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#17 魔法少女の涙
第12話 賢者は歴史に学ぶ
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そこは半年前の地球「裏地球」、どこまで行っても「裏」なので裏表の話はありません。突如現れたタカ・トビ・ワカの三人組の任務は美津子の動画撮影を阻止すること。よって半年後のその日までに何とかすれば良いだけの簡単なお仕事です。よって三人がとった行動は……半年後のその日まで待つことにしたそうです。それは、急に来ることが決まったため、美津子がどこに住んでいるとか、普段なにをしているかなんて、トンと分からない、知らないから何も出来なかった、——いいえ、旅行気分で何もしなかったようです。これは良くある、直前まで何もしなかった、宿題なんて夏休み最後の日にやればいいんだ、というノリに近いでしょう。
ということで話は一気に半年後に飛びますが、その間、本当に何もしなかったのでしょうか。例えばそう、未来から来た訳ですから一攫千金の機会も多々あったはずです。ですのでそんな旨い話を見逃す三人ではないはずですが、結果的にそのようなことは起こりませんでした。その理由として考えられることは、ここが地球と双子の星であり森羅万象、起きうる事象は全て同じだということです。つまり、ここに来る前の三人が、例えば競馬で大金を手にした、という過去がなければ、それはここでも起こらない、ということなのです。
それでは? ええ、そうなんです。これから三人がやろうとしていることだって失敗に終わるだけじゃないの? と。——ええ、それがそうではないのです。何故ならば……美津子の行動なんてあまりにも小さすぎて、面倒な法則は、言葉の通り面倒なので適用されないのです。——そんなバカな、矛盾だよ、と言う貴方。試しに明日、会社や学校を休んでみてください。それで世界が滅亡しないのなら、——そういうことです……。
◇
さて、お話は佳境に入って参ります。あの日あの時、気分転換のために外出する美津子です。その住居の前、といっても少し離れていますが、美津子の登場を心待ちにしていた三人の姿があります。一応、半年もの時間が有りましたから住所を調べるくらいはしていたようです。三人の計画としてこれから……はまだ未定、出たとこ勝負といくらしく、美津子の車の後を付いて行きます。そんな彼らの乗る車はかなり古く、今にも止まってしまいそうですが、更にかなり小さく、三人が乗るには窮屈そうです。その車は新たに現地調達したもので、本来トビが持っていた車が使用できないため(裏地球の三人が既に車で出かけているため)、泣く泣く購入した模様。しかし、今にして思えばレンタルという手段があったのではないか、と後悔しまくりのトビです。
美津子の高級車を尾行していると、——これが結構遅い、という状況にイライラを募らせる三人です。時間帯と場所柄にして、「床までアクセルを踏め!」と言いたくなる程、道はガラガラピシャンです。(因みに、ピシャンに意味はありません)
今にして思えば、行き先もその時刻も先刻承知の三人です。なにも後をついて行かなくても……と閃いたようです。そこで床までアクセルを踏み込み、トロトロ美津子を追い越して行きます。その際、まるで悲鳴のように唸るエンジン、今にも何かが取れてしまいそうな振動、そしてバランスが悪いのか蛇行しながら邁進する小さな小さな車は、地元のイカレタ人たちとして美津子に認知されたようです。
◇
結局、先回りすることになった三人、山道をクネクネと抜けると、——居ました、三人が、です。勿論ここでの接触は御法度、自分と自分が出会えば何が起こるのか想像しただけでも世界が、この宇宙が終わってしまいそうです、です、です、ぁぁ……。
「よおぉ、俺。相変わらずバカみたいに光ってるじゃないか」
例によって上半身裸で光り輝くタカに近づくタカ——です。この状況の事情を知っているのは片方のみのはずですが、両方とも何事もなかったかのように接していて、まるでアホみたいです。裏地球のタカは声を掛けて来たのが自分であるとは気が付いていないようで、
「お前、だれ? 近づくと危ないから、あっち、しっしっ」
と追い払おうとしますが、それで言うことを聞くタカでもありません。執拗で纏わり付くようにタカの周りをクルクルと回るタカです。そして、
「ふーん、俺が俺にそんな口を利いてもいいのか? ……それよりもだ、俺。早くここからいなくなれ。ヤバイんだよ、ここにいたらさ」
と表のタカが裏のタカに説得を試みますが、なにせそこはタカです。他人からあーしろ、こーしろと言われるのが大っ嫌いな——正確には自分から言われるのも大っ嫌いなタカです。
