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米帝の矛盾
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米帝大統領との奇跡的な会談の機会を経て僕は疑問に思っていることを質問している。
すると、米帝大統領は、日本と米帝は共闘して天界に立ち向かわなければならないと、気になることを話した。
「君はあの激戦、天地大戦のことを知っているかね? あの脅威は未だ過ぎ去っていない。私たち、米帝情報機関の調べによると、天界大統領は近々、第二次下界侵攻作戦を開始するらしい」
「そうなんですか!?」
今度は、ヒビトが驚きのあまり声を上げる。
「そうだとも、日本と米帝はお互いに憎しみを抱えているが、天界はお互いの共通の敵、傍若無人な天界人を許してはいけないだから一緒に立ち向かい、この地球を守らなければならない」
米帝大統領は意気揚々に天界人を非難する。
しかし、待てよ、こんなにも天界人は悪いと大統領は豪語しているが、この国には、天界人のニールがいるではないか。
しかも、ニールは米帝で二番目に権力を持っていると言う。
おかしいではないか。
僕は、米帝大統領の言葉に矛盾が孕んでいることを見つける。
そして、僕は、この矛盾は看過できないという、幼気な正義感を振りかざす。
「大統領、それはおかしいです。この国は、天界人のニールを介して天界とコンタクトを取っているというではないですか!」
僕が大統領にそう告げると、米帝大統領の顔つきが一気に変わる。その顔つきには明らかに怒りを孕んでいる。
「なぜ、君がそのことを知っている?」
米帝大統領は僕を一瞥した後に、エレンの方を見る。
エレンは急に向けられた怒りにあたふたしながらも言い訳する。
「お父さん、あの、アスカは、以前からニール様と知り合いだということで、その、米帝の内情を少し話しました」
エレンは、小さくなりながらそう答える。
「そうだったのか。アスカ君、君はニール様と知り合いだったのか。そして、君は真実を知ってしまったのか。そうか。実際、米帝は今でも天界とコンタクトを取っている。だが、これはどこの国でも同じこと。米帝だけが責められるべきことでもない。そして、残念ながら米帝に天界人のニール様がいることを知ってしまった君たちを日本に返すことができなくなってしまった。その情報を日本に持って帰ってもらっては困るからな」
「え‥‥‥」
僕らは絶句する。
まずい、僕は幼気な正義感により、虎穴の中の虎子を得ようとして大蛇を引き寄せてしまったらしい。
大統領はこのまま僕らを日本に返すことはできないという。
これはやばい。
執務室の雰囲気は最悪になる。
なんとかこの場を切り抜けなければと頭をフル回転させる。
しかし、何も思いつかない。
——コンコン
そんな時、ノック後、急にドアが開き、軍人が中に入ってきて、大統領に何かを告げる。
すると、大統領は、僕らを一瞥して、ため息を吐く。
「君たちは強運の持ち主らしい。本来ならば、米帝と天界の秘密を知ってしまった君たちの日本への帰国は許されないのだが、状況が変わった。君たちの研修留学はいつまでだっけ?」
「研修留学は1ヶ月です」
ヒビトが間髪入れずに答える。
「そうか、だが、1ヶ月を待たずに君たちは帰国することになる」
「それはどういう意味ですか? しかも、僕たちを日本に返すということは、もはや米帝と天界との秘密を隠す必要がなくなったということですか?」
ヒビトは、大統領の眼光を恐れず、しっかりと目を見据えて聞き返す。
「それは、君たちの先生に聞きなさい。あとは、君のいう通りだ。状況が変わり、もはや米帝と天界の秘密を隠す必要は無くなった。もしかすると、君たちと会えるのもこれが最後かもな。まあ、達者に頑張りなさい。それでは、話はこれで終わりにしよう。去りなさい」
そういうと、米帝大統領は僕らを執務室から追い出す。
「ごめんね、お父さんが急に脅してきて………。だけど、アスカがニール様のことをお父さんに言った時は少し僕も肝が冷えたかな?」
エレンは苦笑いをしている。
「エレンさんすみません」
僕は、先程は考えなさ過ぎたと、反省し、エレンに謝罪する。
——ピリリリリ
突然、チームごとに配られていた無線機が執務室の前室で鳴る。
その無線の発信者はロージェ先生だった。
そして、ロージェ先生から告げられる。
