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13 巻物

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「...と、まぁ。こんな感じで聖剣士の歴史は綴られてるんだけどね。」
アビスは長い話をして疲れたのであろう、ふぅ。とひとつ大きなため息をついた。
「詳しいことは初めて知ったよ。精霊界にはそんな詳しい情報が伝わってるんだね。」
私は聖剣士の歴史には元々興味がなく、聞かされていただけのことを何となくぼんやりと覚えていただけなので、正直活躍した人類初の聖剣士少女、アリスが今の私達とさほど変わらない状況下で戦っていたという事実は大きな衝撃を与えた。
「まぁね。精霊界に聖剣士のことが詳しく書かれている書物が山のようにあるし。それにアリスは大精霊様とも交流があったらしい。もちろん、ドラゴンとの戦いで勝ったあとにね。」
ドラゴンとの戦いで勝ったということは1度、この世界を救ったということなのだろうか。なかなか信じ難いことなのだが、恐らく本当のことなのだろう。
「大精霊が言ってたよ~。あいつは相当な力を秘めているから数百年たった今でもどこかで生きてるだろうって。僕もアリスには残念なことに1度も会えてないからね。」
えなにも会う機会があったのだろうか。でも今も生きているというのは非現実的ではないか?人間が生きることのできる期間といえば、長くとも一世紀ほどである。
「...と、まぁ話が長くなっちゃったけどこの聖剣士のお話が今後なにかに役立つといいね。」
アビスはひとごとか!とツッコミたくなるほど自分には関係の無い顔をしてそんなことを言った。武具屋とか防具屋とかはそんなこと無視しちゃいけないでしょ...。てか長々と話聞かされて私の剣見てもらって用事は終わり?
「ねぇ。私とえなを呼んだ理由ってこれだけ?これだけなら大精霊に聞けばよかったんじゃ...?」
私がそういうとアビスはドヤ顔へと変わり、腕を組んだ。
「へへ。実はここまでは基本僕が勝手にしてきたことであって、前置きにしかすぎない。本当の用事はこれさ。」
やけに長い前置きだったなぁ。など文句を心の中でいいながら、私はアビスのとりだした紙?を見つめた。
「これはただの巻物なんかじゃない。僕が特別に作ったモンスター討伐攻略ガイドってとこだね。」
モンスター討伐攻略ガイドということは情報がとにかく得られるものってことかな。そりゃ便利だなぁ。
「あ、でも勘違いしないで。そんなに高性能じゃないんだ。今の時代じゃこれが限界さ。わかることはボスモンスターの大体の居場所、性属。どこでどのくらいの雑魚モンスターが繁殖しているか、仲間の位置、そして最後。もしギルドを作るんだったらモンスター討伐数も表示される。と、これくらい。」
使ってないのでなんとも言えないが、説明だけを聞いていると今でも十分すぎる位高性能な気がするのだが。
「なるほど。要するに大精霊からそれを作って渡すように言われてたんだね。」
「まあね。」
これが本来の目的なのか。なら本当にあの前置きは何だったのだろうか...。
「で、えなとナチには悪いけど次は大精霊様の所へ行ってもらうよ。僕のお仕事はこれでおしまい!」
なんとも急な話である。大精霊の所へ行くということは精霊界にだいぶ長い期間滞在することになるのか。いったいあの精霊はなにがしたいのやら。
「おっけー。わかった。じゃあこの巻物は大切に取り扱わせてもらうよ。大精霊にもきちんと言っておく。」
「あぁ。頼んだよ。」
「じゃあ宿を探して明日に出発するか。よし。ナチ、行こうか。」
いつしか定着してしまったその名前を呼ばれ私達は店をでた
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