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【クシェル】マズい、こんな時に来るなんて
しおりを挟むコハクの女の子特有の月一で来るアレが始まって4日、コハクは体調も良く外を歩きまわれるくらいになった。
窓越しに見えるコハクはメイドと楽しそうに笑いあっている。
俺はコハク不足でおかしくなりそうだというのに。
『ゴッ』
窓に頭を預けると思ったより大きな音がなった。ルークの「魔王様⁈」と俺を呼ぶ声が聞こえたが、今の俺はそんなのに反応を示す余裕などない。
「ハァ、コハク」
もう4日も会ってない。
コハクは俺に会えない事を寂しいと思ってくれないのだろうか。
「ジークは良いよなぁ」
コハクが辛い時に側にいれて。俺もこんな体質じゃなかったら…
あの日から何度目になるかわからないため息が漏れる。
尚もコハクの姿を目で追っているとフと目があった。コハクは俺に気づくと笑顔で小さく手を振ってくれた。
ーーハァ可愛い。
自然とニヤつく口元をそのままに、その控えめに手を振る可愛い天使に手を振り返そうとしたその瞬間
『ドクンッ』
全身がざわめき、俺は慌てて窓から離れた。
ーーマズい、こんな時に来るなんて
喉が渇いく、身体が熱い、息が苦しい
フラフラとその場にしゃがみこむ。口を抑える手が震える。
「ま、魔王様っ‼︎」
ただごとではない様子の俺に、ルークは慌てて駆けよる。そして、俺の目を見て状況をすぐに理解したルーク俺の肩を支え、ソファーへと移動させた。
ソファーに上がり横になる事も出来ず上半身だけをソファーに預けうずくまる。
おかしい。今までこんなこと、急に吸血衝動が始まるなんてことはなかった。
いつもは2,3日前からその兆候が見え出し、それを無理に我慢すると今みたいになる。
「ぅグ、こ…コハ、ク」
コハク、コハクコハクコハクーー欲しいコハクの血が欲しい、あの時みたいにコハクに包まれて暖かくて甘くて、甘い甘い甘いコハクのーー
あれからどのくらい経っただろうか。初めはまだ理性を保てていたと思う。しかし、今はコハクの血が飲みたくて、またあの味を味わいたくて仕方ない。だんだんその事しか考えられなくなって来ている。
ゴクリと何度も生唾を飲み込む。
ーーダメ、だ、ダメ今こんな状態でコハクの血なんか飲んだら抑えが効かない。きっとコハクが泣き叫んでも止めてやれない。押さえ込んで牙を突き立てて最後の一滴まで喰らい尽くして
ぐったりと真っ青な顔で目を開けないコハク。
あの時のコハクの姿を記憶から引き出し、今理性を手放したらこうなるぞと自分に言い聞かせる。しかしーー
ーーコハクの血(愛)で満た、されて、満たされたい、コハクの愛は優しく、甘く俺を満たす。
コハクが両手を広げて俺を迎い入れる。
本能が俺に都合のいい光景を見せる。
さぁ受け入れろ、自分の本能を。受け入れて楽になれ……あの子ならきっとこんな醜い俺を受け入れてくれるーー
『バンっ!!』
「クシェル!」
俺が理性を失いそうになった瞬間扉が勢いよく開き俺の名前を呼ぶジークの声が聞こえた。
「……ジーク」
ルークが呼んだのか。
「何故こうなる前に知らせなかった!」
焦りと怒りを隠そうともしないジークが怒鳴る。
「待ってください、魔王様は悪くありません!今回は何の前触れもなく急にこのような状態に!」
「急に?…何故」
それは俺が聞きたい。
体調が万全ではないコハクの血を飲むわけにもいかず、いつものようにジークの血を飲むことで吸血衝動を抑える事にした。
差し出せれたジークの腕に遠慮なく噛み付くが、相変わらずジークは眉一つ動かさない。
「…っう!ーーうぇえ゛ーー」
「く、クシェル⁈」
「魔王様っ⁈」
俺はジークの血が口に入った瞬間、口の中のものを吐き出していた。
美味いとか不味いとかそういう次元のものではない!
気持ち、悪い、気持ち悪い気持ち悪いーー
身体中に悪寒が走る。毒でも飲まされたみたいだ。身体がそれを拒み、拒絶反応を示す。
口の中のものを吐き出してもなお、えずきが止まらない。
「ハァハァ、っグェ、ハァっクーー」
愛する者の血の味は一度味わうと他のが飲めなくなるほどだとは聞いていたが、それはその味に魅入られて他のが不味く感じると言う意味だと思っていた。
まさか本当に文字通り飲めなくなってしまうとは……
俺はもう身体がコハク(愛する者)の血しか受け付けなくなってしまったのだ。それを今、身を以て実感した。
つまり、この苦しみはーーそれだけ俺がコハクを愛し、求めているという事?
俺は今コハクを愛しているために、コハクの血だけを求め苦しみもがいている。そして、コハクを大切に思うからこそそれに耐える。
この苦しみはコハクを愛するがためにーーコハクによってもたらされるものだと言える。そして、俺をこの苦しみから救い出せるのもコハクだけだ。
「ハァハァーーッフ、フフ」
ニヤケが止まらない。
「クシェル?」
「魔王、様?」
いきなり苦しみながら笑い出した俺を二人は奇妙なものでも見るような目で見ていた。
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