2回目チート人生、まじですか

ゆめ

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動き出した影と光

お出かけ②

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指さした方角の森へと駆ける。
 少女は置いていけないので俺が抱いてる。
 そこら辺に置いておくより俺が近くにいた方がよっぽど安全でもある。
 一応、少女には結界を貼っておいた。
 そしてソラ。彼も俺の後をついてきている。かなりのスピードで走ってるが身体能力が元々高いため遅れることなく後ろを走る。

「いた………………」

 ずっと展開していた索敵魔法に2つの反応が見つかった。1つは小さな、人間の気配。木に隠れるように息を殺しうずくまってる。そしてもう1つはデカく、何かを探しているような動きを見せる物。

 魔物か……………

 ただの動物より厄介だ。子供にとって恐怖の塊だろう。

「やばいな」

 2人の距離がどんどん近くなっている。見つかるのも時間の問題だ。

 俺は足に魔力を集め全力で蹴る。

「ちょ、ソウイ!!!」

 いきなりかなりの距離を一瞬で移動する俺に戸惑いの声が後ろから聞こえる。
 だが待ってられない。

「見つけた、」

 やっと視界に魔物の姿が入る。そして同時に魔物の視界に少女の兄と思われる少年の姿も入っていた。

「ガキを襲ってんじゃ、ねぇ!!!!!」

 少女を抱き抱えたまま全力で跳躍、さらに背後から首辺りに回し蹴りを入れてやれば熊の魔物はバランスを崩し倒れる。
 その隙に少年の元へ向かう。

「え…………………………」
「大丈夫か!?」
「誰…………あ!!リズ!」
「お、お兄ちゃぁぁぁぁん」

 俺の腕から抜け出し、兄の元へと駆け寄る。
 少年の方もかなり怖かったのだろう。震えが止まっていない。だが泣いている妹をあやしているのはなんとも素晴らしい兄だ。

「ソウイ!置いてくなよ!」
「お、わりいわりい」
「倒れてるけど倒したの?」
「うんにゃ?まだ生きてるら。蹴っただけだし」
「蹴っただけでこんなでかいやつ倒れんの…?」
「長年の経験だよ、少年」

 そんなことを話していると熊の魔物が立ち上がる。そして俺を視界に入れブチ切れてるように見える。

 よし、さっさとぶちのめして……………ん?
 いや、まてよ。
 これいい経験になるよな。もしかしなくても。

「ソラ」
「ん?」
「こいつ倒してみるか?」
「え、」
「訓練見てたけど大分動きが良くなってきてたじゃねえか。実践も加えて見てえだろ」
「……………………………………………………」

 やってみたいが、やはり実践は怖いといった表情。

「まだやめとくか?…………だけど俺は、いけると思うぞ」
「ーー!……………やってみる」
「よく言った!」

 買ったばかりの短剣を2本、構える。
 小さいながらもその姿は完璧に騎士団員だ。

 「………フーーーーーーー………」

 息を整えて地面を蹴る。
 小さいその身体は瞬時にデカい魔物の身体の死角へと入り込むことが出来た。
 そしてまずは両足のけん。魔物は直立が不可能になり膝を地面につける。
 そしてさらに跳躍して人間で言う肩甲骨辺りに、刃を入れ回転しながら一気に切り裂く。
 辺りに悲鳴と血が舞う。
 普通の、人間のこれくらいの子供ならこんな動きは不可能であろう。
 それは獣人であり、さらにその中でも才能に恵まれ努力も積み重ねる彼だからこそ出来る動きなのだ。
 もちろんまだまだ荒削り。磨けば光るところはいくらでもある。
 そして魔物の攻撃を避けながら顔の前まで跳ぶ。
 心臓は短剣では届かない、さらに自分の力では心臓への致命傷をおわせるとこは不可能と判断していたのだろう。
 いい判断力だ。 
 そのまま目に刃を突き立てる。
 そして刃を下に引き下ろすと同時にその反動でさらに上へと跳ぶ。

「うぉぉぉぉぉぉぉぉ」

 そして真上から重力と、自分の全体重を乗せ、脳に刃を突き立てる。

「グゴォォォォォォォォ」

 それでもまだ暴れたのはさすが魔物と言ったところだ。しかし流石に致命傷のようで思い切り暴れ、直ぐに倒れる。

 その時に頭から吹き飛ばされたソラを俺は回収する。

「お疲れ様」
「ソウ、イ」
「どうだった?初めての実践」
「…………………………………疲れた」
「だろうな」

 微かに震える手を隠しながら俺の腕の中で笑顔を作る少年マジ天使。

 は、やばいやばい。純粋無垢な子供がいた。こんな汚れた大人を見せてはいけないな。地面にゆっくりソラを下ろし2人の子供の方へ向かう。

「怪我はないか?」
「う、…うん」
「家の場所わかるか?」

 妹を抱きながら頷く少年によし、と頭を撫でて送ってやるから行こうか。と言えば戸惑いながらも再び頷いてくれた。



 2人を送り届けたあと、俺は疲労で寝てしまったソラをおんぶしながら帰路についていた。

「いやぁ~、まさかそうそうに実戦経験を詰めるとはな」

 それにしてもなかなかの動きだったな。うん、将来有望すぎるね。

「今日は頑張ったからな、いいもん食わせてやろう」

 起きたら食堂に連れていこうと思いながら夕暮れの中を歩いていく。
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