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寿里~kotori ~

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十六夜の母

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K成学園は中高一貫の男子校である。

文武両道な天才少年の根城とされているがアウトサイダーだって存在する。

男子校なので体育会系のイフミなイベントもある。

例えばボート大会がそれであり、クソドブ臭い川にてボート漕ぎで競う。

脳筋肉マンなら楽しいだろうが実際は生徒の過半数がやりたくないと思っている。

太宰治が入水した時代なら川の水はギリ綺麗かもだが、現在の都内の川なら太宰治も絶対に入水は避けるはずだ。

三島由紀夫のハッチャケ自害も凄いが結構、知られてないのが有島武郎の心中である。

地味に首吊りだと思うが発見が遅くて屍が熟成されてたと多々良は言った。

「病死だと屍ってゲロ不味いんだよ!新鮮さを保ってベストはリストカット!でも、リスカする奴って、なかなか死なねー」

たしかにリスカ常習犯は器用でリスカの傍らその画像をSNSにアップして、ある意味、迷惑型リア充である。

凛の家の菩提寺の住職が徳の高い御仁で、住職しながら心の病をしてる若者の相談も受け入れている。

その徳の高い住職は徳がスカイツリーなのか心の病の若者に好かれてしまう。

結果、夜中に枕元のスマホが振動したので見たら、メンヘラ呪物が「リスカナウ」と画像添付してきて惨事となり、住職がメンヘラとなってしまった。

このように愉快犯な自殺野郎は殺戮魔より面倒で厄介で恐ろしい。

非難すると「私の悩みを分かってくれない!ゴミが!」とか逆ギレもされる。

住職を病ませる時点でメンヘラを越えて犯罪者だと思う。

メンヘラは免罪符じゃねーよ、と言ってあげたいがこっちが悪者にされるので泣き寝入りとなるのだ。

何でこんな不謹慎ネタかと言うと凛の母方だが父方だかの親戚が鬼籍に入った際に例の徳の高い住職様がメンヘラによってメンヘラになり、大変困ったからである。

住職は責任感で読経してくれたがエスパーでない凛でも住職の心の声が「殺す」だと分かった。

頭ではなく心で理解するとはよく言ったものだと思った次第である。

そんなゴミのようなメンヘラ呪物と比べたら近衛十六夜はとても品行方正な自殺志願者であった。

彼は普通に学園生活を満喫して、迷惑と言えば凛の前で睡眠薬と偽ったサプリメントをラムネ感覚で噛み砕くだけだ。

あと、久世が説明してくれたが近衛はリスカや首吊りでは死ねない。

投身自殺もせいぜい山手線を遅延させる程度の効果しかないので安全とのことだ。

「近衛先輩、バケモンやんけ!」

「そうだよ。彼は厄介な化け物だから困る。普通の方法だと死ねない。多分、スカイツリーから飛び降りても生きてるから迷惑」

「それ、迷惑で済ます久世も凄いな」

最近は親しく会話するようになった凛と久世だが内容が怖い。

久世が小出しに教えてくれる近衛十六夜の情報によると彼の母親は絶世と評価できる美人だったが面倒な人だったようである。

久世の母親の家庭教師として働いていたが久世母の父に一方的に恋して、勝手に妊娠して堕胎して大迷惑かけていた。

なので困り果てた久世の祖父にあたる人が側室(お殿様か!?)にして久世の祖母もあまりにも清々しい側室のメンヘラに敬意持って関係を認めた。

その絶世の美人で絶世のメンヘラが最後に産んだ子が近衛十六夜であった。

つまり、久世の母方祖父の側室の息子なので久世は死ぬほど嫌なようだが血縁者となる。

家庭教師が教え子の親に惚れる時点で昼ドラ的な修羅場になりそうなものだが久世祖母は相当に度量が大きく寛大で、なにより、旦那を深く愛してたので丸くおさめた。

