雷のサンダー ある銀級魔法使いの冒険

珈琲党

文字の大きさ
17 / 29

17 デサントスの冒険者ギルド

しおりを挟む

 俺たちがデサントスに到着したときには、すでに日が暮れていた。


「ここからさらに東に行くにはどうすれば良いんだ?」

 御者に尋ねる。

「本数は少ないが、ヨルデノール行きの乗合馬車があるはずだ」

「そうか、ありがとう」

「いいってことよ。気をつけてな」


 街灯で明るく照らされた大通りを歩く。

「疲れたな」

 盗賊の捕縛は意外とあっさり片付いたが、習得したばかりの浮遊の魔法をそれなりに使ったので体力と精神力の消耗が大きい。

「お腹がすきました……」

「だな。魔法を使うとその分だけ腹が減る。
 宿の飯が美味いと良いんだがな」

「そうですね。ニールの宿は快適でご飯も美味しかったですが、
 この町の宿はどうでしょうね?」

「とりあえず一旦ギルドに寄ってからだ。
 職員に聞けば良い宿を教えてもらえるだろう」

「はい」


 冒険者ギルドは、このデサントスの町でもすぐに見つかった。その周辺だけひときわ明るく賑やかで人通りもそこそこ多い。まぁそのほとんどが冒険者だろうが。

 大きな両開き扉の入口から入ってすぐ右手は酒場兼食堂になっており、冒険者たちが飲み食いしている。
 入ってきた者に鋭い視線が集中するのは、どこのギルドでも同じだ。

 真っすぐ受付カウンターに向かう。カーシャはこのギルドの雰囲気が苦手らしく、俺の背にピッタリ隠れるようにして歩く。
 俺たちの様子が気に食わないのか、聞こえるように舌打ちする奴もいた。

「こんばんは。
 乗合馬車組合の依頼を片付けた。完了の手続きを頼む」

 受付の職員に書類と俺とカーシャの冒険者証を渡す。

「はい、かしこまりました」

 職員は書類を確認し、冒険者証の情報を読み取る。

いかずちのサンダー様とカーシャ様ですね。
 盗賊全員の捕縛ということで、60万ジェニーの報酬です」

 受付カウンターに金貨が積まれた。

「確かに。
 あと、宿を探してるんだが」

「はい――」

 職員に宿の名前と場所を聞いて、カウンターを後にした。


 出口に向かう俺たちの前に、大柄な男が突然立ちはだかった。

「待ちな」

 男は鉄級の冒険者のようだ。
 元々は良い体をしていたんだろうが、長年の不摂生によるのだろう、あごの下や腹回りにこってりと脂が巻き付いた、だらしない体つきをしている。
 それでも、狂暴な目つきや使い古された短剣の状態からして、暴力を行使するのには慣れている様子だ。典型的なゴロツキ化した冒険者だな。

「なんだ?」

「俺たちに挨拶がねぇようだが、どういうつもりだ?」

 後ろを振り返ると、その男の仲間が二人、ニヤニヤと嫌な笑いを顔に貼り付けて受付の視線を遮るように立っていた。

「あ、すまんすまん。
 俺は雷のサンダー、こっちの娘がカーシャだ。よろしくな!」

 立ち去ろうとする俺たちを体で制して、男が吠える。

「そうじゃねぇ! 他に挨拶のしようがあるだろうが!」

「えぇ? 意味が良く分からないが、どういうこと?
 悪いがそこをどいてくれないか? 疲れてるんだよ」

「ここから出たいなら、力づくで通りな。
 それなりの誠意を見せれば、黙って通してやらんでもないがな」

 男がニヤッと顔の片側をつり上げて笑う。

「ようは金を出せってことか? 追い剥ぎみたいなもんだな」

「うるせぇ! 痛い目みないと分からないのか?」

 男が拳を振り上げ、殴りかかってきた。その瞬間、俺は守りの魔法を展開した。
 金色の半透明のドームがサッと出現し、俺とカーシャを包み込む。

 ぐしゃぁ! ゴンガン!

「うぐっ……」

 男の拳はドームに激突して砕けたようだ。右手をおさえてしゃがみ込んだ。
 後ろの仲間も同様に拳を押さえて、顔を歪めている。

「さて、次は俺の番ってことだな?」

 俺はニヘラとあえて下種な笑顔を浮かべる。

「雷って二つ名のとおり、俺は稲妻の魔法が得意なんだよ。
 お前たちは見せしめとして、丸焦げになってもらうとしよう」

「「「ひぃぃ」」」

 小さくなっている男たちに、威力を抑えた極小サイズの雷を落としてやった。
 ちなみに稲妻の魔法はピンポイントで当てるのが難しく、実はあまり得意じゃない。とはいえこの距離ならどうやっても外しようがないのだ。

 バチン!、バチン!、バチン!

「ぎゃぁ!」「うわぁぁ!」「やめ――ひゃぁ!」

 男たちは泡を吹いて失神した。
 スタンガンと同じような高電圧小電流の雷だから、衝撃は受けるが死にはしない。音と光だけは非常に目立つので、威嚇にはなるがな。

 俺はシンと静まり返った酒場の方を見渡す。冒険者たちはあっけにとられたように目を真ん丸にして俺たちを見ていた。

「他にも挨拶が必要な人はいるかぃ?」

 皆、プルプルと首を横に振っている。

「じゃ、おやすみ」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 職員に教えてもらった宿に到着した。
 この宿も食堂とフロントが兼ねられているようだ。

「泊まりたいんだが、二部屋用意できるか?」

「ああ、一泊2千ジェニー。二部屋だから4千ジェニー」

 宿の親父に金を支払う。

「あと、晩飯も食いたいんだが、何が食える?」

「パンと肉入りシチューで400ジェニー」

「じゃあそれを二つくれ」

 親父に金を払って空いた席に着いた。

「おまち」

 間髪入れずに飯が出てきた。
 パンはこの世界でよく見る硬くて丸いパンだ。肉入りシチューはパッと見た感じビーフシチューによく似ている。匂いもそんな感じだ。

 さっそくカーシャがシチューを口にした。

「美味しい!」

「確かに美味いな」

 俺の知っているビーフシチューにそっくりの味だ。入っている肉も良く火が通っており、口の中でホロホロと崩れていく。
 腹が減っていた俺たちは、あっという間にシチューを平らげてしまった。

「親父、シチューおかわり!」

「シチューのおかわりは200ジェニーだよ」

 結局、俺たちはシチューを二杯ずつおかわりした。

「げふぅ……、食った食った」

「ふぅぅ、お腹いっぱいです」


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました

まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。 その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。 理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。 ……笑えない。 人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。 だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!? 気づけば―― 記憶喪失の魔王の娘 迫害された獣人一家 古代魔法を使うエルフの美少女 天然ドジな女神 理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕! ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに…… 魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。 「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」 これは、追放された“地味なおっさん”が、 異種族たちとスローライフしながら、 世界を救ってしまう(予定)のお話である。

唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~

専攻有理
ファンタジー
31歳の事務員、椿井翼はある日信号無視の車に轢かれ、目が覚めると17歳の頃の肉体に戻った状態で異世界にいた。 ただ、導いてくれる女神などは現れず、なぜ自分が異世界にいるのかその理由もわからぬまま椿井はツヴァイという名前で異世界で出会った少女達と共にモンスター退治を始めることになった。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

処理中です...