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4.修道女、神父と戯れる

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 レオナルドは微動だにしない。
 それもそうだろう。禁忌の色とされる髪色をもつ人間が修道院で聖女を目指しているなど、笑い話にしかならない。

 ――これ以上、私に惨めな思いをさせないで……。
 
 唇を噛み締めていると、レオナルドはアンジェラの髪をひと房つかみ取り、口づけた。
 アンジェラの怒りは戸惑いに変わる。

「なぜ……」

 ストロベリーブロンドの毛束を指先に巻き付け、レオナルドは目を細めた。
「綺麗な色なので思わず口づけたくなりました。薔薇のようにかぐわしい」

 神父の口づけは祝福の証であり、病を癒す効果をもたらすと言われている。彼らに救いをもとめて日夜、村の内外から人が集まってくるほどだ。
 そんな彼を悪魔を惑わすと噂される身体で汚してしまっている。
 戸惑いがしぼんでいき、修道女としてのプライドがアンジェラを奮い立たせた。

「やはり助けを待つか、私が結界の解読を進めるべきではないでしょうか? ファーザー・レオナルドが犠牲になる必要はありません」

 アンジェラたちを閉じこめた者の思惑通りに踊りたくはない。聖職者として堂々と脱出せねばならないはずだ。
 アンジェラは誠意を込めてレオナルドに縋ったのだが、
「すべては困っている病人のためです。シスター・アンジェラ。特段私が犠牲になっているとは思っていませんから」
「事実あなたの身が汚されるのですよ。黙って従ってはいけません。力をあわせて他の脱出法を探るべきでは……」
「私はこれが最善の道だと判断しているのです」

 レオナルドはアンジェラのうなじに唇を寄せた。かさついた唇と舌のやわらかさに、背筋がぞくりと震える。得体のしれない感触におののくも、やはり自分は人を惑わせる力を持っているのだろうかと、話の通じないレオナルドにアンジェラは焦った。
 しかし理性に反して下腹部が甘く疼いてくる。
 
「ひっぅ。ファ、ファーザーあの……」
「レオナルドと呼んでください」
「そ、そんな恐れ多い……」

 首筋を噛んだり舐めたりしながら、レオナルドはアンジェラに囁く。一介の修道女が高位の神父を名指しするなどできるわけがない。

「私は家を追い出されたしがない貴族の四男坊です。……いわば金で買った神職です。そんなにありがたがるものでもない」

 ぽつりと漏らされた皮肉に、アンジェラは彼に関する噂話を思い出した。
 レオナルドは修道院のある地域を治める貴族――ユンカー男爵の子息であり、父親との確執により、俗世を追われ、この修道院に辿り着いたという噂だ。
 どこまでが事実なのかアンジェラは知らないし、興味もない。
 ただ彼が自暴自棄になるほど、ユンカー家がレオナルドを邪魔者扱いしているようには思えないのだ。彼の生家から修道院へは毎月少なくない食料や物資が送られてきているのだから。すべて男爵の名で寄付されている代物だ。
 冷え切った繋がりでもレオナルドは家族と縁が続いている。国のためだと修道院に捨てられたアンジェラよりはマシではないか。

 ――今は過去の感傷に浸っている場合じゃないわ。この色狂い神父を止めないと……。

「出自はどうあれ、ファーザー・レオナルドは素晴らしい方だと思います。だからこそ、私のような者にその身を許さないでください」
「……何度も言いますが、貴女と交わろうとするのは私の意思でもあります」
「だからそれはこの忌まわしい身体のせいで」

 アンジェラがレオナルドを誘惑しているのだ。普段穏やかな彼がこうも頑なになっているのがその証拠だろう。
 胸の前で両手を握りしめるアンジェラに、レオナルドは眉を下げる。

 ――私の本気をわかってくれたのかしら……。

 だが、レオナルドはアンジェラの首筋に顔をうずめ、愛撫を再開した。
 どうやってもレオナルドはアンジェラとセックスする気だ。

 ――諦めたら駄目よ、アンジェラ。まだ引き返せるんだから。

「あ、あの、これは【セックス】に必要なのですか?」
「これとは?」

 アンジェラの肌に唇を近づけたまま、レオナルドはくすりと笑った。

 ――何がおかしいのよ。

 身体を触ったり、舐めたりする行為がセックスでないことを、アンジェラは何となく察していた。 彼女の疑問に答えることなく、レオナルドはアンジェラの身体をまさぐり続けている。

「ファーザー・レオナルド、……レ、レオナルド様!」
「充分ほぐしておかないと貴女がつらいですからね」

 謎めいた言葉に眉をひそめたアンジェラを置き去りに、せっかく整えた修道服の裾の内側にレオナルドの長い指が伸び、下肢の割れ目に触れた。

「な、な、な……」
「ああ、ちゃんと濡れてますね」

 下着越しにくちゅくちゅと溝を指でこするレオナルドを、アンジェラは信じられない思いで見つめた。

「痛いですか?」
「そ、そんな汚いところ、触らないで!」

 混乱したアンジェラは言葉遣いを忘れてしまう。後悔するが、レオナルドは気にしていないようで、湿り気をおびた性器を擦り続けている。

 下着が食い込むほど強烈な刺激にアンジェラは、レオナルドの膝の上で暴れた。

「そんなに動くと入ってしまいますよ」

 レオナルドは小柄なアンジェラを片腕でしっかりと支え、長い指で粗末な下着の裾をかき分けると、アンジェラの秘所をこじ開けた。

「ひっ!」

 何とも言えない異物感にアンジェラは喉を引きつらせる。思わず膝立ちになり逃げようとするも、レオナルドの長い指はアンジェラを追いかけてきた。つぷりと蜜口が指を受け入れてしまう。途端に頬は薪をくべられた暖炉のように熱を持ち始めた。
 経験したことのない衝撃に、呼吸が止まりそうになる。

「ゆっくり腰を落としてください。もう指は入れませんから」

 薄く茂った下生えから指を引き抜くと、レオナルドはアンジェラをなだめるように、柔らかく微笑んだ。信用できないが、膝から力が抜け身体を支えているのがつらい。アンジェラは言われるがまま腰を落とそうとしたが、濡れた下腹部でレオナルドの衣服を汚してはいけないと、動きをとめる。
 脚がぶるぶると震え、蜜壺から滴る愛液が太ももを伝っていく。何か拭くものはないかとアンジェラは薄闇に沈む小聖堂を見渡した。
 
 すると、レオナルドはおもむろにカソック神父服を脱ぎ始め、毛布のうえに重ねた。

「ファーザー?」
「こちらにどうぞ」
「ご冗談を」
「冗談ではありません。私のカソック神父服はこの通り薬品塗れです。さらに汚れても問題ありません。それに私のせいでもありますし……」

 悪びれるでもないレオナルドにアンジェラは何も言い返せない。言い返す気力を無くしつつあるアンジェラは、大人しく指示に従おうとレオナルドの横を通り過ぎようとしたのだが、修道服の裾を掴まれ引き止められた。

「ああ、そのままでは貴女の修道服が汚れてしまいますよ」
「それは……」

 下着はすでに濡れそぼっているため、修道服も脱いでしまいたい。だが、アンジェラは素直になれなかった。

「そのままですと何をしていたか明らかになってしまいますが、よろしいので?」

 服が乱れていようが結界が解かれれば、なかで何をしていたかは明白だ。いくら取り繕っても無駄である。
 もはやどれだけ説得を試みようが、レオナルドの意志は変わらないのだ。
 しかし、アンジェラは純潔を失おうとも、恥じらいまで捨てるつもりはない。

「……服を脱ぐつもりはありません。下手に誤魔化すなんて誠実であらねばならない聖女には似つかわしくありませんもの」

 ローズピンクの瞳をまたたかせて必死に言い募るアンジェラを、レオナルドは顎に指を添え眺めている。  
 綺麗事を言っている自覚はある。だが聖女になれないからといって、これまで培ってきた誇りまで失うつもりは毛頭なかった。
 レオナルドも言う事を聞かないアンジェラに呆れていることだろう。

「いい心がけですね」

 呆れるどころか微笑みを絶やさないレオナルドにアンジェラは虚をつかれ、あっという間に布の上に押し倒される。レオナルドはアンジェラの両手に手を重ね床に縫い留めた。

「うぅん……」

 先ほどよりも荒々しくレオナルドの唇がアンジェラの唇を食んでくる。両脚の間に上半身を捻じ込ませたレオナルドは、アンジェラに覆い被さり、下腹を密着させた。
 呼吸を奪うように角度を変え、キスが繰り返される。アンジェラは鼻で息をするも、やがてぼんやりとしてきたが、レオナルドがくすりと笑みを漏らし、我に返る。
 翻弄されていると思われてはならない。唇が離れた隙に目元に力をいれてレオナルドをキッとにらんだ。

「そんな顔をしてもココは淫乱にビクついていますよ」

 レオナルドは修道服の裾から手を忍ばせ、蜜液が溢れている膣口を音が響くようにくちゅくちゅと掻き混ぜた。

「や、あ、ん」

 アンジェラは急な刺激に思わず声をこぼしてしまう。
 背中に敷いたカソック神父服から何とも言えない甘い香りがする。アンジェラは心と体がちぐはぐになり唇を噛みしめた。

「……男を知るとはココに先ほど貴女の尻に当たっていたモノを挿れるということですよ」

 ふたたびアンジェラの蜜口に侵入した指は二本に増えていた。

「な、や、やめて……」

 レオナルドの手を押しとめようとするが、彼は膣壁をこじ開けることをやめず、アンジェラさえ触れたことのない奥へ奥へと長い指を進めていく。湿った胎内を暴かれる圧迫感にアンジェラは混乱を深めていった。
 恐怖に言葉もでないアンジェラだったが、面白がるようにこちらを見下ろすレオナルドに怖がっていることを悟られまいと、声を飲み込む。
 柔らかい肉襞をゆっくりと撫でられ、しばらくすると、妙な感覚がはらから立ち上ってくる。

 ――怖いのに、気持ちいい……?

 身も心もぐちゃぐちゃに掻き回されたせいか、下腹部から強烈な尿意がせりあがってきた。

「あ、は、ふぁ、ファーザー、や、やめてください」
「気持ちよくないですか? ……そんなことはないと思いのですが」
「き、気持ちいいかはわかりませんが、その……」

 なぜ自分をもてあそぶ男に排泄の欲求を申告しなければならないのか。しかし、素直に言わなければ開放してもらえそうにない。
 屈辱的だが仕方がない。
 目の前で漏らすよりはだいぶマシだとアンジェラは覚悟を決めた。
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