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実話系怪談
『いざなう女たち』 提供:川崎町子(仮名)
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これは私が小学生の頃の話です。
私の母の実家が海沿いの集落にある古い一軒家で、祖母が一人暮らしであるためか、お盆休みになると一家総出でお邪魔するのが毎年の慣例となっていました。
ですから、あちらについて一息つくと子供の時分は直ぐに海へと駆け出すんです。その年も、例に漏れず下に着込んだ水着に着替えて海に飛び込みました。
夏の海は、照り付ける日差しの暑さと、ひんやりと漂う海水の涼しさが相まって、なんとも心地よい空間でした。
私は乗ってきた浮き輪に身を預けて、買ってもらったサングラス越しに太陽を眺めながらぷかぷかと浮かんでいました。
浜辺では、心配性な母がこちらをハラハラしつつ伺いながら、パラソルの中で座っていました。
そのうち、パシャパシャと水がはねる音が近くで聞こえてきました。
最初は弟が来たのかと思って、特にそちらを見ずに、ぷかぷかとそのまま浮いていたんですが、
しばらくして、異変を感じました。
最初は私の後ろから聞こえてきたパシャパシャという音が、右から左から、いつの間にか周囲を取り囲むようにして聞こえてきているのです。
妙な気配に、思わずサングラスと共に太陽から視線を外し、横を見ると。
目が合いました。
女性でした。
髪の長い女の人が、鼻から上を水の上に出し、つり上がった細く鋭い目を、こちらにじっと向けていました。
あまりに唐突な出来事に、しばらく動かなくなった体で、周りに視線だけを送ると、さらに恐れるべきことに気が付きました。
その女の人、1人じゃありませんでした。
他にも、同じようでどこか少し違う容姿の、でも一様に全員が全員髪が長い女性が、私を取り囲みこちらを見つめていました。
パシャパシャという音は、その女性たちがいっせいにおいでおいでをしていて、それが水を弾いて生まれた音でした。
海面に浮かんだ髪の毛が辺りに放射状に散って、上から見れば私の当たりは真っ黒だったに違いありません。
次の瞬間、その女性たちがこちらに向かっていっせいに近づいてきました。
これにはさすがに、私の中の防衛本能が働いたのでしょうか。咄嗟に両手で辺りを払い除けると、それらが消えるより先にバランスが崩れて、浮き輪から落ちてしまいました。
相当沖の方へ来ていたのでしょう、足の下には何も無い空間が拡がっていて、いくら足をばたつかせようと体は海の底へと沈んでいきました。
次に気が付いたのは、祖母の家の居間でした。
どうやら私は浮き輪に乗って浮かんでいた辺から、様子がおかしかったらしく、近づいてみると既に意識は無くなっていたようです。
結局体には何の異常も見られなかったため、私は海へ近付くことを禁じられましたが、それ以外は毎年のような夏の時間が過ぎていきました。
ですが祖母はその翌年の夏、突然亡くなりました。
その周辺では珍しい高潮に足を攫われて、岸壁に頭をぶつけてなくなってしまったそうです。
祖母は漁師である祖父が亡くなってから海へ出ることが少なくなっており、その日はなぜ浜辺へと出ていたのかは分からないようです。
彼女たちが私を連れていくことが出来なかったから、代わりに…とも考えましたが、このことに関してはあまり深く考えないようにしています。
祖母が亡くなった今、海に面したあの家は継手がいなくなり、廃屋同然になっています。
あの海では、今も毎年誰かしらが溺れてなくなる事故が、度々起きているそうです。
私の母の実家が海沿いの集落にある古い一軒家で、祖母が一人暮らしであるためか、お盆休みになると一家総出でお邪魔するのが毎年の慣例となっていました。
ですから、あちらについて一息つくと子供の時分は直ぐに海へと駆け出すんです。その年も、例に漏れず下に着込んだ水着に着替えて海に飛び込みました。
夏の海は、照り付ける日差しの暑さと、ひんやりと漂う海水の涼しさが相まって、なんとも心地よい空間でした。
私は乗ってきた浮き輪に身を預けて、買ってもらったサングラス越しに太陽を眺めながらぷかぷかと浮かんでいました。
浜辺では、心配性な母がこちらをハラハラしつつ伺いながら、パラソルの中で座っていました。
そのうち、パシャパシャと水がはねる音が近くで聞こえてきました。
最初は弟が来たのかと思って、特にそちらを見ずに、ぷかぷかとそのまま浮いていたんですが、
しばらくして、異変を感じました。
最初は私の後ろから聞こえてきたパシャパシャという音が、右から左から、いつの間にか周囲を取り囲むようにして聞こえてきているのです。
妙な気配に、思わずサングラスと共に太陽から視線を外し、横を見ると。
目が合いました。
女性でした。
髪の長い女の人が、鼻から上を水の上に出し、つり上がった細く鋭い目を、こちらにじっと向けていました。
あまりに唐突な出来事に、しばらく動かなくなった体で、周りに視線だけを送ると、さらに恐れるべきことに気が付きました。
その女の人、1人じゃありませんでした。
他にも、同じようでどこか少し違う容姿の、でも一様に全員が全員髪が長い女性が、私を取り囲みこちらを見つめていました。
パシャパシャという音は、その女性たちがいっせいにおいでおいでをしていて、それが水を弾いて生まれた音でした。
海面に浮かんだ髪の毛が辺りに放射状に散って、上から見れば私の当たりは真っ黒だったに違いありません。
次の瞬間、その女性たちがこちらに向かっていっせいに近づいてきました。
これにはさすがに、私の中の防衛本能が働いたのでしょうか。咄嗟に両手で辺りを払い除けると、それらが消えるより先にバランスが崩れて、浮き輪から落ちてしまいました。
相当沖の方へ来ていたのでしょう、足の下には何も無い空間が拡がっていて、いくら足をばたつかせようと体は海の底へと沈んでいきました。
次に気が付いたのは、祖母の家の居間でした。
どうやら私は浮き輪に乗って浮かんでいた辺から、様子がおかしかったらしく、近づいてみると既に意識は無くなっていたようです。
結局体には何の異常も見られなかったため、私は海へ近付くことを禁じられましたが、それ以外は毎年のような夏の時間が過ぎていきました。
ですが祖母はその翌年の夏、突然亡くなりました。
その周辺では珍しい高潮に足を攫われて、岸壁に頭をぶつけてなくなってしまったそうです。
祖母は漁師である祖父が亡くなってから海へ出ることが少なくなっており、その日はなぜ浜辺へと出ていたのかは分からないようです。
彼女たちが私を連れていくことが出来なかったから、代わりに…とも考えましたが、このことに関してはあまり深く考えないようにしています。
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あの海では、今も毎年誰かしらが溺れてなくなる事故が、度々起きているそうです。
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