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1話<オーナーと息子>
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しおりを挟む食事を終わらせた春樹は伸びをしてそのあとなにかを思い出したように前のめりになり鮎川武蔵の顔色をうかがうように話はじめた。
「親父、確か、この店に2階あったよな?俺が子供の頃、探険した気がする。ここの爺さんに昔貸してたっけ?」
「ああ。そうだったなあ~、美奈ちゃん、今2階どうなってる?」
テーブルにある空いた皿を片付けていた美奈は突然の問いに身をただして、答えた。
「お爺さんがお掃除していたと思いますよ?たぶん今は何も置いてないかと…。」
「俺見てくる。」
「おい春樹!美奈ちゃんの店に住む気か?」
「部屋見て決めるよ。」
「美奈ちゃん、ごめんね。」
「いえ、珈琲、おかわりします?」
「うん。春樹が戻るまでまだいさせてもらおうかな?」
「はい、かしこまりました。」
美奈は空のカップも片付け厨房へと向かい、テーブルは何もない状態になり、武蔵は腕を組んで目を閉じた。まるで精神を統一しているように。
*
「親父、決めた。ここに住む!ちっこい店長の料理も食えるし。」
「ちっこいじゃない、美奈ちゃんだ。」
こうして春樹は新しい住みかを決め、二人は席をたち、お会計を済まして帰っていった。
「ありがとうございました。」
美奈は二人を見送りながら、またあの頬張る姿が見れるのかと思えば嬉しくて口角は勝手に上がり、美奈は口もとを両手で覆いにやけそうになるのを耐えたのだった。
◆ ◆
翌日の夜。閉店直後、今日は会計事務所に務める叔父が私の売り上げの集計を手伝ってくれました。
なれるまではと、叔父が仕事が早く上がれた日にこうして来てくれているわけで、私は報酬としてパンケーキにベーコンと目玉焼きをサンドして叔父の胃袋に納めてもらっている。
するとお店の入り口に営業終了の札がかけているのにも関わらず、鍵をまだ閉めていなかったため、1人の男性が入ってきた。
「すいません。今日の営業は終わりです。」
「終わるの早くね?俺だよ、オーナーの息子の鮎川春樹!」
「あ…」
私が入り口でワタワタと手ばたつかせていると叔父が席をたち、私の前に割って入った。
「姪がお世話になってます。美奈の父の弟で会計事務所をしています、栗田誠二といいます。どんなご用でしたか?」
「あ~どうも。実は…住むところを追い出されて店の空き部屋に住まわせてもらおうかと…」
「そうでしたか、お仕事は何をされて?」
「セキュリティ会社の1社員です。」
「美奈は知ってるの?」
私は叔父の問いに深く頷いた。
「昨日オーナーさんといらしてて、そんな話をされていたかも。」
「春樹さん、姪はこのとうりまだ子供ですが、爺ちゃんこでして、店を引き受けてしまって、まだ危なっかしいんです。夜も遅いと酔っぱらいでも来ると大変ですから時間は夜7時までと決めているんですよ。強そうな春樹さんがいてくださるなら私も安心です。私は姪が経営になれるまではこうして合間に教えているので、気になさらないでくださいね。」
「はあ、突然すみませんでした。でも、本当に住むところがないので今日からいいかな?」
最初意気揚々と入って来た春樹さんでしたが、真面目な叔父を前にして少しだけ遠慮がちに私をみました。大型犬が耳を下げていいかな~って聞いてるみたいで一瞬私は可愛いと錯覚してしまった。
「大丈夫ですよ。よろしくお願いします。」
私は春樹さんに頭を下げ、春樹さんもペコリと私と叔父に頭を下げると足早に厨房奥の階段から2階に上がっていったのでした。
しばらくして、叔父も帰り、私は階段下から春樹さんに挨拶をして裏口から帰ることにした。
さっき叔父に作ったパンケーキサンドと同じものを作って厨房の台に『良かったら食べてください。』とメモを残して帰宅した。
*
朝が来て出勤して入った厨房には、パンケーキを置いていた皿が空の状態であり、私の残したメモの端には『ごちそうさまでした。』とかかれてあって、思わずにやけてしまった。
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