『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん

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第89話 狙われた魔王と魔将2

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生徒指導室に3人で来た僕たち。
早速話し合いを行い、カラーナが見た恐ろしい事を僕たちは共有していた。

「それ本当なの?…いつの話?」
「う、うん。ごめんなさい。遅くなって…でもルイちゃんもルザ―ラナちゃんもとっても強いから…たぶん大丈夫だとは思うけど…わたし怖くって…」

2日前。

僕は休んでいたのだけれど。

普通に登校していたルイとルザーラナは、格闘の授業の後、同じクラスのデルトとウィナークにお願いされていた。

「あ、あの。ルイさん、ルザーラナさん。とっても強いんですね。…あの、僕達強くなりたくて…魔力の流れとか、教えていただけませんか?」

「うん?別にいいけど。…ここで良いの?」

「えっと。この後自由授業じゃないですか。僕たち第2武闘場を抑えてあるんです。そこでいいですか?」

顔を見合わせるルイとルザ―ラナ。
実を言うとこの時すでに、二人は暗鬱とした魔力を感知していた。

(っ!?もしかして…異星の?…これはライトに恩を売るチャンス!)

一瞬ニヤリとし、承諾する二人。
その様子にほっとするデルトとウィナーク。

「うん。じゃあ行こっか」
「お願いします」


※※※※※


そして。

当然だが罠は、彼女たち二人の想定を超える過剰なまでに張り巡らされていた。

部屋に入った瞬間断絶される繋がり。
そして吹き上がる聖気。

一瞬顔をしかめる二人だったが、この程度は正直邪魔にならない。

強すぎる弊害。

まさに二人はまんまと罠にかかってしまっていた。

「えっと。僕先生から聞いたのですけど…魔力のない状態で、弱い魔力を纏う事で流れが分かるって聞いたんです。そうなのですか?」

間違いではない。
本当に初期の事だが…
弱い魔力を把握し、めぐらすことが基本であり奥義でもあった。

「そうだね。でもボクもルザーラナも魔力が強いから…参考にはならないかな」

すでに囲む多くの魔力反応。
ルイもルザーラナも気付いていた。

思わずニヤリとしてしまう。

正直彼女たちだって武闘派だ。
最近特に擬似ダンジョンに籠る機会の多い彼女たち。

思わず戦闘的な思考に囚われていた。

むしろ強い自分たちに対しどんな手で来るのか興味すらあった。

「ええ。なので…これをつけてもらえますか?魔力を抑えるアーティーファクトです。ああ、心配ですよね。僕も付けますよ」

そう言い目の前で装着するデルト。

「ふうん。確かに魔力を抑える魔道具だね。…それをつければいいの?」
「はい。…あっ、でも…怖いですよね?…やっぱりいいです。ごめんなさい」

カチンときた。

弱いヒューマンが何故か二人を見下す物言い。
言葉遣いは敬語だが――間違いなくルイたちをあおっていた。

「…いいよ?のってあげる…なめんなガキが!」

そう言い、その魔道具を手に装着するルイとルザーラナ。
途端後悔が二人に押し寄せた。

(っ!?なっ?!…くうっ?!悪魔封じだと?!…)

刹那、二人に悪魔封じの結界が発動、身動きが取れなくなる。

「こ、これでいい?兄さん!」
「よくやった。ククク…じゃあこれもだな」

ゆっくり現れる青年。
彼はルイとルザーラナに侮蔑ような視線を向け近づく。

「くうっ、お前…何をするっ!?」
「おっと?まだ動けるのか?…さすが魔王様はお強いねえ」

「っ!?なっ?!」
「くくく。とっくに知ってるんだよ。さあ、断罪の時間だ」

カチャリ

「ぐうああああっ?!!!」

首に嵌められた悪魔封じと隷属の首輪。
僅かまとっていたルイの魔力が完全に霧散した。

「おい、運べ。丁重にな?…あのお方の望みだ。…これでやっと――報われる」


その様子を遠くで震えながら目撃していたカラーナ。
余りの恐ろしさに、現実ではないと自分に言い聞かせながら。


※※※※※


「…という訳なの…ごめんなさい。わたし怖くて…」

「…ありがとう。教えてくれて…君は悪くないよ?」

「う、うん。…ルイさんとルザーラナさん…助けてあげて欲しいです」
「うん。……えっと。なんの話だっけ?」


「…っ!?あれっ?!…ええっ?!ラ、ライト様?…ふわあ、ど、どうして?…」

僕は彼女の精神に干渉した。
彼女は悪くない。

でも。

この先の事、僕は彼女に報告するつもりがないんだ。

知らない方がいい。

「うん。カラーナはさ、さっき廊下で僕とぶつかっちゃったんだよ。…もう大丈夫かい?」

自身の体を確認するカラーナ。
そして顔を赤らめ上目遣いで僕に視線を投げる。

「は、はい。そ、その。すみませんでした」

「ううん。悪いのは僕だよ?…手を。教室までだけど…淑女をエスコートさせてほしい」
「はうっ♡もしや…精霊様の加護?……お、お願いします」

ティアがジト目を僕に向けるけど…
これは誠意だよ?
それに彼女のジョブの能力『精霊感知』
それのおかげで彼女は隠蔽されていたるいたとの危機、察知できていたんだ。

これはそのお礼。
だからティア?そんな目でみないでええ――?!

コホン。

彼女を教室まで届け、僕はティアを伴い寮へと転移、魔力を薄く広く伸ばしたんだ。


※※※※※


打ちひしがれ、いつの間にか眠っていたルイとルザーラナ。
カチャリと音がしドアが開かれた。

何か違法の薬物でも使用しているのだろう。
むわりと嫌な香りとともに、でっぷりとした男性がにやりとした表情を張り付け二人の前に来た。

「おお、神よ。穢らわしい悪魔に神の祝福を…くくく。良い。上玉だ…おいっ、大丈夫なんだろうな?」

「は、はい。ミルギッド様…その二人は抵抗できません。―――儀式はすぐに?」
「くふ、くふふ。…うん?…フ、フン。お前らは知らなくていい事だ」

にやけた顔を一瞬で歪め、青年たちを睨み付けるミルギッド。

「コホン。まずは下調べが必要なのだ。…今からの事、他言は許さぬ。良いな?」
「は、はい」

青年たちは知らない。

今回の事、彼らが信仰する『ギニアス教団』ではなく。
そこの司教であるこの男の『欲望のための行い』だという事…

「ほう?良い肉付きだ…はあはあ、たまらん。くんかくんか…そそる女の匂い…」
「司教様っ!」

だから…
滅ぼすべき憎い悪魔。
それに対し、どう見ても『色』を含む司教の視線。

青年は許せなかった。

「…なんだ」
「…断罪を…罪人とはいえ…穢すことは教義から逸脱します…速やかな浄化を」

真直ぐな、そして狂信的な青年の言葉。
ミルギッドは大きくため息をつく。

「分かった。…だがこれは司教たるワシの仕事。…お前たちは部屋の外で待機しろ」

そう言い再び魔王に顔を向ける司教。
その様子に青年は唇をかみしめる。

「おい、ミルギッド様の指示だ。速やかに従え」
「し、しかし…おかしいだろ?――悪魔は存在してはいけないんだ!こんな奴等…俺の母さんを…」

吹き上がる憎悪。
当然だが彼等だって和平が成立したことは承知している。

だが。
過去は変わらない。

目に光る憎しみの色。
ますます濃く…

刹那――

全てを塗りつぶす、突然吹き上がる経験したことの無い魔力。

ミルギッドと青年たちは、あまりの魔力圧に呼吸すら封じられ。
一瞬でその意識を刈り取られた。


「…クズどもが…ルイ、ルザーラナ…遅くなってごめん」

「っ!?ラ、ライト…グスッ…ヒック…うああ…ライト…ライト!…」
「ライトキュン…うああ、あああああああああああっっ」

優しく抱き上げるライト。
そして包み込む清廉な緑の魔力。

音を立て砕け散るアーティーアクト。

「無事?…酷い事されたの?……怪我は?」

「ぐすっ。う、うん。…怖かったよ…ライト…」
「うああ、うち、うち…」

「うん。…もう大丈夫だよ」

優しく二人を抱きしめるライト。

大好きなライトのぬくもり。

恋に落ちていた二人は。
さらに深くライトに恋に落ちた瞬間だった。


「まったく。本当にライト様は酷いお方です。…さて」

その様子を見つめていたティアリーナは、ライトの魔力で泡を吹いている数名の男たちを睨み付けた。

「…馬鹿ですね。…あなた達は地獄を経験するのでしょうね…ご愁傷様」


※※※※※


今回の事件。

信仰心を利用した教会の権力者であるミルギッド。

学園に通う信者の情報をもとに、あの時の和平の式典、そこで見た魔王を『自分のモノ』にしたくて画策したものだった。

歪んだ下卑た欲望。
そのために利用された狂信者たちの妄信的な願い。

彼等もまた被害者だ。
でも。
今回の行為、許すことができない大きな罪であることに。

間違いはなかったんだ。


憎しみだけではこの世界は救えない。

ライトは居た堪れない気持ちに、大きくため息をついていた。


※※※※※


「ライト様。あのミルギッドと言う男…異星の眷属、それの擬態でした」
「っ!?…ふう。やっぱりか」

本来ならあり得ない今回の事件。
幾つかの不運が重なり、未遂とはいえ超絶者たる魔王と魔将、その命はあとわずかで奪われる事態だった。

そもそも…もしライトがその時居れば。
誘拐など絶対にできないし、何よりルイ達もついていく事は無かっただろう。

そしてそれはやはり、『異星の神の眷属』のスキル『運命誘導』によるものだった。
この星のではない、違う摂理のスキル。

具現化した脅威にライトはさらに強く決意を固めたんだ。


※※※※※


どうにか学園の寮へとルイとルザーラナを送り届けたライト。

「ねえティア」
「はい。ライト様」

「…ヒューマンの業…深いし厄介なんだね」
「…でも…見棄てられないのでしょう?ライト様は」

戻ってきた僕の寝室。
何となく人恋しくて、僕はティアに甘えているところだ。

「全部を救う。そんな覚悟も義務も僕には無いよ。でもさ。大切な人たちは守りたい。それだけだよ」

「…よろしいのではないですか?それで」

「うん。…僕は傲慢だね」
「……ライト様」

ティアに寄り添い、顔をうずめる僕。
今日はとても甘えたい気分だった。

「フフ。可愛い。ライト様?」
「うん?」
「ティアは、いつまでも待ってます♡」

「う、うん」



ドキドキしたのは内緒。
僕たちの夜は更けていく。
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