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19話 シャーロット、ジョナサンの本心を知る♡
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ジョナサンは城に戻るなり、シャーロットを二人の寝室に隣接した浴室へと運んだ。
浴室内はあたたかく、やわらかい湯気に包まれた瞬間、肩から力が抜けた。
ジョナサンに横抱きにされたまま、湯船につかる。
固い胸板に背を預けたシャーロットは、湯のぬくもりが身体の内側に染み込む気持ちよさに、ため息を落とした。
「ご気分は、いかがでしょうか」
ジョナサンが肩越しにシャーロットの顔をのぞき込んだ。
額にかかった濡れ髪をかきあげるジョナサンから、艶めかしい色香が漂っている。
ジョナサンに貫かれたい。
シャーロットは卑しくも、彼に抱かれることしか考えられなくなっていた。
だからといって、みずから求めるなんて真似はできない。
内ももを擦り合わせていると、ジョナサンがシャーロットの心を読んだ如く、足の付け根に手を伸ばした。
「――んぅ」
湯のなかで花襞を広げられる。蜜壺がうごめき、割れ目から蜜がこぼれ、湯と混じり合った。
容易く乱れたくはないのに、身体が言うことをきいてくれない。
「蔦のせいですよ」
「え……」
「ヴォルフガルト領にのみ棲息する稀少な植物でして……獲物を捕食する際、特殊な体液を分泌します。人が原液を取り込めば、思考力を奪われ、生殖本能が誘発されるのです」
ジョナサンがシャーロットの肩に顔を埋めながら、囁いた。
熱い吐息が耳朶に染み込む。
何か難しいことを言っている。
ぼんやりとしていたら、ジョナサンが蕩けた笑みを浮かべた。
「つまり、殿下が俺を求めても、何も問題はないということです」
だから俺にすべて委ねてください。
ジョナサンはシャーロットを膝に乗せた。
赤い瞳と正面から向かい合う。
どちらからともなく、唇と唇が重なった。
「ん……」
二人が身じろぐたびに、ちゃぷちゃぷと、水面が波打つ。
シャーロットの唇を啄みながら、ジョナサンは、真珠色に輝く身体を――肩から腰、太腿を愛撫した。
こちらを労わる優しさが、もどかしい。
「はあ……」
唇が離れそうになると、シャーロットはジョナサンを追いかけ、みずから唇を近づけた。
だが、ジョナサンは顎をのけぞらせ、彼女を拒む。
瞳を蕩けさせ訴えても、ジョナサンは答えてくれない。
――どうしてこの人は、私に意地悪をするのかしら。
こんなに、愛しているのに。
シャーロットを振りまわす辺境の狼。
どうすれば可愛く懐いてくれるのだろう。
――私がたくさん愛してやればいいのよ。
シャーロットはジョナサンの頬を両手で挟み、引き寄せる。
ジョナサンは抵抗せず、されるがままだ。
余裕の笑みが憎たらしい。
シャーロットは大きく口を開き、ジョナサンの唇に思い切り噛り付く。
「でんか……?」
ジョナサンが唖然とした様子で口を半開きにした。
その隙を見逃さず、シャーロットは彼のなかに舌を滑り込ませる。肉厚な舌が縮こまっているが、構うことなく、舌で絡め取った。
口内を隅から隅までたどり、いつも彼がシャーロットに仕掛ける悪戯に倣って、上顎を舐めあげる。
「ふ……ん……」
鼻にかかった喘ぎ声を押し殺しながら、粘膜越しに体温を分け合っているうちに、ジョナサンが勢いを取り戻した。
「殿下――っ」
歯がぶつかるほど激しい口づけを交わし合う。
湯が激しく揺れ、パシャパシャと水面に水しぶきが上がった。
ジョナサンは片腕でシャーロットの背中を支えながら、もう片手で乳房を揉んだ。
交互にふくらみを揉みし抱かれつつ、凝った突起を引っ張られる。
「んっ、あ、ん……」
浴室に嬌声が響き、こだました。
甘い責め苦に、シャーロットは悶え、その拍子にキスが解ける。
ジョナサンがシャーロットをさらに引き寄せ、硬い雄を秘所に擦りつけた。
