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レジは、ロディの反応を探る様に言った。
「この国に居座っているゴッドチャイルドの話は知ってるか? 魔王を倒したと吹聴している二人組だ。名前はマタイとハルルクっていうらしい」
青い顔をしたまま、ロディは何も答えない。レジは構わず続けた。
「ミッテ広場というところを中心に好き勝手暴れてる奴らなんだけど、どうやら、そいつらは定期的にこの辺りに来ているみたいなんだ」
「もしかして、あの変な二人組の事を言っているの?」
思い当たる節があるのか、アリシアが疲れたような顔になった。
「筋肉質な大男と、細身の眼鏡男よね?」
「そうだ」
「そいつらが何だって言うの」
「たぶんだけど、奴らの力とエレナちゃんが何らかの形で関係してるんじゃないかってオレは思ってる」
「そんな訳はない」
それまで黙って二人の話を聞いていたロディがやっと口を開いた。
「エレナは死んだんだ。5年前に」
「え?」
アリシアが目を瞬かせた。『エレナ』という名は知っていたけれど、彼女の生死までは知らなかったからだ。そんなアリシアに、ロディは自嘲するような薄笑いを浮かべた。
「俺が殺した」
ひゅっと、アリシアが息を呑んだ音がした。
「うそ、でしょう?」
「嘘じゃない」
ロディの瞳の闇が増す。
「俺が殺したんだ。この手で」
――――私の想いが、あなたを守るから。
ロディの耳には、5年経った今も彼女の最期の声が染みついていた。
――――ありがとう、ロディ。
ロディの繰り出す攻撃を一身に受けながら、微笑んだ少女。彼女の笑顔は色あせる事無くロディの眼裏に焼き付いている。
エレナを失ったあの日から、ロディの人生は大きく変わってしまった。いや、止まってしまったと表現した方が近いかも知れない。エレナが居ない世界は色を失い、光も消えてしまった。昔のように未来を夢見る事もなくなったし、強く何かを望む事もなくなった。ただ息をして、寝て食べて畑を耕す。それだけの日々。まるで心が凍りついてしまったように、ロディはあらゆる感情でさえも失くしてしまっていた。
「そんな俺が今さらお前の仲間を名乗ることなんて出来ないし、エレナがその二人組に影響を及ぼすことだって出来やしないんだ」
「ロディ……」
虚無を見つめるロディの腕に、アリシアがそっと身を寄せた。労わるように、腫物に触るように、そっと。
しんみりとした重たい空気が流れる。そんな空気に堪えかねたのか、レジが頭を掻きむしりながら声を荒げた。
「だ~か~ら~! そもそもそれが間違ってるってなんで気づかないかな」
「なによ、野蛮人。ロディは傷ついてるのよ。あなた達の間に昔何があったのかは知らないけど、ロディは充分反省して罪を悔い改めようとしてるの。邪魔しないで」
「だからさぁ、それはロディの勘違いなんだってば」
「勘違い? …………まさか、そのエレナって人、まだ生きて?」
「いや、死んだよ」
「なら」
「でも違うんだ。死んだんだけど、死んでないんだ」
「意味わかんない」
レジは、オレも上手くは説明できないんだけどさ、と乱れた髪を整えながら言った。
「心臓が止まって呼吸がなくなる。それが生物としての死だって言うならエレナちゃんは確かに死んだ。でも、それはあくまで『普通の人間』だったらの話だ」
「なによ、それ」
アリシアが渇いた笑いを浮かべた。
「普通って……そんな、まるでエレナって人がただの人間じゃなかったみたいな言い方」
「ただの人間ではなかったよ。だって、彼女は……」
レジの言葉をロディとアリシアは息を詰めて待った。ただの人間ではないとはどういう事なのか、死んだけれど死んでいないとは一体どういう意味なのか。
けれど、その答えがレジの口から紡がれる前に声変わり前の高い少年の声が遮った。
