12☆ワールド征服旅行記

Tro

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#5 古代 セイコ編

#5.1 空駆ける者 (2/2)

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いつの間にか、イリアはポチの背中に乗り、多分、飛ぶように指示している。そんな傍若無人を止めるようにセイコが振り向く。駄々っ子のように渋るイリアを、説得するセイコ。どう説得したのか、イリアがポチから降りると、その開放感からなのか、ポチは、上昇気流を捕まえて飛び去ってしまった。


「セリスお姉様。これらの者達は、お姉様の従者ですか?」
セイコの、セリスを見る目が眩しい。セイコの、俺を見る目が怪しい。

「ユウキはオレのもんだからな。取るなよ」
「やはり従者でしたか。一目見たときから、そうだと思いました」

これは早めに訂正しておく必要がありそうだ。
「待て! 俺は違うぞ。俺だって、ポチのことは知っていたぞ」

「失礼な奴だ。ポチ丸様を呼び捨てにするとは。
ポチ丸様は、お前など知らないと言っているぞ」

そのポチ丸様はもう、飛んで行ってしまったんだが。それに、イリアのことは突っ込まなくてもいいのか?

「セリスお姉様、是非、私の里にいらしてください。きっと、里長も喜びます」
「いいぞ」
「それでは早速、行きましょう。ご案します。おい! 人間。お姉様に付き従え!」
「待て! 俺はユウキだ。それで、あっちは」
「黙って付いて来い、ユウキ」



俺達は山を降り、森に入った。随分と歩いたせいで、俺はクタクタだった。

「里ってのは、まだ着かないのか」

森に入っても、里らしいものは見当たらない。更に、ここから歩くのかと思うと、気も足も重くてなってしょうがない。

「まだだ。従者のくせに、生意気な」
セイコが生意気な口を叩く。

「なあ~、まだ遠いのか?」
「お姉様! もう少しです。頑張ってください」

セイコが別人になってる。


森の中程に入った。それでも、里らしいもは全く、見えてこない。これは、永遠に森の中を彷徨うことになるんじゃないかと諦めかけた時、パカカパと音が聞こえてきた。

その音に身構える俺達。山賊か、追剝ぎか。はたまたUFOか?

馬の群れがパカカパと足音を立てて近寄ってくる。それに合わせて、セイコが挙動不審のまねごとを始めた。普通の人風に言えば、怯えていると言うだろう。

俺達は、馬の群れと鉢合わせになった。その馬に乗っている、ちょっと怪しげな男達。セイコは、セリスの陰に隠れて小さくなっている。さっきまでの大きな態度とは正反対だ。

「お前、どこに行く?」
それは、こっちが聞きたいセリフだ。

「山を降りている途中だ。そっちは?」

「この辺の者か?」
答える気は無いようだ。

「さあね。答える義務は無いよ」
「貴様~」
「ケンジさん、無視して行きましょう」

後方のおっさんが、このロクでもないケンジを催促した。ケンジ? あのケンジか? ケンジ=ろくでなし=悪の権化=人類の敵か?

「おじさん、もしかして旅行者?」
「ん? お前もか? 小僧」

「ケンジさん。下見はもう十分だ。先を急ぎましょう」
矢の催促とは、このことか。

ケンジはセリス、特にその後ろに隠れているセイコを注視しながら馬を進める。

「お嬢さん方、ちょっと前を失礼するよ」
俺が”お前”で、あっちが”お嬢さん”か。どこにいるんだ? その、お嬢様は?

ケンジはイリアを注視しながら馬を進める。結局、俺以外をエロい目で見たかっただけだ。人類の敵=エロオヤジか?

◇◇

エロオヤジ軍団とすれ違うと、セイコが俺達の先頭を陽気に歩く。さっきまでの小さくなっていたのは誰だろうか?

そんなセイコが、ピタリと立ち止まった。

「着きました、お姉様」
「いいところじゃないか」

セリスが、まるで何かを見渡すように、腰に手をつけで言い放す。こんな森の中が好きだったのか?

「まあ、素敵ねー」
イリアも、森ファンだとは知らなかった。

「(ユウキ。何か境界のようなものがあるようです)」
「境界?」

「(多次元とでも言えばいんでしょうか。ある存在が別の存在と重複しています)」
「ますます、何とも、分からなくなってきたぞ」

セイコが俺に白い目を向けて聞いてきた。

「おい、ユウキ。何を一人で喋っているんだ? あっちの世界に行ってたのか?」
「着いたって、何もないじゃないか」
「やっぱり。ユウキのような汚れた人間には入れないんだ。諦めて帰れ」

「ここまで連れてきて、それはないぞ!
……じゃあ、いいよ。帰ろうぜ、イリア、セリス」

俺は、来た道を歩き始めた。
一歩、二歩。誰も付いて来ない。
三歩、四歩、誰も止めに来ない。
五歩目。誰かが俺の手を取った。

「待って、ユウキ」イリアだ。お前って奴は。
「イリア……」
「行くなら、お金を置いていって」イリア。お前って奴は。
「イリア……」

「冗談よ。私も一緒に行くから。ほら泣かないで」
泣いてなんかないもん。

「ちょっと待てよ、ユウキ。オレも行くぞ」
「セリス……」
泣いてなんかないもん。

「あーーー、みなさん。冗談ですよ。冗談。ユウキさん、行きましょう。私の里へ。歓迎しますよ」

慌てたセイコが苦しい言い訳をする。だったら、最初から、そうしろ! セイコのバカ! 俺は、顔の汗を拭き取った。

「では、ユウキさん。私を抱きかかえてくれますか?」
「ええ?」

真顔のセイコが俺に、迫る。

「さあ、早く。そうしないと、私の里に入れませんよ。できれば、お姫様抱っこで」
この時代に、お姫様っているのか?

俺はセイコを持ち上げ、抱きかかえる。しかし、非力な俺には重すぎた。セイコは、両手で俺の目を塞ぐ。

「なんだ? これじゃあ、前が見えないぞ。冗談か?」
「いいえ。そのまま歩いてください」

闇の中、転びそうになりながら歩いた。

「もういいぞ、ユウキ。さっさと降ろせ」
セイコが、俺だけに聞こえるよう小さい声で言った。裏表のある奴は、嫌いだ。

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