白熊の獣騎士と贄の花嫁

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第1章・贄の花嫁【序】

責任?

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 その日、マナは女性の扱いに不慣れであったがために…積極的に、しかも気持ちのよい場所を狙いもふもふとすり寄るライカに動揺し…頭はまっ白。しばらくされるがままだったマナは、国王の使いの者が様子を見に来たことで我に返った。

 ‡

王の使いが部屋の前に来たとき…

「国王より様子を見に行くよう言われて参りました。王のお側にお仕えしております、ルカナともうします、入ります!」

 床に倒れた配下の獣人たちは起き上がり…マナにすり寄るライカの様子に目を泳がせた。

 ルカナは国王に使える近衛兵の半獣人、人間の姿をしており熊の白い耳がブラウンの髪からひょこりと出ているのが特徴で、容姿の綺麗な青年。ルカナは獰猛な獣人たちの拍子抜けした表情に違和感を抱きながら、その間を掻き分けるように奥へとすすんだ。

 ルカナの視界に入ったのは、押し倒されたマナと、お腹の上辺りにスカートが乱れながら抱きついて眠るライカの姿だった。
 
「王子!何をなされているのですか?幼い娘を襲うなど!!」

 マナは鬼の形相で見下ろすルカナと目が合い正気に戻った。

「こ、これは俺が襲われ…」

「あなたの力なら抵抗できたでしょう…嘘はいけません。すぐに支度を、王にご報告に向かいます。」

 マナは起き上がれば、ライカはお腹からずるりと落ち、床にコロンと転がった。

「マナ様、もふもふ。」

ライカは起き上がると、床に座った状態のマナに再びギュッと抱きつきうるうるした瞳で頬をマナの頬にすりよせた。

「もふもふ。」

※ルカナには、「もふもふ」→「もっともっと」と聞こえた模様。国王のスケベな光景を目にして来たために…植え付けられた固定観念により、ルカナはマナの手により《女》にされたと思ってしまった。

 マナの黒い瞳はうるうる。

 屈強な白熊の獣人は途方にくれた。

 ‡

「……と言うわけです。」

 王の執務用の部屋に訪れたルカナは王に報告をし、一緒に来たマナは項垂れていた。

「ほぉ~流石私の息子だ。手が早いではないか…戦力になるそうだな?女の経験もなく案じていたが…よいではないか。」

「……よくないですよ。」

 マナはポツリと呟けば…王は立ちあがりマナの前に歩みよった。

 マナは身長が2㍍あるが、王は3㍍とマナよりも大きな体で胸を張ると恫喝どうかつのように叫んだ。

「馬鹿者!お前のはくがあがる良い機会だ!嘘でも本当でも、この話を利用しないてはない!早速だがルカナ、ライカの故郷リュクス国に書簡を送りたい使者を呼んでおけ。」

「はっ!失礼します!」

ルカナは足早に部屋を去り、王とマナは二人きり、王は再び執務用の大きな椅子に腰かけるとマナに優しく問いかけた。

「あの…贄だと言い切った娘…ライカといったな、お前は嫌いか?」

「…それ以前と言いますか…俺をもふりたいと飛び付かれまして…正直…何故だか抵抗できませんでした。痒い場所?とでもいいますか…触りかたも優しく、大胆に抱きつかれたり撫でられたり、頬擦りされたり…気持ちよくて、恥ずかしくて…どうしたら良いか…頭の中はまっ白でした。」

「ハッハッハッ!よいではないか。」

「はあ。」

「お前が襲ったことにし、責任感のあるお前は嫁にもらうと発言した。そう向こうに伝えるとしよう!」

「嫁ですか?」

「お前も18だ。婚約しているものも居ないのだ、何の障害もない、嫁にしたら好きに扱え。」

「…はい。」

 そして、ライカは正式に花嫁になる事が決まった。

 ‡

 一方、なにも知らないライカは一時的に空いていた客間に押し込まれ、侍女が用意したお菓子を頬張りご満悦だった。
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