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#4 未来 イオナ編
#4.2 初デート (2/2)
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俺は、歩きながら考えた。さて、次はどうするか。何故か”海”というキーワードが頭から離れない。でも、どうやって行くかだが、うまい具合に、レンタカー屋さんがあった。ふむふむ。車で海を見に行くか。とってもお洒落でセレブだ。助手席に座って、風に髪をなびかせる彼女を想像してしまった。なら、行くしかないだろう。
レンタカー屋さんで、車を選ぶ。選り取り見取りだけど、予算には限りがある。仕方ないので、ずんぐりむっくりした小型車を選んだ。主役は車じゃない、俺達だ。ただの移動手段だ。
受付を済ませ配車を待っていると、営業の人だろうか、血相を変えて走ってくる。
『お客様。大変申し訳ないのですが、お客様ご指定の車が故障しておりまして、つきましては、別の車でお願い出来ないかと、ご相談に参りました』
「別でもいいですけど、料金が違うと、ちょっと困るんですけど」
『料金は同じで結構でございます』
「それなら、いいですよ。別に、あの車に拘っていませんから」
『有り難う御座います。ではこちらに』
「おお!」
案内された車は、高級オープンカー。なんとラッキー。
俺は、助手席に彼女を乗せ、ナビをセットして海に向かった。まさしく、絵に描いたようなシチュエーション。待ってたぜ、俺。まっすぐ前を向く彼女。車のエンジンも、俺の心臓も、フル回転だ。
行き先ざきの信号が、いいタイミングで青になる。車の流れもスムーズ。俺の人生も、こうありたい。俺達は。観光スポットでもある港に、あっという間に到着した。
手摺の向こうは、すぐに海。海風が心地いい。当然、彼女と一緒だからいいんだ。
記念に写真を撮りたい気分だったが、あいにくカメラなんて持っていない。この彼女との光景を、俺の目に、記憶に焼き付けておこう。もう、この目は洗わない。
『すみませーん』
変なおっさんが声を掛けてきた。何奴! さては彼女を狙っているな。俺は彼女を庇うように、立った。
『すみませーん。写真を撮らせて貰ってもいいですか?』
出た! このエロオヤジ。やっぱり彼女狙いか。そうはいくか。返り討ちにしてくれる。
「ダメです。帰ってください」
『いやー、あんまり君達が絵になるもんだから、つい声を掛けちゃって』
聞いてないのか! エロオヤジ…君達?
『どう? 記念に一枚。嫌なら無理にとは言わないけど』
「はい」
おおー、彼女が応えてしまった。何ということだ。
「お金、取るんでしょう?」
『お金は要らないさ。僕はプロじゃないから。写真撮ったら、すぐに君達にあげるよ』
エロオヤジめ。何か下心があるな。俺もあるけど。
「はい」
おおー、また彼女が応えてしまった。
『じゃあ、そこに並んで。そう、海をバックにね』
流れに乗って俺と彼女は整列して立った。
『ダメダメ、そうじゃなくて、もっとくっついて』
もっとくっつけ?。何を言うか! エロオヤジ。嬉しいじゃないか。
『では、撮りまーす。1+1=』
「2」
『はーい。よく撮れました。じゃあ、これね』
エロオヤジが写真をくれた。そんなに早く、どっから出した? マジシャンか?
『じゃあ、僕はこれで。お二人とも、仲良くねー』
そう言って、海風のように去っていった。何だったんだ、あの人は。でも、彼女とのツーショットを手に入れた。結果良ければ全て良し。
その写真を見て、俺は驚愕の事実を発見した。彼女が笑っている。俺は彼女に向かって「1+1=」と言って、顔を見た。彼女は、いつも通り「はい」と言って無表情だ。これはおかしい。俺は彼女に写真を見せ、同じようにと言ってみたが、「はい」というだけだった。この写真。加工してあるのか?
