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#3 近代 カツミ編
#3.5 猫は飛ばない (1/3)
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オフィース・カツミの事務所にて。
まったりとした午後を……だらけています。
何時ものように…今日だけは、俺達はソファーに座ってボーとしていた。電話対応に忙しいカツミ。仕事が忙しいのは、何よりだ。
「なあ~、セリス。歌、歌ってくれよ~」
隣りで伸びているセリスに催促した。
「悪りい。今、そんな気分じゃ無いんだ」
「そっか~。じゃあ、イリア~。何か芸を見せてくれよ~」
「タダじゃ出来ないわよ」
「タダ~? 銃弾とか? 銃弾とか? 銃弾とか?」
「はい! やらせて頂きます。
むかーし、むかーし。ある所に猫がいました。ククク。
その猫は、ククク、白くて、ククク、尻尾まで、アハハ。
白くて、アハハ、ククク、おもしろい、アハハハハハハハハ、キャー」
「はーい。よく出来ました。パチパチ」
「もう、ダメかもしれません」
電話を切ったカツミが。独り言とは思えない程の声で言った。
「ユウキ。あんたは、不幸を呼び込む男、若しくは貧乏神と呼ばれたことはないですか?」
「アハハ、カツミ。そんな訳が……あるよ」
「はやり。私の見立て通りです」
「やだな~、人をそんなに厄介者扱いしないでよ」
「厄介です。問題です。破滅です」
「何があったんだ? カツミ。俺ならチカラになるぞ」
「では、借金を今すぐ返してください。そして、今すぐここから出て行ってください」
「慌てるな! カツミ。事情は分からないが。話せば分かる。話そう、何かを」
「失礼しました。私としたことが。取り乱してしまいました。謝罪します。ごめんなさい」
「いやいや、そこまで謝ることじゃないだろう」
「そうですね。では従順よく整理います」
「そうだよ。そうしよう」
「では、ユウキ。借金の返済をお願いします」
「へ?」
「ユウキの借金返済が最重要事項です。まずこれを解決します」
「ちょっと待ったー。それじゃあ、これとこれを処分しますから。イリア! セリス! どっかで売られてこい」
「何いってるんだよ、ユウキ。オレの物がオレを売れるわけないだろう」
セリス。訳の分からんこと言わないでくれ。
「ユウキって、小さい男よね。どおりでおじさんが笑うわけよ」
「見たのか? イリア!」
「嫌よね、小さい男は」
「オーマイガー」
「さあ、ユウキ。何時までに用意できますか?」
「あー、カツミ。この事務所も、苦しいのは分かった。だったら、ほら、カツミも、あの格好をすれば、すぐに稼げるから。あれが好きな人、一杯いるから!」
「では、ユウキは何をするのですか? 何を提供しますか?」
「俺はー、俺はー、そうだ。祈る! これでも神と呼ばれたことがあるんだ」
「では、祈ってください。これでブチますから」
捨てる神あれば拾う神あり。一本の電話が仲裁に入った。
「イリア、セリス。ユウキが逃げないように監視してください」
「いいわ」「おう」
カツミは電話で、しきりに断りの言葉を続けた。話の様子だと、どうも依頼らしい。それを断るとは、そんなに割が合わないのか。しかし、押し切られてようで、渋々承諾したようだ。
「”チーム ツアーレ”の皆さん。お仕事の時間です」
◇
某空軍基地から、こんにちは。
俺とカツミは、実験機のある格納庫へ向かって歩いている。フライトスーツ……タダの作業服のようだ……に身を包み、ヘルメット…安全第一を被り、ブーツ……長靴とどう違う…を履き、手袋…軍手をはめ、ちょっと曇ったゴーグルを装備して完了。
セリスは、その目の良さで、レーダー監視。
イリアは、その口の軽さで、通信業務を行う。
今回の任務は急を要した。なぜなら……カツミにバトンタッチ。
我が国より、機密情報を持ち出した者がいます。その者は航空機により国外脱出を目論んでします。既にその者は空の上、つまり、どこかの飛行場から出立した模様。現在入手済みの情報では、国外への飛行計画はありません。よって、その者が空路を逸脱しない限り、通常の航空機と区別が付きません。おそらく、発見から国外までは、およそ10分。それがタイムリミットです。
必ず、国内でその航空機を発見・誘導、もしくは破壊する必要があります。
作戦内容は、各航空機のルート確認と追跡。そして、発見時の素早い行動が求められます。
◇◇
俺とカツミが向かう格納庫の扉が開く。
「これが、今回、私達が使用する機体です」
「おおー。これは。どこかで見覚えのある形」
「実験機 F-13.9 愛称は Once Cat。我が国初のジェット戦闘機です。ユウキは操縦した経験があるということなので、前席へ。私は火器管制を行いますので後席になります。この機体は、まだ実験段階であるので、最悪、全損しても債務はありません。今の私達には願ってもない好条件です」
操縦経験とはゲームでの話です。はい。
「ユウキ、この実験機の愛称、Once Cat の由来を知っていますか?」
「いいえ!」
「では、”猫は飛ばない” という物語は知っていますか?」
「いいえ!」
「愛称 Once Cat は、この”猫は飛ばない”という物語から付けられたそうです。では、その物語を教えましょう。大変重要なことです」
物語が重要とは?
