12☆ワールド征服旅行記

Tro

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#7 現代 フーコ編

#7.4 常勝無敗 (2/2)

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第94開発室。24時間、眠らない部屋。屍がゾンビと化す、誰かが夢見た小部屋だ。

午前9時を過ぎても、部長は出社してこない。未来は変わった。それに合わせるように、現在が変わった。これは、勝利宣言しても、いいのではないだろうか。

見知らぬ男が入ってきた。こいつが、あれなのか?

「なんだ? ここは。暗いじゃないか。カーテンを開けろ」
どうやら、こいつが、あれらしい。

ゾンビ達がカーテンを開けると、部屋はパッと別世界に変わった。新世界にようこそ。

しかし、屍の山を見た途端、男はカーテンを閉めるように命令した。新世界はすぐに、闇の世界へと戻ってしまった。

「あ~、ケンジ部長は栄転された。代わりに俺が、お前達の主人となった。さっさと働け、手を休めるな、話すな、考えるな、命令に従え、以上」


薄暗い部屋で俺は、罵詈雑言を浴びながら、キーボートを叩き続ける。そこに、俺の新世界や勝利は無い。得体の知れない十字架を背負い、無の炎を燃やし続けた。

気がつくと、隣のお姉さんがいない。クンカクンカ。残り香も感知できない。それは希望なのか、絶望なのか。判断が付かない。ついでに、突然の停電。周囲が阿鼻叫喚で埋め尽くされる。

「停電くらいで騒ぐな! その分、死んでも取り戻せ!」
新しく来た部長が吠える。

「おい! 1031番はどこに消えた!? あいつはクビだ!
いや、例の部署に放り込んでやる!」

◇◇

薄暗い部屋で俺は、罵詈雑言を浴びながら、キーボートを叩き続ける。そこに、俺の光や闇は無い。得体の知れない十字架を背負い、愛の炎を燃やし続けた。

至福の時間が到来。さあ、餌の時間だ。

「おい! 474番。30秒で戻ってこい」
そのうち、俺の愛を教えてやる。

俺は部屋を出て、従業員食堂を目指す。エレベーターに乗り込み、51階で土石流に押し流される。券売機の行列に並ぶこと42分。カツ丼をチョイス。もう飽きた。

ボッチのお姉さんに接近。俺は向かいの席に座った。周囲から若干、騒めきが聞こえたような。

コーヒーカップを持つお姉さんの手が震えている。俺はカツ丼を頬張りながら、その食感を味合う。

「私は、絶望した!」
「俺も、カツ丼飽きました」
「15年後を確認した」
「それで停電したんですね」
「ニューフェースのブタ野郎が社長になっていた」
「未来は、変わったんですね」
「この会社は、誰がトップでも、潰れることには変わりは無かった。無念」
「それが、この国の宿命ですから」
「もう、こんな世界は嫌だ。そう思わないか? 君」
「カツ丼も飽きたんで、俺もそろそろ行こうかと思いまして」
「どこへ行こうというのかね?」
「それは。言っても信じて貰えないですから」
「異世界だな。君は異なる世界から来たのだろう?」
「信じるんですか? 俺の言っていることを」
「当然だ。私は最初から、君を信じている」
「お姉さん。貴方という人は」
「フフフ。私は……」

『すいません。相席、いいですか?』
無邪気な若者が無敗を信じ、勝利確定で挑んできた。

「どうぞ、空いてますから」

無邪気な若者が、椅子に座ることに勝利した。周囲から若干、羨望とため息が聞こえたような。

「さあ、君。行こうではないか。善は急げだ」

俺達は無邪気な若者を残し、席を去った。



俺達は、購買部のゲートに踏み込んだ。

「いらっしゃいませ」
「旅行者なんですが、ここでいいですか?」
「はい、ようこそ”ツアーレ”へ」
「移動をしたいんですけど」
「はい、ご希望の行き先は御座いますか?」
「君。ここにしよう」
「こちらですね」
「お姉さん。そんなところで、いいんですか」
「もちろんだ。この世界でなければ、どこでもいい」
「そのわりには、指定するんですね」

「お客様? パスポートを拝見しても宜しいですか?」
「パスポート?」
「はい、確認できました。ユウキ様ですね。こちらの方は?」

「お姉さん。俺と一緒に行くには、俺の所有物として登録しないといけないんですけど。どうします? やっぱり、嫌ですよね」

「構わない。一時的な処置に異存はない。登録してくれたまえ」
「じゃあ、”お持ち帰り券”で、この方をアイテム登録してください」

「はい、承りました。それでは、フーコ様一式で宜しいでしょうか?」
「一式?」
「はい、一式になります」
「それでお願いします」

「はい。それでは、重量超過となりますので、その分、追加で費用が掛かりますが、宜しいでしょうか?」

重量オーバー? 確かに お姉さんは俺より背が高いけど、スラッとしているし、もしかして、着ている立派なスーツが、とんでもなく重いとか?

「お姉さん。そんなに重い……」
「君。その先を言うつもりかね。そうなのかね」
「追加で、お願いします」
「はい、承りました。それでは、良い旅を引き続き、お楽しみください」


こうして俺と、お姉さん一式は、24時間働ける世界を、退社した。
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