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前編
7話 雫と満
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全てが退屈で、窮屈で、不自由だった。
誰か偉い人が人は生きていることが素晴らしいと言うけれど、全くそう思えなかった。
なにもないがらんとしたひとりの部屋。
何度も自殺を繰り返すからと部屋には監視カメラがつけられ、凶器になりうるいろいろなものは没収された。
自分が無価値だったらよかったのにと己を呪う。
自分が稀にみる“天才”だとわかったとき、両親はあっさり自分を手放した。おそらく莫大なお金と引き換えに。
別に酷い扱いをされているわけではない。
どちらかと言えば待遇は良い方だろう。
まだ幼いからと親代わりをしてくれる職員がいた。彼女を無視し、拒絶したのは彼自身だった。
研究される日々が続いた。
少しでも嫌がれば実験は中止される。
大抵のわがままは許された。
ただ許されなかったのは“死ぬこと”だけだ。
つまらない。
どうして僕は生きているんだろう。
何のために僕は生きているんだろう。
虚無感だけが優しくいつも満に寄り添っていた。
☆
「気味が悪いな。あんな死んだような目をしているのにこれだけの結果を出すとは」
呆れたような複雑な顔をしている男がぼそりと告げる。
「まだ幼いのに、あんな顔をするだなんて見ているこちらが辛くなります」
「それをどうにかするのが君の仕事だろう?彼がやる気を出せばもっと成果は出るはずだ」
「満くんは完全に心を閉ざしています。私では力不足です」
幼いながらも綺麗な顔立ちをしている少年は膝を抱えて、なにをするでもなく座っている。
「同じ年くらいの子どもを用意しよう。話相手が出来れば少しは違うだろう。満くんには国の未来がかかっているからね」
そうして連れて来られた子どもは泣いてばかりいて、ひどく満を苛立たせた。
ただただ泣くばかりの“普通”の子ども。
興味なんか沸かなかった。
煩くてイライラとした。
文句を言えばその子どもはすぐにいなくなった。
うるさくて仕方なくて、やっと静かになったはずの部屋はなぜか少しだけ寂しくて、思えば誰かに何らかの感情を抱いたのは初めてだったなと今更気づいた。
そして。
そいつがいなくなったことを“寂しい”と感じ、話してみればよかったと後悔している自分に少し驚いていた。涙に濡れていない瞳を見てみたかった。
ひょっとしたら退屈を紛らせてくれたかもしれないと今更後悔した。
「いつも、ありがと。僕、無反応だから気味が悪いでしょう?」
気まぐれに話しかけた彼女は目を丸くし、その後優しく笑ながらいいえと答えた。
「話しかけてくれて嬉しいです」
「……そんなに喜ぶなら、気が向いたらまた話しかけるよ」
「はい。お待ちしてます」
空いた食器が下げられる。あ、名前を聞けばよかったなと思い至る。明日どうせまた会うのだから明日聞けば良いと結論づける。
明日を楽しみに思うのは生まれて初めてのことだった。
「ねぇ、名前なんていうの?」
彼女は働き者だった。注意して見ていると朝から夜までずっと働いていることに気づいた。休みも取っている感じはなくて、彼女に会わない日はなかった。
「名前を聞かれるなんて意外ね」
「僕は名前を知られているのに、知らないなんて不公平だと思わない?」
「それもそうね」
彼女はクスクスと笑った。
何回も名前を聞こうと思ったけれど、僕は口下手でなかなか聞けなかった。少しずつ慣れて、話すようになって、やっと聞くことができた。
「人に興味はない。けど、あんたは別」
「あら、私は特別扱いなのね」
「光栄に思ってよね」
「ふふ、そうね」
ーー涙と書いて“るい”と読むの。
そう笑ながら彼女は告げて、僕は口の中でるいと小さく呟いた。
「珍しい名前でしょ?」
