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12話 シャーロット、教師になる
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流れのまま、教師役を引き受けたシャーロットは、人生で味わったことのない苦痛に見舞われていた。
「なんか食べもんくれよ~」
「胸、すげえでけえ!」
「ねえちゃんとにいちゃんは、チューする仲なの~?」
教室に足を踏み入れるなり、子どもたちがシャーロットを取り囲んだ。
四方八方から押し寄せる甲高い声に、シャーロットは圧倒される。
子供たちは服も手足も垢じみていて、強烈な汗の臭いを発散させていた。掴まれたドレスの裾が黒ずみ、シャーロットは目眩を起こしそうになる。
とても物を教えられる状況ではない。
「こら、みんな、席について、ちょっと、ねえ……」
ハンス青年の呼びかけは、子供たちの騒ぐ声にかき消される。
収拾がつかなくなったその時――。
ジョナサンが手を打ち鳴らした。
パンッ! と乾いた破裂音が室内に響く。
子どもたちはピタリと口を閉ざし動きを止めた。
ジョナサンはにっこりとほほ笑み、「席に着いていない者は、昼飯抜きだ」と一言。
目にも止まらぬ速さで、子どもたちが着席する。
「よしよし、皆、良い子だな」
数十の双眸が、ジョナサンの一挙一動を追いかけている。シャーロットやハンスは眼中にない。
まるで動物の群れだ。
子どもたちはジョナサンを格上と見なした。
一方、シャーロットやハンスを同等、もしくは格下だと認識したようだ。
――上等じゃない。きっちり躾けてあげるわ。
やるからには、貴族たちの前に出しても恥ずかしくない所作を身につけさせてやる。
シャーロットは密かに闘志を燃やした。
教師役を担って、半月後。
「殿下、質問!」
「ヨハネス、殿下ではなく、シャーロット先生とお呼びなさい」
「シャーロット先生、さきほどの問題の回答を、もう一度言ってくださ――おっしゃってください」
「よろしくてよ」
シャーロットは教壇から、教室を見回す。
子どもたちは懸命に机へ向かい、シャーロットの言葉に耳を傾けていた。
授業初日、子どもたちはじっと座って話を聞くことができなかった。
頭ごなしに説教をしても、きょとんとするばかりで、何が悪いのか、まるで理解できていない様子なのである。
――まずは敵情視察が肝心よね。
シャーロットは、城下街を散策することにした。
街のことは住人に聞くべきだと、シャーロットは案内人にハンスを指名した。
しかし、城門前に現れたのはジョナサンである。
「こんなところで何をなさっているの?」
「もちろん殿下の護衛に馳せ参じました」
「……貴殿は忙しい身の上のはずよね」
次期領主の仕事をほっぽり出しているジョナサンに、シャーロットは呆れた。
「殿下を教師にと推薦したのは俺ですので、お守りするのは当然かと」
「アネモネに私の世話を一任しているのでしょう。彼女、腕が立つようだし、護衛も務まるのではなくて?」
古参騎士の娘だというアネモネは、剣の腕前は相当なようで、若い騎士たちに一目置かれている。
城下街のならず者を蹴散らすなど造作もないのではないだろうか。
「……俺ではご不満なので?」
「私にばかり気を取られて、貴殿が果たすべき役目をおろそかにしていないか、心配してあげているのよ」
「殿下を危険から遠ざけるよりも重大な任務などありません」
微笑みを消し去ったジョナサンは、至極真面目な表情で言い切った。
「……男爵がお泣きになるわよ」
シャーロットを第一に考えてくれるのは喜ばしいことである。
しかし、傾国の悪女にはなりたくはない。
――馬鹿な男ではないのだけれど、夢中になると周りが見えなくなる質なのよね。
