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~高校生編~
第17章 ニューフェイス
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高校三年の一学期、始業式。
去年と違った意味でドキドキしました。クラス割りの名簿をもらって、真っ先にその名前を探しました。藤原一佳は……あったー!嬉しくてニヤニヤしちゃいました!
今年も同じクラスになった千夏ちゃんと一緒に3年3組の教室に行くと、一佳はもう席に座っていました。なぜかまた窓際にいます。黒板に張り出された席順を見たら、一佳が座っているのは私の席。もう!私は思わず吹き出してしまいました。
「一佳、そこ、私の席よ。一佳はこっち。」
「ふーん?」
頬杖をついたまま、一佳はニヤリとしました。
「ねえ、わざとでしょ。」
「つか、良かったな、今年も同じクラスで。」
「うん!」
本心を言えば飛び上がりたいほど嬉しかったのですが、一佳にそう告げるのはためらわれます。
「よぉ、今年は同じクラスだな。」
潤くんもやって来ました。
「よろしくね!潤くんも一緒で良かった!薫ちゃんは別で残念だわ。」
「……良かったなー、潤も一緒で。」
一佳はまた突然不機嫌になり、斜め前の席に座り直しました。潤くんが絡むとなぜか不機嫌になるのよね。
担任は、坂本先生でした。去年受け持ったクラスの生徒の大学合格率が、同じ学年の他のクラスより抜き出て良かったのだそうです。初詣で買っていた合格御守のおかげかな?指導力を評価され、今年の三年生も担任をすることになったと噂されていました。
ホームルームは坂本先生の性格が出て、のほほんと進みました。去年同様、新年度の行事予定や注意事項などを一通り説明され、次は年間の委員会決めです。
「立候補があればどうぞ。」
すると、すぐさま一佳が手を上げました。
「俺、行事委員をやります。」
「はい、藤原くん、行事委員ね。」
坂本先生が黒板に名前を書いた途端、「はい!」「はい!」「はい!」と次々手が上がりました。去年別のクラスだった、キレイ系の女の子ばかりです。中には以前、私に一佳と付き合っているのかと詰問してきた子もいました。
「え、えと、君達は何委員?」
「私は行事委員をやります!」
「私も!」
立候補を表明した女の子たちは立ち上がり、お互いに睨み合っています。
坂本先生が戸惑ったように黒板に名前を書こうとしました。すると、ムッとしていた一佳がドスのきいた声で唸りました。
「何が目的か知らねえが、行事委員会は死ぬほど忙しいんだ。作業する気もない奴になられたら、こっちが迷惑するんだけど。」
「ひぇ!」
またそういう冷たいことを言うーーー!案の定、教室の中はシーンと静まり返ってしまいました。ふと見れば、潤くんだけはお腹を抱え笑いを堪えています。
「わ、私、やっぱり行事委員は辞めます。」
「私も……」
勢い込んで立候補した女の子たちは憮然とし次々に座ってしまいました。
「えーそのー、行事委員以外でも、立候補があれば受け付けます。」
「おい。」
一佳が振り向いて、私にあごで合図しました。
「あ、あの、私、行事委員に立候補します……」
「はい、山城さん、行事委員ね。」
ホッとしたように、坂本先生は私の名前を書き、そのあと他の委員も次々決まりました。
ホームルームが終わって各委員会の顔合わせに移動します。席を立ち、放送委員になった千夏ちゃんと教室を出ようとしました。
「……山城ってさぁ、藤原の下僕だから、委員会でもいいようにこき使われてるんじゃない。」
蔑むような笑い声がしました。今年もまた同じクラスになってしまった中村さんが、さっき行事委員に立候補した女の子たちとクスクス笑いながら嫌味っぽく私を睨んでいました。
下僕……か。確かに彼女たちから見たら、私の存在はそうなんでしょう……
「中村、ウゼーこと言ってるとしばき倒すぞ!」
「一佳!」
後ろにいた一佳が私の頭をポンと掴み、中村さん達を睨んでいました。
「一佳、行こう、早く行こう!」
慌てて彼の腕を引っ張って、教室から連れ出しました。
「ククク、七海も苦労するねぇ。」
あとから来た潤くんが他人事みたいに笑い転げていました。
「キュンキュンするー!さっそくこのみに報告しなくっちゃ!」
千夏ちゃんもニヤニヤ笑いながら私と一佳を見比べています。
はあ、新学期早々、揉めないでくださいよ。チキンな私は平和が第一なんだから!
各委員会は、まず二・三年生で顔合わせをし、委員長・副委員長・会計・書記を決めます。今年の行事委員会の委員長は一佳がなりました。私はまた会計を……と思っていたのに、「副委員長をやれ。」と一佳に有無を言わさず指名され、薫ちゃんとやることになったのです。会計は飯島くんと二年生の真帆ちゃん、書記は森田くんとこのみちゃんがなりました。このみちゃん以外は勝手知ったるメンバーです。今年もがんばるぞー!
て言うか、このみちゃんがなぜ行事委員?理由は「近くで萌えを観察したい!」らしいです。意味が分かりませんよ、もう。
その日の午後、新入生への生徒会活動、委員会活動の説明会があり、正副委員長が出席しました。一年生はこの説明を聞いてどの委員会に入るか決めるのです。好印象を持たれなくっちゃ!だけど……肝心の委員長が一佳です。大丈夫かな。
「一佳、ケンカ売るようなことは言わないでよっ!」
「バカなのお前、あったりめーだろっ!」
私が小声で頼んだら、ギロリと睨まれてしまいました。そして、私の心配をよそに、一佳はそれまでに見たことも無いような爽やかな笑顔で行事委員会の説明をし終えました。ビックリですよー!
新入生たちの、特に女子からは、甘いため息が漏れました。ん、これは……
「マズイことになりそうだな。」
クククと薫ちゃんが可笑しそうに笑いました。こういうところが潤くんと薫ちゃんは似ているんですよね!
そしてそして、恐れていたことは現実になりました。一年生を迎えての初めての委員会が開かれたのですが……集まった一年生はみんな女子!しかもキレイ系ばかり!ペンキで汚れるのや重い荷物を運ぶのを良しとするでしょうか?
しかし、キャピキャピはしゃいで委員会に臨んだ女の子たちは、一佳の最初の言葉でみんな震え上がりました。
「何が目的か知らねえが、行事委員会は汚れ仕事なんだ。特に一年は下僕扱いだ。やる気が無い奴は今からクラスに帰って代わりの奴を呼んで来い。」
「信じられない……」
ふんぞり返る一佳の横で、私は頭を抱えました。薫ちゃんはケラケラ笑ってるし、飯島くんや森田くんや真帆ちゃんは呆れてるし、このみちゃんだけは「萌えるー!」と悶えて楽しそう……
しばらくうつむいていた一年生は一人、また一人と準備室を出て行きました。そして、次の委員会では、ガラリとメンバーが変わっていたのです。
そしてまた学校中に『絶対零度』の呼び名が轟いたのは言うまでもありません。
去年と違った意味でドキドキしました。クラス割りの名簿をもらって、真っ先にその名前を探しました。藤原一佳は……あったー!嬉しくてニヤニヤしちゃいました!
今年も同じクラスになった千夏ちゃんと一緒に3年3組の教室に行くと、一佳はもう席に座っていました。なぜかまた窓際にいます。黒板に張り出された席順を見たら、一佳が座っているのは私の席。もう!私は思わず吹き出してしまいました。
「一佳、そこ、私の席よ。一佳はこっち。」
「ふーん?」
頬杖をついたまま、一佳はニヤリとしました。
「ねえ、わざとでしょ。」
「つか、良かったな、今年も同じクラスで。」
「うん!」
本心を言えば飛び上がりたいほど嬉しかったのですが、一佳にそう告げるのはためらわれます。
「よぉ、今年は同じクラスだな。」
潤くんもやって来ました。
「よろしくね!潤くんも一緒で良かった!薫ちゃんは別で残念だわ。」
「……良かったなー、潤も一緒で。」
一佳はまた突然不機嫌になり、斜め前の席に座り直しました。潤くんが絡むとなぜか不機嫌になるのよね。
担任は、坂本先生でした。去年受け持ったクラスの生徒の大学合格率が、同じ学年の他のクラスより抜き出て良かったのだそうです。初詣で買っていた合格御守のおかげかな?指導力を評価され、今年の三年生も担任をすることになったと噂されていました。
ホームルームは坂本先生の性格が出て、のほほんと進みました。去年同様、新年度の行事予定や注意事項などを一通り説明され、次は年間の委員会決めです。
「立候補があればどうぞ。」
すると、すぐさま一佳が手を上げました。
「俺、行事委員をやります。」
「はい、藤原くん、行事委員ね。」
坂本先生が黒板に名前を書いた途端、「はい!」「はい!」「はい!」と次々手が上がりました。去年別のクラスだった、キレイ系の女の子ばかりです。中には以前、私に一佳と付き合っているのかと詰問してきた子もいました。
「え、えと、君達は何委員?」
「私は行事委員をやります!」
「私も!」
立候補を表明した女の子たちは立ち上がり、お互いに睨み合っています。