「”猫は飛ばない”
ある時、子猫が木の下にいました。ニャー」
「ええ?」
「仕方ありません。原文に、そう書いてありますから」
「続きをお願いします。ニャーから」
「子猫は木の上を見ました。
すると、その木の枝に鳥の巣がありました。
鳥の巣には雛がいて、ピーチクパーチと鳴いていました。
鳥の雛に興味を持った子猫は、木によじ登りました。
しかし、途中まで登った所で。それ以上、上には行けませんでした。
仕方なく子猫は登るの諦め、下に降りました。
月日は流れ、子猫は成長し、鳥の巣の所まで登れるくらい、大きくなりました。
さあ、登る……ニャー。
大きくなった猫は木の上を見ました。
すると、鳥の巣にいた雛も成長し、今にも飛び立てるくらい、大きくなりました。
そして、鳥の巣にいた鳥達が一斉に、空に向かって飛び立ちました。
もう、鳥の巣には、誰もいません。
それでも猫は、木に登り、鳥の巣のところまで行きました。
そこで猫は思いました。自分も飛べるのではないかと。
猫は、ためらうことなく、そこから…
さて、猫は飛んだのでしょうか? それとも下に落ちたのでしょうか。
おかしいでしょう? 題名が ”猫は飛ばない” と言っておきながら、さあ、どっちでしょう? と言うのは」
「その猫は怖くなって、降りたんじゃないですか?」
「そうですか。行きましょう」
◇◇
まったりとした午後を……だらけています。
何時ものように…今日だけは、俺達はソファーに座ってボーとしていた。電話対応に忙しいカツミ。仕事が忙しいのは、何よりだ。
「なあ~、セリス。歌、歌ってくれよ~」
隣りで伸びているセリスに催促した。
「悪りい。今、そんな気分じゃ無いんだ」
「そっか~。じゃあ、イリア~。何か芸を見せてくれよ~」
「タダじゃ出来ないわよ」
「タダ~? 銃弾とか? 銃弾とか? 銃弾とか?」
「はい! やらせて頂きます。
むかーし、むかーし。ある所に猫がいました。ククク。
その猫は、ククク、白くて、ククク、尻尾まで、アハハ。
白くて、アハハ、ククク、おもしろい、アハハハハハハハハ、キャー」
「はーい。よく出来ました。パチパチ」
「もう、ダメかもしれません」
電話を切ったカツミが。独り言とは思えない程の声で言った。
「ユウキ。あんたは、不幸を呼び込む男、若しくは貧乏神と呼ばれたことはないですか?」
「アハハ、カツミ。そんな訳が……あるよ」
「はやり。私の見立て通りです」
「やだな~、人をそんなに厄介者扱いしないでよ」
「厄介です。問題です。破滅です」
「何があったんだ? カツミ。俺ならチカラになるぞ」
「では、借金を今すぐ返してください。そして、今すぐここから出て行ってください」
「慌てるな! カツミ。事情は分からないが。話せば分かる。話そう、何かを」
「失礼しました。私としたことが。取り乱してしまいました。謝罪します。ごめんなさい」
「いやいや、そこまで謝ることじゃないだろう」
「そうですね。では従順よく整理います」
「そうだよ。そうしよう」
「では、ユウキ。借金の返済をお願いします」
「へ?」
「ユウキの借金返済が最重要事項です。まずこれを解決します」
「ちょっと待ったー。それじゃあ、これとこれを処分しますから。イリア! セリス! どっかで売られてこい」
「何いってるんだよ、ユウキ。オレの物がオレを売れるわけないだろう」
セリス。訳の分からんこと言わないでくれ。
「ユウキって、小さい男よね。どおりでおじさんが笑うわけよ」
「見たのか? イリア!」
「嫌よね、小さい男は」
「オーマイガー」
「さあ、ユウキ。何時までに用意できますか?」
「あー、カツミ。この事務所も、苦しいのは分かった。だったら、ほら、カツミも、あの格好をすれば、すぐに稼げるから。あれが好きな人、一杯いるから!」
「では、ユウキは何をするのですか? 何を提供しますか?」
「俺はー、俺はー、そうだ。祈る! これでも神と呼ばれたことがあるんだ」
