7 / 11
7 <王の新しい姿>②
しおりを挟む城下町は賑わっていた。
悪魔の王様は町の中で、いたずらをした子供に親はしつけの一貫としてこう言うのだ。
『悪い子は怖~い悪魔の王様に食べられちゃうよ。』と。
子供は泣き出し素直に『ごめんなさい』と言うのだ。
町の土産物屋には、ラーズの側に従える黒い羊をイメージして作ったぬいぐるみ、ハンカチが売れていた。国民のなかでラーズは身近な存在となり、信頼される存在となった。
依頼されこの国へ来て王都にたどり着いたのは3日目の昼。馬車で移動し途中立ち寄った街の宿に泊まりその後は徒歩で半日かけここまで来たのだが…勇者の一行は、先導している案内人の話している事に対し徐々に不信感を抱いていった。
※ ※ ※
町の教会に立ち寄った冒険者一行は、祈りに集まる人々の会話に耳を傾け情報収集をした。
「悪魔の王様、また従順な部下を増やしたそうよ。孤児院の院長もサリア様を誘惑したとかで従順な部下になったというじゃない?」
「悪魔の王様の呪いね。」
祈りの後、婦人たちはそんな話に盛り上がりながらバラバラと席をたち帰ってゆく。
勇者は目の前の席から立ちあがった婦人に声をかけようとすると、ナギ・ランキリュはとっさに勇者に声をかけた。
「勇者様、この教会には孤児院がありまして、院長があの男でございます。」
ちょうどその時、協会を出てゆく人混みとすれ違うように、聖職者を思わせる白銀の髪の青年ジルコが子供達の手を引き教会へと入ってきていた。
「ランキュリさん、彼が何か?」
「今噂にあった王の呪いを受けた者です。」
「教会にいるなら神父が救済しないの?」
そこに割って入ったのは勇者の仲間、清楚で可愛らしい神官の少女だった。
「解けない呪いと恐れられています。」
「へぇ~にしては、私には邪悪なものは何も感じないのだけどどうして?」
「わ、そ、それだけ王は強いのだとお、思います。」
グイグイ質問する神官少女に、冷や汗をかきながら答えるナギ・ランキュリに、神官少女も怪しむように冷たい眼差しを向けたのだった。
勇者達が見守るなか、ジルコは子供達と並ぶ椅子の前にある舞台に上がり子供達を並ばせ、神父は舞台袖のピアノに向かい椅子に座り、ジルコが見守るなか、指揮をする孤児院の職員が指揮をとり、唄の練習が始まった。
ジルコの首には隠すことなく黒い羊の模様が存在感を主張する。しかし子供達を見つめる眼差しは穏やかで、唄を止めては、ミスを優しく指摘し、子供達は素直に返事をしてまた唄を再開。その繰り返しを行い、勇者達はその様子を見守っていた。
そんな中、ジルコはマントを身に着けた6人組が唄を聞いてくれている旅人かと、声をかけることにした。
「失礼ですが皆さんは旅のお方ですか?」
「はい。お邪魔でしたか?子供達の唄声に聞き惚れてしまって…すみません。」
勇者は立ち上がり、礼儀正しく一礼すれば他のメンバーも続いて立ち上がり一礼した。
「そうでしたか、ありがとうございます。お時間許す限りぜひ聞いていてください。その方が子どもたちも頑張れるかもしれません。」
ジルコは6人を順に見渡し笑顔を向けると、神官少女と成人した魔導師美女は目を輝かせ頬を赤くし頷いた。
「「はい!」」
「女どもはイケメン好きだな。」
寡黙な屈強な体の幻獣使いの最年長の壮年は腕を組み呆れたように呟いた。
ジルコはこの時、フードを深く被ってうつむく人物を目にすると、違和感のあるフードの膨らみにニヤリと小さく微笑んだ。
ランキュリは一行に合図を送り教会をでると、辺に誰もいないことを確認した。
「呪いを受けたもの達に関わるのは危険です。早く目的の場所へ向かいましょう。」
「おいおい、ランキュリさん、僕らは悪い奴らを裁くために来たんだから呪いから解放するために戦うべきじゃないかな?」
勇者の発言のあと、神官と魔導師は声を合わせてランキュリに訴えた。
「「お兄さん(ジルコ)を助けて!」」
ランキュリは冷や汗をかき動揺する中、目の前の勇者達がランキュリの背後を指差した。
ランキュリは背後に感じる気配に、振り返るとニヤリと笑うジルコの姿があった。
「どうしたんです?喧嘩ですか?」