入りそうで入らないもどかしさに、シャーロットは腰を揺らす。
ジョナサンはシャーロットのなかを犯そうとはせず、首筋を何度も舐めあげ、胸を弄んでばかりいる。
首筋を甘噛みするジョナサンに対抗して、シャーロットは彼の耳にかぷりと噛みついた。
ジョナサンがびくりと肩を跳ね上げる。
見る間にかじったところが、真っ赤になった。
――可愛らしいこと。
シャーロットは相好を崩した。妖艶な色香をまとう妖精姫を前に、ジョナサンは喉を鳴らす。
「……もう我慢できません」
ジョナサンは水面に漂うプラチナブロンドの髪を一房すくい上げ、
「続きはベッドの上で致しましょう」
と、シャーロットを湯船から引き揚げた。
やわらかい明かりが部屋に満ちている。
いくつもの燭台に火が灯された室内は、いつか訪れた殺風景な景色とは打って変わっていた。
落ち着いた色合いの調度品がそろえられている。
重厚感のあるベッドからは、爽やかな木の香りがした。
「まるで月の精霊のようですね……」
シャーロットは、薄手の寝衣をまとい、ベッドに横たわっていた。
プラチナブロンドの髪がシーツの上に扇状に広がっている。
輝く髪に負けじと、薄衣を透かして、乳白色の肢体が蝋燭の明かりにまろやかに照らし出されていた。
――それを言うなら貴方だって、美しいわ。
蕩けた表情でシャーロットを愛でるジョナサンは、一糸まとわぬ姿を晒している。
どこもかしこも、しなやかな筋肉に覆われ、細く引き締まっていた。
贅肉のない身体は、さながら孤高に生きる狼を思わせる。
紅い瞳を優しく細め、ジョナサンはシャーロットの髪に節くれ立った手指を伸ばした。
手櫛で髪をとかれた瞬間。
血まみれのジョナサンの姿が瞼の裏に蘇る。
シャーロットを守るため戦った彼を、恐れる必要などないのに、身体がこわばった。
「……俺が恐ろしいですか?」
ジョナサンは寄る辺のない子どものように、不安げな表情をみせる。
シャーロットの感情が手に取るように判るくせに、こちらの気苦労に思い至らないのが、不思議でならない。
聡いくせに、鈍い男。
――人の気も知らないでって、今までは思いこんでいたけれど……不安だったのね。
嘘を見抜けるからと言って、人から拒絶されるのを恐れる気持ちが変わるわけではない。
――私は今、我を忘れて貴方を求めているのよ。
だから、心の奥底にわだかまる本音を吐露してしまうのは、仕方のないこと。
シャーロットは震える手で、ジョナサンの手を引き寄せた。そのまま武骨な手を己の頬にあてがう。
「恐れる相手に、何度も抱かれるわけないでしょう」
催淫液の力を借りて素直になれるかと思いきや、顔から火を噴きそうなほどの羞恥心を覚えた。
後悔はしていない。
シャーロットはジョナサンの出方を待つ。
「――っ」
ジョナサンがシャーロットの肩に顔を埋め、華奢な肢体を抱きしめる。
ドクドクドク……と逞しい胸板から、力強い鼓動がした。
「……催淫液の効果がなくなるまで、抱き続けます。覚悟してください」
ジョナサンは律儀に告げると、シャーロットの唇を己の唇で塞いだ。
「ふ……んぅ」
風呂場でも散々口づけたのに、ジョナサンは飽くことなく、シャーロットの口内を蹂躙する。
お互いの唾液を絶えず交換し合う。
湯上がりで火照った身体がさらに燃えるように熱くなった。
朦朧としながらも、シャーロットはジョナサンを求め続ける。
「は……うぅん」
ジョナサンが口づけを解くと、細い透明な糸が、二人の間を繋いだ。
「殿下……愛しています」
シャーロットの首筋に唇を寄せ、執拗に舐めしゃぶる。
「――っ」
首筋にピリッとした痛みが走った。
その後も、同じ場所を舐めたり、吸ったり、齧ったりと、ジョナサンは執拗に唇で柔肌を愛撫する。
「――っ……はあ……」
食べられているんじゃないかと錯覚しそうなほど、ジョナサンは滑らかな肌を貪り続けた。
ゆるやかな快感に悶えるシャーロットの首筋から顔を離すと、今度は同じところを手で撫ではじめる。
「……?」
困惑顔を向けると、ジョナサンが含み笑いを返した。
シャーロットから死角になっているそこには、紅い鬱血痕が無数に残されている。
硬い指の腹が、幾度も赤い印をなぞった。
「まだまだ愛させてください」
無骨な手のひらが、肩や腰を這い回る。
壊れ物を扱うような手つきで、シャーロットを愛おしむ気持ちが十分に伝わってきた。
けれど。
――どうしてこんなにも切なくなるのかしら。
「殿下……?」
シャーロットの目尻から涙がとめどなく溢れ、こめかみを伝っていく。
ジョナサンはぎょっと目を見開き、幼子をあやす如く、シャーロットを膝の上に乗せ背中をさすった。
「もう隠し事は嫌よ……」
「俺は殿下に隠し事など」
「私を使って陛下に取り入ろうとしているのでしょう?」
王女である以上、政治の道具として躾けられ、定めを受け入れている。
愛しているだなんだと言い寄る貴公子たちは、皆が皆、腹に一物抱えており、下心なくシャーロットに近づく者などいなかった。
ジョナサンもそのうちの一人だったからといって、何を悲しむことがあろうか。
己が好意を寄せている。上々じゃないか。
そう割り切ろうとした。
それなのに――。
「あなたにだけは、道具扱いされたくないの……」
王族は個である前に、国そのものなのに。
国を背負う責務と引き換えに、贅沢を許されていた身としてはあるまじき弱音を吐いている。
――王女失格ね……。
鬱々と抱え続けた胸のつかえを、シャーロットは嗚咽とともに告白した。
涙で歪んだ視界に、顔面を蒼白にしたジョナサンが映る。
ジョナサンはシャーロットをきつく抱きしめた。
「貴方を利用して己の地位を高めようとしたことなど一度もありません」
聞いたことのない早口で捲し立てられ、シャーロットはジョナサンの言葉を理解するのに数秒を要した。
「なら、なぜ私を強引に王宮から連れ出したの?」
「それはその……グズグズしていて殿下を他の男に奪われてはたまったものではないと……先走りまして」
「……は?」
まさかそんな単純な思惑で、無謀な賭けを国王に持ちかけ、誘拐まがいの芸当をこなしたというのか。
「つまり、私を尻軽だと思っていたわけね」
「そんなことは一切思っておりません。ですが……陛下に認めてもらうには、己の力で道を切り開かねばと焦っておりました」
「焦った結果、貴殿が出した答えが、私に何も相談せず、連れ出すという暴挙だったわけね。……普通、娘をかどわかせば、相手の親への心証は悪くなると思わなくて?」
「全くその通りでございます」
ジョナサンは目に見えてしょぼんと肩を落とした。
つまり、連れ出した理由を後になって恥じ、言うに言えなくなった、ということなのだろう。
――馬鹿馬鹿しいことこの上ないわ。
もしも己がジョナサンに好意を抱いていなければ、どうしていたのかと腹を立てるも、そんな心配は不要なのだったと思い直す。
「……言ってくれないとわからないわ。私、あなたみたいに心を読めないんだもの」
「俺は人の心は読めませんよ。読めてたらこんな風に殿下を苦しめてませんから」
「……あなたなら、嬉々として私を弄びそうよ」
「信用がありませんね」
「自業自得じゃないかしら」
息が苦しくなるほど、抱きしめられているのに、心が満たされていく。
ジョナサンの力強い鼓動が、シャーロットの耳朶をくすぐった。
とても安心する音だ。このまま眠りに落ちてしまいたくなる。
「殿下……」
甘い囁きに顔をあげると、真剣な表情のジョナサンがいた。
濡れた鮮血のごとき輝きを放つ瞳が、シャーロットを熱っぽく見つめている。
落ち着きかけていた情欲の熾火が、息を吹き返した。
「私をあなたで満たして頂戴――んぅ」
言ったそばから唇を奪われた。
浴室内はあたたかく、やわらかい湯気に包まれた瞬間、肩から力が抜けた。
ジョナサンに横抱きにされたまま、湯船につかる。
固い胸板に背を預けたシャーロットは、湯のぬくもりが身体の内側に染み込む気持ちよさに、ため息を落とした。
「ご気分は、いかがでしょうか」
ジョナサンが肩越しにシャーロットの顔をのぞき込んだ。
額にかかった濡れ髪をかきあげるジョナサンから、艶めかしい色香が漂っている。
ジョナサンに貫かれたい。
シャーロットは卑しくも、彼に抱かれることしか考えられなくなっていた。
だからといって、みずから求めるなんて真似はできない。
内ももを擦り合わせていると、ジョナサンがシャーロットの心を読んだ如く、足の付け根に手を伸ばした。
「――んぅ」
湯のなかで花襞を広げられる。蜜壺がうごめき、割れ目から蜜がこぼれ、湯と混じり合った。
容易く乱れたくはないのに、身体が言うことをきいてくれない。
「蔦のせいですよ」
「え……」
「ヴォルフガルト領にのみ棲息する稀少な植物でして……獲物を捕食する際、特殊な体液を分泌します。人が原液を取り込めば、思考力を奪われ、生殖本能が誘発されるのです」
ジョナサンがシャーロットの肩に顔を埋めながら、囁いた。
熱い吐息が耳朶に染み込む。
何か難しいことを言っている。
ぼんやりとしていたら、ジョナサンが蕩けた笑みを浮かべた。
「つまり、殿下が俺を求めても、何も問題はないということです」
だから俺にすべて委ねてください。
ジョナサンはシャーロットを膝に乗せた。
赤い瞳と正面から向かい合う。
どちらからともなく、唇と唇が重なった。
「ん……」
二人が身じろぐたびに、ちゃぷちゃぷと、水面が波打つ。
シャーロットの唇を啄みながら、ジョナサンは、真珠色に輝く身体を――肩から腰、太腿を愛撫した。
こちらを労わる優しさが、もどかしい。
「はあ……」
唇が離れそうになると、シャーロットはジョナサンを追いかけ、みずから唇を近づけた。
だが、ジョナサンは顎をのけぞらせ、彼女を拒む。
瞳を蕩けさせ訴えても、ジョナサンは答えてくれない。
――どうしてこの人は、私に意地悪をするのかしら。
こんなに、愛しているのに。
シャーロットを振りまわす辺境の狼。
どうすれば可愛く懐いてくれるのだろう。
――私がたくさん愛してやればいいのよ。
シャーロットはジョナサンの頬を両手で挟み、引き寄せる。
ジョナサンは抵抗せず、されるがままだ。
余裕の笑みが憎たらしい。
シャーロットは大きく口を開き、ジョナサンの唇に思い切り噛り付く。
「でんか……?」
ジョナサンが唖然とした様子で口を半開きにした。
その隙を見逃さず、シャーロットは彼のなかに舌を滑り込ませる。肉厚な舌が縮こまっているが、構うことなく、舌で絡め取った。
口内を隅から隅までたどり、いつも彼がシャーロットに仕掛ける悪戯に倣って、上顎を舐めあげる。
「ふ……ん……」
鼻にかかった喘ぎ声を押し殺しながら、粘膜越しに体温を分け合っているうちに、ジョナサンが勢いを取り戻した。
「殿下――っ」
歯がぶつかるほど激しい口づけを交わし合う。
湯が激しく揺れ、パシャパシャと水面に水しぶきが上がった。
ジョナサンは片腕でシャーロットの背中を支えながら、もう片手で乳房を揉んだ。
交互にふくらみを揉みし抱かれつつ、凝った突起を引っ張られる。
「んっ、あ、ん……」
浴室に嬌声が響き、こだました。
甘い責め苦に、シャーロットは悶え、その拍子にキスが解ける。
ジョナサンがシャーロットをさらに引き寄せ、硬い雄を秘所に擦りつけた。
入りそうで入らないもどかしさに、シャーロットは腰を揺らす。
ジョナサンはシャーロットのなかを犯そうとはせず、首筋を何度も舐めあげ、胸を弄んでばかりいる。
首筋を甘噛みするジョナサンに対抗して、シャーロットは彼の耳にかぷりと噛みついた。
ジョナサンがびくりと肩を跳ね上げる。
見る間にかじったところが、真っ赤になった。
――可愛らしいこと。
シャーロットは相好を崩した。妖艶な色香をまとう妖精姫を前に、ジョナサンは喉を鳴らす。
