9 / 62
09 ステータスオープン
しおりを挟む生活の魔法という、生活に便利な魔法をリサは教わっている。魔法を教えているのは多分、大魔導師パウムの霊だと思うが、確かではない。夢から覚めると、その辺りがかなりおぼろげになるのだ。
リサは魔法の腕を少しずつ上げてきているようで、頼もしい限りだ。俺もリサには負けないように、ネクロマンサーとしての腕を上げなければ……。
あるとき、スケルトンの一体を何気なく見ると、妙なものがダブって見えた。
「んん?……、ナニコレ」
目がおかしくなったのかと思ったが、どうも違う。
目で見ているのでははなく、脳内に直接イメージが投影されているようなのだ。
『イチロウ、どうしたのだ?』
『何か変なものが、スケルトンにダブって見えるんだ。表のような何かが』
『……見えないが。ふむ……、イチロウの心の中に何かが浮かんでおるようだな。もう少しそれに精神を集中できるか?』
『やってみる。ぬぬぬ……』
ぼんやりしていたイメージにだんだんピントが合ってくる。
「おぉ! これってステータス画面じゃないか?」
術者:イチロウ・トオヤマ
名前:なし
種類:スケルトン
用途:汎用
状態:良好
熟練:極
特記:用途変更可能
『なるほど。こやつのことが手に取るように分かるわけじゃな。私は初めて見るが、これは分かりやすいの』
『スケルトンの用途変更って何だろ』
なんとなく意識を集中すると、メニューがするすると開く。どうやらスケルトンの用途を専門化させることができるらしい。
近接戦闘、中距離戦闘、遠距離戦闘、索敵、攻撃魔法、防御魔法
見たところ、変更できる用途は六種類あるらしい。
『ふ~む、じゃあ試しに近接戦闘に変更してみるか』
目の前のスケルトンに光の粒がふわぁっと集まり、強い光を発した。
光が収まると、スケルトンの外形が少し変化していた。ボロボロだった甲冑や剣が、ちゃんとしたものに変わり、左手には小ぶりの盾まで装備している。
どれどれと、ステータス画面を見る。
術者:イチロウ・トオヤマ
名前:なし
種類:スケルトン・ファイター
用途:近接戦闘
状態:良好
熟練:小
特記:なし
『なるほど、こうなるのか。あぁっ! 用途変更は一回きりかよ……』
『ほぉ、これは面白いのぉ。こういう使い方があるのかぇ』
「じゃぁお前、剣を振ってみろ」
俺はスケルトン・ファイターに命じる。
『……カシコマリマシタ、ますたー』
スケルトン・ファイターが、ヒュンヒュンと歯切れの良い音を立て剣を振る。
汎用のスケルトンよりも身のこなしが滑らかで、動きがはやい。剣のあつかいも様になっている。
「なんかちょっと格好いいな。よし、終了。休め」
『……カシコマリマシタ、ますたー』
「さてさて、どうしたものかね……」
「イチロウ、どうしたの?」
やって来たリサに事の次第を説明した。
「面白そう! 一種類ずつ変更しようよ。それでも汎用は四体残るんでしょ?」
「そうだな、それでいくか」
槍使いのスケルトン・ランサー
弓使いのスケルトン・アーチャー
索敵や追跡などができるスケルトン・レンジャー
衝撃の魔法が使えるスケルトン・メイジ
防御の魔法が使えるスケルトン・プリースト
アーチャーの矢は空気中の魔素から合成されるので、無限に撃てる。これは地味だがちょっと凄いと思った。あとは字面通りのようだな。
彼らは戦闘に特化されているらしく、汎用のスケルトンよりも動きが良い。なかなか頼もしいが、残念ながら雑用や農作業はできないのだった。
用途変更したスケルトン六体を横一列に並ばせる。
「お前たち六体はチームを組んで、森の野生動物を狩ってきてくれ。何も捕れなくても、日暮れ前までにはここへ戻ってくること!」
とりあえず、彼らの実力を見ておきたいので、成果の分かる簡単な任務を与えてみた。まぁ、簡単といっても俺にはこなせないがな。
『『……カシコマリマシタ、ますたー』』
ザッザッザッザッザッ……
スケルトンパーティーは隊列を組み、森の中へ入っていった。
「いってらっしゃーい」
リサが彼らに手を振っている。スケルトンたちのいる生活にもう慣れたようだ。
それから数時間後。
ドォンという衝撃音が辺りに響く。メイジの衝撃の魔法だ。音のしたあたりが少し騒がしくなったが、すぐに静かになった。
それからしばらくして。
ザッザッザッザッザッ……
スケルトンたちが獲物を担いで帰って来た。見たところメスの鹿だ。
『『……ニンムカンリョウシマシタ、ますたー』』
俺の足元に捕ってきた鹿をドサッと置いた。首に致命傷を負っている。
「お、おぅ、ご苦労!」
ふ~む、こいつをどうしたものか……。そうだ!
「スケルトン・レンジャー、こいつを解体して、食えるようにしてくれ」
『……カシコマリマシタ、ますたー』
スケルトン・レンジャーはナイフを取り出して、鹿の解体に取り掛かった。
腹を裂いて内臓を取り出し、毛皮をはぎ、部位ごとに肉を分けて行く。実に手際が良くて見とれてしまう。
スケルトン・レンジャーは万能タイプで、ナイフを使った近接戦闘や格闘もこなせるし、こういったサバイバル技術も持っているのだった。スケルトンにサバイバル技術は要らないと思うが、俺には役に立っている。
「こいつだけでも結構な戦力だよなぁ」
『……カイタイシュウリョウシマシタ、ますたー』
「うむ、ご苦労! じゃぁ、お前たちは小屋周辺の警戒にあたってくれ」
『『……カシコマリマシタ、ますたー』』
ザッザッザッザッザッ……
「すごぉい! 肉だわ!」
「当分は肉が食い放題だぞ」
「やったー!」
「でもこんなには食いきれんから、干し肉にでもしないとな」
「そうねぇ……」
「とりあえず、肉を切り分けておいてくれ」
「うん!」
俺は小屋に戻って入れ物を探す。大きめの壺があったのでそこに砕いた岩塩と井戸水を入れて濃い目の塩水を作った。
「調味料が塩しかないからなぁ……。ちょっとワインも加えとくかな」
リサが持ってきた肉をさらに薄く切って、壺の中にどんどん入れていった。肉が多すぎて入れ物が足りない。小屋の中にある深皿などを全部使って肉の塩水漬けを作った。
「これをどうするの?」
「しばらく漬けておいてから、水気を切って外に干すんだよ」
「へぇー、イチロウって物知りね」
よう〇べで観た干し肉の作り方を覚えているだけだがなぁ。
「ははは、問題はどこにどう干すかだな」
干し網なんてないだろうし……
「まぁとりあえず、これは置いておいて腹ごしらえだ。肉はまだあるんだろ?」
「うん、これでも半分も減ってないからね」
俺たちは分厚いステーキと肉のたっぷり入ったスープを堪能した。脂身が少なくしっかりとした歯ごたえの赤身の肉は、噛めば噛むほど旨味がしみ出してくる。
「旨いなぁ」
「むぐむぐ……、おいひぃ!」
食事が終わって、肉の干し場を作ることにした。
小屋の中にムシロが何枚かあったのでそれを使うことにする。
少し太めの真っすぐな木の枝を何本も集めて枠を組む。ネジや釘などはないので、適当な紐で縛って作った。出来上がった枠にムシロを敷いて、それを小屋の軒先に紐でつるす。
作った干場に、塩水に漬けておいた肉を並べる。
キッチンペーパーなどはないので、肉をぶんぶん振って水気を飛ばした。
「へぇ、面白いねぇ」
「あとは二、三日干しておくだけだが……、ハエがよってくるなぁ。そうだ!」
俺は汎用スケルトンを二体連れてきて、葉の付いた木の枝を持たせる。
「お前ら、肉に虫とかが寄ってきたら、それで追い払え。肉は落とすなよ!」
『『……カシコマリマシタ、ますたー』』
それからしばらくは肉三昧の日々だった。
干し肉作りも並行して行い、干し肉も山ほど出来た。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する
namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。
転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。
しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。
凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。
詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。
それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。
「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」
前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。
痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。
そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。
これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる