魔王七星

古墳戦艦

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第二話「天界への宣戦布告」

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静まり返った魔王城の会議室。七星の「天界に戦いを挑む」という宣言は、重く響いた。
「魔王様、それは無謀です」リリスが口を開いた。「天界の力は絶対的。私たち魔族でさえ、ミカエル様の御力の前には無力です。勇者殿の聖剣も、元々は天界のものです」
アルスは黙って頷いた。彼もまた、ミカエルの圧倒的な力の片鱗を感じていた。
「無謀かもしれない。だが、このままミカエル様の気まぐれに翻弄され続ける世界を許すわけにはいかない」七星は熱を込めて語った。「あの方は、人間の命も、魔物の命も、ただの遊びの駒としか見ていない。私たちは、自分たちの意志で生きる自由を取り戻さなければならないんだ」
七星の目には、社畜時代に味わった理不尽な上司への反発心にも似た、強い決意が宿っていた。
「では、具体的にどうやって?」アルスが尋ねる。
「まずは情報収集だ。天界の構造、ミカエル様の力の源泉、弱点。全てを知る必要がある」
七星は城内の図書館に籠もり、古文書を漁り始めた。魔王城の図書館には、魔界の歴史や神話に関する膨大な資料が眠っていた。徹夜で読み漁る七星の横で、リリスは彼の真剣な姿に、かつての無能な前王とは違う、本物の「王」の器を感じ始めていた。
数日後、七星は一つの仮説に辿り着いた。
「ミカエル様の力は、この世界の人々や魔物からの『信仰心』によって支えられている」
「信仰心?」アルスが聞き返す。
「そうだ。神話によると、この世界は元々、天界の神々が信仰を集めるために作り出した実験場だ。信仰が厚いほど、彼らの力は強まる。逆に、信仰が揺らげば、力は弱まるはずだ」
七星はアルスを見た。「アルス君。君の役割はここにある。君は『裏切り者の勇者』として追われているが、元々は天界から認められた勇者だ。君が人間たちに、天界の欺瞞を説けば、彼らの信仰心は揺らぐはずだ」
アルスは複雑な表情を見せた。「僕が、天界の敵になるということか」
「違う。自由のために戦うんだ」
アルスは意を決した。「分かった。僕が人間界を回る。七星、君は城の守りを固めてくれ」
アルスはエリカを連れ、人間界へと旅立った。各地で彼は、かつて勇者として称えられた名声を利用し、人々に真実を語り始めた。
「ミカエル様は、この世界を玩具にしている! 魔王は和平を望んでいるのに、それを許さないのは天界だ!」
初めは誰も信じなかった。「裏切り者の戯言だ」と罵る者も多かった。しかし、彼の故郷の悲劇を知るエリカの証言や、魔王軍が人間を守ったという事実は、徐々に人々の心に疑問を投げかけていった。
人間界が混乱に陥る中、魔王城では七星が次の手を打っていた。
「リリス。魔界との連絡ルートを確保しろ。この世界の均衡を崩すためには、魔界の協力も必要かもしれない」
魔界の王たちは、長らく天界との代理戦争に巻き込まれてきた現状に不満を抱えていた。七星は彼らに、天界の支配から脱却するための同盟を持ちかけた。
「我々は自由を求めている。この世界の真の支配者になるために、手を組まないか?」
魔界の王たちは七星の提案に乗り、魔王軍はかつてないほど強大な勢力となっていった。
人間界の信仰心が揺らぎ、魔界との同盟が成立した頃、天界では異変が起きていた。ミカエルの力が、わずかに弱まり始めていたのだ。
「ほう、七星め、面白い手に出てきたな。信仰心を揺さぶるとは」
ミカエルは怒るどころか、むしろ楽しそうだった。彼の退屈は完全に紛れていた。
「だが、世界を相手に戦争を仕掛けるつもりなら、その覚悟を見せてもらおう」
ミカエルは、天界の軍勢であるセラフィムやケルビムたちを招集した。そして、この世界の人間と魔物全てに聞こえる声で宣言した。
「魔王七星と裏切り者の勇者アルスよ。汝らの反逆、神への冒涜である。天罰を下すため、天界の軍勢を派遣する!」
