液ピアニカの後に言われても衝撃が少ない。サンドイッチで尻拭いたとかヤバいステージ上げないと」

凛のこの発言に近衛はハッとして、設楽と白珠は顔を見合わせた。

そして、白珠は震える声で凛に呟いた。

「キモ……お前……変態だな」

立派な変態と恋人な淫乱にキモいと断定された。

確かに尻サンドイッチはキモさ爆発である。

自分が踏んではならない1線を踏んだ感覚に凛は絶望した。

これ以上、コイツらと関われば成績でなくキモさのステージが上がってしまう。

願わくば近衛が尻サンドイッチを作ってきませんように。

そんなことを思っていると設楽が凛に手を差し出した。

真顔なのでイケメンだが怖い。

設楽はすぐに笑顔で爽やかに言い切った。

「加藤!なんだか、お前と凄く分かりあえる気がする!改めて仲良くしてくれ!」

ヤバい……ガチ変態の琴線に触れた。

設楽は普段は普通にいい奴なので親しくなれるなら嬉しいがそれは本性を知るまでの話だ。

幼稚園で既に好きな幼馴染み男子のピアニカをペロペロしてた同級生と今さら仲良くしたくない。

でも、考えると設楽や白珠は成績は優秀なので勉強を教えてもらえるかも。

とりあえず、凛は曖昧に微笑んだ。

近衛は淡い紫の瞳を細めてニコニコしている。

「よかった。凛に友達できて!僕は学年に友達いないから」

そりゃそうでしょうね!

手作り弁当に自分の血液混ぜる奴とは出来るだけ関わりたくない。

でも、関わった手前、凛には近衛を無視することもできない。

世の中でヤンデレに翻弄される人間はこうしてできあがるのかも知れない。

優しくて生真面目な凛は久世の脅し関係なく近衛を救ってあげたいと思い始めていた。

手首の出血でノートを汚されても平気になってきた時点で凛もアブノーマルのア位には到達している。

闇弁当とペロペロピアニカと尻サンドイッチで失念していたが凛は久世と斗真がいないことに凄く今さら気がついた。

設楽と白珠に訊くとふたりは笑っている。

「久世は常磐としけこんでる」

設楽の言葉に凛は絶句した。

常磐辰希(ときわ たつき)はメガネ男子で地味だが中等部ではトップクラスの秀才君である。

前から白珠が話していた久世のセフレとは常磐であった。
クールで冷静そうな常磐が久世の毒牙にかかるのだ。

白珠は久世と常磐は比較的に清い交際と笑っているがコイツが清いなんて言っても詐欺並みに信用できない。

「久世はガチで実の兄ちゃんが好きだったんだよ。でも、流石に兄弟だし、はけ口で常磐と関係して、ズルズルと続いてる。兄ちゃんに彼氏できたから結構、久世も兄離れしたよな。玄?」

「そうだな。久世も最近は普通に常磐とヤってる。旅人……ピアニカの代わりにストロー舐めていいか?」

常磐と久世が出来てるも衝撃だがコイツらどっかの暴露野郎バリに久世家のプライバシーを暴露している。

さっき、久世の兄ちゃんに彼氏できたって爽やかに暴露してたよな?

白珠からもらったアーモンドミルクのストローを舐めている設楽に凛は忠告した。

「あのさ、久世はいいとして、彼のお兄さんは俳優だろ?そういうのスキャンダルになるのでは?」

「平気じゃね?久世はスキャンダルになって兄貴が彼氏と破局しろって祈願してたし」

やっぱり、久世はガチクズでした。

そして、忘れてた斗真はどうした?

後で知ったが工藤斗真は本日、英国の某魔法学校から再三、フクロウが飛んできてウザいので母ちゃんとこれ以上、うちのベランダにフクロウを飛ばして迷惑掛けたら母ちゃんの職場の女上司に頼んで、絶対に爆発する薬品を魔法省に落として爆撃するぞと抗議してる最中とのことだ。

イッツ・ア・キモランチタイムが魔女っ子ネタで相殺されてしまった。

凛の楽しい学園生活はまだまだつづく!
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