ところで、遠巻きにタカたちの遣り取りを見物していた他の二人、トビとワカは心の中で差し迫る運命の刻に焦りを感じています。すると、そんな騒めきにも似た波動を感じ取ったのか、トビとワカがトビとワカの存在に気が付きました? 混乱しそうなので表と裏、それとも1号2号でしょうか。
この四人にとって、自分そっくりな人物と出会ったことは——そこはタカたちと違い自分が自分と対面していることを何となく理解したようです。ですから、慌てず騒がす、そんな不思議もあるものだと感心し、思わず自己紹介したい気分を抑えながら、お互い目と目を合わせることで事情を察した、といったところでしょうか。
さて、そんなこんなで表と裏、合わせて六人の耳にブロ~ンという車の走行音が響いて参りました。勿論それは美津子の車であり、速くはないですが着実に近づいていることを知らせるものでした。それは過去でも現在でもタカを除く者たちは気が付いており、特に表の者たちにとっては運命の瞬間が迫っていることを意味しています。そこで、タカたちが言い合ってるところに出向き、
「ヤバイよ、ヤバイ。すぐ近くまで来てるって」
とタカに真剣な顔を向けるトビです。しかし、それも運命なのか、裏のトビも参戦し、四人であ~だこ~だとやり始めてしまい、それをよそ事のように見守っているワカたちです。これでは美津子の到着を待つばかりとなり、せっかくの半年が無駄になってしまいそうですが、そこは冷静なワカ(表の方)、
「もう時間がないよ、隠れなきゃ」
と言いながら表のタカとトビの手を引いていきます。それでも動こうとしないタカですが、その時、暗闇を裂く車のヘッドライトがチラッと六人を照らしました。それに驚いたタカは、
「もう、どうなっても知らないからな。バカだよ、お前は」
と捨て台詞を吐きならが三人揃って走り去って行きます。時折、振り返りながら、「あいつはバカだな。……それって俺のこと、か?」と何やら不思議一杯の表情で呟きましたが、さすがのタカもここで引き下がっては全てが台無しということに気が付いたようです。ですが——その時は既に遅く、堂々と美津子に発見された裏のタカたちです、あぁ……。
こうして過去は過去らしく忠実に歴史をなぞり、未来というか、タカたちのいる表の世界を改変しようという目論見は失敗に終わるのでした。それはきっと、世界の、いえ、宇宙の法則に逆らうことは出来ないという何かの啓示だったのかもしれません。
◇
その後、表のタカたちがどうなったかと申しますと、当日の午前零時をもって裏地球もろとも消滅いたしました。——ええ、これでタカたちの存在が消えたわけではありません。所詮は絵に描いた餅のような存在でしたから、元の世界に戻った、というのが結果で御座います。これは無限に効力のある魔法ではなく、寿命のある時限式の魔法だったとも言えるでしょう。
◇
ということで話は一気に半年後に飛びますが、その間、本当に何もしなかったのでしょうか。例えばそう、未来から来た訳ですから一攫千金の機会も多々あったはずです。ですのでそんな旨い話を見逃す三人ではないはずですが、結果的にそのようなことは起こりませんでした。その理由として考えられることは、ここが地球と双子の星であり森羅万象、起きうる事象は全て同じだということです。つまり、ここに来る前の三人が、例えば競馬で大金を手にした、という過去がなければ、それはここでも起こらない、ということなのです。
それでは? ええ、そうなんです。これから三人がやろうとしていることだって失敗に終わるだけじゃないの? と。——ええ、それがそうではないのです。何故ならば……美津子の行動なんてあまりにも小さすぎて、面倒な法則は、言葉の通り面倒なので適用されないのです。——そんなバカな、矛盾だよ、と言う貴方。試しに明日、会社や学校を休んでみてください。それで世界が滅亡しないのなら、——そういうことです……。
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さて、お話は佳境に入って参ります。あの日あの時、気分転換のために外出する美津子です。その住居の前、といっても少し離れていますが、美津子の登場を心待ちにしていた三人の姿があります。一応、半年もの時間が有りましたから住所を調べるくらいはしていたようです。三人の計画としてこれから……はまだ未定、出たとこ勝負といくらしく、美津子の車の後を付いて行きます。そんな彼らの乗る車はかなり古く、今にも止まってしまいそうですが、更にかなり小さく、三人が乗るには窮屈そうです。その車は新たに現地調達したもので、本来トビが持っていた車が使用できないため(裏地球の三人が既に車で出かけているため)、泣く泣く購入した模様。しかし、今にして思えばレンタルという手段があったのではないか、と後悔しまくりのトビです。
