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寿里~kotori ~

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十六夜とデート

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近衛十六夜が凛にデートを要求してきた。

デートしないとリストカットの後に山手線を運休にすると脅してきた。

「そんな、迷惑行為しなくてもデートしますから!」

十六夜はリスカしても電車に飛び込んでも死なない身体とのことなので心配ないが、凛がデートを拒めば鉄道関係者と利用者が大変なことになる。

そして、山手線が運休すればもれなく京浜東北線に影響が出て、万単位の人が予定を狂わされる。

近衛十六夜と薬指メンバーなどに多少は人生を狂わされかけてる凛だが罪なき人々が素敵な休日をエンジョイできるようデートを受け入れた。

前に映画は観たので他に行きたいとこでもあるのかと凛は十六夜に訊いてみた。

ディズニーランドとかだと高いよなと思っていたら十六夜のデートスポットが意外な場所であった。

「あらかわ遊園に行きたい!」

あらかわ遊園とは荒川区と足立区の区界付近に昔からある小規模な遊園地である。

凛も幼い頃に家族と遊びに行った。

すごくスピード感に乏しいジェットコースターが有名だった。

幼い凛でも「これ、トロッコだろ?」と疑うくらいに遅い。

あれで泣いてる子供を見たことがない。

あれが怖かったら、富士急ハイランドの絶叫マシンに乗ったらショック死確定である。

ジェットコースターよりレトロなペダルを漕いで地上から数メートルのレールを進む遊具の方が怖かった。

高いから恐いでなく乗り物がレトロすぎてぶっ壊れて落下しそうで恐いのだ。

あとは、観覧車があり、動物広場があり、ポニーに乗れたりもする。

幼児なら十分に楽しいが中学生が遊んで楽しいかは微妙である。

最近になってリニューアルしたそうだ。

なので親子連れが結構来ているらしい。

入園料は安いし、凛の自宅からもわりと近いのでデート代は安価ですむ。

だが!問題はそこじゃない。

客層が限りなく親子連れな小さな遊園地に中学生男子2名がキャッキャウフフしてたらメチャクチャ目立つ!!

まだ、ディズニーランドとかなら友達同士で遊んでるになるが、あらかわ遊園ではそれが許されない。

子供連れたママたちの視線を集めるのは必至であった。

更に凛なら顔立ちも平凡で目立たないが近衛十六夜は容姿が無駄に美しいので絶対に悪目立ち。

淡い紫の瞳の美少年と手を繋いでいたらママたちの視線を釘付けにすることは容易に想像できる。

そして、十六夜は凛より上背があるので女子にも見えない。

これが、設楽と白珠だったらイケメンと美少女の中学生カップルとギリ偽れるが凛と十六夜では豆柴みたいな男子を愛玩する美少年になり、男子カップル認定は避けられない。

この期におよんでと思うが、なまじ近場なので知り合いに目撃されるリスクが凛にはある。

観覧車とか仲良く乗ったの見られた時点で試合終了であった。

なので凛としては誠に心苦しいが場所の変更をお願いしたい。

「あの……もっと、遠出しません?ディズニーランドとか?」

入場料の高さより、デートだとバレるリスクの高さを回避する道を凛は選んだ。

どっかのバスケ顧問みたいな先生も言ってたよね?

諦めたら、そこで試合終了だと!

K成学園内なら男子カップルがいてもさほど注目されないが世間は広いのだ。

もしも、知り合いが見ていて両親が凛がK成で彼氏できた情報を知ったら、どうなるか分からない。

凛の成績があがって両親は大変お喜びである。

凛に美少年の彼ピッピができたと判明しても「嬉ピッピ!!」とアドレナリンの関係で叫ぶかもだが、凛の予想では「嬉ピッピ」より息子が同性愛に目覚めて「悲ピッピ!!」と泣かれる可能性の方が高い。

無責任なようだが凛の大切さの基準では申し訳ないが十六夜<両親になる。

命がけで愛してもらってるとこ悪いが凛は設楽と白珠のように十六夜と将来まで誓うつもりはない。

罪悪感を感じるが凛だって都合がある。

ボーイズラブの呼吸は凛には重い。

なんてこと近衛十六夜には死んでも言えないがデート場所は変更願いたい。

だが、十六夜はまるで凛の心を見透かしたように微笑んだ。

「あらかわ遊園にしないとリスカして東海道線も遅延させるよ」

おいおいおい、鉄道被害が更に甚大じゃねーか!?