ジルコの笑みに女達は顔を赤くし勇者達の背後に隠れるなか、ジルコは目の前のランキュリのフードに手をかけると、現れた羊の角を生やした人間の姿のランキュリに冷たい眼差しを向け、勇者は慌てるようにランキュリの腕を引っ張り、ジルコから引き離すと、勇者の背後から神官の少女がとっさに言葉を発した。
「こ、子供達はどうしたんですか?」
「彼らは練習中です。私はようがあると言って席を外して来ました。それより、そこの羊の獣人、さっきから物騒なお話をしていましたね。」
「何を?」
勇者の問に、ジルコは狼の尻尾と髪からは獣の耳がひょっこり出現した。
「生憎私は嗅覚と聴覚が良いんです。因みに可憐な女性は好物です。」
「「きゃー」」
神官少女と魔導師美女は抱きしめ合って黄色い悲鳴をあげた。
「私と戦いたいなら相手しますよ?あの方のために戦うのは許可されてますので、どうぞかかってきてください。何人でも構いませんよ。」
「一対一で、僕が行きます。」
勇者は、防具を隠していたマントを外すと剣を構えた。
「なら私はこれで行きましょう。」
ジルコは尻尾と、耳の他に両腕が獣化しその指先の爪はジルコの意思に従い短剣のように鋭くのびた。
二人は戦いを始め攻防戦の末、ランキュリがジルコの背後にまわり剣を抜く瞬間、黒い霧がたちこめた。
「ナギ・ランキュリ。」
ジルコの背後で剣を構えていたランキュリは手を止め、ジルコと勇者の攻防戦も中断した。
「サリアが孤児院にようがあると…以前危険なめにあったから用心にとついてきてみれば…ジルコ、お前ともあろうものが刺されそうになるとはな。」
「国王陛下…さま。」
魔王登場!緊迫した空気の中、侍従を連れたお姫様が登場した。可憐で小柄で可愛らしい少女はピンクのドレス姿に、腕には沢山の包を入れた篭バッグを持ちぷるぷると腕を震わせながら必死にはしり、国王ラーズに追いつくと、その服の裾を摘んで、抗議の眼差しで、頬を膨らませてラーズを見上げた。
「ラーズ様!急に居なくならないでください。」
「サリア、彼らが私に用があるようだ…悪いが先に教会に。いいね?」
「…はい。」
サリアは渋々コクリと首を小さく縦に振り、侍従が荷物を持とうとするのを断ると、目の前のジルコと冒険者達に天使の笑みを向けドレスの裾を摘み上品にお辞儀をして、先を急ぐように教会へと向かった。
「荷物をお持ちします!」
「いいの。」
「ですが~」
10
あなたにおすすめの小説
異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました
黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。
彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。
戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。
現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと!
「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」
ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。
絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。
伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進!
迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る!
これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー!
美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。
人生、逆転できないことなんて何もない!
最安もふもふ三匹に名前をつける変な冒険者ですが、この子たちの力を引き出せるのは私だけです ~精霊偏愛録~
Lihito
ファンタジー
精霊に名前をつける冒険者は、たぶん私だけだ。
うさぎのノル、狐のルゥ、モモンガのピノ。三匹とも最安の契約で、手のひらに乗るサイズ。周りからは「手乗り精霊で何ができる」と笑われている。
でも、この子たちへの聞き方を変えるだけで、返ってくる答えはまるで違う。三匹の情報を重ねれば、上位の精霊一体では見えないものが見える。
上位パーティが三度失敗した大型討伐。私は戦わない。ノルに地中を、ピノに上空を、ルゥに地上を調べさせて、答えを組み上げる。
——この世界の精霊の使い方、みんな間違ってませんか?
好きすぎます!※殿下ではなく、殿下の騎獣が
和島逆
恋愛
「ずっと……お慕い申し上げておりました」
エヴェリーナは伯爵令嬢でありながら、飛空騎士団の騎獣世話係を目指す。たとえ思いが叶わずとも、大好きな相手の側にいるために。
けれど騎士団長であり王弟でもあるジェラルドは、自他ともに認める女嫌い。エヴェリーナの告白を冷たく切り捨てる。
「エヴェリーナ嬢。あいにくだが」
「心よりお慕いしております。大好きなのです。殿下の騎獣──……ライオネル様のことが!」
──エヴェリーナのお目当ては、ジェラルドではなく獅子の騎獣ライオネルだったのだ。
【完結】モブ令嬢のわたしが、なぜか公爵閣下に目をつけられています
きゅちゃん
ファンタジー
男爵家の三女エリーゼは、前世の記憶を持つ元社畜OL。社交界デビューの夜、壁際でひとりジュースを飲んでいたところを、王国随一の権力者・ヴァルナ公爵カイルにスカウトされる。魔法省の研究員として採用されたエリーゼは、三年間誰も気づかなかった計算の誤りを着任三日で発見。着々と存在感を示していく。一方、公爵の婚約候補と噂されるクロード侯爵令嬢セラフィーヌは、エリーゼを目障りに思い妨害を仕掛けてくるが...
悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。
向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。
それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない!
しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。
……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。
魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。
木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
「貧相な小娘」と罵った第一王子へ。番(つがい)は貴方ではなく、国王陛下(お父様)でした
しえろ あい
恋愛
「お父様、わたくし、あの方と目が合った瞬間、分かってしまったのです」
十六歳のデビュタントの夜、ルーセント侯爵令嬢フェリシアを待っていたのは、残酷な罵倒だった。第一王子カシウスは、可憐な白いドレスを纏った彼女を「貧相な小娘」と呼び、己の番(つがい)であることを真っ向から否定する。
会場に響く冷笑と、愛用の刺繍に込めた自信さえ打ち砕くような屈辱。しかし、絶望の淵に立たされた彼女を見つめていたのは、王子ではなく、圧倒的な威厳を放つ「ある男」だった。
魂を焦がすような熱い視線が重なり、静まり返る謁見の間。この出会いが、王室を揺るがす大事件の幕開けになるとは、まだ誰も知らない。自身の価値を否定された少女が、真実の愛によって世界で最も幸福な王妃へと駆け上がる、逆転溺愛ストーリー。
※小説家になろう様にも投稿しています※
追放先で気づいた。この世界の精霊使いは全員、聞き方を間違えている~最安もふもふ白狐と始めた、問いかけの冒険~
Lihito
ファンタジー
精霊と暮らす世界で、ノエルはギルドを追い出された。処理ミスは誰より少ない。でも「やりづらい」の一言で、理由には足りた。
手元に残ったのは、最安で契約した手のひらサイズの白い子狐だけ。言葉はたどたどしいし、力もない。誰が見ても「使えない」と笑う精霊だ。
たどり着いた町では疫病が広がっていた。高額な精霊が三度探して見つからない薬草。ノエルは最弱の白狐と半日で見つけ出す。
力で勝ったんじゃない。聞く範囲を絞り、段階を分け、小さな鼻に合った問いを重ねただけ。
——なぜこの世界では、誰も精霊への「聞き方」を知らないのか。
その違和感が、ノエルの旅を動かしていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる