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ジークお兄ちゃんの家族の話
しおりを挟む『パン!』
「話を戻すけど」
少し気まずくなってしまった空気をフレイヤ様は軽く手を叩くことで区切りをつけさせた。
「まず、婚約の件も血の件も頭を下げたのは私たちの方よ、コハクちゃんがクシェルに媚びたとか誘惑したとか泣きついたなんて事は無いわ、むしろ泣きついてるのはクシェルの方だし」
ハハと乾いた笑いで遠い目をするフレイヤ様。
「それに、ジークに相応しくないって、お兄ちゃん呼びをコハクちゃんに強制してるのはジークだしな。実に羨ましい!」
昼食時のことを言ってるのかな。
ジークお兄ちゃんはわたしが甘えやすいようにしてくれてるだけでーー
「強制ってわけでは…」
「そんなのおかしい!信じられない!」
「ちょっとグレン!」
グレンさんが声を荒げ、それを止めようとするアレクさん。
しかしグレンさんは尚も声を荒げる。
「きっと魔王様に命令されたんだ!そうじゃないと団長が人族を、異世界人を受け入れるはずがない!」
グレンさんが言う命令ってどんな命令だろう?わたしと仲良くしろとか?
一瞬、命令されてわたしに優しくしてくれている可能性を考えて悲しくなったけど、命令だからってあそこまでしてくれるはずないしーー
クシェル様の「ジークばかりズルい!」と悔しがっている姿を思い出して、わたしはその可能性を…否定した。
「何故?」
「団長の両親を殺したのがこいつと同じ異世界人だからだ!」
フレイヤ様が問うたのにグレンさんはフレイヤ様に目を合わせるどころか、わたしを指差し、怒りのまま声を荒げる。
「え?」
ジークお兄ちゃんの家族の話を聞かないなと思ったけど、まさかそんな事情があったとは……
「だから?その人がやった事とコハクちゃんになんの関係があるの?異世界人ってだけで同郷とも限らない、仮に同郷だったとしてもその対戦にコハクちゃんの意思や行動は何一つ関わってないし、多分当時コハクちゃんは生まれてすらいないわ」
「それ以前にジークの両親を殺したのは勇者ではなくその連れの人族だ、その時奴は俺と対峙していたからな」
「ていうか、その対戦は50年前だから二人も生まれてすらいないじゃない、人伝いに聞いた話で知った風な口を叩くんじゃないわよ」
「貴様がジークの何を知ってんだって話だよなぁ、魔族がどうの人族がどうの言ってるけどジークも純粋な魔族じゃないからな!」
「え⁈そうなんですか!」
純粋な魔族じゃないということは、ジーク様も魔族と他種族のハーフということ?
「あぁ、ジークの母親は「馬鹿!喋り過ぎよ!」
「あ、す、すまない」
どうやらジーク様の両親の種族について機密事項だったらしく、フレイヤ様にこづかれるシェーンハイト様。
「グランツ団長が、混血…」
「っ本当、思い込みの激しい信者ほど迷惑なものはないわね」
衝撃の事実に項垂れるグレンさんに向かって冷めた目でそう吐き捨てるフレイヤ様。
「シイナ様が前勇者の行動に無関係である事は理解しました、その事でシイナ様を偏見の目で見ていた事深くお詫び申し上げます、申し訳ございませんでした」
アレクさんは深く頭を下げる。
「しかし、シイナ様が純粋な人族である事は事実、そして正確な素性も分かりません。それなのに何故お二人はそこまでシイナ様を擁護出来るのですか?僕はシイナ様が信頼に足るお方とは、思えません」
「んー信頼に足るね、わたしとクシェルは他人の感情を見る力があるの、だからあなた達が未だにコハクちゃんを敵視している事もあなたが私のことも快く思っていないことも分かるわ」
最後の一言にはアレクさんは勿論、ここにいる全員が驚き息を呑んだ。そして当然、それを聞いたシェーンハイト様が黙っているわけはなく、アレクさんに向かい明らかな殺気を放つ。が、フレイヤ様に「シェーン」と名前を呼ばれて諌められる。そして、フレイヤ様は何もなかったかのように変わらず淡々と話を続けた。
「それにひきかえ、コハクちゃんは人の容姿や種族なんかで判断しない!正当な理由なしに人に負の感情を向けたりしない!嘘もつかない!ついたとしてもそれは人を傷つけないためのものや恥じらいから来るものだもの、とっても優しい子よ」
ツンツンと頰を突かれる。
「あなた達よりよっぽど信用に足る人間よ」
ツンツン、ナデナデ
「し、しかし、勇者として召喚された可能性も」
シェーンハイト様の殺気に当てられ立っているのもやっとなアレクさんに変わり、更に質問を続けるグレンさん。
「人族が召喚に失敗して、コハクちゃんがここに飛ばされたんだとしたら、それこそコハクちゃんはただの被害者よ、なんの責任もないわ」
「……仮に、後々勇者として目覚めたとしてもそれは、コハクちゃんの本意ではないはず。悪いのは異世界人じゃない、この世界の人族共だ」
わたしの、勇者の本意ーー勇者にも、魔王を倒さなければならない理由があったのかもしれない。例えば、召喚主に逆らえないようにされていたとかそれが元の世界に帰る条件だったとか?
ーーだからシェーンハイト様はわたしに元の世界に帰りたいか?と聞いたのかも
「だいたいコハクちゃんをこの世界の人族なんかと同一視する方がおかしいんだ!」
シェーンハイト様はわたしと目が合うと、慌ててここには居ない者達への怒りを散らすように態とらしく声を上げ話題を変えた。
「そうよ!コハクちゃんをあんなのと一緒にしないで!」
そこからわたしの褒め合いを始めるお二人。終いにはサアニャも加わり、凄くいたたまれない!!
いきなりなんの羞恥プレイですか⁈
コンコンコンーー
「防音魔法までかけて何を話してるのかと思ったら」
クシェル様が呆れ顔で部屋に入って来た。
いつのまにかもう夕方になっていたようだ。
「あらクシェル、ちょうど今コハクちゃんがいかにいい子か話していたところよ、あなたも加わる?」
「まったく……夕食が遅くなっても知らないからな!」
クシェル様はわたしを椅子から抱き上げると自分の膝に抱え直しノリノリで話に加わった。
羞恥プレイはまだ続くようです。
隠れようがないので、わたしは両手で顔を覆う事にした。
「何をやってるんだ?」
ジークお兄ちゃんも帰って来た。
「コハクちゃんの自慢大会?」
「お帰りジーク!お前も言ってやれ」
「ハァ、夜までに終わるといいが」
ジークお兄ちゃんも語る気満々のようだ。
「もう勘弁してください!!」
もう、わたしのライフはゼロです!!
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