20 / 92
3-5: 殺し、救い、嘆いて、覚悟して業を背負い進め
しおりを挟む
「本当にやるのか」
「ふー、……大丈夫。言葉だけじゃあ、信じがたいだろ」
天月博人はニコをいったん預けた中田文兵に、拳銃を突き付けさせる。引き金に指を引っ掛ければその頭部内に弾丸が通過する事に成り、そのまま命を連れ去っていくだろう。
ニコは『止めてほしいんだよ』と口にするが。それは聞き入れられなかった。
「殺して確かめてくれなんて言って。嘘だったら意味が分からねぇ自殺志願にしかならねぇし。
何よりあのミイラの状態で取り込まれたはずなのにこうして生きていることに説明がつかねぇ。
状況証拠的に信じられるんだが。まぁ、確認は大事だわな。ちょっと覚悟しすぎだろって思わなくもないが……後が支えているしちゃっちゃとやるぞ」
中田文兵は引き金を引いて天月博人の脳天を弾丸が貫いた。一瞬その場にいた誰もが空気が凍り付いた様な感覚を錯覚すし。天月博人が力なく倒れるまで続いた。
『大丈夫なんだよね!? 本当に本当に大丈夫なんだよねヒロ!?』
「なぁ、ニコ」
『なに!?』
「ヒロってなんだ? 人の名前か?」
『またぁ!? ……何で忘れるの? んー?』
ニコは中田文兵が再び、天月博人の事を忘却したことに驚いた後。乞う状態にある自分を落ち着けて先ほどまで天月博人を忘却した状態と状況を照らし合わせる。
『中田文兵がヒロの記憶を忘却している際。2度にわたってヒロは死亡していたんだよ。ここから考えられる可能性は? 安直に考えるのなら、ヒロの異能力? 生き返る異能力とほぼ同時に覚醒した? それとも生き返る異能力の副次的もの? その効果は……ヒロは死ぬとヒロの記憶が忘却されるのかな? じゃあ、何でニコは……記憶と記録の違い? 有機生命体と電子AIの違い……? ……事象を確定させるには分らないことが多すぎるんだよ……』
「オメェはなぁにブツブツ言ってんだ? 俺の質問に驚いたと思ったら答えてくんねぇし…………あん? 何だこのロロ=イア人員の死体……眉間の……弾痕? が塞がりつつあるんだが…………不気味だし潰すか」
『ちょっと!? 念入りに潰そうとするのはやめてほしいんだよ! ニコ的にはナカタニさんは傷つけられないだろうから。未知なるものがあったら、データをとるために観察してみてほしいかなーって思うんだよ!』
「あん? そうなのか? てか、オメェは埋まるんじゃなかったのか? 着いてくんのか? 俺としては助かるんだが」
『う、うん! そうなんだよ! ニコはお父さんに作られたスーパーな人工知能なんだから。この有能さを色んな人に見てほしいかなーって思ったり思わなかったり……』
「もう起きたぞニコ」
ニコが必死に中田文兵を思いとどまらせようとしている最中で天月博人は体を起こす。その声に『ヒロ! よかったんだよー!』と安どの言葉を吐いた。中田文兵は状況の意味が分からないと言いたげな表情で。天月博人の顔を見詰めていると「あー、思い出した」と声を漏らした。
「また、忘れていたのか」
「なんだオメェ。知ってたのかよ」
「ジブンを殺した人員が。動き出したジブンを見るなり。誰だお前とか。反射的に言っていたらそりゃあ解る。これは死んだら発動するみたいで。生き返ったジブンの顔を見ると思い出すみたいなんだ」
『うーん。ヒロが死んだら。ヒロに関する記憶も死んじゃうとかそんな感じかな? そして生きているヒロを観測する事で記憶の中のヒロも生き返る感じなんだと思うんだよ……ん? あっ。ニコが今確認したいのはこれじゃなくてヒロに聞きたい事があるんだよ!』
「どうした?」
『ヒロは大丈夫なの? こう、代償みたいな感じで気分とかそう言うのが害されたり』
天月博人はニコの問い掛けに胸を押さえて難しい顔をする。この反応でニコと仲田文兵には、ニコにとっての良い答えが帰ってこない事が察せられた。
「実を言うと。そんなに大丈夫じゃない。正気というか何というか、脳内物質を出してない状態で死んだせいか、それとも明確に死を思って死んだせいか。あるいはその両方か。