「珍しいかはわからないけど、綺麗な響きだと思う。僕はあんたらしくて好き」
「こら、あんまり大人をからかわないの」
涙は顔を真っ赤にする。
「大人っていうほど大人じゃないでしょ?涙は何歳なのさ?」
「18よ」
「なんだ。たった10しか変わらないじゃないか」
「10も違ったら大きいでしょう?そもそも君が8歳とは思えないほど大人びているのよ」
「……学校には行かなかったの?」
「お金が必要だったから行かなかったのよ」
「仕事を休まないのもお金のため?」
「……そうね。お金を稼がないといけない理由があるから」
じゃあと去ろうとする涙の手を満が掴み、その手に札束を握らせる。
「……これ、あげる。持っても使えぬいから。お金、必要なんでしょ?涙が欲しいならもっとあげる」
「……必要よ。お金がないとできないことはたくさんあるわ」
「子どもよりも大事?」
「いいえ。それは違うわ。これは受け取れない」
どうして?とぎゅっと満は涙に抱き締められる。
「……私はね、妹の治療費のためにお金を稼いでいるの」
「うん。なら受け取ってよ。これじゃ足りない?」
そう言いながら満は涙を流す。
「悲しいの?」
「わからない」
「……泣いてる」
白くて細い指が満の涙を拭う。
「ちゃんと泣けるのね」
涙の温もりに満は涙を流し続けていた。
☆
いつの間にか自殺しようとすることはなくなっていた。
だからカメラが嫌だと言えば、すんなりとカメラは外された。
少しだけ、“生きること”に興味を覚えたのかもしれない。前ほど息苦しさはなくなっていた。
「今更だけどさ、僕って刑務所にいるみたいだよね。淡々と与えられたことをするだけで何も変わらない」
「ホントに今更ね。もう何年ここにいるんだか」
いつしか満の身長は涙を追い越していた。
「涙、小さくなったね」
「違うわ。満が大きくなったのよ」
満はだいぶ大人らしい顔つきになっていた。整った容姿はそのままで、綺麗に成長していた。
「退屈になったの?」
「どうだろう。昔とは違うからなぁ」
満の“天才”ぶりは成長につれ発揮されていた。研究されていた側だった彼はいつしか研究する側になり、すでにいろいろな論文を出したり、謎だった事柄を解明したりと活躍していた。
「ここでできることは限られてるから外に出たいと思うよ。僕が思うように動いてみたい」
「……満なら抜け出す方法はいくらでも思いつくんじゃないの?」
「あはは。涙がそれを言っちゃダメでしょ?僕をここに居させるのが君の仕事なのに」
ぐいと満は涙の腕を引く。小柄な涙は簡単に胸に収まった。
「ねぇ、知ってた?僕が涙のこと好きだって」
「10歳も違うのに?」
「関係ないよ」
満はそっと涙に自分の唇を重ねる。
「抵抗しないんだ?」
「……嫌いじゃないもの」
「なら、もう一回してもいい?」
涙がきゅっと満の服を掴む。
満は少しだけ微笑んで、もう一度キスをした。
「……お金、もう要らなくなったの」
ぽつりと涙が呟いた。
「妹の病気が治ったの。あなたのおかげで。治療法をあなたが見つけてくれた」
「そっか。役に立てたのなら良かったよ」
「あなたはたくさんの命を救ってる。ありがとう」
ぽろりと涙を流す涙の瞼にキスをする。
「お金が要らないなら、涙はここからいなくなるの?」
涙はふるふると首を横に振る。
「……あなたのそばにいたいから」
「ねぇ、涙。涙が好きだよ。だから、一緒にいてね」
ぎゅっと満が涙を抱き締める。うんと涙は大きく頷いた。
☆
「惚れさせてコントロールするとはさすがだね、涙」
「そんなことありませんよ。それに芝居なんかじゃありません」
「満に本気で惚れたんだ?やめておきなよ。あの子は側に涙がいたから涙を好きになっただけ。違う子がいたらその子を好きになっていたよ」
「あなたは容赦がありませんね、湊兄さん。私もあの子も便利な道具にしか思っていないでしょう?」
「報酬はちゃんと払ったんだから文句はないだろう?」