世界の空に、無数の光の筋が現れた。それは天界からの使者たちだった。彼らは圧倒的な力で、七星に協力的な人間界の国々や魔王城を目指し始めた。
ここに、魔王七星率いる人間・魔物連合軍と、絶対的な力を持つ天界軍との、世界をかけた最終戦争が始まった。七星の目指す「自由」と、ミカエルの求める「混沌」が激突する。
空は割れ、光と闇が混在する戦場と化した。天界のセラフィムやケルビムたちは、その圧倒的な神聖なる力で、七星率いる連合軍を容赦なく攻撃した。
魔王城の前に集結した人間・魔物連合軍は、数では劣っていたものの、七星の改革によって培われた高い士気と組織力で応戦した。アルスは聖剣を振るい、かつて神聖視していた天使たちに剣を向けた。
「僕らが信じていた神々は、自分たちの遊びのために僕らを利用していただけだ! もう操られるのはごめんだ!」アルスの叫びが戦場に響き渡る。
リリスは魔王軍を指揮し、効率的な迎撃体制を敷いた。「魔王様の理想のために! 死力を尽くせ!」
戦況は熾烈を極めた。天界軍の力は圧倒的で、七星の防御魔法も限界を迎えつつあった。アルスの聖剣も、天使たちの神聖な鎧には決定打を与えられない。
「このままではジリ貧だ……!」七星は歯噛みした。
その時、七星はミカエルが自分に与えた「魔王の力」を思い出した。それは防御に特化した力だった。
「リリス! 全軍に告げろ! 私の周りに集まれ! 防御に徹する!」
七星は自らの魔力を解放し、巨大なドーム状の結界を張った。それはミカエルが与えた力が持つ、絶対防御の結界だった。天界軍の攻撃は結界に弾かれ、彼らは足止めを食らった。
「これで時間を稼げる!」七星は叫んだ。「アルス君、天界軍の力の源泉は信仰心だ。彼らが戦っている間に、人間界の信仰心をさらに揺さぶるんだ!」
アルスは頷き、エリカと共に人間界へと戻るルートを確保した。
結界の中で、七星はリリスたちと共に耐え続けた。天界軍は結界を破るために集中攻撃を仕掛け、七星の魔力は消耗していく。
一方、人間界に戻ったアルスは、全ての国を回り、戦場で見た真実を語り続けた。魔王が人間を守るために戦っていること、天界がこの争いを引き起こしたこと。彼の必死の説得は、残された人々の心に深く響いた。
「もう、神を信じるのはやめよう……」
「私たちを本当に守ってくれたのは、魔王様だった……」
信仰心が揺らぎ、人々の心からミカエルへの信頼が失われていく。その影響は即座に天界へと届いた。
戦場で結界を攻撃していた天使たちの力が弱まり始め、動きが鈍くなる。
「今だ! 反撃しろ!」七星は結界を解き、全軍に攻撃命令を下した。
力が弱まった天使たちは、連合軍の反撃によって次々と打ち倒されていく。戦況は逆転した。
天界軍の敗走を知ったミカエルは、ついに自ら地上に降り立った。魔王城の前に、圧倒的な光を放ちながら舞い降りた彼の姿は、かつてないほど威圧的だった。
「よくぞここまでやった、七星。私の退屈を完全に紛らわせてくれた」
「あなたの退屈のために、どれだけの命が失われたと思ってるんですか」七星は憤りを隠さなかった。
「それが世界のルールだ。強者が弱者を弄ぶ。ただそれだけのこと」
「そのルールを、俺が変える!」
七星とアルス、リリスたちはミカエルを取り囲んだ。
「面白い。では、私を倒してみるがいい」
ミカエルは微笑み、絶対的な力を解放した。世界を揺るがすほどの激しい戦いが始まった。七星の防御力、アルスの聖剣、リリスの魔術がミカエルに襲いかかるが、彼の前には歯が立たない。
「くっ……やはり圧倒的すぎる!」七星は絶望しかけた。
その時、アルスの聖剣が、ミカエルの放つ光に反応して、今まで以上の輝きを放ち始めた。人々の信仰心が失われたことで、聖剣は天界の支配から解放され、本来の「自由」の力を取り戻したのだ。
「ミカエル! 僕らはもう、あなたの駒じゃない!」
アルスは聖剣を構え、七星もまた、最後の魔力を込めてアルスを援護した。二人の力が一つとなり、ミカエルへと放たれる。