一瞬で脳天を貫く弾丸の激痛が、記憶にあって……かなりキツイ」
「あー、文字通り死ぬほどの痛み辛みが記憶にあんのか、そりゃあ確かにキツそうだ。まぁそれで、オメェは生きかえられる。それでいて死ねば忘れられる。そんな力が覚醒しているって証明出来たんだし仕方がねぇ経験ってことで。……しっかしまあ、綺麗に治ったな。傷跡が一切、残ってねぇな」
『本当に綺麗に治っているんだよ……あっ! そう言えば額の傷跡が無いんだよ! ヒロのアイデンティティが消えちゃってるんだよ!?」
「ニコからは死角になってて顔が見えなかったかな。額の傷は二つともこの異能力が覚醒したときから無くなっていると思う。というか、傷がアイデンティティは、さすがのジブンも嫌だぞ、せめてこの眠たげな眼にしてくれ」
『えー、でもなっちゃんが、あの二つの傷にまつわる思い出話をしてくれたって言ってたんだよ? 思い出の傷が無くなっちゃったんだよ?』
「無くなったものは仕方がないよ」
ニコは残念そうな声でうなるが、傷は戻しようがないのだから、残していたかったとしても諦めるしかない。
「そこらへん俺がわからねぇ昔の話は、ついていけねぇから置いておいて。まぁ、傷一つ残ってない状態で生き返るってことだな。そんでだ、俺的には今後の戦いに使えそうだから聞くが。その力。無限に使えんのか? それとも回数制限か? そこらへん感覚的に分かんねぇか?」
『ニコは、もう絶対に使ってほしくないんだよ!?』
「まぁまぁ、参考程度にだよ。どのみち知っておいたほうがいいだろうしな。……おい、博人。ニコを返すぞ。こいつ今ので怒ったのか俺の耳元で黒板をひっかいた音を流しやがる」
「はいはい。ニコおいで」
むくれるニコを中田文兵から受け取って、首にぶら下げてから。中田文兵の問いを考える。新で何かがなくなるという感覚は今のところ感じないが、それ以外、まったくわからなかった。
「有限なのか無限なのかもわからない。今のところ何かが減ったとか、喪失感は感じない」
「そんなもんか。わかんねぇなら使わねぇほうがいいな」
「ジブン自身、できれば死にたくはないんだけどね。もう確認することはないか?」
『ニコはヒロが死にたくないって、最終的に聞きたかったことを言ってくれたからもういいんだよ。今までのことは記録しておいて大丈夫?』
「何かの参考になると思うから頼む」
『はーい。それじゃあ記録しておくね』
「それじゃあ、俺から2つ。と言ってもお前の生き返る力とは別の疑問なんだが……俺にばれたが、拠点の奴らにニコのことはどうすんだ? 隠し続けるのか? そんで、拠点の奴らは現在、オメェのことを忘れているわけで。オメェが帰ったら軽い混乱が起きると思うんだが、その辺の説明はすんのか?」
中田文兵の問いは、避けては通れないものであった。
そもそもの話として、天月博人が仲間たちに自身の意能力とニコの存在を隠していたのは、何かに利用されるかもしれない、付け込まれるかもしれないという、信用しきれていない側面が有るからだ。
不信は未だに拭いきれてはいない。でもだからと言ってどうすればいい? 中田文兵には、ニコの存在が知られた。天月博人の生き返る異能も見られた。
この場から逃げ出し死ぬ事でもう一度、中田文兵の記憶から天月博人を死なせ、今ある拠点にも帰らず。何もかもを切り捨てて1から始める選択肢はある。だがそれは、今の天月博人にはとても選べなかった。
逃げる選択が出来ないのであれば、中田文兵に頼み込んで隠し通すか、危険性を背負う覚悟で打ち明け、その後起きる結果を受け入れるかの二択だろう。
「隠し続けて、知られた時に拗れるよりは良いか……」
「おっ言うのか?」
「先ずは2人、ジブン的に信頼できると思えた2人に説明する。そこから意見をもらってから方針を決める」
『楽善二治、通堂進の2人?』
「そう、その2人。2人共、レジスタンスの為によくやってくれているし。ロロ=イアが敵視していない時に、ジブンに着いてくれたからね。ジブンとしては信頼度は高い。あと、混乱が起きても何とか鎮めてくれそうだし」
