上 下
2 / 2

あるすごく晴れた日なのに、心に覆い被さる雲のこと。

しおりを挟む
 あぁ、こんな晴れた日には、皆、きっと晴れ晴れした気持ちなんだろうな。と、歩きで登校しながら考えているのは、心に雲を宿した、この僕、初鳶 有斗(はつとび ゆうと)。その前に、昨日の事について簡潔に話をしよう。あの後、僕は、白星 凌星(しらほし りょうせい)の塾に到着した。10分で(けっこう走った。しかも、その前に自転車で飛ばしてたからな?今、筋肉痛なんだよ!)。有名な塾だった。優秀な白星の通いそうな塾だった(なんでも、夜1時までやっているらしい)。大型のいかにも高そうな、黒色の大型車が来て、車の窓を開けて、優しそうな上品な女の人が白星に声をかけた。
「凌ちゃん~、乗って?まぁ!凌ちゃんのお友達ね?さぁ、乗って乗って!」
嬉しそうにそう言うと、自動で車の扉を開けた。僕は、とてもとても礼儀正しく、車の中で凌ちゃんのお友達として、過ごした。優しそうな上品な女の人は白星のお母さんで、白星と仲良さげに話をしていた(僕の事について)。僕に嬉しそうにいろいろと話を聞かれた(まぁ、普通の内容だよ?省略するけど)。家まで送ってもらうと、とてもとても礼儀正しくお礼を言い、ペコリと頭を下げ、帰ろうとした。白星のお母さんに
「凌ちゃんの事、宜しくね~!」
と言われた。いや、ごめんなさい。もう、宜しくしたくないです。僕の中で警告のランプがつく。これは、僕の本能。なんとなく、ヤバイって言ってるんだ。白星が、「また、明日!」と、天使の微笑みで言った。僕は、女子みたいに騙されないぞ?「うん!バイバイ!」と、僕は、普通に返した。
 その後、母親に自転車が無くなったこと、変なヤバイおっさんがいたことを話した。母親は、すぐに警察に連絡をした。そして、僕の事よりも、自転車のことを心配した(僕は!?)。警察署に来てくださいと言われ、軽く、警察に事情を聞かれ、すぐに帰された。この時、僕は、白星がいたことは、警察には話さなかった。言ってはいけないような気がした。…もちろん、最終回のアニメは見られなかった(目から水がこぼれたよ)。
 という感じだな。自転車がない今、僕は歩きで登校してるわけだ。両親は忙しいからなぁ…。(平均年収の普通のサラリーマンパパとパートママだよ?どこにでもでてくるような普通の家庭だよ?)
あ、そうだ、最終回のアニメ、友達がきっと録画してるから見せてもらおっと。とか、思いながら、歩いて行くと、……白星がいた。誰かを待っているみたいな感じだ。…さて、どうやって気づかれずに通りすぎるか…。ん?そうえば、珍しいな。いつも、白星は学校来るの遅いのに。と、考えていると、見つかった。ぱっとこちらを向く。天使の微笑みをたたえて、こちらに歩いてくる。へぇ…身長…わりと大きいんだなぁ、と思いながら、僕も、ニコッと笑って
「おはよう!昨日は送ってくれてありがとう!じゃ!」と言い、そして、さりげなく、通りすぎようとした。…だが、白星も同じペースでついてきた。
「初鳶くん、おはよう!」あぁ、運が悪い。なんで、バッタリ会うんだ?本能が関わっちゃマズイのに…バカだなぁ~笑笑って言っている。だが、もう遅い。
「ちょっと、聞きたいことがあるんだ。」
僕の腕をきゅっと掴み、真剣な顔で言った。
え?なんだい?僕は全然、聞きたいことなんて、1つもないよ?
「昨日、俺が、あの道にいた事、誰にも言ってない?」
「もちろんだよ。誰にも聞かれなかったしね?」これは、本当のことである。
「そう。良かった。」ホッと胸を撫で下ろす、白星。
「ねぇ、なんで、俺が昨日あそこにいたのか気になる?」 と、聞かれ、僕は速攻、
「ぜんっぜん!全く気にならないよ!」
と、笑顔で返した。ちょっと不満そうな顔を見せた白星は、次の話題を振ってきた。
「あのオジサン、怖かったよね…。なんて、言ってたっけ?」と、聞かれた。確かに、それは、僕も気になる。寝言では、無さそうだし…。酔っていたからって理由も違う気がする。
「流れ星と、グチャグチャ?…あとなんだっけ、あ、報酬ってことも言ってたな…」そう口に出したとたん、僕の平凡な頭でも、ある1つの仮定が、思い付く。…これは、もし、これが、本当なら、もう、白星には一切近づかない方がいい。この仮定が偽であることを祈ろう。あれ、偽であることを証明するためには…反例を出さないといけなかったっけ?そんな考えあぐねている僕を見て、フッと頬笑む。
「何か、わかった?」
微笑んでいるのに、なぜか、怖い。僕は、敢えて、
「う~ん、何だろうね…?全然分からないや!」と、にこにこっと微笑んで、走り去ろうとした、
多分、これが、いけなかったんだ。
逃げようとする僕の腕を、グッと掴み、僕を見て、ニコッと微笑み、そのまま、近くの公園の公衆トイレに連れ込み(無理矢理)、鍵をかちゃん!とかける。僕は、逃げれなかった。だって、強いんだ!力が!
訳も分からないまま、連れ込まれた僕。警告のサイレンが激しく鳴り続け、赤のランプが点滅を続ける。ヤバイヤバイ。とりあえず、落ち着かせよう。そう思い、ニコッと微笑んだが、対する白星は、
「もう、気づいてるんだろ?」
と、最高の笑顔で言う。いや、まだ、僕のは仮定で……。
「ほんと気づいてないってばっ!」と、言うが、
「じゃあ、なんで、逃げようとしたんだ?」と、ジリジリと近づいてくる。公衆トイレに逃げ場はない。
「か、勘違いだよ!逃げようとしてなかったてば!」そんな、言い訳は通用しないことは知っていた。
「残念。そんな、言い訳は通用しないこと、知ってるかい?」うん、知ってたよ。すごく、すごく楽しそうな笑顔で言ってきた。怯える僕。血のように赤い彼の唇が、こう言った。
「おんなじこと、してあげるよ。」
や、ヤバイ!殺される!!
ちょっとここで、僕の仮定をお話ししましょう。まず、流れ星くんのこと。それは、凌星のこと。流星と、凌星をかけているんだと思う。そして、グチャグチャのこと。これは、ナイフでってこと。つまり、殺人。報酬ってのは、その、お礼のこと。これで、証明終了。うむ、我ながら、いい推理だ。つまり、白星と、謎の組織は、対立していて、戦っているんだ!うん、ヤバイね。
と、解説してる間に、
白星は、もう、目の前にいた。
もう、人生終わりなのかっ!
仕方がない、もう、大人しくしよう。そう思い、僕は、至近距離にいる白星を見た。ありがとう、アニメ。大好きだったよ。せめて、最終回だけでも、見させろよ!
…待って、やっぱ、ちょっと、ねぇ、せ、せめて、最終回だけでもっ、う、
うわぁああああ!!!!