坂本先生が戸惑ったように黒板に名前を書こうとしました。すると、ムッとしていた一佳がドスのきいた声で唸りました。
「何が目的か知らねえが、行事委員会は死ぬほど忙しいんだ。作業する気もない奴になられたら、こっちが迷惑するんだけど。」
「ひぇ!」
またそういう冷たいことを言うーーー!案の定、教室の中はシーンと静まり返ってしまいました。ふと見れば、潤くんだけはお腹を抱え笑いを堪えています。
「わ、私、やっぱり行事委員は辞めます。」
「私も……」
勢い込んで立候補した女の子たちは憮然とし次々に座ってしまいました。
「えーそのー、行事委員以外でも、立候補があれば受け付けます。」
「おい。」
一佳が振り向いて、私にあごで合図しました。
「あ、あの、私、行事委員に立候補します……」
「はい、山城さん、行事委員ね。」
ホッとしたように、坂本先生は私の名前を書き、そのあと他の委員も次々決まりました。
ホームルームが終わって各委員会の顔合わせに移動します。席を立ち、放送委員になった千夏ちゃんと教室を出ようとしました。
「……山城ってさぁ、藤原の下僕だから、委員会でもいいようにこき使われてるんじゃない。」
蔑むような笑い声がしました。今年もまた同じクラスになってしまった中村さんが、さっき行事委員に立候補した女の子たちとクスクス笑いながら嫌味っぽく私を睨んでいました。
下僕……か。確かに彼女たちから見たら、私の存在はそうなんでしょう……
「中村、ウゼーこと言ってるとしばき倒すぞ!」
「一佳!」
後ろにいた一佳が私の頭をポンと掴み、中村さん達を睨んでいました。
「一佳、行こう、早く行こう!」
慌てて彼の腕を引っ張って、教室から連れ出しました。
「ククク、七海も苦労するねぇ。」
あとから来た潤くんが他人事みたいに笑い転げていました。
「キュンキュンするー!さっそくこのみに報告しなくっちゃ!」
千夏ちゃんもニヤニヤ笑いながら私と一佳を見比べています。
はあ、新学期早々、揉めないでくださいよ。チキンな私は平和が第一なんだから!
各委員会は、まず二・三年生で顔合わせをし、委員長・副委員長・会計・書記を決めます。今年の行事委員会の委員長は一佳がなりました。私はまた会計を……と思っていたのに、「副委員長をやれ。」と一佳に有無を言わさず指名され、薫ちゃんとやることになったのです。会計は飯島くんと二年生の真帆ちゃん、書記は森田くんとこのみちゃんがなりました。このみちゃん以外は勝手知ったるメンバーです。今年もがんばるぞー!
て言うか、このみちゃんがなぜ行事委員?理由は「近くで萌えを観察したい!」らしいです。意味が分かりませんよ、もう。
その日の午後、新入生への生徒会活動、委員会活動の説明会があり、正副委員長が出席しました。一年生はこの説明を聞いてどの委員会に入るか決めるのです。好印象を持たれなくっちゃ!だけど……肝心の委員長が一佳です。大丈夫かな。
「一佳、ケンカ売るようなことは言わないでよっ!」
「バカなのお前、あったりめーだろっ!」
私が小声で頼んだら、ギロリと睨まれてしまいました。そして、私の心配をよそに、一佳はそれまでに見たことも無いような爽やかな笑顔で行事委員会の説明をし終えました。ビックリですよー!
新入生たちの、特に女子からは、甘いため息が漏れました。ん、これは……
「マズイことになりそうだな。」
クククと薫ちゃんが可笑しそうに笑いました。こういうところが潤くんと薫ちゃんは似ているんですよね!
そしてそして、恐れていたことは現実になりました。一年生を迎えての初めての委員会が開かれたのですが……集まった一年生はみんな女子!しかもキレイ系ばかり!ペンキで汚れるのや重い荷物を運ぶのを良しとするでしょうか?
しかし、キャピキャピはしゃいで委員会に臨んだ女の子たちは、一佳の最初の言葉でみんな震え上がりました。
「何が目的か知らねえが、行事委員会は汚れ仕事なんだ。特に一年は下僕扱いだ。やる気が無い奴は今からクラスに帰って代わりの奴を呼んで来い。」
「信じられない……」
ふんぞり返る一佳の横で、私は頭を抱えました。薫ちゃんはケラケラ笑ってるし、飯島くんや森田くんや真帆ちゃんは呆れてるし、このみちゃんだけは「萌えるー!」と悶えて楽しそう……
しばらくうつむいていた一年生は一人、また一人と準備室を出て行きました。そして、次の委員会では、ガラリとメンバーが変わっていたのです。
そしてまた学校中に『絶対零度』の呼び名が轟いたのは言うまでもありません。
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