「屋宮亜里沙は良いのか? 楽善ばりにオメェの事を気にかけてるみてぇだが」
「えーと……屋宮さんは……ジブンからの信頼度が足りないかな……うん、話してどうするのって感じもあるし」
「お前の好感度がたりねぇんだな? よしわかった。帰ったら屋宮に、もっと博人の事を構ってやれって言っておく」
「やめて……本当にやめて。あの人、日に日に愛る事に遠慮が無くなってるから……最近、羞恥心で心が死にそうなんだ」
『ヒロ、あの人にダボダボな服を着させられて、可愛いーって撫でられてたもんね……』
「えっと……何だ。同情はするが、拠点の中で数少ない娯楽を見つけた感じだろうから受け入れてやってくれ」
ジブンの異能力は、死んだ心も生き返るのかなと。天月博人は苦笑するのであった。
拠点へ戻ると。楽善二治が「お帰りなさい。中田さん……と、天月君」と、一瞬戸惑いながらも出迎えてくれた。
レジスタンスの皆は、天月博人を見たあと、不思議そうな仕草をするが、それだけで、問題になる事はなかった。考えれば、忘れていた事を思い出しても。レジスタンスのほとんど知らない人たちの中で、思い出したと口にする人は少ないだろうし。それに大半の人は、その時思い出す必要がなかったと、その時まで忘れていた事に納得するのだろう。
「それで、今回はどうでした? お怪我は有りませんか?」
「その事について、後で少しお話肢体ことがありますが。その前に今回の成果を見てください。凄い人が居ますよ」
襲撃を終えて、食料やら備品などの戦利品は、最早、恒常と化したため除いて。目玉は地下から救出した人的戦利品である。この人的戦利品の中に、鉄田大樹のように何かしらの知識を保有していたり。通堂進や中田文兵のように意能力に覚醒していれば。レジスタンスにとって大きな戦力となるのだが。今回の人的戦利品、その引き当てた人物は、その時になるまで自身のことをどうしようか悩んでいた天月博人が、確認して即座に自身のことを棚上げし喜ぶほどの人物であった。
「俺は霜下太郎ってんだ。えっと。才能とかそんなんはねぇけど。食ったことある植物を思い浮かべながら爪を切ると、切った爪が思い浮かべた植物の種代わりになるぞ」
「私たちは君を歓迎します。よく、私たちとこうして出会ってくださいました!」
「お、おう……熱烈な歓迎をどうも」
レジスタンスは、その日。ほのかに未来図を思い描くたびに不安視される食糧事情を改善しうる人材を引き入れた。
「それで…お話ししたいこととは何ですか?_」
「それって、僕も聞くの?」
「はい、どうか聞いてくれると助かります。ジブンとしてはお二人が信用できますので」
天月博人は楽善二治と通堂進に、ニコのこと自身の生き返る異能力のことを伝えた。真摯に耳を傾ける楽善二治と、そこまで関心がなさそうな様子の通堂進と、二人はそれぞれ別の反応を示した。
通堂進は言う。「僕を信用してくれたのは素直にうれしく思うよ。でも、そのことを知って、君は僕に何をさせたい? 少しずつ君の摩訶不思議が起きても仲間たちに角が立たないよう、噂でも流しておくとかかい?」と。天月博人の要求を尋ねた。
「当たらずとも遠からずって感じですね。少しずつ。ロロ=イアはこちらの対策をしているように思えますから。その分、ジブンが死ぬ確率は高くなります。ですので、そのたびに起こりうる混乱を事前的に予防できるようにと報告しておきます」
『言おうってヒロが思ったのは中田文兵にバレちゃったってのもあるよねー……連鎖的にニコも原因の一端になるけど……』
「ニコにもジブンの異能力を教えなかったジブンにも非が有るから。誰のせいとかジブンは言えないかなぁ……こういうのは結局いつかは気が付かれたことだろうし。いいきっかけになったよ」
天月博人は苦笑してから、「お時間ありがとうございます。何かあれば呼んでください。要はすんだのでそれでは」と言って頭を下げてからその場を立ち去ろうとするが、楽善二治が「ちょっと質問させてほしいです」と呼び止められる。
