『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん

文字の大きさ
56 / 147

第55話 正式な依頼?僕9歳なんだけど…

しおりを挟む
ウェレッタ先生に連れられたどり着いた学園長の部屋。
先生の後に続き、僕とティアは部屋の中へと歩を進めた。

中で待ち受ける老紳士。
入学式の時に『長々とあいさつ』をしていた学園長先生だ。

既にローテーブルには湯気を出し、かぐわしい香りの紅茶が用意されていた。

「すまないねライト君。いや、ライト伯爵様、かな?」

ニコリと人懐っこい笑顔を向ける学園長。

「ハハハ、ハ。ここは学園です。『ライト』でお願いします」
「ふむ。とんでもない力を保持しながら謙虚な姿勢…素晴らしい」

そして感嘆の表情を浮かべた。
ティアも何故かどや顔?

ハハハ、ハ。

「それで、どういったお話なのですか?」
「…ウェレッタ先生、どこまで話したのかね」

取り敢えずソファーに座る僕とティア。
横の席に着いたウェレッタ先生が小さくため息をつく。

「一応ダンジョンの事は話しましたが…今更ですが本当にライトに依頼されるおつもりですか?」

そんな問いかけに、何故か呆れた顔をする学園長先生。

ん?
この人…

あれっ?
式典にいた?!

「何を言っているのだウェレッタ先生は。彼はあのライト伯爵だぞ?確かに秘匿されているのだろうが…情報の精査、少しずさんではないのかね?」

「情報?…すみません。…確かに収集、少し滞っています」
「まあいい。…それにそちらにいらっしゃる従者…」

そう口にし、いきなりソファーから立ち上がり跪く学園長先生。
そして驚愕の事実を口にした。

「私は学園長ですが…モザーク地方の女神教の司教でもあります。…女神ティアリーナ様…あなた様の復活、心より祝福申し上げる」

「なあっ?!!…め、女神様?!!…」

いきなり立ち上がり、床にめり込ませるほど頭を下げるウェレッタ先生。

あー。
うん。

…この人とんでもないことしてくれたね。

僕は少しだけ魔力を込め、学園長先生を睨み付けた。

「うぐっ?!…た、確かにライト様が秘匿している事、勝手に打ち明けたことには謝罪する。だが…これは国王も認めたこと。何より――すまないがもう時間が残されておらんのだ」

国王がらみ。
じゃあ。
僕は魔力を霧散させる。

「…ふう。分かりました。…ですが僕は通常の学園での暮らし、手放したくありません。…ウェレッタ先生?」
「は、はい」

「…あとで少し記憶…いじります。…許可を」
「っ!?……影響はあるのでしょうか。そ、その…生活とか私の能力とか…」

冷や汗を流すウェレッタ先生。
確かに精神や記憶に対する干渉、この世界の常識では多くの後遺症が残るまさに“禁呪”だ。

「ああ。問題ありません。…その前に…『完全封鎖』…これで外部には漏れません。…えっと」

僕はこの空間を完全に掌握。
情報の漏洩を防ぎ、ちらと学園長先生に視線を投げる。

実は僕、この人の名前とか知らないんだよね。

どうやら僕の意図を認識したようで。
学園長先生は恭しく膝を折り、僕に対し深々と頭を下げた。

「っ!?そう言えば自己紹介がまだでしたな。私はこの学園の学園長でありモザーク地方の司教、レイダニースと申します。以後お見知りおきを」

「レイダニースさん、とお呼びしても?」
「ええ。ご随意に」

改めて僕はソファーに腰を掛け、それに促されるように座るレイダニースとウェレッタ。
僕はゆっくりと視線をウェレッタ先生に向けた。

「僕のその記憶への干渉、全く後遺症とかはありません。正直国王からの情報を得ているレイダニースさんがいる今、僕が行わなくてもきっと魔術師団長からの調整対象になるでしょう」

時計の音がやけに響く。
一瞬の静寂。

『…そちらだと少しばかりの後遺症、残るかも、ですね」

ごくりとつばを飲み込むウェレッタ先生。
すでにその表情には諦めを含んだ後悔が浮かんでいた。

「それにしても…この対応酷すぎませんか?ウェレッタ先生、可哀そう過ぎでしょ?」

そもそも『僕のクラスの担任』という時点で彼は大きなリスクを得てしまっている。
まあリターンは…

うん?
待てよ。

僕が入学することはそれこそ3年前から確定していたんだ。
あの頭の回る陛下とロキラス殿下の事。

何かしらの対策は立てていたはずだ。

っ!?
もしかして…

「…あの。ちなみになんですが…ウェレッタ先生、あなたもしかして――元犯罪人だったりします?」

「っ!?」

恐らく核心なのだろう。
突然顔を青ざめさせ、目を泳がせる先生。

そして大きくため息をつくレイダニースさん。

「…さすがはライト様…今のこのやり取りでそれに気づく、か。…末恐ろしいな」

そんなことを零し、彼は机の引き出しから一枚の契約書を取り出し僕に差し出す。
なぜかウェレッタ先生、涙目だけど?

「…罪状と契約です。…どうぞご覧ください」

そこに記されている内容。
彼、ウェレッタは…

秘宝を探すことを生業としていたトレジャーハンター、そして。

禁忌地や学園への不法侵入、そしてその時に守衛に大けがを負わせ…

禁固5年の実刑を課せられていた人物だった。
その対価としての僕の居る『特殊クラス』3年間での奉公。

…なるほどね。
そういう事か。

だから『そこそこ』の強さを保持していたということか。

「で?…そのお宝とやらは手に入れたのですか?」
「っ!?…い、いや。…私だけ弾き飛ばされたのだ…許可のない私と許可のあるイスルダム。数か月前に私と彼は――ダンジョンの術式により別れさせられたんだよ…」

僕は大きく息をつき、天を見上げた。
確かにこの人は犯罪者なのだろう。

でも僕はこの内容、特に問題はないように思えるのだけれど。
何しろ彼はトレジャーハンター。

まあ、不法侵入。
確かに問題だろうけど…

どうやらこの学園にある『異次元ダンジョン』

多くの謎がありそうだ。

「それで?僕の魔道具を頼りたい、と?」
「ええ。まあ。…ですがライト様…あなたメチャクチャ強いのでしょ?」

目を細め僕を見つめるレイダニース。

「…それこそ隠蔽されておりますが…コホン」

…ああ。

「…鑑定…しかも通常よりの上の鑑定…全く。…分かりました。その依頼引き受けましょう」

僕は紅茶を口に含み、ゆっくり息を吐き出す。

「ですが今ここで話したこと、あなたがたどり着いた事…秘匿することが条件です。…先ほども言いましたが僕はまだ9歳ですし、この学園での生活、手放したくありません」

「…承知いたしました。…それから…ありがとうございます」


※※※※※


こうして学園の七不思議のひとつ『熱血教師の捜索』と言う依頼を正式に受けることになった。

ついでにこの学園の秘密、解明しますかね。

色々言ったけど。

僕はこの時、実はワクワクしていたんだよね。

さあ。
楽しくなってきた!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

社畜の異世界再出発

U65
ファンタジー
社畜、気づけば異世界の赤ちゃんでした――!? ブラック企業に心身を削られ、人生リタイアした社畜が目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界。 前世では死ぬほど働いた。今度は、笑って生きたい。 けれどこの世界、穏やかに生きるには……ちょっと強くなる必要があるらしい。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

ホームレスは転生したら7歳児!?気弱でコミュ障だった僕が、気づいたら異種族の王になっていました

たぬきち
ファンタジー
1部が12/6に完結して、2部に入ります。 「俺だけ不幸なこんな世界…認めない…認めないぞ!!」 どこにでもいる、さえないおじさん。特技なし。彼女いない。仕事ない。お金ない。外見も悪い。頭もよくない。とにかくなんにもない。そんな主人公、アレン・ロザークが死の間際に涙ながらに訴えたのが人生のやりなおしー。 彼は30年という短い生涯を閉じると、記憶を引き継いだままその意識は幼少期へ飛ばされた。 幼少期に戻ったアレンは前世の記憶と、飼い猫と喋れるオリジナルスキルを頼りに、不都合な未来、出来事を改変していく。 記憶にない事象、改変後に新たに発生したトラブルと戦いながら、2度目の人生での仲間らとアレンは新たな人生を歩んでいく。 新しい世界では『魔宝殿』と呼ばれるダンジョンがあり、前世の世界ではいなかった魔獣、魔族、亜人などが存在し、ただの日雇い店員だった前世とは違い、ダンジョンへ仲間たちと挑んでいきます。 この物語は、記憶を引き継ぎ幼少期にタイムリープした主人公アレンが、自分の人生を都合のいい方へ改変しながら、最低最悪な未来を避け、全く新しい人生を手に入れていきます。 主人公最強系の魔法やスキルはありません。あくまでも前世の記憶と経験を頼りにアレンにとって都合のいい人生を手に入れる物語です。 ※ ネタバレのため、2部が完結したらまた少し書きます。タイトルも2部の始まりに合わせて変えました。

スキル『倍加』でイージーモードな異世界生活

怠惰怠man
ファンタジー
異世界転移した花田梅。 スキル「倍加」により自分のステータスを倍にしていき、超スピードで最強に成り上がる。 何者にも縛られず、自由気ままに好きなことをして生きていくイージーモードな異世界生活。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

ガチャで領地改革! 没落辺境を職人召喚で立て直す若き領主』

雪奈 水無月
ファンタジー
魔物大侵攻《モンスター・テンペスト》で父を失い、十五歳で領主となったロイド。 荒れ果てた辺境領を支えたのは、幼馴染のメイド・リーナと執事セバス、そして領民たちだった。 十八歳になったある日、女神アウレリアから“祝福”が降り、 ロイドの中で《スキル職人ガチャ》が覚醒する。 ガチャから現れるのは、防衛・経済・流通・娯楽など、 領地再建に不可欠な各分野のエキスパートたち。 魔物被害、経済不安、流通の断絶── 没落寸前の領地に、ようやく希望の光が差し込む。 新たな仲間と共に、若き領主ロイドの“辺境再生”が始まる。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

処理中です...