ソッチドッチ ~魔王と聖女の入れかわり! 入れかわれば、本当の姿が見えてくる?~

櫻恭史郎

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第183話 二手に分かれての旅

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 フランスは、魔王イギリスの姿で、ブールジュをぎゅっと抱きしめて言った。

「じゃあ、ブールジュ。またね」

「うん。また、会おう、フランス」

「手紙、送るわ」

「帰ったらすぐ送ってよ」

「うん」

 お互いの頬にキスして、もう一度ぎゅっとする。

 なんだか、自分の見た目がイギリスと入れかわっているから、ちょっと変な感じだけど……。

 でも、しっかり、ぎゅっとしておく。

 なんとなく離しがたい。
 これまで以上に、会うことが難しくなりそうで……。
 この温もりを、覚えておこう。

 フランスは、名残惜しいきもちを無理に断ち切るようにして、ブールジュを離した。ブールジュが城の中にもどる姿を、最後まで見届ける。

 大きく息を吸い込んで、気持ちを切り替える。

 さあ、しっかりするのよ!

 フランスは、用意されている一番大きな馬車の中をのぞきこんだ。

「アミアン、大丈夫そう?」

 すでに馬車の中にいたアミアンがにっこり答える。

「なんだか、大丈夫じゃなさそうですが、こちらはお任せください」

 フランスの視線の先では、馬車の中で横たわる人物がふたり。

 一人は、カーヴだ。
 傷の影響で熱が出ているらしい。

「カーヴ、よく眠っているわね」

「ええ、馬車の揺れが傷につらいだろうからって、診療所でよく眠れる薬をもらったんです。朝から飲んだので、ぐっすりですね」

 カーヴには、イギリスとフランスが、別行動で教会に戻ることは伝えてある。安全上の対策だと言うと、納得してくれた。

 まさか、大公国まで行って、賢者さがしの冒険をして帰ってくるなんて、思ってもみないだろうけれど。

 フランスは、反対側の座席に横になっている男に目をやって言った。

「こっちは、もう、だめそうね」

「ええ、お可哀そうに、今日一日はつらそうです」

 アミアンとの勝負で、またしても打ちのめされたダラム卿が、すさまじい二日酔いで寝込んでいる。

 寝ているわけではなさそうだが、もう、目をあける余裕もないらしい。

「アミアン、ふたりのこと、お願いね」

「はい、お任せください」

「これ以上、ダラム卿のこといじめちゃだめよ」

 アミアンが、にっこりした。

 なぜだか、まだまだダラム卿がいじめられるような気がする。
 気のせいかしら……。

 アミアンったら、もしかして、相当ダラム卿のこと気に入ったのかな。

「じゃあ、また教会でね」

「お嬢様、お気をつけて」

 フランスは最後にちらっと、ほとんど死体みたいになっているダラム卿を見た。

 フランスが豪華な馬車の扉を閉める寸前、ダラム卿が「アミアン~」とかなり弱弱しい声で言いながら、アミアンに手を伸ばしたところが見えた。

 ま、仲良くやるでしょ。

 アミアンたちの乗る豪華な馬車をはなれ、となりにある、すこし小さめの馬車に乗り込む。中には、すでに聖女フランスの姿をしたイギリスが乗り込んで、お行儀よく座っていた。

 すぐに、馬車が走りはじめる。

 フランスは、イギリスが馬車酔いしないように、隣にすわって、その手をもみながら聞いた。

「この後は、どうやって大公国まで移動するの?」

「午前中いっぱいは馬車で移動する。昼食をとって、ひとけのない場所まで移動したら、その後は、竜の姿で飛んでゆく」

 アミアンたちが乗る豪華な馬車は、人の多い街道を通って教会まで戻る。

 だから、朝から別行動なのね。

 それにしても、あの告解室みたいなのがないけれど、どうやって移動するのかしら。



     *



 フランスは昼食も終わり、正午をすぎて自分自身の姿に戻ってから、ひとけのない場所に立っていた。

 まわりには、フランスが乗って来た馬車と、それについてきた荷車と、帝国の騎士たちが馬に乗って何人かいるくらいだ。

 あたりには、草っぱらと森ばかりが広がっている。これと言って何もない場所だった。

 フランスは目の前のものを見て言った。

「まさか、このおっきな木箱に乗るの……?」

「ああ、これなら、そこらへんに置いていても、盗まれることもないだろう。見るからに、価値もなさそうだし」

「ほんとに、見るからに、ただの使い古した大きな木箱って感じだけれど……。これ、乗っている間に底が抜けたりしない?」

「見た目は良くないが、つくりはしっかりしている。大丈夫だ」

「……これ、どうやって中に入るの?」

 大きな木箱は、フランスの胸くらいの高さまである。どう考えてもまたげそうにない。

 するとイギリスが、男が数人がかりでしか持ち上げられなさそうな大きな木箱を、片手で斜めにした。

 なるほど、これなら入れるわ。

 フランスが中に入ると、イギリスがゆっくりと箱の傾きをもどした。
 フランスは木箱の中から顔を出して言った。

「これって、上は空きっぱなしなのね」

「そうだ。風がきつくて寒かったら、中にいくつか防寒具を入れているから、それを着ろ」

 木箱の中には、荷物がいくらかと、大きめのクッションのようなものも置かれていた。

 座り込んで、だらっとできそう。

 イギリスが赤い竜の姿にかわる。

 フランスは、木箱から頭をのぞかせた状態のまま、待った。
 イギリスが、竜の姿で中に入れみたいな仕草をする。

「せっかくだから、外の景色見たいわ。だめ?」

 赤い竜がうなずいて、そのまま木箱を両手で抱え持つようにした。フランスは、木枠をぎゅっとにぎって、足をひろげ、しっかりと立った。

 赤い竜が、一度頭を低くしてから、勢いよく飛び上がる。

 フランスはその勢いに、しゃがみそうになったが、なんとか耐えた。すぐに目をあけて、前を見る。

 わあ、すごい。

 ぐんぐん、景色が下にむかって遠ざかり、それと同時に視界が広がって景色が大きくなった。

 またまた、大冒険ね!
 これなら、酔わないんじゃない?


 わくわくよ!



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