「その生き返る異能力は、使ったことがあるんですか?」
「はい」
「何回ですか?」
「記憶にある限りのを数えれば」
天月博人は数えるように呟いて指を立てる。
「6回くらいですね。記憶に残ってない頭に血が上っていた時のを数えればもっとあるかと。ギリギリ両手で数えられるかないかくらいですかね」
何の気なしに答える天月博人はやるせなさそうな表情をする。言い辛そうにしながらまた、問いかけた。
「死ぬのは苦しくないのかい?」
「苦しいです。言葉通り、死ぬほど」
「恐怖は?」
「あります。苦しく辛いのは嫌ですから」
「なら、ならどうして君はまだ闘おうと?」
天月博人は首を傾げ、意味が解らないと言いたげな表情になって答える。
「ジブンが苦しむことは、闘わない理由になりませんよ?」
「なっ、何でですか!? 君がそんなに辛い思いをする必要は何所にもないはずです! どうしてそんなことを思うんですか? 生き返るからですか? だから無限の鉄砲弾になると?」
「そう、なりますかね」
「そうなりますって……もっと自分を大事にしなさい!」
「大丈夫ですよ。それにジブンは、そんなことよりも今も尚、今はロロ=イアに捉えられている人を救い出したいんです」
「救う……救うのならほかの……大人の人に……!」
少しずつ、感情的になっていく楽善二治の言葉を「駄目ですよ」と天月博人は切り捨てた。
「だって、未だに志願者は1人も集まらないのでしょう? 今、この時もロロ=イアの被害者たちが苦しんでいるのですから、誰かが気が変わって志願するのを待つ時間は有りませんし、だからと言って嫌だと思っている人を危険にさらしたくはありません。……そして、もう1つ。大人だからと代わりに死んで言い訳ではないですよ」
その発言から、その場にいた誰もが察しただろう。天月博人は我が身可愛さと言う気持ちが欠落しているのだと。そして自身が危険に会うことを良しとしない人間なのだと。また、悲しんだりする人々が居るというのにそれを棚上げにして、自分は他人を心配する人間なのだと。
『ひ、ヒロ。もうちょっと価値観を正すべきだと思うなーってニコは思うんだよ? 二治も言ってたみたいに自分を大事にすべきかな……ここに来てから自己犠牲が酷くなってる気がするんだよ』
ニコもどこか思う事はあったのだろう。これを機にと言わんばかりに天月博人の在り方に異議を申し立てる。だけれど天月博人は言葉に絆されることなく静かに首を振った。
「ジブンはいろんな人に出会えて、救われて、十分すぎるほどに幸福だった。もう満足だ。……だからかな、ジブンはもういいんだ」
「自分はいいって……何が……!」
「止めだ止め」
天月博人の言葉に激昂し楽善二治が声を張り上げる中、今まで黙って聞いて居た通堂進が手を大きく叩いて鳴らし、自身を注目させる事で静止させる。視線が集まったことをちらりと確認すると飽きたように伸びをした。
「よーし、みんなこっち見たね。それじゃあ今までのを聞いて、僕から1つ。天月博人君がそう考えるなら。僕としては、それはしょうがないねぇと思うよ。うん、マイナスな感情なら説得の余地はあったと思うしなんとかしないととも思う。でも、満たされちゃったか。それはどう考えてもマイナスとは違う。むしろ対局のプラスの感情かなぁ。
だから楽善君と……えーとゴーグルの中にいるニコって人? には悪いけど僕はもうそのあたり説得するつもりはないよ。プラス勘定で自分をないがしろにする人とかどうやってやめろって説得するのか、僕は知らないからねぇ。
それじゃあ本筋はもうとっくに話してもらったし。拠点を広げるっていうお仕事もしなきゃあだし。一抜けするね。それじゃあ」
通堂進はそう言って、立ち去っていく。天月博人もそれに続いて「それでは、もういいならジブンも行きますね」と言って楽善二治だけを置いて行った。
1人小さな部屋に採り起された楽善二治は、ゆっくりと頭を抱えて震える。
「私は…………間違っているのでしょうか…………あぁ、私はどうすれば……」
天月博人のその在り方を受け入れられないが故に。
