狂暴騎士と小さな許嫁

yu-kie

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 ミアが王宮の生活にようやくなれてきたある日私室にいたミアのもとに、カイトの訃報がとんできた。

「姫様大変です!殿下が瀕死の状態で…長年ミア様に求婚をしていた、隣国バーミア第3王子配下の手の者に襲撃を受け…」
「えっ?あの強いカイト様が…」

 ミアはカイトが死んだのだと思えば目に涙をためて床に座りこんで泣き出した。

 “辺り一面灰色の無数の羽がミアの周りでふわふわと舞うように出現しては消えていった。”


 泣きながらミアは幼い頃の記憶を思い出せば…過去に一度キラ国の建国祭で招待客の一人だったバーミア国王が連れてきていた第3王子に攫われた記憶が蘇る。

 当時10歳だったミアは5歳年上のバーミアの第3王子に攫われた際、止めに入ったアンナに剣を向けた事を今も覚えていた。

 すぐにバーミア国王が気づいてミアを解放し王子の無礼をミアと王に謝罪したのだが…ミアはアンナを傷つけた事を許すことはできなかった。キラ国は国の至宝であるミアが危険にさらされたことから…以後バーミアからの縁談話や祭典などの招待を受けてもミアを向かわせることはなかった。

 こじらせたバーミア国の第3王子の行動はエスカレートしていき、成人を迎えたミアを再び攫おうとした。それはミアがこのテイマス国に来るまでの数年で何度かあった事から…ミアはキラ国より安全と思われるテイマス国に来ることになり…今に至るのだった。


 ミアは泣いていると部屋のドアがノックされた。

「ミア王女殿下、カイト殿下がお戻りになりました。」

 カツン、カツン。

 ミアはその足音に驚き顔をあげると、目の前に、首から下げた白い布で右腕を吊るしたカイトの姿が目に入った。

「瀕死だと…知らせ…がぁ。わあ~!!」

 ミアの隣にしゃがみ込むアンナは驚き言葉を詰まらせ泣き出した。

「ミア王女、今戻った。」

「カイト様!」

 ミアは泣きながら駆け寄りカイトに飛びつくと、その足元から白く光る魔法陣が出現した。

「ヴォン」

「ミア王女、治療は無用だ。」
「ですが!」
「これは日が経てば治る傷。そのままにしてほしい。」
「どうしてですか?」
「あなたを飾り物か秘宝かのように欲しがる輩を排除した証なのだ…その余韻に今しばらく浸らせて貰えないか?」

 ミアは思わず抱きついた腕に力が入り、カイトは歯を食いしばりミアを苦笑いしながら見下ろした。

「だから…少し力を緩めてもらえないか?」

「ひゃん。」

 ミアは思わず手を離して後退り、カイトが鬼の形相でミアを睨んでいると勘違いしている(泣いていたはずの)アンナが慌ててミアを抱き寄せるという…感動的な場面で摩訶不思議な光景が繰り広げられていた。

 
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