エッチな精気が吸いたいサキュバスちゃんは皆の癒しの女神

のっぺ

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第百二十六話『戦力増強2』

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 発言と同時に自室の景色が揺らいだ。幻影として映し出されたのは俯瞰で見たアストロアスの全景であり、プレステスは離れの森を指で差した。

「ここに一つ、大きな気配を感じるです。サキュバス殺しさんを狙う槍使いのサキュバスがいると見て、まず間違いないと思います」

 トリエルは断崖から少し離れた場所にいるようだ。森の中に他のサキュバスはいなく、予定通りに一対一の戦いが行われると分かった。

 次にプレステスは川上と川下の区画の周辺を二箇所ずつ差した。各々の位置はバラけており、一方を倒せもう一方が区画内に侵入するのでは……と推測を語った。

「他については……あ、えと、さっきから早口で申し訳ないです」
 一瞬素になるが、解説を促すと集中状態に戻った。

「クレアさんは中央区画内にいるです。暴れている形跡はないので、戦いの時まで力を温存するつもりと思われます」
「……残り四人のサキュバスはどこにいるんだ?」
「この家の近くに潜んでいるみたいです。もしかしたら交渉が決裂した時のため、旦那様を人質にする算段かもです」

 俺さえ押さえれば勝敗は決する、という判断なのだろう。
 ニーチャかプレステスが護衛につけば、どこかしらの区画が手薄になる。非情な二択を突きつけたつもりだろうが、思い通りにさせる気はなかった。

「周辺にいる四人のサキュバスは俺がここで迎え討つ。ニーチャは断崖に近い川上の区画を担当して、プレステスは川下の区画を担当してくれ」
「ん、分かった」
「はい、やるです」

 一人で魔物と戦うのは久しぶりだ。しかも今回はゴブリンのような相手ではなく、強力なサキュバス四人ときた。常識的に考えれば勝ち目はないが、闘気以外にも秘策があった。

「そういえば俺の精気だが、今回は多めに残してくれたんだな」
「どうしても孤立させてしまうので、自衛の手段はあるべきと思いまして」
「その気持ちは嬉しいが、クレアと戦って勝てるのか?」

 ニーチャもプレステスも魔物災害の夜以上に強化されている。それほどまでに魔力を分配したということは、必然的にルルニアが弱体化している証明になる。

 俺の予想は当たっており、今のルルニアは全開時の四割以下の力だと知った。もう少しばかり精気を吸うべきではないかと言うが、静かに首が横に振られた。

「今回はこれで行きます。酒場のやり取りで痛感しましたが、今の私は魔力を多く使うと体調を崩すようです。これぐらいがちょうどいいかと」
 それに、と前置きして語った。クレアとは対等な条件で戦いたいと、真っ向勝負で勝ちを得たいのだと口にした。

「分かった。帰ってきたら力を取り戻すまでするからな」
「それは楽しみですね。ベッドを整えて待ってて下さい」

 俺は陰茎を挿入したままで上体を起こし、後ろから身体を抱いた。
 髪の匂いを吸うとルルニアは首を横に回し、頬にチュとキスをした。

「…………口にするとしたくなるので、これで我慢です」

 可愛らしく言って膣から陰茎を抜き、ベッドから降りた。垂れた精子を吸収しながら角と翼と尻尾を生やし、ニーチャとプレステスの傍へと歩き寄った。

「それぞれ思うところはあるでしょうが、今は全体の勝利を優先します。作戦の開始は三十分後、群れへの攻撃は私とクレアの戦闘が始まってからお願いします」
「あ、あの、下っ端の皆さんの無力化はどうするです?」
「角を片方折りましょう。そうすればまともに魔力が使えなくなり、騎士団の皆さまでも対処が可能になります。時間を掛ければ生えてくるので情けは無用です」

 細かく作戦を詰めていると、プレステスがハッとなった。
 何があったのか聞くと、中央区画近辺の草原を指で差した。

「クレアさんが移動を始めたです。下っ端の皆さんの気配は動いてないので、奥様の望み通り一対一での接触が叶いそうです」
「ありがとうございます。本当にプレステスは優秀ですね」
「槍使いのサキュバスさんも動いたです。まだ様子を伺っているみたいですが、そう遠くないうちに戦闘が始まると思います」
「おじさんのこと気になるけど、今はやれることだけやる」

 真っ先にニーチャが窓から身を乗り出し、川上の区画を目指して飛んでいった。プレステスも窓の縁に足を掛け、俺たちの方に振り返ってお辞儀をしようとした。

「そ、それでは行って参り……ひゃわわっ!?」

 身体を傾けて後ろ向きに落下するが、翼を羽ばたかせて滞空した。髪を整えてから「い、行ってきます」と言って頭を下げ、川下の区画を目指して飛んでいった。

 ルルニアも飛び立とうとするが、手首を掴んで引き止めた。そのまま抱き寄せて顔に腕を回し、先ほどの発言を無視してキスをした。舌と舌をこれでもかと絡めてやった。

「…………したくなるからダメと言いましたが」
「こうしておけば、続きをするために戻ってきてくれるだろ?」
「…………私がクレアの方を取るとお思いですか」
「思ってない。身体にも約束させればより確実だと思っただけだ」

 俺たちは濃厚なキスを続け、唾液の橋を作って見つめ合った。それが切れたところでルルニアは身を離し、翼を広げて夜の空へと飛翔していった。
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