「では、祈ってください。これでブチますから」
捨てる神あれば拾う神あり。一本の電話が仲裁に入った。
「イリア、セリス。ユウキが逃げないように監視してください」
「いいわ」「おう」
カツミは電話で、しきりに断りの言葉を続けた。話の様子だと、どうも依頼らしい。それを断るとは、そんなに割が合わないのか。しかし、押し切られてようで、渋々承諾したようだ。
「”チーム ツアーレ”の皆さん。お仕事の時間です」
◇
某空軍基地から、こんにちは。
俺とカツミは、実験機のある格納庫へ向かって歩いている。フライトスーツ……タダの作業服のようだ……に身を包み、ヘルメット…安全第一を被り、ブーツ……長靴とどう違う…を履き、手袋…軍手をはめ、ちょっと曇ったゴーグルを装備して完了。
セリスは、その目の良さで、レーダー監視。
イリアは、その口の軽さで、通信業務を行う。
今回の任務は急を要した。なぜなら……カツミにバトンタッチ。
我が国より、機密情報を持ち出した者がいます。その者は航空機により国外脱出を目論んでします。既にその者は空の上、つまり、どこかの飛行場から出立した模様。現在入手済みの情報では、国外への飛行計画はありません。よって、その者が空路を逸脱しない限り、通常の航空機と区別が付きません。おそらく、発見から国外までは、およそ10分。それがタイムリミットです。
必ず、国内でその航空機を発見・誘導、もしくは破壊する必要があります。
作戦内容は、各航空機のルート確認と追跡。そして、発見時の素早い行動が求められます。
◇◇
俺とカツミが向かう格納庫の扉が開く。
「これが、今回、私達が使用する機体です」
「おおー。これは。どこかで見覚えのある形」
「実験機 F-13.9 愛称は Once Cat。我が国初のジェット戦闘機です。ユウキは操縦した経験があるということなので、前席へ。私は火器管制を行いますので後席になります。この機体は、まだ実験段階であるので、最悪、全損しても債務はありません。今の私達には願ってもない好条件です」
操縦経験とはゲームでの話です。はい。
「ユウキ、この実験機の愛称、Once Cat の由来を知っていますか?」
「いいえ!」
「では、”猫は飛ばない” という物語は知っていますか?」
「いいえ!」
「愛称 Once Cat は、この”猫は飛ばない”という物語から付けられたそうです。では、その物語を教えましょう。大変重要なことです」
物語が重要とは?
「”猫は飛ばない”
ある時、子猫が木の下にいました。ニャー」
「ええ?」
「仕方ありません。原文に、そう書いてありますから」
「続きをお願いします。ニャーから」
「子猫は木の上を見ました。
すると、その木の枝に鳥の巣がありました。
鳥の巣には雛がいて、ピーチクパーチと鳴いていました。
鳥の雛に興味を持った子猫は、木によじ登りました。
しかし、途中まで登った所で。それ以上、上には行けませんでした。
仕方なく子猫は登るの諦め、下に降りました。
月日は流れ、子猫は成長し、鳥の巣の所まで登れるくらい、大きくなりました。
さあ、登る……ニャー。
大きくなった猫は木の上を見ました。
すると、鳥の巣にいた雛も成長し、今にも飛び立てるくらい、大きくなりました。
そして、鳥の巣にいた鳥達が一斉に、空に向かって飛び立ちました。
もう、鳥の巣には、誰もいません。
それでも猫は、木に登り、鳥の巣のところまで行きました。
そこで猫は思いました。自分も飛べるのではないかと。
猫は、ためらうことなく、そこから…
さて、猫は飛んだのでしょうか? それとも下に落ちたのでしょうか。
おかしいでしょう? 題名が ”猫は飛ばない” と言っておきながら、さあ、どっちでしょう? と言うのは」
「その猫は怖くなって、降りたんじゃないですか?」
「そうですか。行きましょう」
◇◇
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