手を繋いでもいいですか?

狼野 剣戯

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ある暗い夜なのに、ぽつりとまばゆい光が見えたこと。

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 こんな暗い夜には、明かりが必要じゃあないか。塾帰りの僕は、公園の中の暗い夜道を自転車で走っていた。まったく、今の時代になんでこんなに暗いのか。それは、僕が裏道を走っているからなのである。それじゃ、僕のせいか…。
 とりあえず、僕の説明をしておこう。僕こと、初鳶 有斗(はつとび ゆうと)は、中学2年生。ザ平凡のそこらにいる学生さ!おだやかぁに毎日を過ごしているのである。彼女もいない。成績もそこそこ。運動神経も並。残念とか思ってるだろ?普通っていいんだぜ?(強がってない!)
僕の説明はこれで、なんとかいいだろう。
 さて、何故僕は、裏道を走ってまで急いでいるのか。それは、今日やる僕の大好きなアニメが最終回だからなんだ!!早くしないと、遅れてしまう…。うちには録画機能はない。つまり、そう、一度見逃せば、TVでは見れないのだ!僕は、TVで見たいんだ!こんな、説明をしている場合ではない!!僕は、筋肉痛になりそうなくらいの勢いで走る。あー!本当に暗い!それは、そうだ、だって今は10時過ぎ。しかも、裏道。頼りになるのは、自転車のライトだけ。僕は、視力2.0の目で目を凝らす。……ん?なんか…ちょっと大きいものが…いる。こ、怖い…。えっ、まさか、幽霊!?僕は、自転車のスピードを緩める。だんだん近づいていくと、それが、人がうずくまっている形であることが分かった。それにしても、怖い。いや、だって、何してんの!?怖いだろ!(君も絶対に怖がるって!)あー、速く通りすぎよ…っと。…ん?なんか、見たことあるような…顔だなぁ…。僕は、無意識に自転車のスピードをさらに緩めていた。しゃがんでいた人が、こちらに気づく。あっ、しまった!気付かれた!たとえ、連続の殺人犯だったとしても、もう、逃げることはできない。もう少し慎重になるべきだった!(どうしよ!指名手配の犯人だったら!そしたら、見たことがあるってのも辻褄があう!)間近になって、僕は、気がついた。人の正体が分かったのだ。とりあえず…ホッとした。殺人犯じゃなかった…。
僕は、自転車にまたがったまま、止まり、その人に声をかけた。
「何してんの?こんなところで。」
その人がゆっくりと顔をあげる。うん、やっぱり合ってた。
「白星 凌星(しらほし りょうせい)だろ?」
まず、この白星 凌星について、お話ししましょう。この方は、僕と同じクラス。人気者。賢い。運動できる。イケメン。以上。え?これで分かるだろ?もう少し付け足すと、男子からも、女子からも人気があって、クラスの中心核。僕から見ても、イケメンだと思う。え?僕は、クラスでどの位置なのって?う~ん、真ん中の辺りのとこかな?別に友達がいないって訳じゃないし。僕は、あまり彼とは話したことはない。お互いにただのクラスメイト。これくらいで、説明を終わって、戻ろう。
 そして、彼はこう言った。
「んーと……何だろうね?君こそ何してんの?」
頭のいい彼が、考えながら、少し焦って言った。僕に話を振るってことは、自分のしていたことに触れて欲しくないのだろう。まぁ、いいや。
「僕は、塾の帰りだよ。急いで帰りたいから裏道で帰ってるんだ。夜に通るのは初めてだけど、すっごく暗いね。じゃ、白星くんも気を付けるんだよ。バイバイ!」
 何故か、僕の中で、警告、警告っと、サイレンが鳴り始めた。これは、僕の本能だろう。あまり関わらない方がいい。そう思って、早口でそう告げると、帰ろうとした。彼は、最後に、ゆっくりと、こう言った。
「待って。君は、もう、ここの裏道を使わない方がいいよ。すごく、危険だから。」
知ってるよっ!だから、帰ろうとしたんじゃないか!僕の中の警告のランプが黄色から赤に変わる。
「うん、分かったよ。ありがと。それじゃ。」
手早く伝え、まさに、帰ろうとした。その時だった。僕の、犬並の嗅覚がアルコールの臭いを察知した(犬並って、けっこうすごいんだぜ?)。さっきまでは、感じなかった、臭い。ぱっと顔をあげ、辺りを見渡すと、こちらに近づいてくる、黒い影。その瞬間、僕の身体はとっさに反応した。まず、自転車から降り、ぼうっとしている白星にしっと唇、指を立て、近くの草むらの茂みに素早く隠れさせた。そして、僕も同じ茂みに隠れる。足音はもう迫ってきている。
「…おいっ!流れ星くんよぉ~?どこにいんだぁ~?準備はできてんぜぇ?」
酔っ払いのおっさんの声だ。けっこう酔ってるな。良かった。これで、殺人犯だったら、僕らはどうなっていたか。まず、良かった点を挙げよう。ひとつ、おっさんだったこと。ふたつ、酔っ払いであること。みっつ、とても暗いということ。この条件さえあれば、逃げ切れる。とりあえず、僕らの居場所は分からない。あとは、どうやって逃げ切るか。…と、これまでに無い程の勢いで頭を回転させていると、白星がカタカタと震えだした。まずい!さすがに音は気づかれてしまう!安心させないと!僕は、白星の耳元に近づくと、小さな声で囁いた。
「安心しろ。絶対に助けてやる。」
そう言うと、白星の震えは止まった。
こうしている間にも、おっさんは大声で叫んでいる。
「流れ星ぃ~!早く出てこいッ!グチャグチャにしてやるぅっ!」
一体、何のことだ?寝言は寝てから言えよ!あ、もしかして、立って寝てるとか?そぉっと、茂みから顔を出すと…。うん、寝てないな。おっさんは、僕の自転車の方に向かっていた。あぁ!やめてくれ!それは、僕の愛自転車っ!僕の心の声は、無視され、おっさんは自転車に近づく。
「あのガキッ!次会ったら報酬なしでグチャグチャにしてやるッッ!」
そう言うと、ぼくの、自転車に乗って去っていった。何度も言うが、ぼくの、自転車にまたがってふらつきながら去っていった。………。とりあえず、茂みから出よう…。
 僕と白星は、茂みから出て、いろいろなところについた、いろいろな葉っぱとか、ゴミとかを払った。白星が、「ここにもついてるよ」って髪の毛の葉っぱを払い落とす。「あぁ、ありがと。」と、返す。うん、冷静だ。大丈夫。僕は、冷静…
「ぅぁああ!!どーすんだよっ!」ビクッと白星が驚く。あぁ、とりあえず、何から考えればいいんだ?えーと、えーと…。と、僕がブツブツ言っていると、白星が
「とりあえず、俺が家まで車で送っていくよ。」僕の心の中を察したように言うと、スマホを取り出す。そして、電話で連絡する。「もしもし?俺だけど、今から迎えに来てくれないかな?今日は、なんだか、疲れちゃって……うん、あ、友達もいるけど…いい?大事な友達なんだ。本当にごめんね?…全然大丈夫?ありがとう。じゃ、よろしくね。」そういって、電話をきると、僕に笑顔で
「じゃあ、俺の塾まで走ろっか?」
…え?マジで?
「いや、待っ」
て、と言う暇もなく、僕の手を取り、走り始めた。走っているといろいろな疑問が湧いてくる。そうえば、なんで、こんなとこにいたの?何をしていたの?なんで、今から塾に行かないと行けないの?塾って遠いの?僕の体力のこと考えてる?
 そんなグルグルと考えている僕とは正反対に、彼は、楽しそうに、僕の手を引いて、夜の道を駆けていった。
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