「ふー、……大丈夫。言葉だけじゃあ、信じがたいだろ」
天月博人はニコをいったん預けた中田文兵に、拳銃を突き付けさせる。引き金に指を引っ掛ければその頭部内に弾丸が通過する事に成り、そのまま命を連れ去っていくだろう。
ニコは『止めてほしいんだよ』と口にするが。それは聞き入れられなかった。
「殺して確かめてくれなんて言って。嘘だったら意味が分からねぇ自殺志願にしかならねぇし。
何よりあのミイラの状態で取り込まれたはずなのにこうして生きていることに説明がつかねぇ。
状況証拠的に信じられるんだが。まぁ、確認は大事だわな。ちょっと覚悟しすぎだろって思わなくもないが……後が支えているしちゃっちゃとやるぞ」
中田文兵は引き金を引いて天月博人の脳天を弾丸が貫いた。一瞬その場にいた誰もが空気が凍り付いた様な感覚を錯覚すし。天月博人が力なく倒れるまで続いた。
『大丈夫なんだよね!? 本当に本当に大丈夫なんだよねヒロ!?』
「なぁ、ニコ」
『なに!?』
「ヒロってなんだ? 人の名前か?」
『またぁ!? ……何で忘れるの? んー?』
ニコは中田文兵が再び、天月博人の事を忘却したことに驚いた後。乞う状態にある自分を落ち着けて先ほどまで天月博人を忘却した状態と状況を照らし合わせる。
『中田文兵がヒロの記憶を忘却している際。2度にわたってヒロは死亡していたんだよ。ここから考えられる可能性は? 安直に考えるのなら、ヒロの異能力? 生き返る異能力とほぼ同時に覚醒した? それとも生き返る異能力の副次的もの? その効果は……ヒロは死ぬとヒロの記憶が忘却されるのかな? じゃあ、何でニコは……記憶と記録の違い? 有機生命体と電子AIの違い……? ……事象を確定させるには分らないことが多すぎるんだよ……』
「オメェはなぁにブツブツ言ってんだ? 俺の質問に驚いたと思ったら答えてくんねぇし…………あん? 何だこのロロ=イア人員の死体……眉間の……弾痕? が塞がりつつあるんだが…………不気味だし潰すか」
『ちょっと!? 念入りに潰そうとするのはやめてほしいんだよ! ニコ的にはナカタニさんは傷つけられないだろうから。未知なるものがあったら、データをとるために観察してみてほしいかなーって思うんだよ!』
「あん? そうなのか? てか、オメェは埋まるんじゃなかったのか? 着いてくんのか? 俺としては助かるんだが」
『う、うん! そうなんだよ! ニコはお父さんに作られたスーパーな人工知能なんだから。この有能さを色んな人に見てほしいかなーって思ったり思わなかったり……』
「もう起きたぞニコ」
ニコが必死に中田文兵を思いとどまらせようとしている最中で天月博人は体を起こす。その声に『ヒロ! よかったんだよー!』と安どの言葉を吐いた。中田文兵は状況の意味が分からないと言いたげな表情で。天月博人の顔を見詰めていると「あー、思い出した」と声を漏らした。
「また、忘れていたのか」
「なんだオメェ。知ってたのかよ」
「ジブンを殺した人員が。動き出したジブンを見るなり。誰だお前とか。反射的に言っていたらそりゃあ解る。これは死んだら発動するみたいで。生き返ったジブンの顔を見ると思い出すみたいなんだ」
『うーん。ヒロが死んだら。ヒロに関する記憶も死んじゃうとかそんな感じかな? そして生きているヒロを観測する事で記憶の中のヒロも生き返る感じなんだと思うんだよ……ん? あっ。ニコが今確認したいのはこれじゃなくてヒロに聞きたい事があるんだよ!』
「どうした?」
『ヒロは大丈夫なの? こう、代償みたいな感じで気分とかそう言うのが害されたり』
天月博人はニコの問い掛けに胸を押さえて難しい顔をする。この反応でニコと仲田文兵には、ニコにとっての良い答えが帰ってこない事が察せられた。
「実を言うと。そんなに大丈夫じゃない。正気というか何というか、脳内物質を出してない状態で死んだせいか、それとも明確に死を思って死んだせいか。あるいはその両方か。
一瞬で脳天を貫く弾丸の激痛が、記憶にあって……かなりキツイ」