………………………………………………………………………………。

時は流れ、現在。学校にて。
「あいつ死んじまったなぁ…」
「おいっ!それは言うなって!」
「俺、好きだったのに…!」
意味深な会話に聞こえるかもしれないが、これは、普通の男子中学生の会話である。
「なぁっ、初鳶!…って、初鳶?どうした?具合とか悪いのか?まぁ、具合良くても悪くても知らんけど、それより、昨日の最終回!見たか!?あいつさぁ、最後の最後で…グスン。」
これは、アニメオタクの安仁尾 小太男(あにお おたお)くん。
「ほんと、大丈夫?ほら、顔見せて?……なんか、真っ赤だよ?………とりあえず保健室、行く?」
これは、古くからの友人(僕がオムツをしていた頃から)の猫田 王子(ねこた おうじ)くん。
「え、ほんと?顔、真っ赤になってる?でも、授業はでないと…うん、大丈夫。ありがと。」
心配そうに見つめる二人。とりあえず、読んでる皆は、あの後、何があったのか分からないから、ちょっと省略も入れてお話しないとね。
 あの時、公衆トイレの中で、僕は、白星に、とっっても恥ずかしいことをされた。うん、別に知らなくてもいいんだけどね?(18歳未満の君!君の中で一番恥ずかしかったことは何かな?…うん、そんな感じのことを想像してね☆18歳以上の方、番外編をどうぞ…。)恥ずかしいことが、終わった後、僕は、すぐに逃げ出した。これまでにないほどの勢いで走った。走りまくった。そして、学校のチャイムとともに席に着席。今思えば、間に合ってほんと、良かったよ…。(皆勤賞を狙ってるからね!)って、そうじゃなくて、そのせいで、僕は、もう、クタクタ。なるべく、同じクラスの白星と目を合わせないように、こうして伏せているわけだ。で、僕の周りにいる二人は、最終回のアニメについて、話に入ってこない(これない)僕を心配しているわけなんだ。それじゃ、本編に戻ろう。
 「あ、安仁尾か、猫田、昨日のアニメ録画してない?僕、見損なっちゃって…」
「えぇー!?なんで!?どうしたんだ初鳶!あんなに楽しみにしてたのに!」と、楽観的な安仁尾。
「………。」と、俺を見て深く考え込む、優男、猫田。
「初鳶。いいぜ?俺の家来いよ。あー、安仁尾は来んなよ?お前、あいつが死んだぁあ!って騒ぐだろ?」
「…あぁ、何度も死ぬシーンは見たくねぇ…。」と、燃え付きる、安仁尾。
「ありがと!猫田っ!じゃ、今日一緒に帰…」ろう、と言いかけた僕は、スルッと首に絡まる腕に驚き、口を止める。
「ごめんね~、猫田くん。今日、初鳶くんは、俺と帰る予定になるんだ。」
ザワザワっ。これは、クラスが驚く音。そう、何しろ、人気者の白星が、僕と帰るなんて言い出したからだ。猫田も、目を丸くして驚いている。絡まる腕に、熱を感じ、僕は、僕の体温が上がるのを感じる。もちろん、そんな約束はしていない。はっと白星の顔を見上げ、なんで?って言った僕の声は学校の予鈴のチャイムにかき消された。その時の、白星は、楽しくて仕方がないって顔だった。
外は、真っ青な、雲一つない空。それとは、正反対な僕の心の空。そろそろ、雨が降りだすから、傘を準備しないとね。僕は、白星の顔を見て、そう思った。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...