ミカエルは驚愕した。「この力は……!」
光の剣はミカエルに直撃し、彼の体を打ち砕いた。ミカエルの意識が薄れていく中、彼の口元には満足げな笑みが浮かんでいた。
「あっぱれだ、魔王七星……これで、私も少しは退屈しなくて済む……」
ミカエルの体は光の粒子となって消滅し、世界を覆っていた天界の支配は終わりを告げた。
戦いは終わり、七星の「ホワイト魔王城」には、人間も魔物も共に生きる、真の平和が訪れた。アルスは裏切り者の汚名を返上し、七星の右腕として、新たな世界の構築に尽力した。
七星は、元はしがないサラリーマンだったが、今や人間と魔物の両方から「救世主」と呼ばれる存在となっていた。
「これで、俺の『働き方改革』も、世界規模で達成できたな」七星は空を見上げ、呟いた。
彼の隣には、笑顔のリリスとアルスの姿があった。魔王七星の物語は終わり、彼らの手によって築かれた新たな世界が、今、始まったのだった。
ミカエルが消滅してから数年後。世界は大きく変貌を遂げていた。
魔王城はもはや軍事拠点ではなく、人間と魔物の共存を象徴する、巨大な「国際連合理事会」のような機能を果たしていた。七星は初代議長に就任し、アルスとリリスが彼の補佐を務めている。
「議長、人間界のとある小国で、まだ魔物に対する差別意識が根強く残っているようです。対策が必要かと」アルスが真剣な面持ちで報告書を差し出した。
「ふむ……武力で解決するのは簡単だが、それでは意味がない」七星は腕を組み、考え込む。「彼らが納得するような、具体的な共存のメリットを提示する必要があるな。特産品の貿易拡大案と、共同でのインフラ整備計画を提案しよう」
「相変わらず堅実なご提案ですね」リリスが少し呆れたように、しかしどこか満足げに笑った。彼女は今や、有能な事務総長として、複雑な行政を取り仕切っていた。
魔王城を中心に築かれた新たな世界では、七星が導入した「七星式経営哲学」が広く浸透していた。「効率化」「持続可能性」「多様性の尊重」がスローガンとなり、かつてのブラックな世界は影を潜めていた。
七星は執務室の窓から、かつて戦場だった場所を見下ろした。そこには今、豊かな農地が広がり、人間と魔物が共に汗を流して働いている姿があった。
「俺は結局、魔王というよりも、世界の最高経営責任者(CEO)になったわけか」
七星は苦笑しながら、山積みにされた書類の山を見た。平和な世界には、平和な世界の苦労がある。領土問題、資源配分、文化摩擦……課題は尽きない。
しかし、彼には頼もしい仲間がいる。勇者アルスという正義の味方と、悪魔リリスという冷徹な実務家。そして、理想に共感してくれた多くの人々と魔物たち。
「さて、次の会議は……」
七星が書類に手を伸ばした、その瞬間。
彼の頭の中に、聞き慣れた、少し懐かしい声が響いた。
「やあ、七星。世界は面白くなったようだね」
七星は驚いて立ち上がった。「ミカエル様!?」
「私の退屈は完全に解消されたよ。君のおかげだ。……まあ、君が世界を変えたせいで、天界も魔界も存在意義を失いかけているんだがね」
ミカエルの声は楽しげだった。
「私はこの世界から完全に手を引くよ。だが、一つだけ助言を」
「助言?」
「君の世界は完璧すぎて、少し退屈になりかけているんじゃないかい? 油断すると、またどこかの誰かが、新しい『刺激』を求めて動き出すかもしれないよ」
ミカエルの声はそこで途切れ、二度と聞こえることはなかった。
七星は窓の外を見た。ミカエルの言う通り、平和は脆いのかもしれない。だが、この世界はもう、誰かの気まぐれに左右されることはない。自分たちの意志で未来を選び取れるのだ。
「退屈しないように、しっかりと経営していくさ」
七星はアルスとリリスに視線を送り、力強く頷いた。
これは、交通事故に遭った冴えないサラリーマンが、大天使の気まぐれで魔王に転生し、世界を「ホワイト企業」へと変革するまでの物語。
そして、彼らが自分たちの手で未来を紡いでいく、新たな時代の始まりの物語である。

ミカエルの最後の警告から数週間。七星が築き上げた平和な世界は、表面上は穏やかだったが、水面下では新たな歪みが生まれ始めていた。
アルスが報告した、魔物への差別意識が残る小国アヴァロン。七星は和平的な解決策を提示したが、事態は思わぬ方向へと悪化していた。
「議長、アヴァロンからの使者が、我々の提案を拒否しました」リリスが険しい表情で報告した。「彼らは『魔物との共存など神への冒涜だ』と主張し、国境付近での武力衝突が頻発しています」
「和平派の国々への働きかけは?」七星が尋ねる。
「彼らは及び腰です。アヴァロンは人間界でも古くからの歴史を持つ王国で、未だにミカエル様が消える前の『旧体制』の信仰に凝り固まっています。かつてアルス様が追われていた頃の、徹底抗戦派の中心地です」
七星は地図を睨みつけた。和平的な解決策が拒否された以上、次の手が必要だ。
「アルス君。君の出番だ」七星はアルスを見た。「君の故郷を滅ぼした憎悪は理解できる。だが、今度は憎悪ではなく、理解を求めて動いてほしい。エリカさんと共に、アヴァロンの民衆に直接訴えかけてくれ」
アルスは頷いた。「分かりました。僕が彼らの王ではなく、民衆の心を変えてみせます」
アルスとエリカは、再び人間界へと旅立った。
アルスたちがアヴァロンを目指す一方、魔王城では不穏な影が動き始めていた。
七星の「ホワイト企業経営」は、多くの魔物たちに歓迎されたが、中には旧体制の「力こそ正義」という価値観を捨てきれない者たちもいた。彼らは七星の方針を「弱体化」とみなし、不満を募らせていた。
その中心人物は、かつて魔王軍の幹部だったミノタウロス族の族長、バッシュだった。彼は七星の改革によって地位を失い、辺境の警備隊長に降格されていた。
「軟弱な王め……! 魔王とは、恐怖で世界を支配するものだ。人間と手を取り合うなど、魔族の恥!」
バッシュは夜な夜な、同じように不満を持つ魔物たちを集め、七星に対する反乱を企てていた。彼らは、かつてミカエルが消滅した場所に残る、微かな「混沌の魔力」に魅了されていた。
「この力を使えば、我らこそが真の魔王になれる!」
バッシュたちは、七星が世界会議で不在になる隙を狙い、クーデターを決行する計画を練った。
アヴァロンに到着したアルスとエリカは、民衆の前で七星の理想と、ミカエルが世界を弄んでいた真実を語った。最初は冷たい視線を浴びせられたが、次第に彼らの言葉に耳を傾ける者が増えていった。
「僕たちはもう、誰かの駒じゃない。自分たちの未来は、自分たちで決めるべきだ!」アルスの叫びは、人々の心を動かし始めていた。
しかし、その動きを察知したアヴァロン国王は激怒。アルスとエリカを捕らえ、公開処刑にすると宣言した。
一方、魔王城ではバッシュによるクーデターが勃発していた。七星が世界会議に出席するため城を空けた隙を突き、バッシュは城内の不満分子を率いて反乱を起こした。
「軟弱な王は退け! 我らが真の魔王軍を再興する!」
リリスはすぐさま応戦したが、バッシュの軍勢は予想以上に多く、城内は混乱に陥った。リリスは七星に急報を送った。
「魔王様! 城が襲われています! バッシュが反乱を!」
七星は驚き、すぐに会議を中断して魔王城へと戻ろうとする。
その時、アヴァロン国王から七星に使者が届いた。「裏切り者のアルスを返してほしければ、魔王七星自ら降伏せよ。さもなくば、明日正午に公開処刑を執行する」
七星は窮地に陥った。魔王城の反乱を鎮圧するか、アルスとエリカを救出するか。どちらを選んでも、世界は再び混沌に陥る。
ミカエルの言う「刺激」とは、このことだったのか。七星は、自身が築いた平和な世界が、もろくも崩れ去ろうとしている現実に直面していた。彼の新たな決断が、世界の命運を握ることになる。
七星は決断を迫られていた。魔王城にはリリスがいるが、アルスとエリカの命は風前の灯火だ。そして、どちらの状況も、七星が理想とする「武力衝突のない世界」に反するものだった。
「リリス、城の防衛は君に任せる。私はアルス君たちを助けに行く」七星は即座に判断した。「ただし、バッシュたちとは戦うな。彼らを城から追い出すだけでいい。殺傷は避けてくれ」
「しかし、魔王様! それでは城が……」
「私の理想は、誰も死なない世界だ。ここで血を流すわけにはいかない」
七星は魔王城をリリスに託し、単身、アヴァロンへと急いだ。彼の心には、怒りよりも深い悲しみがあった。平和な世界を築いたはずなのに、なぜ争いは終わらないのか。
アヴァロンの広場は、アルスとエリカの処刑を見るために集まった民衆で溢れていた。彼らは七星の真実の言葉を聞いていたはずなのに、長年の信仰と恐怖には抗えなかった。
処刑台の上で、アルスは静かに七星を信じていた。「七星なら、きっと来てくれる」
正午を告げる鐘が鳴り響いた瞬間、空から漆黒のマントを翻した七星が舞い降りた。
「待て! 彼らを解放しろ!」
国王は驚いたが、すぐに高笑いした。「愚かな魔王め! たった一人で来るとは!」
兵士たちが七星を取り囲んだ。七星は戦いを避けるため、防御魔法を張り、説得を試みた。「私は戦いに来たのではない。話し合いに来たんだ!」
だが、国王は聞く耳を持たず、処刑を強行しようとした。その時、民衆の中から声が上がった。
「待ってくれ、国王陛下! この魔王は、私たちを助けてくれたんだ!」
アルスとエリカの言葉を信じた者たちが、処刑を止めに入った。広場は混乱に陥り、七星はその隙にアルスたちを救出した。
「七星、ありがとう!」
「今は脱出が先だ!」
三人は広場から脱出し、アヴァロンの町外れへと逃げ延びた。国王は激怒し、追っ手を差し向けた。
一方、魔王城では、リリスが七星の命令に従い、バッシュたちとの直接戦闘を避けていた。彼女は魔術を駆使して反乱軍を城外へと誘導し、追い出すことに成功した。
「魔王様の命令だ! これ以上、城を汚すな!」
バッシュたちは城を追われたことに激昂したが、リリスの魔力には敵わず、退散するしかなかった。彼らはミカエルの消滅地点から得た「混沌の魔力」を頼りに、新たな拠点を築こうと画策した。
アヴァロンを脱出した七星たちは、追っ手を撒きながら旅を続けていた。アルスは国王の頑なな態度に落胆していたが、七星は諦めていなかった。
「彼らを変えるには、武力ではない、決定的な何かが必要だ」
その時、ミカエルの消滅地点から得た魔力を持つバッシュが、アヴァロンの王都に現れた。彼は魔力を暴走させ、王都を破壊し始めたのだ。
「国王のせいで城を追われた! 貴様ら全員、道連れだ!」
バッシュの力は、かつての魔王軍幹部とは思えないほど強力になっていた。
七星たちは急いで王都へと戻った。燃え盛る街を見て、七星は決意を新たにした。
「バッシュを止めなければ。あれもまた、ミカエルの残した混沌の産物だ」
七星、アルス、エリカの三人は、力を合わせてバッシュに立ち向かった。七星はバッシュの暴走した魔力を受け止め、アルスは聖剣で混沌の力を浄化しようとした。
戦いの中、七星は叫んだ。「バッシュ! 俺たちはもう、誰かの駒じゃない! 怒りや憎しみに囚われるな!」
七星の言葉は、バッシュの心の闇に届いた。彼の暴走が止まり、混沌の魔力が収束していく。
その光景を見ていたアヴァロンの民衆と国王は、真の「悪」が何だったのかを悟った。魔王七星は、自らを犠牲にして街を救おうとしている。彼こそが、真の救世主だったのだ。
国王は処刑台の上に立ち、叫んだ。「もう争いはやめだ! 我々は魔王七星殿と、平和な共存を目指す!」
国王の言葉は、世界中の人々の心に響き渡った。ミカエルの残した最後の混沌は消え去り、世界は真の平和へと向かい始めた。
七星は、自らが望んだ「誰も死なない世界」の実現を確信した。物語はさらに深まり、彼らの新たな挑戦が始まろうとしていた。

バッシュの暴走が収まり、アヴァロン国王が共存を宣言したことで、世界はついにミカエルの影響から完全に脱却した。七星の理想は現実のものとなり、魔王城は名実ともに世界の中心となった。




















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