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#10 ケットシーの涙
第5話 誰よりも速く
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『検査項目 #4、「迷いの森」を開始します』
「これ、意味があるんですかー」
『森の木々の間を飛行して、この森を抜けてください。
なお、以下の条件が付加されます』
条件1 木の上を通過することは出来ません
条件2 制限時間あり
条件3 木に衝突すると失格
条件4 墜落または接地すると失格
条件5 秘密
まだ、やるんですね、はいはい。わかりましたよ。——「木を見て森を見ず」という言葉があるが、私は森さえも見はしない。何故なら、些細な事を気にしては大事を成すことは不可能だからだ。もっと大きく、もっと広く見渡せば物事の本質が自ずと見えてくるというものである。
なんの森だかは知らないが、細い木が適当に並んでいるだけである。そんな隙間だらけの場所を飛び抜けるなど、今の私には造作もない。ここで迷うなど有り得ないことだろう。まして、ただ突っ立っているだけの木に打つかる? 触れるだけでも難しいではないか。だがそれでも「万全を期す」のが私の方針である。
『飛行方法を選択してください。さっさと選べ』
蝶・・・ 10万
トンボ・100万
鷹・・・ 10万
蝶なら楽勝よ。ゆっくりと飛べば良いだけだから。……でも、その蝶に乗って飛ぶのかしら、それとも……考えただけで……。
「『蝶』を選択、実行」
『飛行方法「蝶」が選択されました。さっさと飛べ』
木々の間を優雅に飛び回る私。私は蝶、大きな羽を上下に揺らし、風に乗ってフワフワ、木漏れ日の中をフワフワ、小さな小枝を蹴飛ばしながら、世界は優しさに包まれて行くのよ、フワフワ。木を避けるのなんて簡単よ、ハハーン。
『時間切れ、失敗です。遅い!』
ちょっと楽しみ過ぎたようね。まあぁ、たまには息抜きも必要でしょう。次は真剣にやるつもり。どこかでもかかってらっしゃい。
『残りの所持金 70万です。やばいかも』
所持金、所持金てね、……まあいいわ。どうせ増えることは無いんだし、ゼロになるまで使い切るだけよ。倹約家の私だけど、使うときは派手に……したいわね。
『飛行方法を選択してください。さっさと選べ』
蝶・・・ 10万
トンボ・200万
鷹・・・ 10万
蝶はもう試したし、トンボは……ちょっと見た目がダメなのよね。ということは、……もう! どうしろってなのっ!
「『鷹』を選択、実行」
『飛行方法「鷹」が選択されました。さっさと飛べ』
流石、鷹だけのことはあるわね。——うむ、速さに惑わされてはならん。目が追いつかないということもあるが、それはすぐに慣れるもの。それさえ克服すれば世界のどこにだってひとっ飛び。あの山、あの峠を超え、更にその向こうへ。そうやって恐怖を克服していけば、要は心の持ちよう。全ては止まって見える、止まって、……。
「うぎゃー、速い~、目が回る~」
『墜落、失敗です。速や』
「……」
『残りの所持金 60万です。とほほ』
私の希望も地に落ちたようじゃ。もう考えられん。思考停止。それ以上、考えたら前に進めなくなってしまう。考えるな、体で覚えるのじゃ。
『飛行方法を選択してください。さっさと選べ』
蝶・・・ 10万
トンボ・300万
鷹・・・ 10万
「『鷹』を選択、実行」
『飛行方法「鷹」が選択されました。さっさと飛べ』
「あぎゃー、目が回る~、木がー、木がー」
『木に衝突、失敗です。馴れろ』
おかしい、体が動かぬ。そろそろ体が勝手に反応しても良さそうな頃合いじゃて。しかしなあぁ、おかしいのじゃ。……これは、もしや体のどこかに不具合が生じてしまったのかもしれん。そうじゃ、そうに違いない。でなければ、全てがおかしいのじゃ。まだまだ、実力の半分も出してはおらぬ。このままでは、——初期化、再起動を試みる。
『残りの所持金 50万です。とほほ』
「……」
『飛行方法を選択してください。さっさと選べ』
蝶・・・ 10万
トンボ・400万
鷹・・・ 10万
さて、どうしたものよのぉぉぉ。——後がないよー。どうしよう。もう、「あれ」を試すしかないのかな。でも最後のやつは、どうしよう。ええい、ままよ。
「『鷹』を選択、実行」
『飛行方法「鷹」が選択されました。さっさと飛べ』
必殺、勝手流! 目を通して得られる情報だけでは限界である。その限界を突破するには自然に、思うがまま、心の命じるままに、あれとこれを研ぎ澄まし、葉から溢れる雫の音を聴くが如し。それこそ勝手流の奥義、今こそ炸裂、爆発だぁぁぁ!
