2 / 6
第2話 夢はあるか
しおりを挟む俺は旅に出た。決して借金取りから逃げたわけじゃない、気分転換だ。そして『みさき』という名の岬にたどり着いた。俺の魂が『そこへ行け』と囁いたからだ。
そこに、一人の少女がいた。黒い髪を海風になびかせ俺を誘っている(絵柄的には金髪でギターまで背負っているが、それは何かの錯覚だ)。それでは声を掛けねば失礼であろう。
「こんな所にいたのか。さあ、俺と帰ろう」
その少女は振り向き、俺を睨みつける。よく見ても見なくても少女の着ているTシャツにでっかく『希望』と書いてある、間違いない。
「やだもん」
いい返事が返ってきた。だが再度、確認しなければならないだろう。何事も『つい勢いで』とあるではないか。
「どうしてもか?」
「やだもん」
同じ返事が返ってきた。壊れたか?
俺は考えた。ここで、こいつを突き飛ばして保険金でも戴くか。ダメだ。今思い付いたから、保険を掛けていない。俺はズボンのポケットに手を突っ込み、悩み、少女の事を考えた。
「I Have a Dream!」
俺は渾身の思いを少女にぶつけた。だが、反応が無い。聞こえなかったのか? 俺は、ありったけの声で叫ぶ。
「I Have a Dream!」
二人の間に、時が止まったかのような静寂が訪れた。それはビックバーン直前、宇宙創生の瞬間に似ているだろう。
「おじさん、なに言ってるの?」
静寂が訪れたのだ。はっきりと俺の声・本心は伝わっているはずだ。しかしだ、この素っ頓狂な言い草はなんだ。
ああ、そうか。恥ずかしくて素直になれないんだな。すまん、分かってやれなくて。俺も素直になれなかったようだ。
仕方あるまい。無理を押し通したくない俺は少女に背を向け、別れの言葉を贈る。
「何時でも好きな時に戻って来い。俺の部屋の鍵は壊れている」
そう言い残して俺は、岬を後にした。
0
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる



