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メテオバースト

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「じゃあ、ソイニー先輩。手始めに、九州をふきとばしてください」
「了解した」

 ナタリーがソイニー師匠に指示を出す。
 ソイニー師匠達は上空高くに飛び立つ。
 そして、ソイニー師匠は詠唱を始める。

「我は天を慕い天に祈る者。我が祈りは我が愛する全ての者を守るため、我が愛する全ての者の幸福のため。我はそのために、杖を振るわん。いざ、天よ、怒り暴れ、空を裂け。『流星落下《メテオバースト》』」


 ソイニー師匠の上空に無数の巨大な岩石……、いや、隕石が、現界する。
 そして、ソイニー師匠は隕石を九州に落とす。

 隕石は九州地方を覆い尽くすほどの量。

「流石は才能の塊ソイニー、我が弟子よ」

 アーシャは奇声を発しながらこの光景を喜ぶ。
 ソイニー師匠の放った隕石が九州をに降り注ぎ、すべての物を破壊する。

 そして、九州は壊滅した。


 ーーーー
「九州が、壊滅したとは本当ですか?」

 王宮で指揮を取る姫様が通信員に向かって叫ぶ。

「はい、広島呉司令所からの報告で、九州地方との連絡が取れなくなったため、ドローンで確認したところ、至る所にクレーターが散見していると……。今、ドローンからの映像を映します」

 司令室のモニターに福岡だった場所が映る。
 無数のクレーターがそこにはあり、その周りは炎に包まれている。
 生存者は、確認できない。

「あれは何ですか?」

 姫様はドローンに映し出された上空に漂う人影を指さす。

「呉司令所、あの人影をズームしてください」
 通信員はすぐに広島呉司令所に伝える。

「あれは!」

 姫様は絶句する。
 そして、司令室にいる全員、空いた口が閉まらない。

「ソイニー師匠……」

 僕は映像に写っている人影が誰なのかはっきり分かった。
 その人は、僕の師匠、ソイニー師匠だった。

「え。まさか、ソイニー師匠が九州を……」
 僕は、何が起きているか全く分からず混乱する。

「アスカ、ソイニー師匠に限ってそんなことは……」

 ヒビトがアスカの肩に手を当てながら宥める。

 すると、画面に映し出されたソイニー師匠はゆっくりとこちらを見る。
 そして、手を伸ばす。
 その瞬間、画面は砂嵐に変わった。

 ドローンはソイニー師匠に撃ち落とされてしまったのだ。
 その行動は司令室にいる全員に、ソイニー師匠が敵に寝返ったのではないかという疑いの目を生じさせるには十分であった。

「これは、とんでもない状況になったわね」

 姫様は、立ち尽くしたまま、呟く。

「もしソイニーが九州を消したとなると、九州にあるクレーターはもしかするとソイニーの秘技『メテオバースト』によって生じたものかもしれません」

 ユーリが淡々と姫様に進言する。
 皆が、ソイニー師匠が裏切ったなどと信じたくなかった。
 沈黙が司令室に流れる。

「あの、姫様!」

 皆が、静かなる絶望に身を包まれている時、再度通信員が叫ぶ。
 姫様が通信員を見る。

「ソイニー様が東に向かい始めたと、情報が」

 ソイニー師匠が東に向かっていると、まさか東京に向かっているのか?

「追加情報です。ソイニー師匠と共に、天界魔導士3名を視認。名は、ロイス・ハミルトン天界皇級攻撃魔導士、アーシャ・ロベリス天界皇級攻撃魔導士、ナタリー・ヴェルト天界帝級治癒魔導士」
「天界が直に攻めてきている!?   しかも、皇級魔導士‥‥‥。それに加えソイニー帝級攻撃魔導士。ソイニー様は私たちを裏切ったの? そうだとしたら、勝ち目がないわ。ユーリはどう思う?」

 姫様は、足の力が抜けてしまい、椅子に崩れるように座りながら、隣にいる英雄ユーリ・シルベニスタに問う。

「そうですね、ソイニーが裏切ったかどうかはわかりません。しかし、現実を見なければなりません。皇級魔導士は定員が天界大統領によって決められていて最大5人までです。そして、皇級魔導士になるには、皇級魔導士の誰かを殺し、その座を奪い取る必要があります。天界皇級魔導士が日本に来ることなんてありませんから、ソイニーには皇級魔導士になる機会はここ数年ありませんでしたが、ソイニーの実力は確実に皇級魔導士と同等。ですので、現状、勝てるかどうかは分かりませんが、日本には皇級魔導士が3人攻めてきていると考え対策を練るべきです」

「そうね、分かったわ。それでは、これよりソイニー様も仮想敵と見なして、天界魔導士に対抗するため作戦を練り直す」

 そういうと、姫様やユーリ、その他関係者は一旦、作戦司令室の小部屋に入ろうとする。
 その時だった。
 僕は自分自身の衝動を抑えきれなかった。

「ソイニー師匠は絶対僕らを裏切ったりしません!」

 僕は目に涙を溜めながら叫ぶ。

 僕はソイニー師匠が敵扱いされることが許せなかった。
 しかし、頭では分かっている。
 恐らくソイニー師匠が九州の消滅に関与しているんだろう。
 最悪、敵に寝返ってるかもしれない。
 もし寝返ったならば、ソイニー師匠はユミ姉やロージェ先生のことも‥‥‥。
 最悪な妄想ばかり頭に浮かぶ。
 こんな最悪な時だからこそ、最悪の状況を想定して動く、それが最善策なことも僕は理解している。だけども

 頭を様々な情報が駆け巡り、理性が感情を支配できなくなる。
 だから、僕は叫んでしまった。


 そんなぼくをみて、姫様がゆっくり僕に近づく。

「ごめんなさいアスカ、あなたにとって大切な人を公然と敵扱いしてしまって。心苦しかったわよね。配慮が足りませんでした」

 そう言うと姫様は僕を静かに抱きしめる。

「「ひ、姫様!」」

 姫様の突然の行動に周りはたじろぐ。
 が、姫様は全く動じない。
 今は、愛するアスカの不安を取り除くため、抱きしめたかったのだ。

「アスカ、だけど、私達はこの王国を守らなければならないわ。分かってくれる?」
「はい、姫様。頭では分かっています。ただ、感情が追いつきません」
「そうよね、急なことだったものね。だけど、それでいいのよ。私が何とかするから、ソイニー様のことは私に任せて」

 そういうと、姫様は優しい目で僕を見つめ、それから作戦室に消えて行った。

「アスカ‥‥‥、心配するな。ソイニー様ならきっと大丈夫だよ」

 ヒビトが僕を見つめながら言う。

「うん‥‥‥」

 僕はそうであって欲しい、そうであったならばどんなに嬉しいことか、と思いながら短く頷いた。


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