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もう1人のトリッパー?
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なんて絢爛豪華なのでしょう。
天井のシャンデリアもキラキラしているし、皆さんのお召し物を見ているだけでも1日過ごせそうです。
慣れない私のために先に公爵家が借り上げている観覧席に入りました。
すでに1階席にも大勢のお客様が入っていますけど面白いのですよ。
この演目が『青銀の乙女と魔術師』のせいかも知れませんけれど、みなさん髪を青銀に染めているんです。
好きな登場人物をコスプレするイメージなんでしょうか?
幕が上がってからは、もう夢中になって物語の世界に入り込んでしまいました。
私とセディがモデルってことにはなってますけれど、舞台になったらもう全然違うお話みたいです。
もしかして王都の皆様がこの話を信じ込んでしまっているなら、申訳なくてスコップで穴を掘りたいぐらいです。
一幕目が終わっても、私はどうやら物語の世界から抜けだせていなかったようです。
「ロッテ」
セディが優しく肩を抱いてくれて、初めて我にかえりました。
そんな私をセディやお父さま、お母さまが微笑ましそうに見ているのですが。
何だか大勢の人たちの視線がこちらに集中しているような気がします。
「青銀の乙女がいらしているわ」
「まぁ、本当に」
「どこ、どこ?」
「ほら舞台正面から右側よ。あそこはクレメンタイン公爵家のブースよ」
「本当だわ。魔術師さまもいらっしゃるわ」
「今日はついてるな。本物の青銀の乙女だ」
とうとう1階席の人々は、私たちを見物し始めました。
「どうしようセディ」
こんな状態で2幕目を見ることなんて出来るのでしょうか?
「大丈夫だよ。舞台が始まるまでの辛抱さ。それより咽喉がかわいたろう。何か飲みにいこう」
セディが私をエスコートしようとしたときです。
「その女は偽物よ!」
突然女の人の大声が響きわたりました。
見るとひとりの少女がこちらを指さして大声をあげています。
「あの女は異界渡りの姫なんかじゃないわ。冗談もたいがいになさいよ! あんたは知らないかもしれないけどね。
異界には青銀の髪なんて存在しないのよ! この詐欺師! なにを企んでいるの。あの女は詐欺師なのよ!」
10代後半くらいの黒髪・黒目の少女は憎しみを込めて私を睨みました。
どういうことなの?
彼女は日本人に見えます。
だったら本当に彼女が異界渡りの姫で、私は単に巻き込まれただけなの?
そう考えて私は心臓がズキリと痛みました。
そうよね。
彼女ならセディの番に相応しいわ。
若いし、綺麗な子だったもの。
私みたいな年増の干物女とは違って。
私はどうやら蒼白になっていたらしく、セディがしっかりと抱き上げました。
「セディ。この場はわしに任せておけ」
お父さまが頼もしくそう声をかけると、みるみるうちに衛兵が少女を取り囲み連行していきます。
しかし連行される間も、彼女は叫び続けていました。
「騙されないで! 私が本物よ!」と。
「どういうことだ」
「青銀の乙女は偽物なのか」
「まさか」
「しかし」
会場中の視線が私に集まってきました。
「ロッテ、あなたに教えた最上級の礼をなさい。クレメンタイン公爵家に恥じないようにね」
お母さまが鋭く命令なさいました。
そうだ。
わたわたと震えていてはクレメンタイン公爵家の家名に傷をつけることになります。
私が本当は何であろうとも、私を訓育して下さったお母さまに恥をかかせるわけにはいきませんわ。
私はセディの腕の中からするりと抜け出すと、バルコニーの前まで進みでました。
