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第六十三話『女神2』
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生殺与奪を握られドーラは絶望した。借りてきた猫のように萎縮し、抱えられるがまま俺とニーチャが待つ山の一角へと下りた。
「はい、着きましたよ。そんな弱弱しい姿で滝つぼに落ちてしまったら、溺れて死んじゃいかねません。間に合って良かったです」
「……あんた、どうやってここに来たのよ」
「一度空の高いところまで上がり、急降下で山に下りただけです。今日は曇り空の夜ですし、誰も私たちの登場に気づけないはずです」
怯えるドーラの代わりに山のふもとを見るが、松明の明かりに動きは無かった。出会った頃のルルニアだったら俺とニーチャを抱えて飛ぶなど土台無理であり、成長を実感した。
(……今のルルニアの強さなら、ロアは脅威でも何でもない。家を囲まれたら飛んで逃げればいいし、人質を取られたら奪い返せばいい。だから)
ここに来る前に交わした『ドーラの処遇』にも納得がつく。俺は服の胸ポケットに入れた一粒の丸薬を手に持ち、黙って二人の会話に耳を傾けた。
「いいですか、ドーラ。私はあなたのことを救いに来たんです」
「……救う?」
「ここから出たいんですよね。その手助けをして差し上げます」
慈愛あるルルニアの返答を受け、ドーラがイラついた。
「ふっ、ふざけないでよ! あんたがわたしのことを弱くしたんじゃない! 人間をたくさん食べて、もっともっと強くなれたのよ! それを……!」
「では助けはいらないと?」
「やれるものならやってみなさいよ! どうせそんなこと出来やしないくせに! 哀れなわたしが命乞いするとこをバカにしたいだけなんでしょ!?」
もはや自暴自棄一歩手前だった。それでもサキュバスの術を使って反撃しないところを見るに、体内魔力はろくに残されていないらしい。
「じゃあ今夜にでも山を降りましょう。私の縄張りに長居されるのも嫌ですし」
「……正気?」
「さっき手助けすると言ったはずですよ。最愛のグレイゼルに誓って約束します」
疑念の消えぬドーラへ、「ただし」と付け足した。
「一つだけ条件があります。今から私が提案する勝負ごとに付き合って下さい。勝利すればすぐにここを出れますし、敗北しても出して差し上げます」
「なら何で勝負するのよ?」
「もちろん敗北した場合は罰を与えます。どちらにしても山からは出られるんですから、この勝負に乗らない手は無いと思いますよ。どうされますか?」
ドーラは一度俯き、強気な表情でルルニアを睨んだ。
「やるわ! どうせ待ってても死ぬんだもの! やってやるわよ!」
その決定にニーチャが手を叩く。ルルニアは準備が終わるまで動かないように言いつけ、俺の元まで歩いてきた。そしてここから先は任せると言った。
「……アレをやる理由は聞かされたし、どれだけの効果が出るのかも理解した。その上で死ぬほど嫌なんだが、本当にやるべきか?」
「私だって嫌ですよ。だけどこれをやるのとやらないのとでは今後の安心が違うんです。だから一夜だけ血反吐を吐く気で行きます」
ルルニアは血が滲みそうなほど拳を握りしめていた。
俺はガシガシと後頭部を掻き、おもむろに上着を脱いだ。次いでズボンも脱いで大自然に裸体を晒し、悠々たる足取りでドーラの目の前まで歩いて行った。
いったい何を始める気か、そんな問いを無視して丸薬を飲み込んだ。すると心臓がドクンと跳ね、身体の熱が急速に高まり、陰茎がビィンと跳ね上がった。
「────く、ぐ、ぐぉおぉぉぉぉ!!」
丸薬の正体はドーラの角の粉で作った特製の媚薬だ。その効能は噂で聞いていたより凄まじく、陰茎そのものの大きさも倍になった。
「おー……、すごい。ごりっぱ」
「さすがは私のグレイゼルです」
二人の声が遠くに聞こえた。俺はかき乱れた意識のままドーラへと近づき、最高潮に勃起した陰茎を突き出した。あまりの長さと太さに悲鳴が上がるが、すぐゴクリと喉が鳴った。
「あなたには今からソレをしごいていただきます」
「……しごくって」
「勝利条件は射精させること、それのみです。制限時間は五分、口でするのは無し。出した精子は一滴たりとも渡しません。見事達成したら綺麗な身体でこの山から出してあげます」
条件は単純であり、ドーラ側の縛りはかなり緩い。
それ故に罠があると勘ぐられるが、拒絶はなかった。
「あぁ、それと敗北時の罰についてですが……」
「そんなのどうだっていいわ! ようするにこれをわたしの手で射精させるだけでいいんでしょ? こんな人間のチンポごとき、わたしの敵じゃない! 楽勝よ!」
こんなチンポごとき、その発言にルルニアのこめかみがピクついた。
そんな感情の機微にも気づかず、ドーラは反骨精神を燃え上がらせる。サキュバスの自分が性行為に類する勝負で負けるはずがない。そんな驕りが伝わってきた。
「…………良いご返事ですね。では始めましょうか」