「あー、文字通り死ぬほどの痛み辛みが記憶にあんのか、そりゃあ確かにキツそうだ。まぁそれで、オメェは生きかえられる。それでいて死ねば忘れられる。そんな力が覚醒しているって証明出来たんだし仕方がねぇ経験ってことで。……しっかしまあ、綺麗に治ったな。傷跡が一切、残ってねぇな」
『本当に綺麗に治っているんだよ……あっ! そう言えば額の傷跡が無いんだよ! ヒロのアイデンティティが消えちゃってるんだよ!?」
「ニコからは死角になってて顔が見えなかったかな。額の傷は二つともこの異能力が覚醒したときから無くなっていると思う。というか、傷がアイデンティティは、さすがのジブンも嫌だぞ、せめてこの眠たげな眼にしてくれ」
『えー、でもなっちゃんが、あの二つの傷にまつわる思い出話をしてくれたって言ってたんだよ? 思い出の傷が無くなっちゃったんだよ?』
「無くなったものは仕方がないよ」
ニコは残念そうな声でうなるが、傷は戻しようがないのだから、残していたかったとしても諦めるしかない。
「そこらへん俺がわからねぇ昔の話は、ついていけねぇから置いておいて。まぁ、傷一つ残ってない状態で生き返るってことだな。そんでだ、俺的には今後の戦いに使えそうだから聞くが。その力。無限に使えんのか? それとも回数制限か? そこらへん感覚的に分かんねぇか?」
『ニコは、もう絶対に使ってほしくないんだよ!?』
「まぁまぁ、参考程度にだよ。どのみち知っておいたほうがいいだろうしな。……おい、博人。ニコを返すぞ。こいつ今ので怒ったのか俺の耳元で黒板をひっかいた音を流しやがる」
「はいはい。ニコおいで」
むくれるニコを中田文兵から受け取って、首にぶら下げてから。中田文兵の問いを考える。新で何かがなくなるという感覚は今のところ感じないが、それ以外、まったくわからなかった。
「有限なのか無限なのかもわからない。今のところ何かが減ったとか、喪失感は感じない」
「そんなもんか。わかんねぇなら使わねぇほうがいいな」
「ジブン自身、できれば死にたくはないんだけどね。もう確認することはないか?」
『ニコはヒロが死にたくないって、最終的に聞きたかったことを言ってくれたからもういいんだよ。今までのことは記録しておいて大丈夫?』
「何かの参考になると思うから頼む」
『はーい。それじゃあ記録しておくね』
「それじゃあ、俺から2つ。と言ってもお前の生き返る力とは別の疑問なんだが……俺にばれたが、拠点の奴らにニコのことはどうすんだ? 隠し続けるのか? そんで、拠点の奴らは現在、オメェのことを忘れているわけで。オメェが帰ったら軽い混乱が起きると思うんだが、その辺の説明はすんのか?」
中田文兵の問いは、避けては通れないものであった。
そもそもの話として、天月博人が仲間たちに自身の意能力とニコの存在を隠していたのは、何かに利用されるかもしれない、付け込まれるかもしれないという、信用しきれていない側面が有るからだ。
不信は未だに拭いきれてはいない。でもだからと言ってどうすればいい? 中田文兵には、ニコの存在が知られた。天月博人の生き返る異能も見られた。
この場から逃げ出し死ぬ事でもう一度、中田文兵の記憶から天月博人を死なせ、今ある拠点にも帰らず。何もかもを切り捨てて1から始める選択肢はある。だがそれは、今の天月博人にはとても選べなかった。
逃げる選択が出来ないのであれば、中田文兵に頼み込んで隠し通すか、危険性を背負う覚悟で打ち明け、その後起きる結果を受け入れるかの二択だろう。
「隠し続けて、知られた時に拗れるよりは良いか……」
「おっ言うのか?」
「先ずは2人、ジブン的に信頼できると思えた2人に説明する。そこから意見をもらってから方針を決める」
『楽善二治、通堂進の2人?』
「そう、その2人。2人共、レジスタンスの為によくやってくれているし。ロロ=イアが敵視していない時に、ジブンに着いてくれたからね。ジブンとしては信頼度は高い。あと、混乱が起きても何とか鎮めてくれそうだし」
「屋宮亜里沙は良いのか? 楽善ばりにオメェの事を気にかけてるみてぇだが」
「えーと……屋宮さんは……ジブンからの信頼度が足りないかな……うん、話してどうするのって感じもあるし」
「お前の好感度がたりねぇんだな? よしわかった。帰ったら屋宮に、もっと博人の事を構ってやれって言っておく」
「やめて……本当にやめて。あの人、日に日に愛る事に遠慮が無くなってるから……最近、羞恥心で心が死にそうなんだ」
『ヒロ、あの人にダボダボな服を着させられて、可愛いーって撫でられてたもんね……』
「えっと……何だ。同情はするが、拠点の中で数少ない娯楽を見つけた感じだろうから受け入れてやってくれ」
ジブンの異能力は、死んだ心も生き返るのかなと。天月博人は苦笑するのであった。
拠点へ戻ると。楽善二治が「お帰りなさい。中田さん……と、天月君」と、一瞬戸惑いながらも出迎えてくれた。
レジスタンスの皆は、天月博人を見たあと、不思議そうな仕草をするが、それだけで、問題になる事はなかった。考えれば、忘れていた事を思い出しても。レジスタンスのほとんど知らない人たちの中で、思い出したと口にする人は少ないだろうし。それに大半の人は、その時思い出す必要がなかったと、その時まで忘れていた事に納得するのだろう。
「それで、今回はどうでした? お怪我は有りませんか?」
「その事について、後で少しお話肢体ことがありますが。その前に今回の成果を見てください。凄い人が居ますよ」
襲撃を終えて、食料やら備品などの戦利品は、最早、恒常と化したため除いて。目玉は地下から救出した人的戦利品である。この人的戦利品の中に、鉄田大樹のように何かしらの知識を保有していたり。通堂進や中田文兵のように意能力に覚醒していれば。レジスタンスにとって大きな戦力となるのだが。今回の人的戦利品、その引き当てた人物は、その時になるまで自身のことをどうしようか悩んでいた天月博人が、確認して即座に自身のことを棚上げし喜ぶほどの人物であった。
「俺は霜下太郎ってんだ。えっと。才能とかそんなんはねぇけど。食ったことある植物を思い浮かべながら爪を切ると、切った爪が思い浮かべた植物の種代わりになるぞ」
「私たちは君を歓迎します。よく、私たちとこうして出会ってくださいました!」
「お、おう……熱烈な歓迎をどうも」
レジスタンスは、その日。ほのかに未来図を思い描くたびに不安視される食糧事情を改善しうる人材を引き入れた。
「それで…お話ししたいこととは何ですか?_」
「それって、僕も聞くの?」
「はい、どうか聞いてくれると助かります。ジブンとしてはお二人が信用できますので」
天月博人は楽善二治と通堂進に、ニコのこと自身の生き返る異能力のことを伝えた。真摯に耳を傾ける楽善二治と、そこまで関心がなさそうな様子の通堂進と、二人はそれぞれ別の反応を示した。
通堂進は言う。「僕を信用してくれたのは素直にうれしく思うよ。でも、そのことを知って、君は僕に何をさせたい? 少しずつ君の摩訶不思議が起きても仲間たちに角が立たないよう、噂でも流しておくとかかい?」と。天月博人の要求を尋ねた。
「当たらずとも遠からずって感じですね。少しずつ。ロロ=イアはこちらの対策をしているように思えますから。その分、ジブンが死ぬ確率は高くなります。ですので、そのたびに起こりうる混乱を事前的に予防できるようにと報告しておきます」
『言おうってヒロが思ったのは中田文兵にバレちゃったってのもあるよねー……連鎖的にニコも原因の一端になるけど……』
「ニコにもジブンの異能力を教えなかったジブンにも非が有るから。誰のせいとかジブンは言えないかなぁ……こういうのは結局いつかは気が付かれたことだろうし。いいきっかけになったよ」
天月博人は苦笑してから、「お時間ありがとうございます。何かあれば呼んでください。要はすんだのでそれでは」と言って頭を下げてからその場を立ち去ろうとするが、楽善二治が「ちょっと質問させてほしいです」と呼び止められる。
「その生き返る異能力は、使ったことがあるんですか?」
「はい」
「何回ですか?」
「記憶にある限りのを数えれば」