「この国に居座っているゴッドチャイルドの話は知ってるか? 魔王を倒したと吹聴している二人組だ。名前はマタイとハルルクっていうらしい」
青い顔をしたまま、ロディは何も答えない。レジは構わず続けた。
「ミッテ広場というところを中心に好き勝手暴れてる奴らなんだけど、どうやら、そいつらは定期的にこの辺りに来ているみたいなんだ」
「もしかして、あの変な二人組の事を言っているの?」
思い当たる節があるのか、アリシアが疲れたような顔になった。
「筋肉質な大男と、細身の眼鏡男よね?」
「そうだ」
「そいつらが何だって言うの」
「たぶんだけど、奴らの力とエレナちゃんが何らかの形で関係してるんじゃないかってオレは思ってる」
「そんな訳はない」
それまで黙って二人の話を聞いていたロディがやっと口を開いた。
「エレナは死んだんだ。5年前に」
「え?」
アリシアが目を瞬かせた。『エレナ』という名は知っていたけれど、彼女の生死までは知らなかったからだ。そんなアリシアに、ロディは自嘲するような薄笑いを浮かべた。
「俺が殺した」
ひゅっと、アリシアが息を呑んだ音がした。
「うそ、でしょう?」
「嘘じゃない」
ロディの瞳の闇が増す。
「俺が殺したんだ。この手で」
――――私の想いが、あなたを守るから。
ロディの耳には、5年経った今も彼女の最期の声が染みついていた。
――――ありがとう、ロディ。
ロディの繰り出す攻撃を一身に受けながら、微笑んだ少女。彼女の笑顔は色あせる事無くロディの眼裏に焼き付いている。
エレナを失ったあの日から、ロディの人生は大きく変わってしまった。いや、止まってしまったと表現した方が近いかも知れない。エレナが居ない世界は色を失い、光も消えてしまった。昔のように未来を夢見る事もなくなったし、強く何かを望む事もなくなった。ただ息をして、寝て食べて畑を耕す。それだけの日々。まるで心が凍りついてしまったように、ロディはあらゆる感情でさえも失くしてしまっていた。
「そんな俺が今さらお前の仲間を名乗ることなんて出来ないし、エレナがその二人組に影響を及ぼすことだって出来やしないんだ」
「ロディ……」
虚無を見つめるロディの腕に、アリシアがそっと身を寄せた。労わるように、腫物に触るように、そっと。
しんみりとした重たい空気が流れる。そんな空気に堪えかねたのか、レジが頭を掻きむしりながら声を荒げた。
「だ~か~ら~! そもそもそれが間違ってるってなんで気づかないかな」
「なによ、野蛮人。ロディは傷ついてるのよ。あなた達の間に昔何があったのかは知らないけど、ロディは充分反省して罪を悔い改めようとしてるの。邪魔しないで」
「だからさぁ、それはロディの勘違いなんだってば」
「勘違い? …………まさか、そのエレナって人、まだ生きて?」
「いや、死んだよ」
「なら」
「でも違うんだ。死んだんだけど、死んでないんだ」
「意味わかんない」
レジは、オレも上手くは説明できないんだけどさ、と乱れた髪を整えながら言った。
「心臓が止まって呼吸がなくなる。それが生物としての死だって言うならエレナちゃんは確かに死んだ。でも、それはあくまで『普通の人間』だったらの話だ」
「なによ、それ」
アリシアが渇いた笑いを浮かべた。
「普通って……そんな、まるでエレナって人がただの人間じゃなかったみたいな言い方」
「ただの人間ではなかったよ。だって、彼女は……」
レジの言葉をロディとアリシアは息を詰めて待った。ただの人間ではないとはどういう事なのか、死んだけれど死んでいないとは一体どういう意味なのか。
けれど、その答えがレジの口から紡がれる前に声変わり前の高い少年の声が遮った。
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