~喫茶ポポの日常~

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1話<オーナーと息子>

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 喫茶ポポの日課。

 朝は常連の老婦人三人組が窓際のテーブル席で珈琲を挟んでおしゃべりに花を咲かせる。婦人達の声が届きにくい奥の壁際のテーブル席では近くのビルのサラリーマンが珈琲をのみながら打ち合わせ。

お昼以降は、偶然?近くを立ち寄ったと思われる固定客ではない人や、近くのビルのOL固定客が軽食に来ていた。
 
     ◆   ◆

 喫茶ポポの土地と家を貸し出している家主『オーナー』が店にきた。オーナーは美奈の祖父の知人で60歳くらいの人。名前は鮎川武蔵。鮎川道場の師範を務める人物だ。一緒にいるのは武蔵の息子、春樹はるき28歳。鍛えぬいた体をしている二人は奥の席に腰掛けた。

「春樹、今日はどうしたんだ?」
「親父、マンションの俺の部屋襲撃された。」
「はあ?何やらかしたんだ!バカもん!」
「俺は頼まれた人物を警護しただけだ。」

 美奈は静かに二人の前に水の入ったグラスをおき、少し距離を空けて立ち注文を待つ事1分、鮎川武蔵は、美奈にようやく気がつき、美奈はすかさず笑顔を向けると声をかけた。

「いらっしゃいませ鮎川様。」
「ああ、悪かったね、美奈ちゃん。お爺さんの後を継いでまだ慣れないんじゃないかね?」
「ふふふ。ご心配ありがとうございます。大丈夫ですよ。」

 大男二人の座る席の前に立つ少女は小柄で、その無垢な笑顔は天使のように眩しく、二人は思わず一瞬目を細めていた。

「ああ、注文。春樹はなにか食べるか?美奈ちゃん私はホット珈琲で。」
「じゃあ俺はホット珈琲とパンケーキ生クリームたっぷりで。」
「かしこまりました。ホット珈琲おふたつ、パンケーキにトッピングは生クリームですね。今なら苺もお乗せしますが?」
「じゃあそれで。」
「かしこまりました。」

 美奈はペコリと頭を下げ、ぴょんぴょんと小さく跳ねるように厨房へとむかった。

      *

 「お待たせいたしました。」

 美奈は落とさないよう慎重に歩いて鮎川親子の前に来ると鮎川武蔵の前に珈琲カップを、春樹の前にも珈琲カップを置くと続いてふわっふわのパンケーキの乗ったお皿を置いた。

「旨そ~」

 春樹は生クリームの乗ったふわふわのパンケーキを前にフォークを手にするとまずは散らばる苺に生クリームをのせ、乱雑に切りわけたパンケーキをフォークでさして頬張るように口に入れた。

 美奈は豪快に食べる春樹にテンションが思わず上がり、絶えず笑顔で、カウンターへと戻っていった。

 (あんな風に慌てて食べるなんて可愛い人。もっと食べてほしいな。ダメダメ。オーナーの息子さんなんだから、めったに来てくれるわけないよ。)

 美奈はそう自分に言いきかせながら、お会計に席をたった別のお客様の応対でレジに向かった。


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