「あのときのこと、私は忘れてはいませんから」
「結果オーライだろう?あいつのおかげで満に人間らしさが生まれたんだから」
パンと涙の手が湊の頬を打つ。
「あの子は死にかけたんだから!」
部屋を出ていく涙の背中を湊は無言で見つめていた。
☆
「久しぶりだな」
「そうですね」
「病気治ったんだって?なぜすぐに言わなかった?」
「……俺は見捨てられたとばかり思っていましたから」
実の兄妹とは思えない緊張感がそこにはあった。空気がピリピリとしている。
「ここに来たことは涙には言ってないな?」
「姉さんには言ってません。で、あたしに用事って何ですか?」
「中学を卒業したら外国に医学を学びに行け」
「何のために?」
「この研究所を継ぐためだ。俺は違うところに行くからな。俺と同じ血を引いているんだ。無能ではないだろう?」
「こういうときだけ家族面なんですね。母さんが病気になっても、弱っていって会いたいと言っても、亡くなっても来ることさえしなかったのに」
「必要な金なら出しただろう?」
「……勉強になら行きますよ。母さんを見て、医学と薬学を学びたいと思ったから。知識があれば、救えたんじゃないかって思うから。あなたじゃなく自分の意志で」
「死にゆく無価値な命に投資をしたんだから感謝してほしいものだな」
「……母さんは無価値なんかじゃない!」
「では、母さんは死んで何か価値のあるものを残したか、雫?」
冷たい視線に雫は口をつぐむ。ふるふると首を横に振る。
「雫は涙に世話になったな。お前がここを継ぐと約束するなら、涙を自由にしてやると約束しよう」
「……絶対に?」
「俺は嘘はつかない。知っているだろう?」
雫は静かに頷いた。
「……頼れるのは“他人”より“身内”だよ。“満”はダメになっていく」
「彼を捨てるんですか?」
「使えなくなったら、な。まだ使える」
「長い時間閉じ込めていたのに?」
昔少しの間だけ一緒に過ごした、綺麗な顔をした無表情な少年を思い出す。
あのとき自分は泣くばかりでまともに話もしなかった。
「無価値な物に用はない」
「……なるほど。まだあたしのほうが使えるから、あたしに声をかけたんですね」
くるりと雫は兄に背を向ける。
断っても、断らなくても答えは同じ。
こうと決めたら兄は決して曲げることはない。
「満さんが使えない理由は?」
「涙と通じたからだ」
「なら、尚更断れないじゃないですか」
姉さんには幸せになってほしい。
母さんの分も。
自分の分も。
「4年で帰れ」
「かなり無茶を言いますね」
「不可能ではないだろう?」
「……努力すれば」
「わかればいい」
兄はどこまでも冷たくて無機質だ。
雫はぎゅっと手を握って、雨宮研究所を後にした。
☆
「さすがの才能と言ったところ、かな?」
不意に現れた湊に満は顔をあげる。
「顔を会わすのは久しぶりですね」
「そうだな。特に用がなければ会う必要はないからな」
「ということは何か用があるわけです?」
「頭が良い人間は話が早くて助かるよ」
湊の笑う顔は見る者に冷たい印象を与える。口は弧を描いていても目が笑っていない。満は昔から何を考えているか全くわからない湊が苦手だった。
「昔、会わせた子どもを覚えているか?」
「泣いていた少女ですか?」
いつも濡れた瞳をした少女を思い出す。
「あれは妹でね、あの頃はなんの才能もなかったんだけれどようやく最近使えるようになってきたんだよ」
にやりと笑う顔に背筋がぞっとする。
「年は君のひとつ下。来年から勉強に行かせて4年で帰らせる」
「協力すれば良いんです?」
「それも悪くない選択肢だ。“協力”じゃなくて“競争”してもらう。君が妹ーー雫より優秀ならば良い未来の選択肢を与えよう……君は涙を好いているね?」
質問というより確認という感じに湊は尋ねる。嘘をつく意味もないし、つきたくもないので満はただ頷くだけだ。
