パンドーラーの箱

Tro

文字の大きさ
上 下
6 / 6

第6話 全てを任されし者、その名は『希望』

しおりを挟む

 ザ・俺、降臨。


 俺の目前に無数の敵、厄災が立ちはだかる。こんなところで集会を開いていたとは、聞いていない。

 どうやらこの世界は、全ての厄災を俺に押し付けたいらしい。まあ、いいだろう。俺はただのおっさ……お兄さんだ。

 希望に見放され、厄災に愛された男。絶望の淵に立たされた俺に、もはや失うものなど、何も無い。これで借金もチャラだ。あとは俺に任せ、幸せな人生を送れ。


 厄災が一気に襲いかかる。それにあがなう武器は無い。

 さあ、みんな。家に帰ろう。ドアの鍵は壊れている。


「I Have a Dream!」

 俺の、最後の言葉だ。
 ……
 

 ……
 ……

 ……
 ……
 ……

 ……
 ……
 ……
 ……

 ……
 ……
 ……
 ……
 ……
 ……
 ……

 俺の前から厄災が消えていく。俺の夢、俺の希望が、俺を救った。

 俺の夢とはなんだ? そんなものが在っただろうか。ただ言ってみたかっただけだ。だが、俺だけ残して厄災は行ってしまった。

 そうか、あの箱を開けて希望が残らなかったのは、俺自身が希望だったからか。


 俺は、最後に残った希望になった。

 めでたしだ。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...