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20 古びた村

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ななせちゃんに流されるまま大精霊の住む精霊大都市に向けての旅が始まった。えなが言うにはそんなに遠くないらしい。
「それにしても今更何の話をするんだろう。大抵の話はアビスとかえなに聞いたのに。」
重要なことなどはすでに2人から聞いていると思ったのだが、大精霊じきじきに話があるとは一体どんな話なのだろうか。
「何だろうね。まあ、大精霊の事だからどうせくだらない話でもするんだとおもうよ?」
ひとつの世界の頂点に立つものがそんな私みたいな一般人にくだらない話をするためだけにわざわざ時間をさくとは思えないのだが...。
「いいんじゃないですか?理由はどうであれ、もう一つの世界の王様みたいなひとにあえるんですから!」
ななせちゃんってなんかあれだよね。そう。ポジティブ。
「ま、まぁそうだね。私も会ってみたいし。」
今は考えても仕方がない。とりあえずは前進しよう。そんなことを思いながらあるくこと数時間。人間界の村らしいものが見えてきた。
「あれ、ここは人間界に繋がってるんだね。不思議だなー。まぁいいや。せっかくだしよってみよ!」
決断力があるというか適当というか…。えなはいつもその場しのぎの発言しかしない。まあ、そんなやつでも強いからいいのだが。心の中で少しえなの悪口を言ってから私も村に向かった。

人間界の村につくと、そこは今までに見たことないほどボロボロなものばかりだった。建物も木造建築で、地面には沢山のゴミ。こんな治安の悪い村が人間界にあったのか。やめて欲しい。
「うへぇ...。ごめん、これはちょっとないかなぁ...」
見た目的には完全に評価の悪そうな村の愚痴を吐きながら、この村によろうと言ったヤツを見つめる。
「こ、これは...ちょっと...この村生きてる人いるの...?」
私より数倍失礼なことを言うえな。正直その感想も理解できるほど汚いので何も言わないが。一応結界が貼ってあったため、人はいると思うのだが。ここには誰もいないらしい。
そんなことを思っていると、後から「ぅわ!?」という声が聞こえた。驚いて後ろを見てみると、古びた紙が1枚風に流されてきて、それがななせちゃんの顔に直撃していた。
「ふはっ...。この紙はいったい...?どれどれ。年に一度の村力自慢大会開催中...?これ、広告みたいですね?」
そういうと、ななせちゃんは私とえなにその紙を見せてきた。確かにそれは村のお祭りの広告のようだ。ふむ。村の容姿通りなかなかワイルドな祭りだ。
「お、報酬なんてある。どれどれ。優勝者には金貨20枚と銀貨30枚...!?」
質素な村にしては報酬があまりにも豪華すぎる。だが、それがもし手に入ればしばらくは食べ物や宿代に困らない。
「えな、ななせちゃん。私ちょっと出てくるわ。」
私がそう真顔でいうと、2人は声を揃えて驚いた。
「ちょ、ちょっと待ってください!このお祭りは武器、薬物等のものは禁止、拳と拳の本気勝負とかかれています。いくら前線の戦闘に長けているナチさんでも無理です。」
ななせちゃんはそういい、広告を私の顔に近づけた。
「正直僕も同感かな。いくらナチでも力だけが自慢の奴らにその細さで勝てるとは思わない。ちなみに僕も体術はてんでだめだね。」
と、2人に反対されるも、私はめげなかった。
「大丈夫だって。ちょっと参加してみるだけ。まあ見ててよ」
私はそういい、ななせちゃんから広告を貰い、開催場所まで向かった。
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