意味深に微笑み、ルルニアは戦いの口火を切った。俺の脳裏に浮かんだのは、ここに来る前に提案された『俺たちの未来を築くため』に必要な作戦の概要だ。
「はい、着きましたよ。そんな弱弱しい姿で滝つぼに落ちてしまったら、溺れて死んじゃいかねません。間に合って良かったです」
「……あんた、どうやってここに来たのよ」
「一度空の高いところまで上がり、急降下で山に下りただけです。今日は曇り空の夜ですし、誰も私たちの登場に気づけないはずです」
怯えるドーラの代わりに山のふもとを見るが、松明の明かりに動きは無かった。出会った頃のルルニアだったら俺とニーチャを抱えて飛ぶなど土台無理であり、成長を実感した。
(……今のルルニアの強さなら、ロアは脅威でも何でもない。家を囲まれたら飛んで逃げればいいし、人質を取られたら奪い返せばいい。だから)
ここに来る前に交わした『ドーラの処遇』にも納得がつく。俺は服の胸ポケットに入れた一粒の丸薬を手に持ち、黙って二人の会話に耳を傾けた。
「いいですか、ドーラ。私はあなたのことを救いに来たんです」
「……救う?」
「ここから出たいんですよね。その手助けをして差し上げます」
慈愛あるルルニアの返答を受け、ドーラがイラついた。
「ふっ、ふざけないでよ! あんたがわたしのことを弱くしたんじゃない! 人間をたくさん食べて、もっともっと強くなれたのよ! それを……!」
「では助けはいらないと?」
「やれるものならやってみなさいよ! どうせそんなこと出来やしないくせに! 哀れなわたしが命乞いするとこをバカにしたいだけなんでしょ!?」
もはや自暴自棄一歩手前だった。それでもサキュバスの術を使って反撃しないところを見るに、体内魔力はろくに残されていないらしい。
「じゃあ今夜にでも山を降りましょう。私の縄張りに長居されるのも嫌ですし」
「……正気?」
「さっき手助けすると言ったはずですよ。最愛のグレイゼルに誓って約束します」
疑念の消えぬドーラへ、「ただし」と付け足した。
「一つだけ条件があります。今から私が提案する勝負ごとに付き合って下さい。勝利すればすぐにここを出れますし、敗北しても出して差し上げます」
「なら何で勝負するのよ?」
「もちろん敗北した場合は罰を与えます。どちらにしても山からは出られるんですから、この勝負に乗らない手は無いと思いますよ。どうされますか?」
ドーラは一度俯き、強気な表情でルルニアを睨んだ。
「やるわ! どうせ待ってても死ぬんだもの! やってやるわよ!」
その決定にニーチャが手を叩く。ルルニアは準備が終わるまで動かないように言いつけ、俺の元まで歩いてきた。そしてここから先は任せると言った。
「……アレをやる理由は聞かされたし、どれだけの効果が出るのかも理解した。その上で死ぬほど嫌なんだが、本当にやるべきか?」
「私だって嫌ですよ。だけどこれをやるのとやらないのとでは今後の安心が違うんです。だから一夜だけ血反吐を吐く気で行きます」
ルルニアは血が滲みそうなほど拳を握りしめていた。
俺はガシガシと後頭部を掻き、おもむろに上着を脱いだ。次いでズボンも脱いで大自然に裸体を晒し、悠々たる足取りでドーラの目の前まで歩いて行った。
いったい何を始める気か、そんな問いを無視して丸薬を飲み込んだ。すると心臓がドクンと跳ね、身体の熱が急速に高まり、陰茎がビィンと跳ね上がった。
「────く、ぐ、ぐぉおぉぉぉぉ!!」
丸薬の正体はドーラの角の粉で作った特製の媚薬だ。その効能は噂で聞いていたより凄まじく、陰茎そのものの大きさも倍になった。
「おー……、すごい。ごりっぱ」
「さすがは私のグレイゼルです」
二人の声が遠くに聞こえた。俺はかき乱れた意識のままドーラへと近づき、最高潮に勃起した陰茎を突き出した。あまりの長さと太さに悲鳴が上がるが、すぐゴクリと喉が鳴った。
「あなたには今からソレをしごいていただきます」
「……しごくって」
「勝利条件は射精させること、それのみです。制限時間は五分、口でするのは無し。出した精子は一滴たりとも渡しません。見事達成したら綺麗な身体でこの山から出してあげます」
条件は単純であり、ドーラ側の縛りはかなり緩い。
それ故に罠があると勘ぐられるが、拒絶はなかった。
「あぁ、それと敗北時の罰についてですが……」
「そんなのどうだっていいわ! ようするにこれをわたしの手で射精させるだけでいいんでしょ? こんな人間のチンポごとき、わたしの敵じゃない! 楽勝よ!」
こんなチンポごとき、その発言にルルニアのこめかみがピクついた。
そんな感情の機微にも気づかず、ドーラは反骨精神を燃え上がらせる。サキュバスの自分が性行為に類する勝負で負けるはずがない。そんな驕りが伝わってきた。
「…………良いご返事ですね。では始めましょうか」
意味深に微笑み、ルルニアは戦いの口火を切った。俺の脳裏に浮かんだのは、ここに来る前に提案された『俺たちの未来を築くため』に必要な作戦の概要だ。
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