パンドーラーの箱

Tro

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第2話 夢はあるか

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 俺は旅に出た。決して借金取りから逃げたわけじゃない、気分転換だ。そして『みさき』という名の岬にたどり着いた。俺の魂が『そこへ行け』と囁いたからだ。


 そこに、一人の少女がいた。黒い髪を海風になびかせ俺を誘っている(絵柄的には金髪でギターまで背負っているが、それは何かの錯覚だ)。それでは声を掛けねば失礼であろう。

「こんな所にいたのか。さあ、俺と帰ろう」

 その少女は振り向き、俺を睨みつける。よく見ても見なくても少女の着ているTシャツにでっかく『希望』と書いてある、間違いない。

「やだもん」

 いい返事が返ってきた。だが再度、確認しなければならないだろう。何事も『つい勢いで』とあるではないか。

「どうしてもか?」

「やだもん」

 同じ返事が返ってきた。壊れたか?


 俺は考えた。ここで、こいつを突き飛ばして保険金でも戴くか。ダメだ。今思い付いたから、保険を掛けていない。俺はズボンのポケットに手を突っ込み、悩み、少女の事を考えた。

「I Have a Dream!」

 俺は渾身の思いを少女にぶつけた。だが、反応が無い。聞こえなかったのか? 俺は、ありったけの声で叫ぶ。

「I Have a Dream!」


 二人の間に、時が止まったかのような静寂が訪れた。それはビックバーン直前、宇宙創生の瞬間に似ているだろう。

「おじさん、なに言ってるの?」

 静寂が訪れたのだ。はっきりと俺の声・本心は伝わっているはずだ。しかしだ、この素っ頓狂な言い草はなんだ。

 ああ、そうか。恥ずかしくて素直になれないんだな。すまん、分かってやれなくて。俺も素直になれなかったようだ。

 仕方あるまい。無理を押し通したくない俺は少女に背を向け、別れの言葉を贈る。

「何時でも好きな時に戻って来い。俺の部屋の鍵は壊れている」

 そう言い残して俺は、岬を後にした。
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