1番星

寿里~kotori ~

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お土産

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父ちゃんの仕事を手伝うために学校を休んでた斗真が帰ってきた。

彼の家は共働きで忙しく、孝行息子の斗真は両親の仕事を助けている。

「おーい!お土産あるから来いよ!」

クラスに遊びに来た斗真に呼ばれて凛は久世たちの近くに向かったが空気がおかしい。

斗真は欠席してた分の授業のノートや課題を秒で理解して解いている。

それは、特に奇妙でもない。

学年でも優秀な斗真なら数日欠席してても平気なのだ。

問題は渡されたお土産である。

「これ……どこ国の土産だよ?」

白珠が土産物を手に小首を傾げていた。

小首で済ます白珠はやはり大物である。

斗真が凛たちに配った土産は拳銃であった。

玩具とは思えぬ本気な代物である。

久世は落ち着いて拳銃を調べて呟いた。

「空砲だな。それなら良い」

いや、ダメダメダメ!!

ここは、アメリカでなく日本であり、凛たちは学生である。

即時退学とかにされても文句なんて言えないお土産なのに設楽も白珠もスルーしている。

秒で欠席分の授業を理解した斗真は久世の大切な親友、常磐辰希には笑顔でクッキー缶を手渡している。

「ごめんな!常磐だけ違うので!ピスタチオ味だよ!」

「ありがとう。後でみんなで食べようか」

おい、おい、おい、常磐、食べようか、じゃねーよ!なに、平和路線な対応してんだよ?

他の奴ら明らかにガチモンの拳銃を貰ってたぞ!?

ここ、マフィアのアジトかよ!?

凛はサーバーダウンするかと思うくらい、突っ込みが追い付かず、倒れるかと思った。

普通に進学校に通ってて、友達からお土産に拳銃もらう人生ってなんだよ?

俺だってピスタチオクッキーが良かったよ!!

なんとか心の突っ込みを終えた凛は最後の希望を込めて斗真に質問した。

「凄くクオリティ高い玩具だな!?どこの国のやつ?」

たのむ、嘘でも玩具と言ってくれ!

斗真・エーリク・工藤!!

人生で1番くらいの熱量で祈ったが凛の希望はついえた。

「どこ産かは言えないけど、本物だよ!凄いだろ!!」

おわた!!

凛の脳裏に退学、逮捕、少年院のワードが浮かんだ。

最近になって少し成績があがってきて両親も喜んで「凛はやればできる子ね」と言ってくれたのに「凛は殺ればできる子ね」になってしまう。

多少は期待が重いが優しい父と母を泣かせたくない。

凛はひとりっ子なので将来は堅気の安定した職に就いて、結婚とかはともかく、両親を安心させて安らかに天寿をまっとうさせる責務がある。

もし、両親が老いて、病気や痴呆などで介護が必要なら凛が支えるのだ。

それが息子にかせられた責務であり、俺は俺の責務を全うする!!

だから、ここで拳銃を貰ったら人生終了だ。

凛だけでなく両親の人生も終わる。

加藤凛は自分が道を誤れば両親まで奈落だと思って斗真に拳銃を返した。

「言うまでないが受け取れない。俺の失敗は俺の失敗では済まないんだ」

斗真は優しくて、朗らかで、友達になれて嬉しかったが、拳銃を旅行土産感覚で渡してくるなら話は別だ。

凛が拳銃を突き返すと久世がポツリと言った。

「加藤……拳銃は偽物に決まってるだろ」

つまり、最初から凛を試す小芝居であった。

この時、凛は拳銃に実弾込めて撃ちたくなった。

「あのさ、これ、集団イジメか?俺をからかって楽しいか?」

流石に本気で怒る凛に斗真は素直に謝った。

「ごめん!勘違いさせて!実はフェイクで1人だけ本物を渡してる」

はなから凛を嵌めたわけでなく怒りは収まったが、聞き捨てならない。

「こっちこそキレて悪いと言いたいけど犯罪なのに変わりはないから」

考えなくても本物は設楽が持ってると察する。

設楽は白珠の護衛の為に射撃を習いたいと常々言ってるからだ。

射撃なくても設楽は武術は天才的だと聞いた。

白珠は痴情のもつれで女子ばかりか男子にも恨みを買う。

彼女寝取られ男子が校門でバールのようなものを構えて襲撃に来たこともある。

賢い白珠はK成の関係者の女は女性教師以外は手を出さない。

成人した女なら手を出しても自分は罰せられないと知ってるからだ。

なので、学園側も白珠在学中は女性教師は配属させない。

学食も購買もアラフィフマダムのみを展開している。

女が大好きな白珠も自分の親より年上だと範疇外であった。

こんな手間をかけるより白珠を退学させた方が早いと思うが彼は成績優秀で美しく、男性教師にも人気があるので迂闊に処分できない。

そもそも、若干14歳の白珠を相手に本気になる女性教師なんてK成にはいらない。

白珠は浮気するが自分で誘わない。

相手が勝手に惚れるようである。

そこが、厄介なところだ。

話がそれだが設楽が拳銃を所持してても大問題だ。

いくら、恋人まもるでも中学生がガチ拳銃は法的にアウト。

凛は自分もそうだが設楽が少年院パターンも絶対にイヤだ!!

ここは、友達として少年院に足を踏み入れる寸前の設楽をとめなくては!

「設楽!少年院に行ったら、白珠だって悲しむ!!」

設楽は凛が1番最初に親しくなった薬指メンバーなので、彼を救いたい。

だが、設楽はキョトンとしている。

「加藤、この拳銃は水鉄砲だぞ?」

ダブルで騙された!!

いや、これは凛の自爆である。

結局、斗真がだれに本物を渡したかは謎であった。

恐らく、軽い冗談で全員が玩具だと凛は結論付けて常磐がくれたピスタチオクッキーを頬張った。

久世も笑顔だし、斗真のゲルマンジョークだろう。

そう考えると凛は気が楽になり、斗真のお土産を鞄に入れた。

そして、放課後のことだ。

近衛十六夜と下校中に凛は斗真のふざけた茶番を語った。

「本当に騙された。流石に拳銃はないですね!」

笑う凛に近衛は真顔で言った。

「それ、全員が本物を渡された。でも、法律では裁けないよ」

「えっ?本物?」

「凛、考えて。常磐君だけは拳銃を貰ってない。彼では扱えないから。それに見えてない」

「見えてない……?」

戸惑う凛に近衛は息を吐いた。

「その拳銃は一定の特殊な力がないと視界に入らない。工藤君は魔法で常磐君に幻を見せてた。拳銃の製造元は久世音の父親だよ。あの人は自ら武器を作れる」

本日の騙しの3回目かと凛は思った。

久世の父親は世界的なピアニストだ。

拳銃つくる仕事なんてするわけがない。

それに仮に不法で武器を製造してても息子やその友達に渡す意味が理解できない。

もう、からかいは真っ平と凛はうんざりしたが近衛は畳み掛けるように言った。

「凛……その拳銃は普通は見えない。そういう細工だ。考えて使いなよ」

「考えなくても使わないです!」

凛がプイッと顔を背けると近衛は微笑した。

そのまま、駅まで歩いていると凛はなにか気分がゾワリとしておぞけだった。

貧血かと思ったが違う、気持ち悪い、悪意を感じる。

あるいは殺意か?

凛が震えると近衛は拳銃を出せと早口で告げた。

「いまから、1分後にナイフ持った男が構内で暴れる。近くに子供がいる。僕はその子をまもるから凛は拳銃を撃って」

言うが早いが近衛は駅で母親から離れている子供に接近した。

その瞬間に本当にバタフライナイフを手にした男が子供に斬りかかってきた。

「近衛先輩!!」

凛は無我夢中で拳銃を発砲した。

初めて撃ったのに自然と手に馴染んでいる。

気がつくと男は倒れて、泡を噴いていた。

死んでない。

凛は腰が抜けた。

警察と駅員が来て、男を取り押さえ、凛がぼんやりしてるので近衛が素早く連れて去った。

駅のホームに危険人物確保の為に運休のアナウンスが流れているが凛はまだ、衝撃から立ち直れない。

人を撃ったのだ。

こんなことってあるか?

近衛は何で少し先の出来事が分かるのか。

ひとつ、たしかなのは子供は助かった。

そして、近衛を守ることもできた。

「凛……大丈夫?」

「大丈夫な分けないです」

「でも、凛は射撃の素質があるよ。ねぇ、音?」

近衛が笑うので凛が顔をあげると久世が目の前に立っていた。

「加藤、上出来だ。引き続き、十六夜が操るバカをとめてくれ」

「はっ?近衛先輩は子供を守っただろ?」

「結果的にはそうだ。でも、暴漢は十六夜の力にあてられて正気をなくした。彼は人の潜在意識にある暴力性や殺意を刺激する。制御できないから困ってた」

久世はそれだけ言うと近衛に呟いた。

「死ぬことより、力をコントロールすることを考えろ」

幻のように久世の姿が消えた。

近衛は黙って俯いている。

久世の言葉は彼には深刻なものらしい。

凛が声を掛けようと思ったら設楽と白珠が近寄ってきた。

彼らは徒歩圏内なので駅に入る必要はない。

恐らく、久世の指示で動いていたのだ。

「電車、しばらく停まってるから俺と玄の家に来いよ」

白珠が笑顔で言ったので凛は素直に頷いた。

近衛も連れて駅から出ると設楽が凛に何やら袋を近づけた。

「これ、斗真に貰った。加藤に渡し忘れたって」

「ピーナッツ?これもお土産?」

「みたいだ。お世話になった家の女の子がくれたらしい。父親がスパリゾート経営者で母親がコロシアムで働いて、女の子は斗真いわく魔女だって。心を読まれたらしい」

斗真の交遊関係は国際的だと凛は改めて驚いた。


ピーナッツは美味しかった。

近衛にも渡すと彼は微笑んだ。

凛には近衛が意図せず面倒事を引き起こすなら可哀想だと思った。

久世は自分の力ではどうしようもない事態もあると分からない。

彼には大抵のことが出きるから。

それは時に残酷な言葉を生むのだ。

出来ない奴の苦悩が理解できない。

でも、それも久世を苦しめてるかも知れない。

「近衛先輩……お腹空きましたね」

凛が笑うと近衛は笑みを浮かべて頷いた。

2人で笑っていると白珠が振り返った。

「途中でメンチカツ買って、食べてくか?」

みんなで賛成して途中の商店街でメンチカツを買ってかじりつつ白珠&設楽の家に向かった。

夕方で閉店らしく若い女性が和菓子屋の暖簾をしまっている。

「佳代さん!ただいま!」

「おかえりなさい!たびちゃん!クロちゃん!」

砕けた様子の女性店員を白珠が紹介した。

「この人、うちの家の神!フルタイムで働いてる」

家の神をフルタイムで働かす白珠の和菓子屋!!

凛が挨拶すると佳代さんはニッコリした。

「今日の夕飯は特製和風グリーンカレーと洋風麻婆豆腐です。おあがりよ」

神様に炊事もさせてる以前に味が想定できない夕飯を用意されてる。

色々と謎で疲れすぎて凛は考えるのをやめて白珠&設楽の家に近衛と入っていった。


end



















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