そうしてゆっくりと私を見つめる人々に視線をおくります。
全員が息を呑んだように私を見つめています。
私はにっこりとほほ笑むと、優雅に礼をしてみせました。
シーンと静まりかえった会場から、やがて大きな歓声が巻き起こりました。
「姫さま」
「青銀の姫」
「異界渡りの姫君」
その歓声はオペラ座を揺るがすようでした。
私は人々の歓呼に応えて手をふりました。
そして人々が十分に満足した頃合いで奥にひっこんだのです。
倒れ込むようにしてセディの腕にもたれかかった私をセディは愛おしそうに抱きかかえてくれました。
「お父さま、お母さま。 彼女も異界から来た可能性があります。 あの言葉には嘘とは思えない部分があったんです」
「大丈夫よロッテ。きちんと調べてもしそうなら公爵家で引き取ります。心配しなくてもいいのよ。今はもうセディと先に帰ってなさい。立派でしたよ」
お母さまに褒められて、私はほっとしました。
それでも言わずにはいられませんでした。
「お母さま、私はあの娘と話をしてみたいのです」
お父さまとお母さまは苦笑いをしましたし、セディに至っては必要ないと吐き捨てました。
けれども私が真剣なのがわかったのでしょう。
おとうさまが了承してくださいました。
セディが話は終わりとばかりに、転移術を展開しましたから、客席ではまた悲鳴ににた歓声があがり、私はセディとともにクレメンタイン公爵家の私の部屋に戻っていました。
「ロッテお嬢様」
ジャンヌがびっくりして駆け寄ってくるとセディは私を着替えさせるようにジャンヌにいいつけました。
私がゆたりとした夜着に着替え、上からローブを羽織ってセディの元にいくと、セディは私を睨みつけました。
「ロッテ、君はそんなにも僕を信用できないの? 僕が召喚し失敗すると思うの? 僕が自分の番すら見分けられない男だというの?」
セディは本気で怒っていました。
それでも私は疑問を口にせずにはいられなかったのです。
「それでもセディ。もしも、もしも彼女こそが本物の召喚者で、私が巻き込まれただけのただのおまけだとしたら?」
「ふん! ずいぶんと生意気なおまけだなぁ。いいかい。僕は君が好きなんだ。出自とか経歴とかではなく、目の前にいる君が好きだ。君だって僕を愛しているはずだ。そうでなければそのように色変わりはしないからね」
私は安堵のあまり、ぽろぽろと涙をこぼしていたみたいです。
「しかたのない子だね。寂しがりのくせに意地っ張りで」
「いいかい、僕はこの色は嫌いなんだ。なんだか女っぽく見えるからね」
そう言いながらセディが魔術を行使すると、セディの纏う色が変化しました。
菫色の髪と青銀色の瞳。
私の纏う色と同じです。
私は菫色の瞳と青銀の髪ですからね。
「どうしてセディ。いつもは亜麻色の髪と緑の瞳だよね」
ぽかんとして私が尋ねました。
「だって子供のころは、この色のせいでよく女の子に間違われたんだぜ。母上なんて女装させようとまでしたんだからな」
そうぼやくセディは確かにすこし、可愛らしい印象ですね。
でも。
「とても綺麗だわ、セディ。隠すなんてもったいない。特にその菫色の髪。それに神秘的な瞳の色も」
クールで魔術師らしい神秘性がありますね。
セディはちょっと苦笑いすると言いました。
「今泣いた烏がもう笑ったね。いいよ婚約者が僕を信じてくれるように、もう色を隠しておくのはやめることにする」
そっかぁ。
番になると相手の色を纏うんですね。
それでセディの本当の色を知っている人たちは、私がセディの番だってすぐにわかったんだ。
知らなかったのは、私だけですか。
それならいよいよおかしなことになりますね。
あの少女は何者なのでしょうか?
もう1人の異界渡りの姫?
それなら番は誰でしょう?