彼を支える、もとい諫める人材を育てるのだと思えば、今回の教師の任もおのずとやる気が湧いた。
城下街――表通りは王都といたって違いはない。
住人たちは、忙しなく、それでいて、生気に満ちた表情をしている。
ひるがえって、貧民街の住人はというと――。
ジッと身動きせず、視線だけを、せわしなく泳がせる者。
うろうろと歩き回り、獲物を品定めしている者。
仕草は多種多様だが、全員、常に周囲を警戒していた。
生き残るためには必要な所作だ。しかし、それでは落ち着いて学びを深めることはできない。
――せめて、学舎にいる間だけでも、安心させてあげなくてはね。
子どもたちは、食事目当てに学舎を訪れている。
シャーロットは彼らが腹を満たしている最中に、『授業』をすることにした。
『授業』といっても、シャーロットが神話や歴史を物語る、だけである。
特段、教えることはしない。
食事のついでに耳を傾けていればいい。
初日こそ、子どもたちは、パンとスープを平らげるとわき目も振らず教室から姿を消した。
シャーロットは何も言わず、物語り続ける。
「今日はここまでよ」
ヴォルフガルト領に伝わる英雄譚、獣人の戦士が魔獣の王と対峙し、絶体絶命――という場面でシャーロットは本を閉じた。
「また明日。ごきげんよう――」
シャーロットが教壇から降りると「えー!」と非難の嵐が巻き起こる。
「明日まで待てない~」
「続き、読んでくれよ」
子供たちは机をドンドン叩いて、催促する。
知りたい欲を刺激すればこちらのものだ。
シャーロットは本を顔の前に掲げ、
「文字が読めたら、私の朗読を待たずに楽しめるわよ」
そうして一人、二人と授業に参加する者が増えていき、いまでは教室いっぱいに生徒が集まるようになった。
「シャーロット先生!」
「あら、ヨハネス。どうなさったのかしら」
教室から出るなり、廊下で呼び止められた。
振り返った先には、後ろ手にもじもじとするそばかすの少年がいる。
読み聞かせを根気よく続けた甲斐があり、半月経った現在は、こうして授業後に声を掛けられることが多くなった。
「今日のお話で、分からないところがあったのかしら」
「あの、これ……」
少年の手には、紫色の小さな花が幾重にも繋げられた花冠が握り締められていた。
少年は顔を真っ赤にして、花冠をシャーロットへ差し出す。
「私にくださるの?」
少年はこくこくと頷く。
「頭に乗せてもいい……よろしいですか?」
シャーロットはその場に膝をつき、頭を下げた。
花冠がプラチナブロンドの髪に重なる。
ふわりと爽やかな香りが漂った。
「……ありがとう」
――私が市井の者に首を垂れ、あまつさえ礼を口にするなんて。
数か月前の自分では想像できない行動を取っている。
彼らに混じって生活をするうちに、打算もなしに言葉を紡ぐことができるようになった。
成長と言えるのか、はたまた腑抜けてしまったのか。
どちらにしろ、シャーロットは今の自分がそれほど嫌いではない。
花がほころぶような笑顔が自然とこぼれる。
少年は赤面したまま、転げそうな勢いで廊下を走り去った。
「俺以外の男から、贈り物を受け取るとは……妬けますね」
少年のぎこちなさを微笑ましく見送っていると、背後から突如、聞き慣れた青年の声が響いた。
シャーロットは肩を跳ねさせ、振り返りざま立ちあがる。
そこには、にっこりと微笑むジョナサンがいた。
「急に現れないでくださる?」
「殿下が少年と話をなさっているのを微笑ましく拝見しておりましたが……お気づきになりませんでしたか」
「貴殿が気配を消していれば、野生の獣だって勘づかないのではなくて?」
「いえいえ殿下に気づいていただきたくて、一心に視線をお送りしていました」
――なんだか、機嫌が悪いわね……?
相変わらずジョナサンは完璧な微笑を顔面に貼り付けている。
しかし、口調が容赦ないというか……責め立てられているような気がするのは考えすぎだろうか。
「殿下のご助力により、住人たちは学舎への警戒心を解きつつあります。ハンス先生も感心なさっていました」
「当然だわ」
シャーロットは腕を組み、顎を反らした。
依然としてシャーロットは子どもが苦手だ。
けれど、段々と話が通じるようになってきて、以前よりは好感を持てるようになった。
「では、今後も続けていただけると?」
「……どうしても、というならばね」
慕われて、悪い気はしない。
シャーロットは花冠にそっと手を伸ばした。
柔らくて頼りない花びらをちぎってしまいそうになり、慌てて手を引っ込める。
乾燥させて栞にでもしようかしらと考えていると、ジョナサンに手首を掴まれた。
――え?
ジョナサンは空き部屋にシャーロットを押し込んだ。
正面から抱きすくめられ、息が止まりそうになる。
「あれー? シャーロット先生の声したのになあ」
「いないねー」
扉が閉じられた先で、間延びした子どもたちの声がした。
こっちかなーと複数の足音が近づいてくる。
しばらくすると、騒がしい音は遠ざかった。
「……なぜ隠れたのかしら?」
シャーロットはジョナサンの胸から顔をあげた。
「殿下を独り占めしたくなりまして」
ジョナサンは両手を組み、シャーロットの腰をさらに引き寄せる。
「まさか本気で幼子に嫉妬しているの?」
冗談半分にジョナサンの顔を下からのぞき込めば、存外真剣に見つめ返された。
紅い瞳に妖しい熱が灯る。
――まさか、ね……。
シャーロットはジョナサンの腕の中から抜け出そうと、身をよじらせた。
「妬けると申し上げたのは、冗談ではありませんよ」
ジョナサンがシャーロットの鼻先に鼻頭を擦りつける。ジョナサンの体温がじんわりと伝わってきた。
誰が来るかしれない場所で、はしたない真似をしてはいけない。
シャーロットはジョナサンの胸元で握りこぶしを作った。
ジョナサンがシャーロットの手首を取り、銀の腕輪に口づける。続けて爪を甘噛みし、舌が指の腹を舐めあげた。
背筋がぞくりと震える。
行為を止めなければと理性は働くのに、ジョナサンから与えられるぬくもりを拒絶できない。
「殿下……」
ジョナサンはシャーロットの桃色の唇に唇を寄せた。
「なんか食べもんくれよ~」
「胸、すげえでけえ!」
「ねえちゃんとにいちゃんは、チューする仲なの~?」
教室に足を踏み入れるなり、子どもたちがシャーロットを取り囲んだ。
四方八方から押し寄せる甲高い声に、シャーロットは圧倒される。
子供たちは服も手足も垢じみていて、強烈な汗の臭いを発散させていた。掴まれたドレスの裾が黒ずみ、シャーロットは目眩を起こしそうになる。
とても物を教えられる状況ではない。
「こら、みんな、席について、ちょっと、ねえ……」
ハンス青年の呼びかけは、子供たちの騒ぐ声にかき消される。
収拾がつかなくなったその時――。
ジョナサンが手を打ち鳴らした。
パンッ! と乾いた破裂音が室内に響く。
子どもたちはピタリと口を閉ざし動きを止めた。
ジョナサンはにっこりとほほ笑み、「席に着いていない者は、昼飯抜きだ」と一言。
目にも止まらぬ速さで、子どもたちが着席する。
「よしよし、皆、良い子だな」
数十の双眸が、ジョナサンの一挙一動を追いかけている。シャーロットやハンスは眼中にない。
まるで動物の群れだ。
子どもたちはジョナサンを格上と見なした。
一方、シャーロットやハンスを同等、もしくは格下だと認識したようだ。
――上等じゃない。きっちり躾けてあげるわ。
やるからには、貴族たちの前に出しても恥ずかしくない所作を身につけさせてやる。
シャーロットは密かに闘志を燃やした。
教師役を担って、半月後。
「殿下、質問!」
「ヨハネス、殿下ではなく、シャーロット先生とお呼びなさい」
「シャーロット先生、さきほどの問題の回答を、もう一度言ってくださ――おっしゃってください」
「よろしくてよ」
シャーロットは教壇から、教室を見回す。
子どもたちは懸命に机へ向かい、シャーロットの言葉に耳を傾けていた。
授業初日、子どもたちはじっと座って話を聞くことができなかった。
頭ごなしに説教をしても、きょとんとするばかりで、何が悪いのか、まるで理解できていない様子なのである。
――まずは敵情視察が肝心よね。
シャーロットは、城下街を散策することにした。
街のことは住人に聞くべきだと、シャーロットは案内人にハンスを指名した。
しかし、城門前に現れたのはジョナサンである。
「こんなところで何をなさっているの?」
「もちろん殿下の護衛に馳せ参じました」
「……貴殿は忙しい身の上のはずよね」
次期領主の仕事をほっぽり出しているジョナサンに、シャーロットは呆れた。
「殿下を教師にと推薦したのは俺ですので、お守りするのは当然かと」
「アネモネに私の世話を一任しているのでしょう。彼女、腕が立つようだし、護衛も務まるのではなくて?」
古参騎士の娘だというアネモネは、剣の腕前は相当なようで、若い騎士たちに一目置かれている。
城下街のならず者を蹴散らすなど造作もないのではないだろうか。
「……俺ではご不満なので?」
「私にばかり気を取られて、貴殿が果たすべき役目をおろそかにしていないか、心配してあげているのよ」
「殿下を危険から遠ざけるよりも重大な任務などありません」
微笑みを消し去ったジョナサンは、至極真面目な表情で言い切った。
「……男爵がお泣きになるわよ」
シャーロットを第一に考えてくれるのは喜ばしいことである。
しかし、傾国の悪女にはなりたくはない。
――馬鹿な男ではないのだけれど、夢中になると周りが見えなくなる質なのよね。
彼を支える、もとい諫める人材を育てるのだと思えば、今回の教師の任もおのずとやる気が湧いた。
城下街――表通りは王都といたって違いはない。
住人たちは、忙しなく、それでいて、生気に満ちた表情をしている。
ひるがえって、貧民街の住人はというと――。
ジッと身動きせず、視線だけを、せわしなく泳がせる者。
うろうろと歩き回り、獲物を品定めしている者。
仕草は多種多様だが、全員、常に周囲を警戒していた。
生き残るためには必要な所作だ。しかし、それでは落ち着いて学びを深めることはできない。
――せめて、学舎にいる間だけでも、安心させてあげなくてはね。
子どもたちは、食事目当てに学舎を訪れている。
シャーロットは彼らが腹を満たしている最中に、『授業』をすることにした。
『授業』といっても、シャーロットが神話や歴史を物語る、だけである。
特段、教えることはしない。
食事のついでに耳を傾けていればいい。
初日こそ、子どもたちは、パンとスープを平らげるとわき目も振らず教室から姿を消した。
シャーロットは何も言わず、物語り続ける。
「今日はここまでよ」
ヴォルフガルト領に伝わる英雄譚、獣人の戦士が魔獣の王と対峙し、絶体絶命――という場面でシャーロットは本を閉じた。
「また明日。ごきげんよう――」
シャーロットが教壇から降りると「えー!」と非難の嵐が巻き起こる。
「明日まで待てない~」
「続き、読んでくれよ」
子供たちは机をドンドン叩いて、催促する。
知りたい欲を刺激すればこちらのものだ。
シャーロットは本を顔の前に掲げ、
「文字が読めたら、私の朗読を待たずに楽しめるわよ」
そうして一人、二人と授業に参加する者が増えていき、いまでは教室いっぱいに生徒が集まるようになった。
「シャーロット先生!」
「あら、ヨハネス。どうなさったのかしら」
教室から出るなり、廊下で呼び止められた。
振り返った先には、後ろ手にもじもじとするそばかすの少年がいる。
読み聞かせを根気よく続けた甲斐があり、半月経った現在は、こうして授業後に声を掛けられることが多くなった。
「今日のお話で、分からないところがあったのかしら」
「あの、これ……」
少年の手には、紫色の小さな花が幾重にも繋げられた花冠が握り締められていた。