久世の両親や兄姉もこの大迷惑な側室を嫌ってない。

本音では久世も特になんとも思ってないのだ。

「別に悪い人じゃない。綺麗で優しくて、聡明で強くて、料理が上手だった」

「そうなんだ。でも、その人はなんで近衛先輩を手放したの?」

特に側室に悪意と敵意がない久世の家族なら普通に生活しても大丈夫そうだと凛は思った。

でも、久世は息を吐くと面倒そうに告げてくれた。

「俺の母方祖母の子供は母さんだけだ。でも、その側室は俺の把握してる限り、娘が2人、息子が十六夜含めて3人いる。んで、十六夜を出産後に死んだ」

「えっ?じゃあ……近衛先輩のお母さんは……」

絶句する凛に久世は頷いた。

「そういうこと。俺の祖父母が育てるつもりだった。でも、十六夜を他の兄弟と一緒にするのはお互いに気まずいだろと周囲の大人が言ってきたんだよ。だから、俺の両親が十六夜を近衛家に預けた」

予想外に近衛十六夜の出生秘話が重い。

恐らく母親は出産で亡くなった。

遺された近衛の同母兄弟が悲しむのも納得する。

そして、仕方なくでも側室にした久世の祖父だって総計5名くらい子供を作ってたなら側室を疎んではいない。

状況を考えると近衛十六夜の身の上を案じた大人が久世の祖父母ならびに兄弟と引き離すことを進言するのも理解できた。

やはり、十六夜に罪はなくとも周囲は複雑な気分になる。

凛は近衛が自殺を夢見る心境が何となく分かってきた。

「安っぽい言葉だけど可哀想だな。自分のせいで母親が死んだら」

優しい凛が涙ぐむと久世は「ハァ?」って顔になった。

「お前、なに勘違いしてんだよ?十六夜の母親は出産で死んでない。元気に子供と散歩してて断崖から飛び降りて死んだ」

Whats!?

「えっ?それ、つまり……自殺されたってこと?」

子供と公園に行くノリで投身自殺か?

断崖って船越さんのテリトリーだろ!?

もう、凛の頭の理解力では理解不能だ。

テストより分からない。

そんな凛の戸惑いを察してる久世が平然と言ってのけた。

「その人は飛び降りるのが趣味でマンションでもビルでも船越のテリトリーでもお構い無しなんだよ。公園行くノリで頭から落ちて、下は海で無傷だったけど海草が足に巻きついて溺死した」

死因は産後のなんちゃらでも、投身自殺でもなく、遊び半分に崖からダイブして溺死でしたよ。

ヴァカとか変人とかメンヘラとか、そんな、ちゃちなもんじゃねーよ。

近衛十六夜の母さん、大迷惑呪物やんけ!

住職が読経しながら空手チョップするレベル!!

「なぁ……近衛先輩の自殺志願って……遊び?」

もう、もう、もう、牛かと言うほど凛は何も信用できない。

そんな、大迷惑な母親の子供の遊びを阻止するために俺の平穏は奪われたのか!?

だったら、今すぐ理科室から解剖用のメスか家庭科室の包丁持って近衛を刺し殺す。

少年院に行くことになるが許せ父母!

これが世界のためだ。

加藤凛……中2にして本気の殺意を覚える。

だが、久世はクスクス笑いながら凛に語った。

「悪魔に魂売ったと思えよ。多々良は人間の屍しか食べない。つまり、十六夜は範疇外。美人のメンヘラとラブラブすれば成績上がるんだぞ?ラノベを夢見る童貞ならゲロ吐くほど喜ぶ」

「俺はいま、血反吐が出そうだ」

久世の話では近衛十六夜の母は淡い紫の瞳の美人で近衛のまとう暗い陰鬱さの明度を上げたら瓜二つとのことだ。

どっちにしろ爆弾である。

凛は近衛十六夜を親元から離した久世の知り合いの大人にも殺意がわいたが十六夜の顔はたしかに美しくて嫌いではなく、殺すのは惜しいと強引に自分を納得させた。

鬼畜とメンヘラに魂売れば、成績あがる。

久世の言葉にまんまと釣られたのもあるが久世は凛程度なら言霊で従わせることも可能なのでチョロい。

end





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