そこに執事が来てお父さまとお母さまが図書室でお待ちだと知らせてくれました。
まったくお父さまもお母さまも私が、図書館さえあればご機嫌だと思っているんですからね。
でも夜着って訳にはいきません。
大急ぎで着替えるとセディと一緒に図書館に向かいました。
図書館にはお父さまとお母さまがソファーに座っていて、その斜め横にはミリーが黒髪の少女に付き添って座っています。
お父さまとお母さまはセディが自分の色を纏っているのを見て、色々と察したらしくからかうようにセディを見ましたから、セディはうっすらと頬を染めました。
「来たわね偽物」
少女はそう言いました。
「若槻美緒・28歳・みずがめ座・東京都出身・商社勤務・経理担当・大学は成王の社会学部・転移は半年前」
私がそう言うと少女はぽかんと私を見つめています。
「姓名・異界での年齢・星座・出身地・在籍学校名。異界から来たなら言えるわよね」
「水沢奈緒・16歳・ふたご座・神奈川出身・星和高校1年 半年前壁外に落ちて異界渡りの姫の噂を聞いたの。まさかあなたも転移者だとは思わなくて。てっきり私のふりをした偽物だと思ったわ」
私はほぅと息を吐きました。
「残念だけど、私と同時に落っこちたみたいですね。この娘は未だ学生で、こちらの年齢では8歳です」
急に奈緒はわたわたしました。
「なに。どーゆーこと。こっちでは6歳とか言われて頭にきてたけど地球とこっちでは年齢の数え方が違うの?」
「そうですね。ちょうど地球の半分の年齢がこちらでの年齢になりますよ。美緒はだから8歳ですね」
美緒はぐぇっと呻いてみせたので、公爵家の方々は眉を顰めました。
「じゃぁさあ。あんた何でそんな変な色になってんのさ!」
変な色と言われてセディがむっとしたみたいです。
ごめんなさいね。
「そうねぇ。異渡りの姫は番を見つけると、その色に染まると言われています。私はセディの番なのですよ」
「ふーん、それでそんな色なのか。偽者って言って悪かったわね。だってそう言うのテンプレでしょ。ヒロインが偽物のせいで惨い目にあって、やがてその正体が判明してめでたしめでたしなんてさ」
なるほどねぇ。
自分こそがヒロインだと思えたから壁外でひとりでも耐えられたんですね。
セディはなにやら魔方陣を書いた紙をしきりにこねくりまわしていましたが、あっと声をあげました。
「これだこれだ。一応保険で番が見つからない場合には、とにかく丈夫で逞しくて前向きな若い娘って条件を付帯しといたんだ。でも番が見つかったらキャンセルされる筈なのに……。あーここ。少し掠れて薄くなってるわ。それで両方召喚したんだな」
全員がセディを睨みました。
やっぱり犯人はお前じゃないか!
しかも保険までかけやがって!
何が番だけを愛するだ!
セディはみんなの怒りに気づいて、がたがたと震えだしました。
天井のシャンデリアもキラキラしているし、皆さんのお召し物を見ているだけでも1日過ごせそうです。
慣れない私のために先に公爵家が借り上げている観覧席に入りました。
すでに1階席にも大勢のお客様が入っていますけど面白いのですよ。
この演目が『青銀の乙女と魔術師』のせいかも知れませんけれど、みなさん髪を青銀に染めているんです。
好きな登場人物をコスプレするイメージなんでしょうか?
幕が上がってからは、もう夢中になって物語の世界に入り込んでしまいました。
私とセディがモデルってことにはなってますけれど、舞台になったらもう全然違うお話みたいです。
もしかして王都の皆様がこの話を信じ込んでしまっているなら、申訳なくてスコップで穴を掘りたいぐらいです。
一幕目が終わっても、私はどうやら物語の世界から抜けだせていなかったようです。
「ロッテ」
セディが優しく肩を抱いてくれて、初めて我にかえりました。
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何だか大勢の人たちの視線がこちらに集中しているような気がします。
「青銀の乙女がいらしているわ」
「まぁ、本当に」
「どこ、どこ?」
「ほら舞台正面から右側よ。あそこはクレメンタイン公爵家のブースよ」
「本当だわ。魔術師さまもいらっしゃるわ」
「今日はついてるな。本物の青銀の乙女だ」
とうとう1階席の人々は、私たちを見物し始めました。
「どうしようセディ」
こんな状態で2幕目を見ることなんて出来るのでしょうか?