「各チーム、直ちに魔導学校に帰投せよ。緊急事態につき、すぐに日本王国に帰国する」
———————
僕らはホワイトハウスを後にして、エレンが用意した車に急いで乗り込み、米帝魔導学校に帰投する。
到着すると、魔専の他の生徒達はすでに慌ただしく帰国の準備に取り掛かっている。
僕らはとりあえずロージェ先生の元に急ぐ。
ロージェ先生の部屋に行くと、ちょうど部屋から出てきた先生に出くわす。
「おー、アスカ達も戻ったか。早く帰国の準備をするのじゃ」
ロージェ先生は早口に僕らを急かす。
だけれども、なぜ帰国しなければならないのか知りたい僕は、ロージェ先生に訊く。
「ロージェ先生、一体何が起こったのですか⁉︎」
「今、魔専から定時連絡があってな、西方の中つ国に不穏な動きありと。つまり、中つ国が攻めて来るやもしれん。だから、国外にいる魔導士には緊急帰国命令が、シルベウス第一王子から発せられた」
「第一王子から? つまり姫様とお父さんからですか⁉︎ 王からではないのですね?」
「そこは疑問だが、わしには今は分からん。ただすぐに帰国しなければならないことには変わりない。航空機も既に用意してある。アスカ、これは実戦だ。いいな」
ロージェ先生の「これは実戦だ」の言葉に僕らは息を呑む。
ゴタゴタしてる暇はないらしい。
僕らは急いで身支度を整え空港に向かう。
空港に到着すると、そこには既にエレンが待ち受けていた。
「アスカ君達、こんな急なお別れになってしまい、ただただ悲しいよ。君とはもっと語らい合いたかった。だが、帰国命令ならば仕方ないよね。アスカ君、また、模擬戦をしよう。あんなに心躍った戦いは初めてだったから‥‥‥。だから、また会うまでに死んではいけないよ」
エレンは悲痛な面持ちでこちらを見る。
僕らは、努めて笑顔で応対する。
「大丈夫。僕らは死にはしないよ」
「あと、ソイニー様にもよろしく。僕は‥‥‥いつか、ソイニー様に会ってみたいんだ。そして、色々話してみたい事があるんだ」
「オッケー、ソイニー師匠にもエレンの凄さは伝えておく。米帝にはとんでもなく優秀な魔導士がいたって」
「そんな、誇張しなくてもいいんだけど、よろしく。それじゃあまたね」
そういうと僕はエレンと握手をする。
その後、ヒビトやマミ、ナオミもエレンと握手をした。
そして、飛行機に搭乗すると、僕らは日本王国に帰国した………。
すると、米帝大統領は、日本と米帝は共闘して天界に立ち向かわなければならないと、気になることを話した。
「君はあの激戦、天地大戦のことを知っているかね? あの脅威は未だ過ぎ去っていない。私たち、米帝情報機関の調べによると、天界大統領は近々、第二次下界侵攻作戦を開始するらしい」
「そうなんですか!?」
今度は、ヒビトが驚きのあまり声を上げる。
「そうだとも、日本と米帝はお互いに憎しみを抱えているが、天界はお互いの共通の敵、傍若無人な天界人を許してはいけないだから一緒に立ち向かい、この地球を守らなければならない」
米帝大統領は意気揚々に天界人を非難する。
しかし、待てよ、こんなにも天界人は悪いと大統領は豪語しているが、この国には、天界人のニールがいるではないか。
しかも、ニールは米帝で二番目に権力を持っていると言う。
おかしいではないか。
僕は、米帝大統領の言葉に矛盾が孕んでいることを見つける。
そして、僕は、この矛盾は看過できないという、幼気な正義感を振りかざす。
「大統領、それはおかしいです。この国は、天界人のニールを介して天界とコンタクトを取っているというではないですか!」
僕が大統領にそう告げると、米帝大統領の顔つきが一気に変わる。その顔つきには明らかに怒りを孕んでいる。
「なぜ、君がそのことを知っている?」
米帝大統領は僕を一瞥した後に、エレンの方を見る。
エレンは急に向けられた怒りにあたふたしながらも言い訳する。
「お父さん、あの、アスカは、以前からニール様と知り合いだということで、その、米帝の内情を少し話しました」
エレンは、小さくなりながらそう答える。
「そうだったのか。アスカ君、君はニール様と知り合いだったのか。そして、君は真実を知ってしまったのか。そうか。実際、米帝は今でも天界とコンタクトを取っている。だが、これはどこの国でも同じこと。米帝だけが責められるべきことでもない。そして、残念ながら米帝に天界人のニール様がいることを知ってしまった君たちを日本に返すことができなくなってしまった。その情報を日本に持って帰ってもらっては困るからな」