天月博人は数えるように呟いて指を立てる。
「6回くらいですね。記憶に残ってない頭に血が上っていた時のを数えればもっとあるかと。ギリギリ両手で数えられるかないかくらいですかね」
何の気なしに答える天月博人はやるせなさそうな表情をする。言い辛そうにしながらまた、問いかけた。
「死ぬのは苦しくないのかい?」
「苦しいです。言葉通り、死ぬほど」
「恐怖は?」
「あります。苦しく辛いのは嫌ですから」
「なら、ならどうして君はまだ闘おうと?」
天月博人は首を傾げ、意味が解らないと言いたげな表情になって答える。
「ジブンが苦しむことは、闘わない理由になりませんよ?」
「なっ、何でですか!? 君がそんなに辛い思いをする必要は何所にもないはずです! どうしてそんなことを思うんですか? 生き返るからですか? だから無限の鉄砲弾になると?」
「そう、なりますかね」
「そうなりますって……もっと自分を大事にしなさい!」
「大丈夫ですよ。それにジブンは、そんなことよりも今も尚、今はロロ=イアに捉えられている人を救い出したいんです」
「救う……救うのならほかの……大人の人に……!」
少しずつ、感情的になっていく楽善二治の言葉を「駄目ですよ」と天月博人は切り捨てた。
「だって、未だに志願者は1人も集まらないのでしょう? 今、この時もロロ=イアの被害者たちが苦しんでいるのですから、誰かが気が変わって志願するのを待つ時間は有りませんし、だからと言って嫌だと思っている人を危険にさらしたくはありません。……そして、もう1つ。大人だからと代わりに死んで言い訳ではないですよ」
その発言から、その場にいた誰もが察しただろう。天月博人は我が身可愛さと言う気持ちが欠落しているのだと。そして自身が危険に会うことを良しとしない人間なのだと。また、悲しんだりする人々が居るというのにそれを棚上げにして、自分は他人を心配する人間なのだと。
『ひ、ヒロ。もうちょっと価値観を正すべきだと思うなーってニコは思うんだよ? 二治も言ってたみたいに自分を大事にすべきかな……ここに来てから自己犠牲が酷くなってる気がするんだよ』
ニコもどこか思う事はあったのだろう。これを機にと言わんばかりに天月博人の在り方に異議を申し立てる。だけれど天月博人は言葉に絆されることなく静かに首を振った。
「ジブンはいろんな人に出会えて、救われて、十分すぎるほどに幸福だった。もう満足だ。……だからかな、ジブンはもういいんだ」
「自分はいいって……何が……!」
「止めだ止め」
天月博人の言葉に激昂し楽善二治が声を張り上げる中、今まで黙って聞いて居た通堂進が手を大きく叩いて鳴らし、自身を注目させる事で静止させる。視線が集まったことをちらりと確認すると飽きたように伸びをした。
「よーし、みんなこっち見たね。それじゃあ今までのを聞いて、僕から1つ。天月博人君がそう考えるなら。僕としては、それはしょうがないねぇと思うよ。うん、マイナスな感情なら説得の余地はあったと思うしなんとかしないととも思う。でも、満たされちゃったか。それはどう考えてもマイナスとは違う。むしろ対局のプラスの感情かなぁ。
だから楽善君と……えーとゴーグルの中にいるニコって人? には悪いけど僕はもうそのあたり説得するつもりはないよ。プラス勘定で自分をないがしろにする人とかどうやってやめろって説得するのか、僕は知らないからねぇ。
それじゃあ本筋はもうとっくに話してもらったし。拠点を広げるっていうお仕事もしなきゃあだし。一抜けするね。それじゃあ」
通堂進はそう言って、立ち去っていく。天月博人もそれに続いて「それでは、もういいならジブンも行きますね」と言って楽善二治だけを置いて行った。
1人小さな部屋に採り起された楽善二治は、ゆっくりと頭を抱えて震える。
「私は…………間違っているのでしょうか…………あぁ、私はどうすれば……」
天月博人のその在り方を受け入れられないが故に。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる