勇者でも渡り人でもないけど異世界でロリコン魔族に溺愛されてます

サイカ

文字の大きさ
47 / 123

心臓が持ちません!

しおりを挟む

 今回は倒れる事はなかった。けど、わたしの体に力が入ったり、握ってる手がピクリとでも動くとクシェル様はその度に首元から離れ、わたしの顔を不安げに覗き込む。

 凄く居た堪れなかった!変に気を使わせてしまってごめんなさい

 だって耳元でピチャピチャと水音がするのとか、首元を舐められるのとか、至近距離で感じる二人の息づかいとか慣れないんだもん!

 そんなこんなでいろんな意味で疲労困憊で、ベッドに横になってるわたし。
 しばらくすると、クシェル様はわたしをジーク様に任せて?飲み物や食べ物などを取りに行ってしまった。


「あ!そういえばジーク様手は大丈夫なんですかっ⁈」

 起き上がろうとすると少しフラッと来てしまった。倒れなかったとはいえ、やはり軽い貧血にはなっているようだ。
 そんなわたしをそっと支えてくれるジーク様。

 ーーカッコイイ!

「問題ない。もうほぼ塞がってるはずだ、見るか?」

 包帯を巻いた手をグーパァグーパァさせて、包帯に手をかける。

「す、ストーーップ!!見なくていいです!大丈夫です!」

 慌てて、その手を両手で掴んで待ったをかける。

「自分が痛いのは勿論、痛いのを見るのも無理です!嫌いです!」

 そんなわたしのあまりの必死さに驚き「す、すまない」と本気で落ち込むジーク様。

「い、いえこちらこそ大きな声を出してすみません」
「いや……」



 からの長い沈黙。き、気不味い。
 ジーク様はわたしに心配させないように、本当に大丈夫だと示す為に包帯を取ろうとしてくれただけなのに。

「だ、だが本当に大丈夫だからな!」

 ジーク様はそう言いながら包帯を巻いている方の手をグーパーグーパーさせたり腕を動かして問題ない事を教えてくれた。

「はい。なら、よかったです」

 そうこうしているとクシェル様が戻って来た。

「もう起きて大丈夫なのか?」
「お、お帰りなさいクシェル様。はい。すみませんご心配をおかけしました」
「あら、顔色も良さそうね。安心したわ」
「フレイヤ様!」

 クシェル様の後ろからひょっこり顔を出したフレイヤ様はわたしの額に手を当て診察を始めた。

 何でここにフレイヤ様が⁈




「コハクちゃんが無事で良かったー」

 袖で涙を拭うシェーンハイト様。
 なんと、フレイヤ様だけでなく、シェーンハイト様も駆けつけてくれていたのだ。

 今はお二人も昼食がまだだったという事で、みんなで食堂に移動し、昼食を取っている。

「し、シェーンハイト様も無事で良かったです」

 食堂に行こうってなって、フレイヤ様がクシェル様の部屋のドアを開けたらそこには泣いているシェーンハイト様がいた。
 シェーンハイト様はわたしに気づくと、「コハクちゃーん」と泣きながら両手を広げて部屋の中に入ろうとした。そして、部屋の中に一歩足を踏み入れた瞬間、感電してその場に倒れたのだ。

 あの時は心臓が止まるかと思った。
 あの部屋にクシェル様の許可なしに入ろうとしたら、あーなるらしい。

「ありがとうコハクちゃん、心配してくれたのはコハクちゃんだけだよ」

 更に涙ぐむシェーンハイト様。

「許可なしに入るからだ」
「あれくらいで大袈裟なんだから」
「怖かったな。もう大丈夫だぞ」

 シェーンハイト様に冷たい言葉を放つクシェル様とフレイヤ様、そして、シェーンハイト様に見向きもせず、ヨシヨシとわたしの頭を撫でるジーク様。
 今更だけど、みんなシェーンハイト様に冷た過ぎじゃない⁈


「これなら心配なさそうね」

 昼食後のティータイム。
 紅茶を飲みながら独りごちるフレイヤ様。
 それにシェーンハイト様はすかさず「そんな事はない!俺たちもこっちに住もう!」と反対し、それをクシェル様が「ダメだ!」と切り捨てる。
 ジーク様は…「口の端にジャムが」なんて言いながらわたしの口の端を親指で拭い、(な、舐めた!!)ーーわ、わたしの世話を焼いている。

 指を舐める仕草もなんかカッコいい、じゃなくて!

「ジーク様!」
「ん?」
「こ、こういう事は……」

 ジーク様の腕の中で泣いてしまった日以来、ジーク様に甘やかされると何故かドキドキが止まらなくなってしまう。
 今までも手を繋いだり(あーん)とか、添い寝とか色々恥ずかしことはあったけど、それとはなんか違う。
 よく分からないけど!心臓がドキドキして、ギューってなる!

「あ……嫌、だったか?」

 甘い微笑みから一転、シュンと悲しげに俯いてしまう。

「い、嫌じゃないです!恥ずかしいだけで!」

 むしろ嬉しいです!でもそれ以上に恥ずかしいんです!わたしはそういう経験はゼロなんですよ!心臓が持ちません!

「本当に?恥ずかしい、だけ?」

 不安げにわたしを見るジーク様。
 そ、そんな表情させたかった訳じゃないんです!ごめんなさい!
 わたしは必死にコクコクと頷く。

「なら、大丈夫だよな」

 コクコクーーえ?
 言葉の意味がよく分からずジーク様を見ると、すごーく良い笑顔がそこにあった。

「え、ジーク、様?」
「お兄ちゃん、だろ?」

 両頬を固定されて逃げられないようにされる。

 あーーこれはあの時と一緒だ。い、イジワルなお兄ちゃん。

「あぅ…」

 こ、こんな所で⁈みんな見てるのに!ていうか、誰か止めてよー!
 クシェル様は言葉を失い、フレイヤ様は「まぁジークったら隅に置けないわね」なんて声を弾まして、シェーンハイト様は「けしからんもっとやれ!」とかわけわからないことを言っている。
 助けを求めてクシェル様の名前を呼ぼうとしたらジーク様に「コハク?」と叱られた。
 に、逃げられないみたいです!覚悟を決めるしかない?

「ぅ~、ジークお兄ちゃんのいじめっ子!」

 勢いに任せて、言った。そしてそのままジークお兄ちゃんのお腹にダイブした。

 どこでも良いから隠れたい!

 そんなわたしをいい子いい子してくれるジークお兄ちゃん。

 そんなんで絆されないんだから!


 でも、やっぱり、嬉しいと頑張って良かったと思ってしまうダメなわたしです。



















しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

冗談のつもりでいたら本気だったらしい

下菊みこと
恋愛
やばいタイプのヤンデレに捕まってしまったお話。 めちゃくちゃご都合主義のSS。 小説家になろう様でも投稿しています。

なんか、異世界行ったら愛重めの溺愛してくる奴らに囲われた

いに。
恋愛
"佐久良 麗" これが私の名前。 名前の"麗"(れい)は綺麗に真っ直ぐ育ちますようになんて思いでつけられた、、、らしい。 両親は他界 好きなものも特にない 将来の夢なんてない 好きな人なんてもっといない 本当になにも持っていない。 0(れい)な人間。 これを見越してつけたの?なんてそんなことは言わないがそれ程になにもない人生。 そんな人生だったはずだ。 「ここ、、どこ?」 瞬きをしただけ、ただそれだけで世界が変わってしまった。 _______________.... 「レイ、何をしている早くいくぞ」 「れーいちゃん!僕が抱っこしてあげよっか?」 「いや、れいちゃんは俺と手を繋ぐんだもんねー?」 「、、茶番か。あ、おいそこの段差気をつけろ」 えっと……? なんか気づいたら周り囲まれてるんですけどなにが起こったんだろう? ※ただ主人公が愛でられる物語です ※シリアスたまにあり ※周りめちゃ愛重い溺愛ルート確です ※ど素人作品です、温かい目で見てください どうぞよろしくお願いします。

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話

よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。 「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。

ストーカーから逃げ切ったつもりが、今度はヤンデレ騎士団に追われています。

由汰のらん
恋愛
ストーカーから逃げていたある日、ハルは異世界に召喚されてしまう。 しかし神官によれば、どうやらハルは間違って召喚された模様。さらに王子に盾ついてしまったことがきっかけで、ハルは国外追放されてしまう。 さらに連行されている道中、魔族に襲われ、ハルの荷馬車は置き去りに。 そのさなか、黒い閃光を放つ騎士が、ハルに取引を持ちかけてきた。 「貴様の血を差し出せ。さすれば助けてやろう。」 やたら態度のでかい騎士は、なんとダンピールだった! しかしハルの血が特殊だと知った騎士はハルを連れ帰って? いっそ美味しい血と癒しを与えるダンピール騎士団のセラピストを目指します!

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

蝋梅
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

処理中です...