美津子の高級車を尾行していると、——これが結構遅い、という状況にイライラを募らせる三人です。時間帯と場所柄にして、「床までアクセルを踏め!」と言いたくなる程、道はガラガラピシャンです。(因みに、ピシャンに意味はありません)
今にして思えば、行き先もその時刻も先刻承知の三人です。なにも後をついて行かなくても……と閃いたようです。そこで床までアクセルを踏み込み、トロトロ美津子を追い越して行きます。その際、まるで悲鳴のように唸るエンジン、今にも何かが取れてしまいそうな振動、そしてバランスが悪いのか蛇行しながら邁進する小さな小さな車は、地元のイカレタ人たちとして美津子に認知されたようです。
◇
結局、先回りすることになった三人、山道をクネクネと抜けると、——居ました、三人が、です。勿論ここでの接触は御法度、自分と自分が出会えば何が起こるのか想像しただけでも世界が、この宇宙が終わってしまいそうです、です、です、ぁぁ……。
「よおぉ、俺。相変わらずバカみたいに光ってるじゃないか」
例によって上半身裸で光り輝くタカに近づくタカ——です。この状況の事情を知っているのは片方のみのはずですが、両方とも何事もなかったかのように接していて、まるでアホみたいです。裏地球のタカは声を掛けて来たのが自分であるとは気が付いていないようで、
「お前、だれ? 近づくと危ないから、あっち、しっしっ」
と追い払おうとしますが、それで言うことを聞くタカでもありません。執拗で纏わり付くようにタカの周りをクルクルと回るタカです。そして、
「ふーん、俺が俺にそんな口を利いてもいいのか? ……それよりもだ、俺。早くここからいなくなれ。ヤバイんだよ、ここにいたらさ」
と表のタカが裏のタカに説得を試みますが、なにせそこはタカです。他人からあーしろ、こーしろと言われるのが大っ嫌いな——正確には自分から言われるのも大っ嫌いなタカです。
ところで、遠巻きにタカたちの遣り取りを見物していた他の二人、トビとワカは心の中で差し迫る運命の刻に焦りを感じています。すると、そんな騒めきにも似た波動を感じ取ったのか、トビとワカがトビとワカの存在に気が付きました? 混乱しそうなので表と裏、それとも1号2号でしょうか。
この四人にとって、自分そっくりな人物と出会ったことは——そこはタカたちと違い自分が自分と対面していることを何となく理解したようです。ですから、慌てず騒がす、そんな不思議もあるものだと感心し、思わず自己紹介したい気分を抑えながら、お互い目と目を合わせることで事情を察した、といったところでしょうか。
さて、そんなこんなで表と裏、合わせて六人の耳にブロ~ンという車の走行音が響いて参りました。勿論それは美津子の車であり、速くはないですが着実に近づいていることを知らせるものでした。それは過去でも現在でもタカを除く者たちは気が付いており、特に表の者たちにとっては運命の瞬間が迫っていることを意味しています。そこで、タカたちが言い合ってるところに出向き、
「ヤバイよ、ヤバイ。すぐ近くまで来てるって」
とタカに真剣な顔を向けるトビです。しかし、それも運命なのか、裏のトビも参戦し、四人であ~だこ~だとやり始めてしまい、それをよそ事のように見守っているワカたちです。これでは美津子の到着を待つばかりとなり、せっかくの半年が無駄になってしまいそうですが、そこは冷静なワカ(表の方)、
「もう時間がないよ、隠れなきゃ」
と言いながら表のタカとトビの手を引いていきます。それでも動こうとしないタカですが、その時、暗闇を裂く車のヘッドライトがチラッと六人を照らしました。それに驚いたタカは、
「もう、どうなっても知らないからな。バカだよ、お前は」
と捨て台詞を吐きならが三人揃って走り去って行きます。時折、振り返りながら、「あいつはバカだな。……それって俺のこと、か?」と何やら不思議一杯の表情で呟きましたが、さすがのタカもここで引き下がっては全てが台無しということに気が付いたようです。ですが——その時は既に遅く、堂々と美津子に発見された裏のタカたちです、あぁ……。
こうして過去は過去らしく忠実に歴史をなぞり、未来というか、タカたちのいる表の世界を改変しようという目論見は失敗に終わるのでした。それはきっと、世界の、いえ、宇宙の法則に逆らうことは出来ないという何かの啓示だったのかもしれません。
◇
その後、表のタカたちがどうなったかと申しますと、当日の午前零時をもって裏地球もろとも消滅いたしました。——ええ、これでタカたちの存在が消えたわけではありません。所詮は絵に描いた餅のような存在でしたから、元の世界に戻った、というのが結果で御座います。これは無限に効力のある魔法ではなく、寿命のある時限式の魔法だったとも言えるでしょう。
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