逆・異世界転生 Ⅰ

Tro

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#14 2500年後の涙

#7 掌中の真実

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ところで、陽一が連れている例の御嬢様は、困惑の表情で立っていた。それは、何時まで経っても貰えるものが貰えず、更に、暗く退屈な場所であること、それと変な『おっさんズ』に囲まれていることに、少々どころか、目一杯の息苦しさを募らせていたようだ。おまけに、狂ったようにプルプルする陽一が不気味で仕方が無い、いや、ウザくて面倒な存在になっていた。これが、並の子供であれば、きっと泣き叫んでいたことだろうが、そこは御嬢様、平静を装いつつ、陽一の袖をツンツンと引っ張るくらいで勘弁していたようだ。しかし本心はきっと、「貰うもん貰って、さっさとここを出たい」だろう。

そんな御嬢様の要求シグナルに素早く応答する陽一、ではない。それどころか陽一の頭の中は、満開に咲き狂った色鮮やかな花々が、文字通り花吹雪となって狂喜乱舞している真っ最中、そう、プルプルが止まらないのである。それに業を煮やした御嬢様は、「おいっ!」と大きな声で言ったような、言わなかったような。それでやっと正気を取り戻した——わけではなく、御嬢様に足を踏まれたような、踏まれていないような——

『高み』からお嬢様を見下ろした陽一は、そこに不細工な表情をした子供を発見。何でこんな所に、と考えを巡らしたところで我に返った陽一は、ハッとして膝を折り、口をパクパクしている御嬢様の口元に耳を近づけた。それは何時の仕草であったが、今度は口を閉じてしまった御嬢様である。それは、『おねだり』するのが急に恥ずかしいことのように思えたから、のようなのだが、りとて、何も言わないのも困る、という、まだまだ迷い足りない『お年頃』である。それでもやっと口にしたのが、

「プレゼントは……まだかな」と、殆ど聞き取れないような『か細い』声で言うのが精一杯のようである。

御嬢様の要求に一瞬、何のことやらサッパリの陽一であったが、サクッと記憶を取り戻した陽一は、——サクッと立ち上がると、眼下の小さな御嬢様を見下ろしながら、こう思うのであった。「おお、何ということだ。この、物欲に溺れし哀れな子羊よ。たった今、抱えきれない程の贈り物を受け取ったばかりではないか。——なに? それでは足りぬ、まだまだ欲しいとな。一体全体、どうしたらそこまで底抜けに欲が尽きぬのであろうか、ふむ」と、ここまで思い巡らしたところで目を閉じると、「ふうぅ、何を子供相手に考えているんだ、俺は。そうだからこそ、それが『子供』というものではないか、やれやれ」と大人ぶったところで自分の顎を左手で撫でながら、

「御嬢様。あれはですね、もう受け取っている——」と言い掛かけたところで、壇上の男がまた主張を始めてしまい、陽一の声は御嬢様に届くことはなかった。そんな『おっさんズ』の所業に、「おい、聞こえないぞ、こらぁ」と心の奥底で嘆く御嬢様であった、ようだ。

「俺のぉぉぉ、この手に握っている、握られている真実を世間にぃぃぃ、世界に散蒔ばらまけば、あの会社は潰れ、俺たちはぁぁぁ、元の世界に戻って、元の生活が送れるように(たぶん)、なるんだぁぁぁ。俺たちは、俺たちは、奴隷、なんかじゃ、ないぃぃぃ」

一人盛り上がる男の調子にザワツク『おっさんズ』。素直に喜ぶ者たち、期待外れを危惧する者、今一信用しない者などなど、それぞれの反応を隠すこともなく露わにしていた。それは、同じ運命を背負わされた者同士の、垣根の無い『信頼のようなもの』に似た『絆のようなもの』に、ほぼ全ての者が『雰囲気』という池に浸っていたからだろう。

しかし、ごく一部の者の中には不安を口にする者が居たようだ。何やらそれは、『元の世界に戻る・戻れる』という部分が気に入らないらしい。ナンダカンダと言っても、もうこの世界に馴染んでしまった『この体と頭』である。強制的ではあったものの、そうそう生き方を変えるなんて今更できない・面倒くさい、という、実におっさんらしい思考が浮かんできた・浮かんでしまったらしい。因みに陽一は、その部分を聞き漏らしていたので、何ら問題は『無い』。

◇◇
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