「え‥‥‥」
僕らは絶句する。
まずい、僕は幼気な正義感により、虎穴の中の虎子を得ようとして大蛇を引き寄せてしまったらしい。
大統領はこのまま僕らを日本に返すことはできないという。
これはやばい。
執務室の雰囲気は最悪になる。
なんとかこの場を切り抜けなければと頭をフル回転させる。
しかし、何も思いつかない。
——コンコン
そんな時、ノック後、急にドアが開き、軍人が中に入ってきて、大統領に何かを告げる。
すると、大統領は、僕らを一瞥して、ため息を吐く。
「君たちは強運の持ち主らしい。本来ならば、米帝と天界の秘密を知ってしまった君たちの日本への帰国は許されないのだが、状況が変わった。君たちの研修留学はいつまでだっけ?」
「研修留学は1ヶ月です」
ヒビトが間髪入れずに答える。
「そうか、だが、1ヶ月を待たずに君たちは帰国することになる」
「それはどういう意味ですか? しかも、僕たちを日本に返すということは、もはや米帝と天界との秘密を隠す必要がなくなったということですか?」
ヒビトは、大統領の眼光を恐れず、しっかりと目を見据えて聞き返す。
「それは、君たちの先生に聞きなさい。あとは、君のいう通りだ。状況が変わり、もはや米帝と天界の秘密を隠す必要は無くなった。もしかすると、君たちと会えるのもこれが最後かもな。まあ、達者に頑張りなさい。それでは、話はこれで終わりにしよう。去りなさい」
そういうと、米帝大統領は僕らを執務室から追い出す。
「ごめんね、お父さんが急に脅してきて………。だけど、アスカがニール様のことをお父さんに言った時は少し僕も肝が冷えたかな?」
エレンは苦笑いをしている。
「エレンさんすみません」
僕は、先程は考えなさ過ぎたと、反省し、エレンに謝罪する。
——ピリリリリ
突然、チームごとに配られていた無線機が執務室の前室で鳴る。
その無線の発信者はロージェ先生だった。
そして、ロージェ先生から告げられる。
「各チーム、直ちに魔導学校に帰投せよ。緊急事態につき、すぐに日本王国に帰国する」
———————
僕らはホワイトハウスを後にして、エレンが用意した車に急いで乗り込み、米帝魔導学校に帰投する。
到着すると、魔専の他の生徒達はすでに慌ただしく帰国の準備に取り掛かっている。
僕らはとりあえずロージェ先生の元に急ぐ。
ロージェ先生の部屋に行くと、ちょうど部屋から出てきた先生に出くわす。
「おー、アスカ達も戻ったか。早く帰国の準備をするのじゃ」
ロージェ先生は早口に僕らを急かす。
だけれども、なぜ帰国しなければならないのか知りたい僕は、ロージェ先生に訊く。
「ロージェ先生、一体何が起こったのですか⁉︎」
「今、魔専から定時連絡があってな、西方の中つ国に不穏な動きありと。つまり、中つ国が攻めて来るやもしれん。だから、国外にいる魔導士には緊急帰国命令が、シルベウス第一王子から発せられた」
「第一王子から? つまり姫様とお父さんからですか⁉︎ 王からではないのですね?」
「そこは疑問だが、わしには今は分からん。ただすぐに帰国しなければならないことには変わりない。航空機も既に用意してある。アスカ、これは実戦だ。いいな」
ロージェ先生の「これは実戦だ」の言葉に僕らは息を呑む。
ゴタゴタしてる暇はないらしい。
僕らは急いで身支度を整え空港に向かう。
空港に到着すると、そこには既にエレンが待ち受けていた。
「アスカ君達、こんな急なお別れになってしまい、ただただ悲しいよ。君とはもっと語らい合いたかった。だが、帰国命令ならば仕方ないよね。アスカ君、また、模擬戦をしよう。あんなに心躍った戦いは初めてだったから‥‥‥。だから、また会うまでに死んではいけないよ」
エレンは悲痛な面持ちでこちらを見る。
僕らは、努めて笑顔で応対する。
「大丈夫。僕らは死にはしないよ」
「あと、ソイニー様にもよろしく。僕は‥‥‥いつか、ソイニー様に会ってみたいんだ。そして、色々話してみたい事があるんだ」
「オッケー、ソイニー師匠にもエレンの凄さは伝えておく。米帝にはとんでもなく優秀な魔導士がいたって」
「そんな、誇張しなくてもいいんだけど、よろしく。それじゃあまたね」
そういうと僕はエレンと握手をする。
その後、ヒビトやマミ、ナオミもエレンと握手をした。
そして、飛行機に搭乗すると、僕らは日本王国に帰国した………。
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