◇
フフフ。ここに来たのは、海が見たいだけじゃあない。隣には、海を見渡す大観覧車があるのだ! デートと言えば定番中の定番。観覧車。その頂上で二人は……フフフ。
その前に腹ごしらえ。二人で、出店のクレープを頬張る。ベンチに並んで座り、海を見ながら、いや、海はどうでもよくて、彼女をチラ見しながら一緒に食べる。何という至福の時。その食べる姿もいい。
俺は魔が差したように、イリア達を思い出した。何で今まで、一緒にいたんだろう。随分と時間を無駄にした気がする。最初から、ここに来れば良かったんだ。そして、ずっとここにいればいいんだ。何という愚かな俺。選択を誤ったようだ。
フフフ。やって来ました。大観覧車。その順番が巡ってきた。ゴンドラに乗り込む二人。それはそれは、ゆっくりと上昇していく。俺の気持ちは急上昇だ。
向かい合って座る俺達。これって、こうするものかと、疑問に思った。隣に座ってもいいんじゃないか? でも、そうするとバランスが悪くなるのか?
悩んでいると、ゴンドラが風で揺れる。その度、彼女も揺れる。これはいかん。支えなければ。俺は必要に迫られ、止む無く彼女の隣に座った。安全確保。ゴンドラが更に揺れる。俺は彼女の肩を支えた。安全確保が最優先だ。
俺の理想は高い。身の程知らずと、笑われた事もあった。現実を見て、現実を受け入れた者は、今の、俺の領域に達することは出来ないだろう。理想は掲げるんじゃない。追求するものだ。それを具現化した彼女。俺は誇っていいだろう。誰にも負けない俺の理想は、身の程を知らない。
ゴンドラが一番高いところに差し掛かると、強風で観覧車が止まってしまった。その揺れで、俺と彼女の距離がグッと縮んだ。
チャンス到来。
この勢いで押し倒すか、無理やり◯◯をするか。きっと、何を言っても、何をしても、彼女は『はい』と言うだろう。それは、この世界では許されていること。現実ではない現実。俺はそこにいるんだ。
さあ、勇気を持って、ヤレー、ユウキ。
……
……
……
……
……
……
……
……
……
……
……
……
……
……
……
デキっこねー。
◇
レンタカー屋さんで、車を選ぶ。選り取り見取りだけど、予算には限りがある。仕方ないので、ずんぐりむっくりした小型車を選んだ。主役は車じゃない、俺達だ。ただの移動手段だ。
受付を済ませ配車を待っていると、営業の人だろうか、血相を変えて走ってくる。
『お客様。大変申し訳ないのですが、お客様ご指定の車が故障しておりまして、つきましては、別の車でお願い出来ないかと、ご相談に参りました』
「別でもいいですけど、料金が違うと、ちょっと困るんですけど」
『料金は同じで結構でございます』
「それなら、いいですよ。別に、あの車に拘っていませんから」
『有り難う御座います。ではこちらに』
「おお!」
案内された車は、高級オープンカー。なんとラッキー。
俺は、助手席に彼女を乗せ、ナビをセットして海に向かった。まさしく、絵に描いたようなシチュエーション。待ってたぜ、俺。まっすぐ前を向く彼女。車のエンジンも、俺の心臓も、フル回転だ。
行き先ざきの信号が、いいタイミングで青になる。車の流れもスムーズ。俺の人生も、こうありたい。俺達は。観光スポットでもある港に、あっという間に到着した。
手摺の向こうは、すぐに海。海風が心地いい。当然、彼女と一緒だからいいんだ。
記念に写真を撮りたい気分だったが、あいにくカメラなんて持っていない。この彼女との光景を、俺の目に、記憶に焼き付けておこう。もう、この目は洗わない。
『すみませーん』
変なおっさんが声を掛けてきた。何奴! さては彼女を狙っているな。俺は彼女を庇うように、立った。
『すみませーん。写真を撮らせて貰ってもいいですか?』
出た! このエロオヤジ。やっぱり彼女狙いか。そうはいくか。返り討ちにしてくれる。
「ダメです。帰ってください」
『いやー、あんまり君達が絵になるもんだから、つい声を掛けちゃって』
聞いてないのか! エロオヤジ…君達?
『どう? 記念に一枚。嫌なら無理にとは言わないけど』
「はい」
おおー、彼女が応えてしまった。何ということだ。
「お金、取るんでしょう?」
『お金は要らないさ。僕はプロじゃないから。写真撮ったら、すぐに君達にあげるよ』
エロオヤジめ。何か下心があるな。俺もあるけど。
「はい」
おおー、また彼女が応えてしまった。
『じゃあ、そこに並んで。そう、海をバックにね』
流れに乗って俺と彼女は整列して立った。
『ダメダメ、そうじゃなくて、もっとくっついて』
もっとくっつけ?。何を言うか! エロオヤジ。嬉しいじゃないか。
『では、撮りまーす。1+1=』
「2」
『はーい。よく撮れました。じゃあ、これね』
エロオヤジが写真をくれた。そんなに早く、どっから出した? マジシャンか?
『じゃあ、僕はこれで。お二人とも、仲良くねー』
そう言って、海風のように去っていった。何だったんだ、あの人は。でも、彼女とのツーショットを手に入れた。結果良ければ全て良し。
その写真を見て、俺は驚愕の事実を発見した。彼女が笑っている。俺は彼女に向かって「1+1=」と言って、顔を見た。彼女は、いつも通り「はい」と言って無表情だ。これはおかしい。俺は彼女に写真を見せ、同じようにと言ってみたが、「はい」というだけだった。この写真。加工してあるのか?
◇
フフフ。ここに来たのは、海が見たいだけじゃあない。隣には、海を見渡す大観覧車があるのだ! デートと言えば定番中の定番。観覧車。その頂上で二人は……フフフ。
その前に腹ごしらえ。二人で、出店のクレープを頬張る。ベンチに並んで座り、海を見ながら、いや、海はどうでもよくて、彼女をチラ見しながら一緒に食べる。何という至福の時。その食べる姿もいい。
俺は魔が差したように、イリア達を思い出した。何で今まで、一緒にいたんだろう。随分と時間を無駄にした気がする。最初から、ここに来れば良かったんだ。そして、ずっとここにいればいいんだ。何という愚かな俺。選択を誤ったようだ。
フフフ。やって来ました。大観覧車。その順番が巡ってきた。ゴンドラに乗り込む二人。それはそれは、ゆっくりと上昇していく。俺の気持ちは急上昇だ。
向かい合って座る俺達。これって、こうするものかと、疑問に思った。隣に座ってもいいんじゃないか? でも、そうするとバランスが悪くなるのか?
悩んでいると、ゴンドラが風で揺れる。その度、彼女も揺れる。これはいかん。支えなければ。俺は必要に迫られ、止む無く彼女の隣に座った。安全確保。ゴンドラが更に揺れる。俺は彼女の肩を支えた。安全確保が最優先だ。
俺の理想は高い。身の程知らずと、笑われた事もあった。現実を見て、現実を受け入れた者は、今の、俺の領域に達することは出来ないだろう。理想は掲げるんじゃない。追求するものだ。それを具現化した彼女。俺は誇っていいだろう。誰にも負けない俺の理想は、身の程を知らない。
ゴンドラが一番高いところに差し掛かると、強風で観覧車が止まってしまった。その揺れで、俺と彼女の距離がグッと縮んだ。
チャンス到来。
この勢いで押し倒すか、無理やり◯◯をするか。きっと、何を言っても、何をしても、彼女は『はい』と言うだろう。それは、この世界では許されていること。現実ではない現実。俺はそこにいるんだ。
さあ、勇気を持って、ヤレー、ユウキ。
……
……
……
……
……
……
……
……
……
……
……
……
……
……
……
デキっこねー。
◇
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