羊の王は悪魔を装い子羊を溺愛する

yu-kie

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7 <王の新しい姿>②

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 城下町は賑わっていた。

 悪魔の王様は町の中で、いたずらをした子供に親はしつけの一貫としてこう言うのだ。

『悪い子は怖~い悪魔の王様に食べられちゃうよ。』と。

 子供は泣き出し素直に『ごめんなさい』と言うのだ。

 町の土産物屋には、ラーズの側に従える黒い羊をイメージして作ったぬいぐるみ、ハンカチが売れていた。国民のなかでラーズは身近な存在となり、信頼される存在となった。

 依頼されこの国へ来て王都にたどり着いたのは3日目の昼。馬車で移動し途中立ち寄った街の宿に泊まりその後は徒歩で半日かけここまで来たのだが…勇者の一行は、先導している案内人の話している事に対し徐々に不信感を抱いていった。

  ※  ※  ※

 町の教会に立ち寄った冒険者一行は、祈りに集まる人々の会話に耳を傾け情報収集をした。

「悪魔の王様、また従順な部下を増やしたそうよ。孤児院の院長もサリア様を誘惑したとかで従順な部下になったというじゃない?」
「悪魔の王様の呪いね。」

 祈りの後、婦人たちはそんな話に盛り上がりながらバラバラと席をたち帰ってゆく。

 勇者は目の前の席から立ちあがった婦人に声をかけようとすると、ナギ・ランキリュはとっさに勇者に声をかけた。

「勇者様、この教会には孤児院がありまして、院長があの男でございます。」

 ちょうどその時、協会を出てゆく人混みとすれ違うように、聖職者を思わせる白銀の髪の青年ジルコが子供達の手を引き教会へと入ってきていた。

「ランキュリさん、彼が何か?」
「今噂にあった王の呪いを受けた者です。」
「教会にいるなら神父が救済しないの?」

 そこに割って入ったのは勇者の仲間、清楚で可愛らしい神官の少女だった。

「解けない呪いと恐れられています。」
「へぇ~にしては、私には邪悪なものは何も感じないのだけどどうして?」
「わ、そ、それだけ王は強いのだとお、思います。」

 グイグイ質問する神官少女に、冷や汗をかきながら答えるナギ・ランキュリに、神官少女も怪しむように冷たい眼差しを向けたのだった。

 勇者達が見守るなか、ジルコは子供達と並ぶ椅子の前にある舞台に上がり子供達を並ばせ、神父は舞台袖のピアノに向かい椅子に座り、ジルコが見守るなか、指揮をする孤児院の職員が指揮をとり、唄の練習が始まった。

 ジルコの首には隠すことなく黒い羊の模様が存在感を主張する。しかし子供達を見つめる眼差しは穏やかで、唄を止めては、ミスを優しく指摘し、子供達は素直に返事をしてまた唄を再開。その繰り返しを行い、勇者達はその様子を見守っていた。

 そんな中、ジルコはマントを身に着けた6人組が唄を聞いてくれている旅人かと、声をかけることにした。

「失礼ですが皆さんは旅のお方ですか?」
「はい。お邪魔でしたか?子供達の唄声に聞き惚れてしまって…すみません。」

 勇者は立ち上がり、礼儀正しく一礼すれば他のメンバーも続いて立ち上がり一礼した。

「そうでしたか、ありがとうございます。お時間許す限りぜひ聞いていてください。その方が子どもたちも頑張れるかもしれません。」

 ジルコは6人を順に見渡し笑顔を向けると、神官少女と成人した魔導師美女は目を輝かせ頬を赤くし頷いた。

「「はい!」」
「女どもはイケメン好きだな。」

 寡黙な屈強な体の幻獣使いの最年長の壮年は腕を組み呆れたように呟いた。

 ジルコはこの時、フードを深く被ってうつむく人物を目にすると、違和感のあるフードの膨らみにニヤリと小さく微笑んだ。

 ランキュリは一行に合図を送り教会をでると、辺に誰もいないことを確認した。

「呪いを受けたもの達に関わるのは危険です。早く目的の場所へ向かいましょう。」
「おいおい、ランキュリさん、僕らは悪い奴らを裁くために来たんだから呪いから解放するために戦うべきじゃないかな?」

 勇者の発言のあと、神官と魔導師は声を合わせてランキュリに訴えた。

「「お兄さん(ジルコ)を助けて!」」

 ランキュリは冷や汗をかき動揺する中、目の前の勇者達がランキュリの背後を指差した。

 ランキュリは背後に感じる気配に、振り返るとニヤリと笑うジルコの姿があった。

「どうしたんです?喧嘩ですか?」

 ジルコの笑みに女達は顔を赤くし勇者達の背後に隠れるなか、ジルコは目の前のランキュリのフードに手をかけると、現れた羊の角を生やした人間の姿のランキュリに冷たい眼差しを向け、勇者は慌てるようにランキュリの腕を引っ張り、ジルコから引き離すと、勇者の背後から神官の少女がとっさに言葉を発した。

「こ、子供達はどうしたんですか?」
「彼らは練習中です。私はようがあると言って席を外して来ました。それより、そこの羊の獣人、さっきから物騒なお話をしていましたね。」
「何を?」

 勇者の問に、ジルコは狼の尻尾と髪からは獣の耳がひょっこり出現した。

「生憎私は嗅覚と聴覚が良いんです。因みに可憐な女性は好物です。」
「「きゃー」」

 神官少女と魔導師美女は抱きしめ合って黄色い悲鳴をあげた。

「私と戦いたいなら相手しますよ?あの方のために戦うのは許可されてますので、どうぞかかってきてください。何人でも構いませんよ。」

「一対一で、僕が行きます。」

 勇者は、防具を隠していたマントを外すと剣を構えた。

「なら私はこれで行きましょう。」

 ジルコは尻尾と、耳の他に両腕が獣化しその指先の爪はジルコの意思に従い短剣のように鋭くのびた。
 
 二人は戦いを始め攻防戦の末、ランキュリがジルコの背後にまわり剣を抜く瞬間、黒い霧がたちこめた。

「ナギ・ランキュリ。」

 ジルコの背後で剣を構えていたランキュリは手を止め、ジルコと勇者の攻防戦も中断した。

「サリアが孤児院にようがあると…以前危険なめにあったから用心にとついてきてみれば…ジルコ、お前ともあろうものが刺されそうになるとはな。」
「国王陛下…さま。」

 魔王登場!緊迫した空気の中、侍従を連れたお姫様が登場した。可憐で小柄で可愛らしい少女はピンクのドレス姿に、腕には沢山の包を入れた篭バッグを持ちぷるぷると腕を震わせながら必死にはしり、国王ラーズに追いつくと、その服の裾を摘んで、抗議の眼差しで、頬を膨らませてラーズを見上げた。

「ラーズ様!急に居なくならないでください。」
「サリア、彼らが私に用があるようだ…悪いが先に教会に。いいね?」
「…はい。」

 サリアは渋々コクリと首を小さく縦に振り、侍従が荷物を持とうとするのを断ると、目の前のジルコと冒険者達に天使の笑みを向けドレスの裾を摘み上品にお辞儀をして、先を急ぐように教会へと向かった。

「荷物をお持ちします!」
「いいの。」
「ですが~」

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