宇都宮線と高崎線も人質ならぬ鉄質にとられた。

このまま拒めば常磐線も被害に遭うと凛は諦めた。

「分かりました。あらかわ遊園でいいです」

「やった!リストカットで凛をゲット!」

ゲットじゃねーよ!!

あらかわ遊園の近くの隅田川に沈めるぞ!!

んで、釣りしてるオッサンに釣られちまえ!

十六夜の病みっプリを目の当たりにして凛は久世が彼を迷惑と言っていた真の意味がわかった。

十六夜がこの性格では側室だった母親も相当な爆弾であろう。

とにかく、こうして凛は十六夜とあらかわ遊園デートをする羽目に陥った。

デート当日に凛は出来るだけ目立たないようにユニクロのTシャツとデニムパンツを選んだ。

あと、顔を隠せるようにフードついた黒いパーカーも羽織った。

どこにでもいる中坊である。

親には友達と遊びに行くと適当に誤魔化した。

「夕飯には帰るから」

凛がそう言って玄関でスニーカーを履いていると祖父が出てきた。

凛の家は祖父母も暮らしている。

祖母は趣味のコーラスサークルに出掛けている。

凛が「行ってきます」と口を開きかけたら祖父が小声で耳打ちした。

「せっかくのデートならラブホでヤっちゃえニッサン」

驚愕する凛を残して祖父はリビングに入ってしまった。

見抜かれてる?

お祖父ちゃん、俺が十六夜さんと付き合ってるの知ってるのか!?

「いや、いまのは高齢者の戯れ言!」

凛はそう言い聞かせて自宅を出ていった。

待ち合わせ場所は十六夜の希望でトラムの「遊園前駅」に決まった。

久々にあらかわ遊園前に降り立った凛だが遊園の入り口付近を見た瞬間に帰りたくなった。

近衛十六夜と思われる女装男子がブンブンと手をふって叫んでいる。

「おーい!凛!こっち、分かる!?」

分かりたくねー!!

十六夜は俗に言うゴシックロリータファッションであった。

黒いドレスがフリフリで髪もウィッグをつけている。

そのうえにメイクバッチリであった。

十六夜の病的な美貌もあり抜群に似合うが周りの親御さんガン見してる。

ついでに近くの交番のお巡りさんもガン見してる。

死ぬほど近くに行って合流したくないと凛は思ったが鉄道被害を防ぐために意を決して歩を進めた。

「お待たせしました。十六夜さん。なんて申し上げたら良いのか思考が追い付きませんが凄い服装ですね」

「似合うかな!?凛も黒いパーカーだしお揃いだね!!」

黒しか共通点ねーけどな!

とりあえず、立ち話してると注目されるので歩きだした。

あらかわ遊園は非常に様変わりしていた。

薔薇も綺麗でライトアップ用の装置もある。

案外、カップルがいても違和感ない環境だと思ったところで凛はハッと気がついた。

もしや、十六夜は凛の気持ちを察していて女装してくれたのか?

実際にゴスロリだが十六夜は見事に着こなして美少女に見える。

恐らく、周りにはゴスロリ美少女と豆柴男子が歩いてるように映るだろう。

直に言うとゴスロリ美少女が愛犬の豆柴を散歩させてる構図だ。

これで園内に入ってもパパママ&チルドレン&スタッフの視線釘付けは同じだが見えるものが変わってくる。

恐らくだが、十六夜には凛の体裁を繕いたい態度がバレバレなのだ。

凛、なんか凄く自分が小物に思えてきた。

小物だし、小柄だが、けつの穴が狭すぎである。

結局、家族とか言い訳するが自分の立場を心配していた。

十六夜に完璧、気を遣わせたのである。

「十六夜さん……ごめん」

凛が謝ると十六夜はキョトンとしていた。

「どうしたの?謝罪の意味は?」

「いや、俺が人の目を気にして近場はイヤだとか思ってるのバレたと思いまして」

いまも十二分に人の目を引いてるが凛は凄く自己嫌悪であった。

仮にも恋人になった男子を女装させたのだ。

十六夜がいくら狂ってても普段着がこれってことはないと思いたい。

でも、十六夜は周囲の視線など気にせず笑顔で言った。

「凛は正直だね。あと、凄く優しい」

「優しくないです。俺は家族の目とか周囲の目とか気にして何もできない」

パパママ&チルドレンが楽しそうに園内を歩いているなかで凛の心は沈むばかりだ。

観覧車に乗ったがお互いに無言でいたとき十六夜が優しく口を開いた。

「凛が中等部1年の時に図書室で盗難騒ぎがあったよね?」

唐突な話題に凛が目をパチパチさせると十六夜が話を続けた。

「生徒の財布が盗まれて、犯人捜しになった。犯人は凛と同じクラスの子だった」

「ああ、そうでした。でも、それが何か?」

凛も記憶を辿って思い出した。

犯人は凛と席が近かった。

普通に会話して親しくしていた。

結局、その生徒は退学して話は終わった。

自分は特に事件に関係してないと凛は思ったが十六夜は微笑んで告げたのだ。

「あの生徒が退学したあとも図書室では盗難の話題がよく出てた。僕は図書委員だから嫌でも話が聞こえたんだ。でも、凛はあの時、僕に言ったんだよ」

凛は自習やなにかで図書室は頻繁に利用していた。

近衛十六夜は盗難した犯人を誹謗中傷する生徒の囁きが気持ち悪くてカウンターで耳を塞いでいたらしい。

そこに凛が本を持って来たのだ。

そして、青い顔の十六夜に言ったのである。

「自分が財布を盗まれたわけでもないのに責めるなんて違うと思う」

たしかに窃盗は悪いが被害者でもない大勢が徒に責めるのは正義でなく集団ヒステリーだ。

十六夜は小さな1年生が大勢の正義に屈しない反骨精神と悪事を行った生徒を心配できる人間だと確信した。

他人の悪意や殺意などのマイナス感情を無意識に肥大化させてしまう力を持った十六夜の前で凛は平気で本を借りて帰った。

「この子はなんて優しくて、高潔なんだろうと1発で好きになった」

十六夜の凛に惚れたきっかけを観覧車で聴いて凛は苦笑いした。

「思い出した。図書室で他人の悪口言ってる集団がウザくて腹が立って、カウンターの図書委員に本音を言った。十六夜さんとは気が付かず」

凛としては短期間でも同じクラスで笑顔で会話したクラスメートが窃盗の犯人でも悪し様に言うのに躊躇いがあった。

窃盗は罪だが無関係な生徒の酷い言葉に腹が立っていた。

でも、表立って批判はできない半端者である。

だから、おとなしそうな上級生の図書委員にこぼしてしまった。

その上級生に惚れられたなど露知らずに。

「俺は自分の財布だったら怒ってました。その程度の正義感です。高潔とか優しいは違うと思います」

「違わない。僕がそう断言する。あっ、テッペンになったからキスしたい」

この時、凛は完全に場の空気と十六夜の言葉に流された。

抵抗なく十六夜と観覧車キスしてしまった。

そして、キス終了してスカイツリー見ながら地上に降りてきて激恥ずかしかった。

男子と抵抗なく観覧車テッペンでキスという偉業をなしとげたのに凛は熱があるのかレベルに赤面した。

何故かと言いますと十六夜とキスして凛の凛が発情したから。

祖父の言葉に従えば「ヤっちゃえニッサン」になる。

あらかわ遊園付近にそういった宿泊施設がないのが不幸中の幸いだった。

アイスクリームでも食べて精神を沈静化しようとフードコーナに行ったがお約束で十六夜の「あーん」が待っている。

凛は顔が真っ赤であったが賢者タイムに突入して、されるがまんま十六夜と仲良くアイスクリームを食べた。

単なる仲良しカップルとして場に溶け込んでいる。

動物広場とか釣り堀とかを1通り、巡って、隅田川を眺めた。

相変わらず隅田川がドブ臭いが平和なデートであった。

最後に十六夜と手を繋いで遊園前駅のトラム乗り場で別れた。

「凄く楽しかった!凛とふたりで!」

「俺も楽しかったです。十六夜さんと一緒で」

そのまま、十六夜はトラムに乗って帰り、無事にデート終了である。

だが、無事では全くなかった。

心配が的中して遊園前駅で凛の母親のママ友に目撃された。

凛が凄い美少女と仲良く手を繋いで歩いてた証言である。

凛は母親から「彼女いるの?」と追及されて、必死こいて「人違いだよ!その日は先輩と遊んでたし!」と嘘ではない供述をした。

その会話を聞いていた祖父がなんかニヤニヤと凛を見ていたが凛は気づかないふりをして誤魔化した。

母親も冴えない息子が美少女とデートはないと判断して納得したが母親が去ると祖父が凛に囁いた。

「次は上野に行け。鶯谷も近いから、ヤっちゃえニッサン」

祖父の言葉に凛は絶望した。

次の十六夜とのデートが上野公園だったからだ。

日本鳩レース協会という昔からある建物の真相を探る目的で鶯谷に行っちゃえ、ニッサンにならんよう凛は心を強く持つ必要に迫られた。

end













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