「大丈夫だよ。舞台が始まるまでの辛抱さ。それより咽喉がかわいたろう。何か飲みにいこう」
セディが私をエスコートしようとしたときです。
「その女は偽物よ!」
突然女の人の大声が響きわたりました。
見るとひとりの少女がこちらを指さして大声をあげています。
「あの女は異界渡りの姫なんかじゃないわ。冗談もたいがいになさいよ! あんたは知らないかもしれないけどね。
異界には青銀の髪なんて存在しないのよ! この詐欺師! なにを企んでいるの。あの女は詐欺師なのよ!」
10代後半くらいの黒髪・黒目の少女は憎しみを込めて私を睨みました。
どういうことなの?
彼女は日本人に見えます。
だったら本当に彼女が異界渡りの姫で、私は単に巻き込まれただけなの?
そう考えて私は心臓がズキリと痛みました。
そうよね。
彼女ならセディの番に相応しいわ。
若いし、綺麗な子だったもの。
私みたいな年増の干物女とは違って。
私はどうやら蒼白になっていたらしく、セディがしっかりと抱き上げました。
「セディ。この場はわしに任せておけ」
お父さまが頼もしくそう声をかけると、みるみるうちに衛兵が少女を取り囲み連行していきます。
しかし連行される間も、彼女は叫び続けていました。
「騙されないで! 私が本物よ!」と。
「どういうことだ」
「青銀の乙女は偽物なのか」
「まさか」
「しかし」
会場中の視線が私に集まってきました。
「ロッテ、あなたに教えた最上級の礼をなさい。クレメンタイン公爵家に恥じないようにね」
お母さまが鋭く命令なさいました。
そうだ。
わたわたと震えていてはクレメンタイン公爵家の家名に傷をつけることになります。
私が本当は何であろうとも、私を訓育して下さったお母さまに恥をかかせるわけにはいきませんわ。
私はセディの腕の中からするりと抜け出すと、バルコニーの前まで進みでました。
そうしてゆっくりと私を見つめる人々に視線をおくります。
全員が息を呑んだように私を見つめています。
私はにっこりとほほ笑むと、優雅に礼をしてみせました。
シーンと静まりかえった会場から、やがて大きな歓声が巻き起こりました。
「姫さま」
「青銀の姫」
「異界渡りの姫君」
その歓声はオペラ座を揺るがすようでした。
私は人々の歓呼に応えて手をふりました。
そして人々が十分に満足した頃合いで奥にひっこんだのです。
倒れ込むようにしてセディの腕にもたれかかった私をセディは愛おしそうに抱きかかえてくれました。
「お父さま、お母さま。 彼女も異界から来た可能性があります。 あの言葉には嘘とは思えない部分があったんです」
「大丈夫よロッテ。きちんと調べてもしそうなら公爵家で引き取ります。心配しなくてもいいのよ。今はもうセディと先に帰ってなさい。立派でしたよ」
お母さまに褒められて、私はほっとしました。
それでも言わずにはいられませんでした。
「お母さま、私はあの娘と話をしてみたいのです」
お父さまとお母さまは苦笑いをしましたし、セディに至っては必要ないと吐き捨てました。
けれども私が真剣なのがわかったのでしょう。
おとうさまが了承してくださいました。
セディが話は終わりとばかりに、転移術を展開しましたから、客席ではまた悲鳴ににた歓声があがり、私はセディとともにクレメンタイン公爵家の私の部屋に戻っていました。
「ロッテお嬢様」
ジャンヌがびっくりして駆け寄ってくるとセディは私を着替えさせるようにジャンヌにいいつけました。
私がゆたりとした夜着に着替え、上からローブを羽織ってセディの元にいくと、セディは私を睨みつけました。
「ロッテ、君はそんなにも僕を信用できないの? 僕が召喚し失敗すると思うの? 僕が自分の番すら見分けられない男だというの?」
セディは本気で怒っていました。
それでも私は疑問を口にせずにはいられなかったのです。
「それでもセディ。もしも、もしも彼女こそが本物の召喚者で、私が巻き込まれただけのただのおまけだとしたら?」
「ふん! ずいぶんと生意気なおまけだなぁ。いいかい。僕は君が好きなんだ。出自とか経歴とかではなく、目の前にいる君が好きだ。君だって僕を愛しているはずだ。そうでなければそのように色変わりはしないからね」
私は安堵のあまり、ぽろぽろと涙をこぼしていたみたいです。
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「いいかい、僕はこの色は嫌いなんだ。なんだか女っぽく見えるからね」
そう言いながらセディが魔術を行使すると、セディの纏う色が変化しました。
菫色の髪と青銀色の瞳。
私の纏う色と同じです。
私は菫色の瞳と青銀の髪ですからね。
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ぽかんとして私が尋ねました。
「だって子供のころは、この色のせいでよく女の子に間違われたんだぜ。母上なんて女装させようとまでしたんだからな」
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でも。
「とても綺麗だわ、セディ。隠すなんてもったいない。特にその菫色の髪。それに神秘的な瞳の色も」
クールで魔術師らしい神秘性がありますね。
セディはちょっと苦笑いすると言いました。
「今泣いた烏がもう笑ったね。いいよ婚約者が僕を信じてくれるように、もう色を隠しておくのはやめることにする」
そっかぁ。
番になると相手の色を纏うんですね。
それでセディの本当の色を知っている人たちは、私がセディの番だってすぐにわかったんだ。
知らなかったのは、私だけですか。
それならいよいよおかしなことになりますね。
あの少女は何者なのでしょうか?
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それなら番は誰でしょう?
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まったくお父さまもお母さまも私が、図書館さえあればご機嫌だと思っているんですからね。
でも夜着って訳にはいきません。
大急ぎで着替えるとセディと一緒に図書館に向かいました。
図書館にはお父さまとお母さまがソファーに座っていて、その斜め横にはミリーが黒髪の少女に付き添って座っています。
お父さまとお母さまはセディが自分の色を纏っているのを見て、色々と察したらしくからかうようにセディを見ましたから、セディはうっすらと頬を染めました。
「来たわね偽物」
少女はそう言いました。
「若槻美緒・28歳・みずがめ座・東京都出身・商社勤務・経理担当・大学は成王の社会学部・転移は半年前」
私がそう言うと少女はぽかんと私を見つめています。
「姓名・異界での年齢・星座・出身地・在籍学校名。異界から来たなら言えるわよね」
「水沢奈緒・16歳・ふたご座・神奈川出身・星和高校1年 半年前壁外に落ちて異界渡りの姫の噂を聞いたの。まさかあなたも転移者だとは思わなくて。てっきり私のふりをした偽物だと思ったわ」
私はほぅと息を吐きました。
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「なに。どーゆーこと。こっちでは6歳とか言われて頭にきてたけど地球とこっちでは年齢の数え方が違うの?」
「そうですね。ちょうど地球の半分の年齢がこちらでの年齢になりますよ。美緒はだから8歳ですね」
美緒はぐぇっと呻いてみせたので、公爵家の方々は眉を顰めました。
「じゃぁさあ。あんた何でそんな変な色になってんのさ!」
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ごめんなさいね。
「そうねぇ。異渡りの姫は番を見つけると、その色に染まると言われています。私はセディの番なのですよ」
「ふーん、それでそんな色なのか。偽者って言って悪かったわね。だってそう言うのテンプレでしょ。ヒロインが偽物のせいで惨い目にあって、やがてその正体が判明してめでたしめでたしなんてさ」
なるほどねぇ。
自分こそがヒロインだと思えたから壁外でひとりでも耐えられたんですね。
セディはなにやら魔方陣を書いた紙をしきりにこねくりまわしていましたが、あっと声をあげました。
「これだこれだ。一応保険で番が見つからない場合には、とにかく丈夫で逞しくて前向きな若い娘って条件を付帯しといたんだ。でも番が見つかったらキャンセルされる筈なのに……。あーここ。少し掠れて薄くなってるわ。それで両方召喚したんだな」
全員がセディを睨みました。
やっぱり犯人はお前じゃないか!
しかも保険までかけやがって!
何が番だけを愛するだ!
セディはみんなの怒りに気づいて、がたがたと震えだしました。
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