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寿里~kotori ~

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斗真の箱

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加藤凛の長所のひとつは客観的に自己分析できることであった。

それは、ときに自分の限界を悟って、諦めモードになるケースもあるが、凛はわりと限界までは冷静に行動するスタンスの子供である。

つまり、ICカードの残高が5000円なら5000円の範囲で計画的に買い物するタイプだ。

自動チャージとかOnedayで5000円を使いきるバカはしない。

この性格はクレカの永久決済とかを避けられる自分にも家族にも優しい長所ともっと、褒められてもいい。

そして、これは、自覚なしだが凛は相当に適応力が高い。

幼稚園でも小学校でも先生という単純な生き物には飼育しやすい逸材だ。

反抗しない、素直、勉強できる、運動神経もそれなり、顔立ちは結構イケテる。顔立ちの良し悪しは凛としては無自覚なのだが。

ペットショップで店員さんに飼育しやすいワンコと太鼓判を押されるタイプなのである。

犬の飼育初心者がビーグル犬のオスを飼うと苦労する。
喧しい、躾が難しい、大食い、トイレを覚えない、等のバカのエクゾティアが満載の可能性がある。

だが、凛が例えば犬ならラブラドールである。

彼は大柄ではないし、見かけは柴犬みたいな感じだが盲導犬できるレベルに賢く、優しく、周りに配慮も可能。

つまり、K成学園では伸び悩む凛だが、彼だって難関突破した優秀な少年なのである。

だから、周りを頭脳明晰で容姿端麗な変態に囲まれ、人間離れしてる美人のメンヘラの恋人にされても短時間で適応可能になった。

こういう、悲惨な現実でも楽しめる能力は意外と強キャラの特徴とも言えなくもない。

話は長くなったが凛も近衛十六夜や薬指メンバーの奇行に慣れてきたのである。

でも、そこに染まらないのが凛の最大の長所であった。

工藤斗真が両手に段ボール箱を持って登校してきた。

誰もなにも言わない。

賢明な生徒たちと教師は絶対に関わらん、と決めている。

斗真が凛のクラスまで段ボール箱を運んできた時には久世がキッパリと言った。

「不審物の持ち込みはやめろ」

久世にバッサリと拒絶させた斗真だがニコニコしている。

彼は天真爛漫なのだが不思議君であった。

凛だって箱の中身が良くて拾った子猫、悪くて爆弾くらいは分かるようになってきた。

「これさ、前にフクロウの件で母ちゃんと魔法省に抗議したら大臣の友達が詫びだって贈ってきた!」

不思議君の言葉なので凛は深く考えるのをやめた。

恐らく、スーパーで惣菜に髪の毛が混入してるのをクレームしたら謝罪の品が届いた感覚だろと結論づけた。

でも、段ボール箱を見つめる久世は明らか嫌がっている。

彼には中身がろくなものでないとハッキリ見えてるようだ。

様子を見ていた設楽と白珠が興味津々な顔で近づいてきた。

久世は白珠に「絶対に迂闊にあけるなよ」と釘を刺している。

そして、斗真には「こんなの燃えるゴミに出せよ」と説教している。

しかし、斗真は無邪気に可燃に出したから資源に出せと町会に注意されたと笑っている。

「なんかさ、これが贈られてきて父ちゃんが家を調べたら、家中から100個くらい盗聴器出てきた!」

暢気な斗真に久世が呆れた顔をして突っ込んでいる。

「どこのバカか知らないが100個仕掛けたら、素人でも5個は発見できるだろ!っか、前から思ってたけど斗真の父ちゃん、堅気の通訳者じゃねーだろ!?前にも爆弾処理してたって作文に書いてたろ!スパイマスターかよ!?」

「知らない!でも、母ちゃんとは恋愛結婚!!」

「そこはどうでもいーよ!この段ボールなんとかしろ!」

普段はあまり動じない久世がめっちゃ、斗真の段ボール箱を警戒している。

やはり、爆弾か、あけたら死ぬ呪文かけてくるモンスターでも入ってるのかと凛は少し怖くなった。

「久世……危険物なら通報したほうが……」

1番、マトモな意見を凛は口に出した。

でも、白珠はそれだとつまらないと文句を言っている。

「加藤は真面目すぎ!こういう、段ボールネタってマンガだと死んだ認定のキャラが元気に出てくるサプライズとかありだろ?」

それはそれでイヤだ!!

凛も常々疑問だったがマンガの死んだキャラが蘇生のオチって周囲相当に困るだろ?

死亡届けとかって取り消すのか?

保険会社から絶対に怪しまれる。

あと、葬式費用って数百万単位だし、生き返られてもソイツに「カネを返せ」とは言えないし迷惑だと思っていた。

あと、現実にここは平和なK成学園であり、軍隊とかではない。

悲しい最期を遂げた犠牲者もいない。

なにが生き返ってきてもどのみち、迷惑だ。

凛がそう説明すると白珠も「たしかに……今さら成績下がって自殺した奴とか出てきてもウザいな」とクズかつホラーなことを呟いていた。

一方の設楽は久世になんか必死に頼んでいる。

「これが爆弾なら久世、高等部校舎の2階に投げてくれ。そこに旅人に色目を使う破廉恥なクソがいる。あの、真ん中の教室だ。殺っちゃえニッサン!」

白珠に構えば設楽に無条件で消されるとK成学生なら小学校の算数より簡単に分かる。

設楽は白珠が女の子と遊んでも女の子には危害を加えない。

そこは紳士的だが浮気してる白珠には危害を少しは加えた方がいいと思う。

設楽の言葉では高等部の破廉恥は100m先から白珠を見てたので処刑案件らしい。

それってマジで白珠を見てたか疑わしい。

単に高等部の先輩は100m先の自販機でも見てた可能性もある。

とにかく設楽の勝手な嫉妬と妄想で爆弾を高等部に投げるのはダメだ。

この辺で凛は久世に提案した。

「持ってきたの斗真だし、斗真があけたらいいと思うけど」

「俺も本音はそう思う。斗真、爆弾とか変な細工があったらすぐに処理するからあけろ」

久世に促されて斗真はなんだか嬉しそうに段ボール箱を開封した。

凛は思わず身構えたが、爆音も死の呪文もなかった。

中身は普通にカボチャのお菓子の詰め合わせと瓶詰めと手紙であった。

手紙には凛の英語力でも分かるほど必死に謝罪文が記されている。

「暴露しないでください」

この1文が相当に相手の切迫感を肌で感じさせた。

これは、どういう経緯で届いたのか?

早くもカボチャのお菓子に手を伸ばしている白珠を見ながら久世が斗真に問いかけた。

すると、斗真から意味不明な回答が返っていた。

「ある、メガネの魔法使いの男性に対してフクロウをこれ以上、飛ばしてきたら、オメーが魔法学校時代に秒で別れた彼女の口つけたグラスをペロペロしてたの嫁と親友にバラすぞ!嫁にすっぱぬかれて、殺されたくないならフクロウ飛ばすな!って脅した」

この贈答品は口止め料らしい。

メガネの魔法使いの男性になにがあったか知らないが斗真は暴露野郎の弟子か何かか?

色々と分からないが久世が「毒はない」と言ってくれたので凛は薬指メンバーとカボチャのお菓子を食べた。

こういう、適応力が凛の良いところである。

end







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