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日本養魂化計画

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中つ国から宣戦布告されて、連日テレビは特別報道番組のみ放送されており、戦況の報告、魔導士の活躍などを報道している。
報道から九州地方の激戦が情報として入ってくるが、東京は未だゆっくりとのんびりとした時間が流れている。
自国で起きている戦争が、遠くの地で生じている戦争に感じる。
そんな感覚が東京全体を包んでいた。
未だ王は姿を見せず、第一王子が奮闘しているらしい。
僕はというと、ヒビトと剣の稽古をしたり、ユミ姉と魔導修行をこなしている。
魔専の友達や先生は、ソイニー師匠や剣豪ロージェがいるし英雄ユーリ・シルベニスタも日本にいるから、戦争は日本王国の勝利で早期終結すると言っている。

そして、家での会話も多くが戦争の話題が占めた。

「ユミ姉、みんなが言うようにこの戦争はすぐに終わるんですかね?」
「実際わからないわよね。日本王国は質の高い魔道士がいるけど、中つ国は人的資源が日本の数倍あるから、数で押し切られるとも限らないし」

日本と中つ国の人口差は約10倍程。
数で、圧倒されてしまえば、いくら魔導士でも太刀打ちできなくなってしまう可能性がある。

「ですけど、ソイニー師匠やロージェ先生が行ってますし」
「そうね、ソイニー師匠は大規模範囲攻撃が得意だし。それに他の帝級攻撃魔導士も出撃してるみたいだし、案外大丈夫かもね?」

——ピロンピロン

ユミ姉と今回の戦争について話していると、急にテレビに緊急速報のテロップがでてくる。

『国王が明日12時より会見』

ついに日本王国、国王が会見を開くらしい。戦争が始まって二週間。
何も音沙汰がなかった王がついに口を開くらしい。
何を話すのだろう。

「やっと王のご登場か。この国の王は一体何をしてるんだろうね」

ユミ姉はこれまで王から音沙汰がなかったことに苛立ちを覚えている。
でも実際、そういう王国民は多い。
まあ、とりあえず、何かを話すならば聞かねばならない。
明日の12時には絶対聞こう。

次の日、僕は魔専で王の会見を聞くことになる。
教室のテレビをオンにして、ヒビトやマミ、ナオミ、他の生徒たちと一緒に王の会見を待つ。
そして12時ちょうどから会見は始まった。

まず、王が1人画面に映し出される。
しかし、その映像はおかしかった。

何がおかしいかというと、王の背後には米帝の国旗が映し出されていたのである。
よく見ると、そこは、僕達が行った、米帝大統領の執務室である。
しかし、そのことには、僕やヒビト、マミ、ナオミ以外は気づいていないのか、気にもとめていないのか、騒ぎ出す人はいない。
そして、ついに王が口を開く。

「こんにちは、日本王国民の皆さん。いかがお過ごしでしょうか。私は今日まで日本王国が中つ国に陥落されていないことに驚いています。魔道士が奮闘しているみたいですが、やはり日本王国には質の高い魔道士がいたわけですね」

王は淡々と話す。
しかし、それはいささか他人事のようであった。
そして、王はまだ話し続ける。

「しかし、さっさと陥落してもらわなければ困るのですよ。私は、日本王国国王 ゴーダ・ジャパネーゼ。私の祖先は1000年以上昔、まだ天界と下界とが交流していた時代、天界人と下界人との間に生まれました。つまり、私は天界人の血を引く者。だから、私は天界に帰りたいのです。しかし、そのためには貢物が必要でした。実は、天界人の嗜好品の一つに、人間の魂があります。人間の魂は美味らしく、輪廻転成させる必要がない魂を食して楽しむ文化が天界にあるのです。そこで私は思いつきました。私が大量の魂を用意できたならば、天界人として天界に戻ることを許してもらえるか、天界大統領に頼んだところ了承を得たのです。つまり、天界に捧げる魂が必要なので、日本王国民の皆さん、王のために死んでください。王のために死ねるならあなた方の本望でしょう。ただ、反発する人もいるでしょう。反発する反逆者を制裁するために、中つ国に日本王国を攻めてもらいましたが、米帝にも協力してもらうことにしました。それでは米帝大統領お願いします」

すると今度は米帝大統領、エレンのお父さんがカメラに映る。
そして告げた。

「これより、米帝は、日本王国に宣戦布告し、日本養魂化計画《にほんようこんかけいかく》を遂行する」

米帝は、日本王国に宣戦布告した。
しかも、養魂化計画と言っていた。つまり、日本王国民を育てて天界に出荷し、天界人が日本王国民の魂を食すということだろう。
とんでもないことである。
これは誰もが予想だにしなかった出来事である。
皆、口を開けたまま閉じることを忘れるぐらいに呆然としている。
それに加え、国王もとんでもないことを言っている。
自分が天界に戻りたいために、王国民の魂を天界に捧げる?
そのためにみんな死ねと。

情報過多で何が何だかわからない。
ただ、我々が絶体絶命なことだけは分かる。
皆が、予想外の出来事に心を奪われている時、突然、緊急警報が校内に響き渡った。

——ウイィィィン、ウイィィィン、緊急ミサイル警報。魔専に接近中のミサイルを10確認。

なんと、魔専へミサイルが10本向かっているらしい。
おそらく米帝からの攻撃か?
魔導士から潰す。全くセオリー通りの戦略だ。

僕は咄嗟にナオミに叫ぶ。

「ナオミ! 防御だ」
「あいあいさー!」

既にナオミは杖を出していた。
そして詠唱し始める。
「我が命に従いてこの身を守りたもう、堅牢防壁《ソリッジシールド》」

ナオミが一つの盾を現界させるのと同時に魔専の上空に20枚以上の盾が現界する。
みんな考えることは同じようで、魔専の防御魔導士が一斉に盾を現界させていた。

『ミサイル着弾まで、3、2、今!」


——ドドドドドーン


ミサイルは盾に阻まれ空中で爆発する。
幸いにも、防御中和ミサイルではなかったみたいだ。

そして、さらに校内放送が流れる。

『緊急事態につき、魔専生はこれから王国民の保護に当たれ。別名あるまでチームごとに判断し行動せよ。また、緊急事態条項によりこれ以降、敵の殲滅に際して殺人罪は問われない。己を義務を果たしなさい』

クラス内では、「やるしかない」と自らを鼓舞するもの、身内の心配をする者、泣き崩れる者、パニックになる者など阿鼻叫喚な状態である。
そんな中、僕はこれまでの経験から冷静さを保っている。
僕がおちついているからだろうか、チーム・ニベリウムのチームメイトも冷静であった。
ヒビトやマミ、ナオミは黙って僕からの指示を待っている。

天界に魂を安定供給するための日本養魂化計画だって?
ふざけるんじゃない!
こんな暴挙、国王の命だからと言って許されるわけがない。
この王国には姫様や仲間、沢山の大切な人たちが生きている。
ならば、僕は引き下がるわけにはいかない。

僕はチームメイトを見据える。

「日本養魂化計画……。僕らはそのような暴挙を許してはならない。魔専に入学して4ヶ月弱。僕らはこれまで研鑽に研鑽を積んできた。まだまだ未熟なところも多々あるが、そんなことを理由にしている場合ではない。今こそ、僕ら魔導士の責務を果たす時。この身を王国のために捧げ、全ての王国民を救う正義の味方にならなければならない。行くよ! チーム・ニベリウム! 出撃だ!」

「「了解」」
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