少年は顔を真っ赤にして、花冠をシャーロットへ差し出す。
「私にくださるの?」
少年はこくこくと頷く。
「頭に乗せてもいい……よろしいですか?」
シャーロットはその場に膝をつき、頭を下げた。
花冠がプラチナブロンドの髪に重なる。
ふわりと爽やかな香りが漂った。
「……ありがとう」
――私が市井の者に首を垂れ、あまつさえ礼を口にするなんて。
数か月前の自分では想像できない行動を取っている。
彼らに混じって生活をするうちに、打算もなしに言葉を紡ぐことができるようになった。
成長と言えるのか、はたまた腑抜けてしまったのか。
どちらにしろ、シャーロットは今の自分がそれほど嫌いではない。
花がほころぶような笑顔が自然とこぼれる。
少年は赤面したまま、転げそうな勢いで廊下を走り去った。
「俺以外の男から、贈り物を受け取るとは……妬けますね」
少年のぎこちなさを微笑ましく見送っていると、背後から突如、聞き慣れた青年の声が響いた。
シャーロットは肩を跳ねさせ、振り返りざま立ちあがる。
そこには、にっこりと微笑むジョナサンがいた。
「急に現れないでくださる?」
「殿下が少年と話をなさっているのを微笑ましく拝見しておりましたが……お気づきになりませんでしたか」
「貴殿が気配を消していれば、野生の獣だって勘づかないのではなくて?」
「いえいえ殿下に気づいていただきたくて、一心に視線をお送りしていました」
――なんだか、機嫌が悪いわね……?
相変わらずジョナサンは完璧な微笑を顔面に貼り付けている。
しかし、口調が容赦ないというか……責め立てられているような気がするのは考えすぎだろうか。
「殿下のご助力により、住人たちは学舎への警戒心を解きつつあります。ハンス先生も感心なさっていました」
「当然だわ」
シャーロットは腕を組み、顎を反らした。
依然としてシャーロットは子どもが苦手だ。
けれど、段々と話が通じるようになってきて、以前よりは好感を持てるようになった。
「では、今後も続けていただけると?」
「……どうしても、というならばね」
慕われて、悪い気はしない。
シャーロットは花冠にそっと手を伸ばした。
柔らくて頼りない花びらをちぎってしまいそうになり、慌てて手を引っ込める。
乾燥させて栞にでもしようかしらと考えていると、ジョナサンに手首を掴まれた。
――え?
ジョナサンは空き部屋にシャーロットを押し込んだ。
正面から抱きすくめられ、息が止まりそうになる。
「あれー? シャーロット先生の声したのになあ」
「いないねー」
扉が閉じられた先で、間延びした子どもたちの声がした。
こっちかなーと複数の足音が近づいてくる。
しばらくすると、騒がしい音は遠ざかった。
「……なぜ隠れたのかしら?」
シャーロットはジョナサンの胸から顔をあげた。
「殿下を独り占めしたくなりまして」
ジョナサンは両手を組み、シャーロットの腰をさらに引き寄せる。
「まさか本気で幼子に嫉妬しているの?」
冗談半分にジョナサンの顔を下からのぞき込めば、存外真剣に見つめ返された。
紅い瞳に妖しい熱が灯る。
――まさか、ね……。
シャーロットはジョナサンの腕の中から抜け出そうと、身をよじらせた。
「妬けると申し上げたのは、冗談ではありませんよ」
ジョナサンがシャーロットの鼻先に鼻頭を擦りつける。ジョナサンの体温がじんわりと伝わってきた。
誰が来るかしれない場所で、はしたない真似をしてはいけない。
シャーロットはジョナサンの胸元で握りこぶしを作った。
ジョナサンがシャーロットの手首を取り、銀の腕輪に口づける。続けて爪を甘噛みし、舌が指の腹を舐めあげた。
背筋がぞくりと震える。
行為を止めなければと理性は働くのに、ジョナサンから与えられるぬくもりを拒絶できない。
「殿下……」
ジョナサンはシャーロットの桃色の唇に唇を寄せた。
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