「ここを出ていって良い。もちろん涙を連れて、ね」
「……あなたにメリットがなさすぎます。妹に勝つくらいの人材を手放すことに何のメリットもない」
一体何を考えているんだろうかと満は疑いの眼差しを向ける。
「……僕が勝てると欠片も思っていないですね?」
「その通りだね」
「つまり、遊びというわけですか」
「“天才”同士の勝負を見てみたいだけだよ」
やるかやらないかは君次第だけどと笑いながら湊は背を向ける。
「やりますよ」
「そう来なきゃね」
嬉しそうに湊が去っていく。
緊張感が途切れ、ずるずると満は座り込む。
「大丈夫?」
心配そうな顔をした涙が満の傍らに膝をつく。
「話、聞いてた?」
「最後のほうだけ」
「そっか……ねぇ、雫はそんなにすごい子なの?」
「身内贔屓になってしまうけれど、雫はすごいわ」
「僕と比べても?」
「比べても。雫はまだ未知数だから」
揺れる瞳に満は優しく微笑みそっと頬に触れる。
「僕もまだ上に行けるよ。涙がいてくれるなら、いけない場所なんてない」
ぽろりと溢れる涙を拭う。
「涙は泣き虫だね。“涙”って名前だから泣き虫なのかな?」
「満が泣かせるからよ。嬉しい言葉ばかりをくれるんだもの」
「嬉しいなら泣くんじゃなくて笑ってほしいな」
熱を帯びた瞳が絡みあい、唇を重ねる。
「……勝つよ。勝って自由になる。あと、雫次第だけど本人が望むなら一緒に連れていく。雫が喜んで湊の言うことを聞いてるとは思えない」
驚く顔に満は笑い、
「涙の大切な人を僕も大切にしたいから」
と告げた。
☆
「えーと……?これは一体どんな状態……??」
目を覚ましたらいつもと違う場所だった。
懐かしい顔ぶれが揃っており、心配そうに顔を覗き込まれていた。
確か。
レイラというものすごく強い奴が乗り込んできて、戦って、途中でガスが出て来て、避けきれなくて。そこから先の記憶がない。
「ーー満!!」
動こうとしたらガチャリと音がした。手錠と足枷がされている。
「満さんなら無事ですから安心してください。本当は拘束なんかしたくないですが、雫さんを自由に動かせるほど私たちは強くありませんから」
「結羽……お願いだからあたしを帰して」
「満さんといるのはやめてください」
「秋……」
秋は雫に抱きつき、雫は悲しげに微笑んでいた。
「あたしから離れたのは…裏切ったのは……秋と香月のほうじゃないか」
ぽろりと雫の瞳から涙が溢れ落ちた。
☆
「……どうして黙っていたんです?“殺人”じゃなく“正当防衛”だったこと」
「遥人を“殺人鬼”にはしたくなかったんだよ」
「だからって自分が“殺人鬼”になるってバカじゃないんですか、あなたは」
ぎゅっと手を握り、雨音は時雨の胸をトンと叩く。くしゃりと顔が歪み、ぼろぼろと涙が溢れていく。
「バカでいいんだよ。遥人も雨音も守れたんだから」
肩を震わせて泣く雨音の頭を時雨が撫でる。
「……私は……っ、あなたに酷い態度を…とりました」
「……うん」
「何も知らずに、違和感にも目を閉ざして、あなたを恨むことで……自分を保とうとしました……っ」
「……それで良かったんだよ」
「良くなんか、ありません……」
「良いんだよ。俺が勝手にしたんだから」
震える身体をそっと抱き寄せる。声を押し殺しながら雨音が泣く。
「……遥人を助けてやれなくて、ごめんな」
時雨の瞳からもつうと涙が流れる。
「遥人の代わりに俺が雨音を守るよ。それが遥人の望みであり、俺の望みでもあるから」
ーー雨音を頼むな。あいつは変に不器用だから。
知ってるよ。
真面目で真っ直ぐで、だからこそ折れやすいってこと。
“憎しみ”って形でもないと壊れてしまうこと。
「……あまり自分を責めるな。俺たちは生きてる。やり直すこともできるから」
微笑む時雨に雨音は頷く。
と。
音もなく近づいてきた男が銃を構え時雨を撃つ。
ゆっくりと倒れていく身体に雨音が手を伸ばす。触れそうで届かない手が離れていく。