「……もう我慢できません」
ジョナサンは水面に漂うプラチナブロンドの髪を一房すくい上げ、
「続きはベッドの上で致しましょう」
と、シャーロットを湯船から引き揚げた。
やわらかい明かりが部屋に満ちている。
いくつもの燭台に火が灯された室内は、いつか訪れた殺風景な景色とは打って変わっていた。
落ち着いた色合いの調度品がそろえられている。
重厚感のあるベッドからは、爽やかな木の香りがした。
「まるで月の精霊のようですね……」
シャーロットは、薄手の寝衣をまとい、ベッドに横たわっていた。
プラチナブロンドの髪がシーツの上に扇状に広がっている。
輝く髪に負けじと、薄衣を透かして、乳白色の肢体が蝋燭の明かりにまろやかに照らし出されていた。
――それを言うなら貴方だって、美しいわ。
蕩けた表情でシャーロットを愛でるジョナサンは、一糸まとわぬ姿を晒している。
どこもかしこも、しなやかな筋肉に覆われ、細く引き締まっていた。
贅肉のない身体は、さながら孤高に生きる狼を思わせる。
紅い瞳を優しく細め、ジョナサンはシャーロットの髪に節くれ立った手指を伸ばした。
手櫛で髪をとかれた瞬間。
血まみれのジョナサンの姿が瞼の裏に蘇る。
シャーロットを守るため戦った彼を、恐れる必要などないのに、身体がこわばった。
「……俺が恐ろしいですか?」
ジョナサンは寄る辺のない子どものように、不安げな表情をみせる。
シャーロットの感情が手に取るように判るくせに、こちらの気苦労に思い至らないのが、不思議でならない。
聡いくせに、鈍い男。
――人の気も知らないでって、今までは思いこんでいたけれど……不安だったのね。
嘘を見抜けるからと言って、人から拒絶されるのを恐れる気持ちが変わるわけではない。
――私は今、我を忘れて貴方を求めているのよ。
だから、心の奥底にわだかまる本音を吐露してしまうのは、仕方のないこと。
シャーロットは震える手で、ジョナサンの手を引き寄せた。そのまま武骨な手を己の頬にあてがう。
「恐れる相手に、何度も抱かれるわけないでしょう」
催淫液の力を借りて素直になれるかと思いきや、顔から火を噴きそうなほどの羞恥心を覚えた。
後悔はしていない。
シャーロットはジョナサンの出方を待つ。
「――っ」
ジョナサンがシャーロットの肩に顔を埋め、華奢な肢体を抱きしめる。
ドクドクドク……と逞しい胸板から、力強い鼓動がした。
「……催淫液の効果がなくなるまで、抱き続けます。覚悟してください」
ジョナサンは律儀に告げると、シャーロットの唇を己の唇で塞いだ。
「ふ……んぅ」
風呂場でも散々口づけたのに、ジョナサンは飽くことなく、シャーロットの口内を蹂躙する。
お互いの唾液を絶えず交換し合う。
湯上がりで火照った身体がさらに燃えるように熱くなった。
朦朧としながらも、シャーロットはジョナサンを求め続ける。
「は……うぅん」
ジョナサンが口づけを解くと、細い透明な糸が、二人の間を繋いだ。
「殿下……愛しています」
シャーロットの首筋に唇を寄せ、執拗に舐めしゃぶる。
「――っ」
首筋にピリッとした痛みが走った。
その後も、同じ場所を舐めたり、吸ったり、齧ったりと、ジョナサンは執拗に唇で柔肌を愛撫する。
「――っ……はあ……」
食べられているんじゃないかと錯覚しそうなほど、ジョナサンは滑らかな肌を貪り続けた。
ゆるやかな快感に悶えるシャーロットの首筋から顔を離すと、今度は同じところを手で撫ではじめる。
「……?」
困惑顔を向けると、ジョナサンが含み笑いを返した。
シャーロットから死角になっているそこには、紅い鬱血痕が無数に残されている。
硬い指の腹が、幾度も赤い印をなぞった。
「まだまだ愛させてください」
無骨な手のひらが、肩や腰を這い回る。
壊れ物を扱うような手つきで、シャーロットを愛おしむ気持ちが十分に伝わってきた。
けれど。
――どうしてこんなにも切なくなるのかしら。
「殿下……?」
シャーロットの目尻から涙がとめどなく溢れ、こめかみを伝っていく。
ジョナサンはぎょっと目を見開き、幼子をあやす如く、シャーロットを膝の上に乗せ背中をさすった。
「もう隠し事は嫌よ……」
「俺は殿下に隠し事など」
「私を使って陛下に取り入ろうとしているのでしょう?」
王女である以上、政治の道具として躾けられ、定めを受け入れている。
愛しているだなんだと言い寄る貴公子たちは、皆が皆、腹に一物抱えており、下心なくシャーロットに近づく者などいなかった。
ジョナサンもそのうちの一人だったからといって、何を悲しむことがあろうか。
己が好意を寄せている。上々じゃないか。
そう割り切ろうとした。
それなのに――。
「あなたにだけは、道具扱いされたくないの……」
王族は個である前に、国そのものなのに。
国を背負う責務と引き換えに、贅沢を許されていた身としてはあるまじき弱音を吐いている。
――王女失格ね……。
鬱々と抱え続けた胸のつかえを、シャーロットは嗚咽とともに告白した。
涙で歪んだ視界に、顔面を蒼白にしたジョナサンが映る。
ジョナサンはシャーロットをきつく抱きしめた。
「貴方を利用して己の地位を高めようとしたことなど一度もありません」
聞いたことのない早口で捲し立てられ、シャーロットはジョナサンの言葉を理解するのに数秒を要した。
「なら、なぜ私を強引に王宮から連れ出したの?」
「それはその……グズグズしていて殿下を他の男に奪われてはたまったものではないと……先走りまして」
「……は?」
まさかそんな単純な思惑で、無謀な賭けを国王に持ちかけ、誘拐まがいの芸当をこなしたというのか。
「つまり、私を尻軽だと思っていたわけね」
「そんなことは一切思っておりません。ですが……陛下に認めてもらうには、己の力で道を切り開かねばと焦っておりました」
「焦った結果、貴殿が出した答えが、私に何も相談せず、連れ出すという暴挙だったわけね。……普通、娘をかどわかせば、相手の親への心証は悪くなると思わなくて?」
「全くその通りでございます」
ジョナサンは目に見えてしょぼんと肩を落とした。
つまり、連れ出した理由を後になって恥じ、言うに言えなくなった、ということなのだろう。
――馬鹿馬鹿しいことこの上ないわ。
もしも己がジョナサンに好意を抱いていなければ、どうしていたのかと腹を立てるも、そんな心配は不要なのだったと思い直す。
「……言ってくれないとわからないわ。私、あなたみたいに心を読めないんだもの」
「俺は人の心は読めませんよ。読めてたらこんな風に殿下を苦しめてませんから」
「……あなたなら、嬉々として私を弄びそうよ」
「信用がありませんね」
「自業自得じゃないかしら」
息が苦しくなるほど、抱きしめられているのに、心が満たされていく。
ジョナサンの力強い鼓動が、シャーロットの耳朶をくすぐった。
とても安心する音だ。このまま眠りに落ちてしまいたくなる。
「殿下……」
甘い囁きに顔をあげると、真剣な表情のジョナサンがいた。
濡れた鮮血のごとき輝きを放つ瞳が、シャーロットを熱っぽく見つめている。
落ち着きかけていた情欲の熾火が、息を吹き返した。
「私をあなたで満たして頂戴――んぅ」
言ったそばから唇を奪われた。
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ある事情のため男として生きる伯爵令嬢ルルシェ。彼女の望みはただ一つ、父親の跡を継いで領主となること――だが何故か王弟であるイグニス王子に気に入られ、彼の側近として長いあいだ仕えてきた。
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[男装令嬢は伯爵家を継ぎたい!]の改稿版です。
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