「上上下下左右左右ビーエー、あぎゃー、目が回る~」
『飛行方法「鷹」、成功。やったね』
ハアハア、やればできる子ね。また一歩、大きく成長してしまったわ。どこまで成長するのかしらね。この先もその先も、あらゆる壁を突き抜けて……じゃなくて超えて行く私……。
『残りの所持金 40万です。おろおろ』
まだ、気持ちが悪い。もう少し手加減した方が良いみたいね。何事も全力は良いとしても、周りと合わせるっていうのも大切。「出る杭は打たれ強い」……とは言わないか。
『検査項目 #4 を終了しました』
「……」
◇◇
「これ、意味があるんですかー」
『森の木々の間を飛行して、この森を抜けてください。
なお、以下の条件が付加されます』
条件1 木の上を通過することは出来ません
条件2 制限時間あり
条件3 木に衝突すると失格
条件4 墜落または接地すると失格
条件5 秘密
まだ、やるんですね、はいはい。わかりましたよ。——「木を見て森を見ず」という言葉があるが、私は森さえも見はしない。何故なら、些細な事を気にしては大事を成すことは不可能だからだ。もっと大きく、もっと広く見渡せば物事の本質が自ずと見えてくるというものである。
なんの森だかは知らないが、細い木が適当に並んでいるだけである。そんな隙間だらけの場所を飛び抜けるなど、今の私には造作もない。ここで迷うなど有り得ないことだろう。まして、ただ突っ立っているだけの木に打つかる? 触れるだけでも難しいではないか。だがそれでも「万全を期す」のが私の方針である。
『飛行方法を選択してください。さっさと選べ』
蝶・・・ 10万
トンボ・100万
鷹・・・ 10万
蝶なら楽勝よ。ゆっくりと飛べば良いだけだから。……でも、その蝶に乗って飛ぶのかしら、それとも……考えただけで……。
「『蝶』を選択、実行」
『飛行方法「蝶」が選択されました。さっさと飛べ』
木々の間を優雅に飛び回る私。私は蝶、大きな羽を上下に揺らし、風に乗ってフワフワ、木漏れ日の中をフワフワ、小さな小枝を蹴飛ばしながら、世界は優しさに包まれて行くのよ、フワフワ。木を避けるのなんて簡単よ、ハハーン。
『時間切れ、失敗です。遅い!』
ちょっと楽しみ過ぎたようね。まあぁ、たまには息抜きも必要でしょう。次は真剣にやるつもり。どこかでもかかってらっしゃい。
『残りの所持金 70万です。やばいかも』
所持金、所持金てね、……まあいいわ。どうせ増えることは無いんだし、ゼロになるまで使い切るだけよ。倹約家の私だけど、使うときは派手に……したいわね。
『飛行方法を選択してください。さっさと選べ』
蝶・・・ 10万
トンボ・200万
鷹・・・ 10万
蝶はもう試したし、トンボは……ちょっと見た目がダメなのよね。ということは、……もう! どうしろってなのっ!
「『鷹』を選択、実行」
『飛行方法「鷹」が選択されました。さっさと飛べ』
流石、鷹だけのことはあるわね。——うむ、速さに惑わされてはならん。目が追いつかないということもあるが、それはすぐに慣れるもの。それさえ克服すれば世界のどこにだってひとっ飛び。あの山、あの峠を超え、更にその向こうへ。そうやって恐怖を克服していけば、要は心の持ちよう。全ては止まって見える、止まって、……。
「うぎゃー、速い~、目が回る~」
『墜落、失敗です。速や』
「……」
『残りの所持金 60万です。とほほ』
私の希望も地に落ちたようじゃ。もう考えられん。思考停止。それ以上、考えたら前に進めなくなってしまう。考えるな、体で覚えるのじゃ。
『飛行方法を選択してください。さっさと選べ』
蝶・・・ 10万
トンボ・300万
鷹・・・ 10万
「『鷹』を選択、実行」
『飛行方法「鷹」が選択されました。さっさと飛べ』
「あぎゃー、目が回る~、木がー、木がー」
『木に衝突、失敗です。馴れろ』
おかしい、体が動かぬ。そろそろ体が勝手に反応しても良さそうな頃合いじゃて。しかしなあぁ、おかしいのじゃ。……これは、もしや体のどこかに不具合が生じてしまったのかもしれん。そうじゃ、そうに違いない。でなければ、全てがおかしいのじゃ。まだまだ、実力の半分も出してはおらぬ。このままでは、——初期化、再起動を試みる。
『残りの所持金 50万です。とほほ』
「……」
『飛行方法を選択してください。さっさと選べ』
蝶・・・ 10万
トンボ・400万
鷹・・・ 10万
さて、どうしたものよのぉぉぉ。——後がないよー。どうしよう。もう、「あれ」を試すしかないのかな。でも最後のやつは、どうしよう。ええい、ままよ。
「『鷹』を選択、実行」
『飛行方法「鷹」が選択されました。さっさと飛べ』
必殺、勝手流! 目を通して得られる情報だけでは限界である。その限界を突破するには自然に、思うがまま、心の命じるままに、あれとこれを研ぎ澄まし、葉から溢れる雫の音を聴くが如し。それこそ勝手流の奥義、今こそ炸裂、爆発だぁぁぁ!
「上上下下左右左右ビーエー、あぎゃー、目が回る~」
『飛行方法「鷹」、成功。やったね』
ハアハア、やればできる子ね。また一歩、大きく成長してしまったわ。どこまで成長するのかしらね。この先もその先も、あらゆる壁を突き抜けて……じゃなくて超えて行く私……。
『残りの所持金 40万です。おろおろ』
まだ、気持ちが悪い。もう少し手加減した方が良いみたいね。何事も全力は良いとしても、周りと合わせるっていうのも大切。「出る杭は打たれ強い」……とは言わないか。
『検査項目 #4 を終了しました』
「……」
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