時雨は担がれ、連れ去られていく。
「ーー時雨兄さんっ!」
雨音の声が虚しく響いていた。
誰か偉い人が人は生きていることが素晴らしいと言うけれど、全くそう思えなかった。
なにもないがらんとしたひとりの部屋。
何度も自殺を繰り返すからと部屋には監視カメラがつけられ、凶器になりうるいろいろなものは没収された。
自分が無価値だったらよかったのにと己を呪う。
自分が稀にみる“天才”だとわかったとき、両親はあっさり自分を手放した。おそらく莫大なお金と引き換えに。
別に酷い扱いをされているわけではない。
どちらかと言えば待遇は良い方だろう。
まだ幼いからと親代わりをしてくれる職員がいた。彼女を無視し、拒絶したのは彼自身だった。
研究される日々が続いた。
少しでも嫌がれば実験は中止される。
大抵のわがままは許された。
ただ許されなかったのは“死ぬこと”だけだ。
つまらない。
どうして僕は生きているんだろう。
何のために僕は生きているんだろう。
虚無感だけが優しくいつも満に寄り添っていた。
☆
「気味が悪いな。あんな死んだような目をしているのにこれだけの結果を出すとは」
呆れたような複雑な顔をしている男がぼそりと告げる。
「まだ幼いのに、あんな顔をするだなんて見ているこちらが辛くなります」
「それをどうにかするのが君の仕事だろう?彼がやる気を出せばもっと成果は出るはずだ」
「満くんは完全に心を閉ざしています。私では力不足です」
幼いながらも綺麗な顔立ちをしている少年は膝を抱えて、なにをするでもなく座っている。
「同じ年くらいの子どもを用意しよう。話相手が出来れば少しは違うだろう。満くんには国の未来がかかっているからね」
そうして連れて来られた子どもは泣いてばかりいて、ひどく満を苛立たせた。
ただただ泣くばかりの“普通”の子ども。
興味なんか沸かなかった。
煩くてイライラとした。
文句を言えばその子どもはすぐにいなくなった。
うるさくて仕方なくて、やっと静かになったはずの部屋はなぜか少しだけ寂しくて、思えば誰かに何らかの感情を抱いたのは初めてだったなと今更気づいた。
そして。
そいつがいなくなったことを“寂しい”と感じ、話してみればよかったと後悔している自分に少し驚いていた。涙に濡れていない瞳を見てみたかった。
ひょっとしたら退屈を紛らせてくれたかもしれないと今更後悔した。
「いつも、ありがと。僕、無反応だから気味が悪いでしょう?」
気まぐれに話しかけた彼女は目を丸くし、その後優しく笑ながらいいえと答えた。
「話しかけてくれて嬉しいです」
「……そんなに喜ぶなら、気が向いたらまた話しかけるよ」
「はい。お待ちしてます」
空いた食器が下げられる。あ、名前を聞けばよかったなと思い至る。明日どうせまた会うのだから明日聞けば良いと結論づける。
明日を楽しみに思うのは生まれて初めてのことだった。
「ねぇ、名前なんていうの?」
彼女は働き者だった。注意して見ていると朝から夜までずっと働いていることに気づいた。休みも取っている感じはなくて、彼女に会わない日はなかった。
「名前を聞かれるなんて意外ね」
「僕は名前を知られているのに、知らないなんて不公平だと思わない?」
「それもそうね」
彼女はクスクスと笑った。
何回も名前を聞こうと思ったけれど、僕は口下手でなかなか聞けなかった。少しずつ慣れて、話すようになって、やっと聞くことができた。
「人に興味はない。けど、あんたは別」
「あら、私は特別扱いなのね」
「光栄に思ってよね」
「ふふ、そうね」
ーー涙と書いて“るい”と読むの。
そう笑ながら彼女は告げて、僕は口の中でるいと小さく呟いた。
「珍しい名前でしょ?」
「珍しいかはわからないけど、綺麗な響きだと思う。僕はあんたらしくて好き」
「こら、あんまり大人をからかわないの」
涙は顔を真っ赤にする。
「大人っていうほど大人じゃないでしょ?涙は何歳なのさ?」
「18よ」
「なんだ。たった10しか変わらないじゃないか」
「10も違ったら大きいでしょう?そもそも君が8歳とは思えないほど大人びているのよ」
「……学校には行かなかったの?」
「お金が必要だったから行かなかったのよ」
「仕事を休まないのもお金のため?」
「……そうね。お金を稼がないといけない理由があるから」
じゃあと去ろうとする涙の手を満が掴み、その手に札束を握らせる。
「……これ、あげる。持っても使えぬいから。お金、必要なんでしょ?涙が欲しいならもっとあげる」
「……必要よ。お金がないとできないことはたくさんあるわ」
「子どもよりも大事?」
「いいえ。それは違うわ。これは受け取れない」
どうして?とぎゅっと満は涙に抱き締められる。
「……私はね、妹の治療費のためにお金を稼いでいるの」
「うん。なら受け取ってよ。これじゃ足りない?」
そう言いながら満は涙を流す。
「悲しいの?」
「わからない」
「……泣いてる」
白くて細い指が満の涙を拭う。
「ちゃんと泣けるのね」
涙の温もりに満は涙を流し続けていた。
☆
いつの間にか自殺しようとすることはなくなっていた。
だからカメラが嫌だと言えば、すんなりとカメラは外された。
少しだけ、“生きること”に興味を覚えたのかもしれない。前ほど息苦しさはなくなっていた。
「今更だけどさ、僕って刑務所にいるみたいだよね。淡々と与えられたことをするだけで何も変わらない」
「ホントに今更ね。もう何年ここにいるんだか」
いつしか満の身長は涙を追い越していた。
「涙、小さくなったね」
「違うわ。満が大きくなったのよ」
満はだいぶ大人らしい顔つきになっていた。整った容姿はそのままで、綺麗に成長していた。
「退屈になったの?」
「どうだろう。昔とは違うからなぁ」
満の“天才”ぶりは成長につれ発揮されていた。研究されていた側だった彼はいつしか研究する側になり、すでにいろいろな論文を出したり、謎だった事柄を解明したりと活躍していた。
「ここでできることは限られてるから外に出たいと思うよ。僕が思うように動いてみたい」
「……満なら抜け出す方法はいくらでも思いつくんじゃないの?」
「あはは。涙がそれを言っちゃダメでしょ?僕をここに居させるのが君の仕事なのに」
ぐいと満は涙の腕を引く。小柄な涙は簡単に胸に収まった。
「ねぇ、知ってた?僕が涙のこと好きだって」
「10歳も違うのに?」
「関係ないよ」
満はそっと涙に自分の唇を重ねる。
「抵抗しないんだ?」
「……嫌いじゃないもの」
「なら、もう一回してもいい?」
涙がきゅっと満の服を掴む。
満は少しだけ微笑んで、もう一度キスをした。
「……お金、もう要らなくなったの」
ぽつりと涙が呟いた。
「妹の病気が治ったの。あなたのおかげで。治療法をあなたが見つけてくれた」
「そっか。役に立てたのなら良かったよ」
「あなたはたくさんの命を救ってる。ありがとう」
ぽろりと涙を流す涙の瞼にキスをする。
「お金が要らないなら、涙はここからいなくなるの?」
涙はふるふると首を横に振る。
「……あなたのそばにいたいから」
「ねぇ、涙。涙が好きだよ。だから、一緒にいてね」
ぎゅっと満が涙を抱き締める。うんと涙は大きく頷いた。
☆
「惚れさせてコントロールするとはさすがだね、涙」
「そんなことありませんよ。それに芝居なんかじゃありません」
「満に本気で惚れたんだ?やめておきなよ。あの子は側に涙がいたから涙を好きになっただけ。違う子がいたらその子を好きになっていたよ」
「あなたは容赦がありませんね、湊兄さん。私もあの子も便利な道具にしか思っていないでしょう?」
「報酬はちゃんと払ったんだから文句はないだろう?」
「あのときのこと、私は忘れてはいませんから」
「結果オーライだろう?あいつのおかげで満に人間らしさが生まれたんだから」
パンと涙の手が湊の頬を打つ。
「あの子は死にかけたんだから!」
部屋を出ていく涙の背中を湊は無言で見つめていた。
☆
「久しぶりだな」
「そうですね」
「病気治ったんだって?なぜすぐに言わなかった?」
「……俺は見捨てられたとばかり思っていましたから」
実の兄妹とは思えない緊張感がそこにはあった。空気がピリピリとしている。
「ここに来たことは涙には言ってないな?」
「姉さんには言ってません。で、あたしに用事って何ですか?」
「中学を卒業したら外国に医学を学びに行け」
「何のために?」
「この研究所を継ぐためだ。俺は違うところに行くからな。俺と同じ血を引いているんだ。無能ではないだろう?」
「こういうときだけ家族面なんですね。母さんが病気になっても、弱っていって会いたいと言っても、亡くなっても来ることさえしなかったのに」
「必要な金なら出しただろう?」
「……勉強になら行きますよ。母さんを見て、医学と薬学を学びたいと思ったから。知識があれば、救えたんじゃないかって思うから。あなたじゃなく自分の意志で」
「死にゆく無価値な命に投資をしたんだから感謝してほしいものだな」
「……母さんは無価値なんかじゃない!」
「では、母さんは死んで何か価値のあるものを残したか、雫?」
冷たい視線に雫は口をつぐむ。ふるふると首を横に振る。
「雫は涙に世話になったな。お前がここを継ぐと約束するなら、涙を自由にしてやると約束しよう」
「……絶対に?」
「俺は嘘はつかない。知っているだろう?」
雫は静かに頷いた。
「……頼れるのは“他人”より“身内”だよ。“満”はダメになっていく」
「彼を捨てるんですか?」
「使えなくなったら、な。まだ使える」
「長い時間閉じ込めていたのに?」
昔少しの間だけ一緒に過ごした、綺麗な顔をした無表情な少年を思い出す。
あのとき自分は泣くばかりでまともに話もしなかった。
「無価値な物に用はない」
「……なるほど。まだあたしのほうが使えるから、あたしに声をかけたんですね」
くるりと雫は兄に背を向ける。
断っても、断らなくても答えは同じ。
こうと決めたら兄は決して曲げることはない。
「満さんが使えない理由は?」
「涙と通じたからだ」
「なら、尚更断れないじゃないですか」
姉さんには幸せになってほしい。
母さんの分も。
自分の分も。
「4年で帰れ」
「かなり無茶を言いますね」
「不可能ではないだろう?」
「……努力すれば」
「わかればいい」
兄はどこまでも冷たくて無機質だ。
雫はぎゅっと手を握って、雨宮研究所を後にした。
☆
「さすがの才能と言ったところ、かな?」
不意に現れた湊に満は顔をあげる。
「顔を会わすのは久しぶりですね」
「そうだな。特に用がなければ会う必要はないからな」
「ということは何か用があるわけです?」
「頭が良い人間は話が早くて助かるよ」
湊の笑う顔は見る者に冷たい印象を与える。口は弧を描いていても目が笑っていない。満は昔から何を考えているか全くわからない湊が苦手だった。
「昔、会わせた子どもを覚えているか?」
「泣いていた少女ですか?」
いつも濡れた瞳をした少女を思い出す。
「あれは妹でね、あの頃はなんの才能もなかったんだけれどようやく最近使えるようになってきたんだよ」
にやりと笑う顔に背筋がぞっとする。
「年は君のひとつ下。来年から勉強に行かせて4年で帰らせる」
「協力すれば良いんです?」
「それも悪くない選択肢だ。“協力”じゃなくて“競争”してもらう。君が妹ーー雫より優秀ならば良い未来の選択肢を与えよう……君は涙を好いているね?」
質問というより確認という感じに湊は尋ねる。嘘をつく意味もないし、つきたくもないので満はただ頷くだけだ。
「ここを出ていって良い。もちろん涙を連れて、ね」
「……あなたにメリットがなさすぎます。妹に勝つくらいの人材を手放すことに何のメリットもない」
一体何を考えているんだろうかと満は疑いの眼差しを向ける。
「……僕が勝てると欠片も思っていないですね?」
「その通りだね」
「つまり、遊びというわけですか」
「“天才”同士の勝負を見てみたいだけだよ」
やるかやらないかは君次第だけどと笑いながら湊は背を向ける。
「やりますよ」
「そう来なきゃね」
嬉しそうに湊が去っていく。
緊張感が途切れ、ずるずると満は座り込む。
「大丈夫?」
心配そうな顔をした涙が満の傍らに膝をつく。
「話、聞いてた?」
「最後のほうだけ」
「そっか……ねぇ、雫はそんなにすごい子なの?」
「身内贔屓になってしまうけれど、雫はすごいわ」
「僕と比べても?」
「比べても。雫はまだ未知数だから」
揺れる瞳に満は優しく微笑みそっと頬に触れる。
「僕もまだ上に行けるよ。涙がいてくれるなら、いけない場所なんてない」
ぽろりと溢れる涙を拭う。
「涙は泣き虫だね。“涙”って名前だから泣き虫なのかな?」
「満が泣かせるからよ。嬉しい言葉ばかりをくれるんだもの」
「嬉しいなら泣くんじゃなくて笑ってほしいな」
熱を帯びた瞳が絡みあい、唇を重ねる。
「……勝つよ。勝って自由になる。あと、雫次第だけど本人が望むなら一緒に連れていく。雫が喜んで湊の言うことを聞いてるとは思えない」
驚く顔に満は笑い、
「涙の大切な人を僕も大切にしたいから」
と告げた。
☆
「えーと……?これは一体どんな状態……??」
目を覚ましたらいつもと違う場所だった。
懐かしい顔ぶれが揃っており、心配そうに顔を覗き込まれていた。
確か。
レイラというものすごく強い奴が乗り込んできて、戦って、途中でガスが出て来て、避けきれなくて。そこから先の記憶がない。
「ーー満!!」
動こうとしたらガチャリと音がした。手錠と足枷がされている。
「満さんなら無事ですから安心してください。本当は拘束なんかしたくないですが、雫さんを自由に動かせるほど私たちは強くありませんから」
「結羽……お願いだからあたしを帰して」
「満さんといるのはやめてください」
「秋……」
秋は雫に抱きつき、雫は悲しげに微笑んでいた。
「あたしから離れたのは…裏切ったのは……秋と香月のほうじゃないか」
ぽろりと雫の瞳から涙が溢れ落ちた。
☆
「……どうして黙っていたんです?“殺人”じゃなく“正当防衛”だったこと」
「遥人を“殺人鬼”にはしたくなかったんだよ」
「だからって自分が“殺人鬼”になるってバカじゃないんですか、あなたは」
ぎゅっと手を握り、雨音は時雨の胸をトンと叩く。くしゃりと顔が歪み、ぼろぼろと涙が溢れていく。
「バカでいいんだよ。遥人も雨音も守れたんだから」
肩を震わせて泣く雨音の頭を時雨が撫でる。
「……私は……っ、あなたに酷い態度を…とりました」
「……うん」
「何も知らずに、違和感にも目を閉ざして、あなたを恨むことで……自分を保とうとしました……っ」
「……それで良かったんだよ」
「良くなんか、ありません……」
「良いんだよ。俺が勝手にしたんだから」
震える身体をそっと抱き寄せる。声を押し殺しながら雨音が泣く。
「……遥人を助けてやれなくて、ごめんな」
時雨の瞳からもつうと涙が流れる。
「遥人の代わりに俺が雨音を守るよ。それが遥人の望みであり、俺の望みでもあるから」
ーー雨音を頼むな。あいつは変に不器用だから。
知ってるよ。
真面目で真っ直ぐで、だからこそ折れやすいってこと。
“憎しみ”って形でもないと壊れてしまうこと。
「……あまり自分を責めるな。俺たちは生きてる。やり直すこともできるから」
微笑む時雨に雨音は頷く。
と。
音もなく近づいてきた男が銃を構え時雨を撃つ。
ゆっくりと倒れていく身体に雨音が手を伸ばす。触れそうで届かない手が離れていく。
時雨は担がれ、連れ去られていく。
「ーー時雨兄さんっ!」
雨音の声が虚しく響いていた。
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